燃費最悪の外れスキル【時空剣】のせいで追放された俺、燃費問題を解決して最強となる。戻って来ていいと言われるがもう遅い。
要注意人物認定
木村の話を聞いたところ、やはりと言うべきか、俺が北の山脈で獲得した木々は、ホワイトオークと呼ばれる高級な木材であるらしかった。
「どこで、これほどのホワイトオークを?」
「北の山脈だよ」
「状態も信じられないほどいい。なにこれ。さっきまで生きてたみたい」
「まあ、たぶん生きてたよ」
「ひんやりしてるのはなんで」
「向こうは、すごい吹雪だったな」
「なるほど。ふむふむ、これはすごい木材だ。並みのホワイトオークと比べても、質がかなり良い」
「そうなのか?」
「ホワイトオークは標高が高い位置に自生しているほど、より木のランクが上がるんだ。これはおよそA、いや、A+といったところだよ」
「へえ……」
キムラさんの興奮が止まらない。
さっきまで面倒くさそうで、なんならちょっと寝そうだったのに、今は露骨にホワイトオークに興味を示している。
「あ」
「ん、どうしたんだよ、キムラさん」
「木に夢中でスルーしてたよ」
キムラは俺の収納空間を指さした。
確かに。
まず、これについて普通は触れるよな。
「これはな──」
俺は自分がユニークスキル【時空剣】の使い手であると説明し、その能力で北の山脈とモーリアを、ほとんど時間かからずに行き来する能力を保有していると伝えた。
「なにそのチート」
「金がかかるけどな」
「そんなの目じゃない。だって、君……名前なんだっけ」
「言ってなかったな。アイガだ」
「アイガ? ああ、あなたがアユの言ってた……まあいいや。アイガ、このホワイトオーク、君の能力でどれくらい運ぶことができる」
キムラは目をキラキラさせ、詰め寄ってくる。
緩いノースリーブの隙間から、絶景が見えてしまっているが、本人は気にしていない様子。ありがとうございます。
「ぇ、枝を落とせば、今の広さで、収納空間に10本くらいは入るかなぁ」
「それが一日の運搬量の限界?」
「いや、往復すれば……限界はないかな。向こうに行って、木を切って、持ってくるだけだから」
「うんうん、素晴らしい」
キムラは満面の笑みをうかべて拍手してくれている。
笑うと、途端に同年代の美少女になった。
危うく心臓を射抜かれるところだった。危ない危ない。
「それじゃあ、ボランティアだと思って毎日ホワイトオークをここに──」
「おっと、その手には乗らないぞ」
キムラは指を立てて提案しようとするが、俺は制止する。
「ふふふ、キムラさんよ、このホワイトオークが高級品だと教えたのは失敗だったな!」
「……」
「騎士団の工房とはいえ、ちゃんと適正価格で買ってもらおうか!」
「……ちぇ、余計なこと教えちゃったかな」
「腹黒か、貴様ぁ!」
なんやかやで、キムラは相場を教えてくれた。
「直径30cm、長さ4メートルの原木で100ララ」
「山に生えてるのがだいたい高さ20mだから、一本から5本の原木をとれるとして……え、10本とってくれば、5,000ララ?」
「こっちで加工するから手数料は少しもらう」
「でも、だいたい5,000ララだよね?」
「まあ」
なんてことだ。
これは革命だ。
革命的なビジネスだ。
俺は喜んで、キムラに丸太を売り渡そうとする。
しかし、俺は冷静になり思いとどまる。
そうさ、俺はすぐに売るような愚かは犯さない慎重な男だ。
キムラは油断ならない女だ。
「おっほん。取引は少し待ってもらおうか」
「?」
──数日後
俺はこの材木界隈に詳しい識者たちに、ホワイトオークの適正な相場を聞いて回った。
「結果、やっぱり100ララくらいだった」
4日ほど調査した結果、キムラが嘘をついてないことを、彼女自身に報告した。
俺の無駄な努力……もとい、慎重な采配を聞き届けた彼女は、げんなりした顔で「わたしってそんな信用できない?」と問い返して来た。
「まあ、口からでたものを鵜吞みにしたら搾取されると警戒するくらいには」
「最初のは冗談だったのに」
なにはともあれ、俺はキムラの工房にホワイトオークを持ち込む契約を結んだ。
ただし、いくつかの条件付きだ。
①騎士団工房製材部以外には持ち込まないこと
②ひと月に原木5,000本まで取引する
③この契約を口外しない事
「なんか、うさん臭いなぁ。縛るつもりか?」
「当たり前だよ。アイガの能力は市場を破壊しかねないから。それに、あんまり調子に乗って、たくさんもってこられても困る。山の環境を壊されるかもしれないし」
キムラはため息をついて「アイガが騎士団を頼ってくれてよかった」と安心したようにつぶやいた。
「どうしてだ?」
「民間だったら、きっとアイガはホワイトオークの売買で相場を破壊するだけでは飽き足らず、北の山脈から採取できる、あらゆる貴重資源の市場を混乱させてただろうから」
バレてる。
俺が何しようとしてるか、完全に読み切られてるよ。
「ふふふ、なに、バレないとでも? アイガの凄まじい才能を利用しない手はないんだ。君はズル賢いから、それくらい思いつく」
「あの……その場合は民間で売りさばいてもいいんですかね」
「良いと思ってる?」
「……」
「アイガがホワイトオークの相場を調べてる間に、こっちも騎士団への報告をした。アイガ、君の能力はかなり未知数だ。これから北の山脈で得た恵みを売買する時は、騎士団とだけ取引してもらうよ」
「っ、やられた!!」
俺は頭を抱える。
キムラは勝ち誇ったように、腕を組んで膨らみかけの胸をゆさっと抱いた。
騎士団より、高い買取をしてくれる場所があっても、俺には選択肢がなくなった。
なんと汚いマネをするんだ、このキムラめ。
「とはいえ、悪い事ばかりじゃないよ」
「どこがだよ、監視されてんだぞ」
「それは仕方ない。でも、だからこそ、アイガは騎士団という最も安定した、それも一市民としては、ありえないほどのお金を稼ぐ手段を確保したことになる」
「そう言えば、聞こえはいいけどな」
「実際いいものだよ。だって、世の中のごまんといる商人たちは、騎士団との専属契約がのどから手が出るほど欲しいんだから」
上手く言いくるめられてる気がする。
「というわけで、これからは面白いモノを見つけたら、とりあえず騎士団に持ってくるんだよ。モンスター素材、鉱石、木材、そのほかあらゆる資源は、いくらあっても足りないから」
「ああ、そうするよ。ちっ」
「うんうん、素直でよろしい。それじゃ、今後ともよろしく」
キムラは不愛想な顔に少しばかりの笑みをうかべて、手を差し出してくる。
俺はその手を握り、固く握手をした。
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