燃費最悪の外れスキル【時空剣】のせいで追放された俺、燃費問題を解決して最強となる。戻って来ていいと言われるがもう遅い。

ノベルバユーザー542862

剣は撃つもの


なんと良い物件を手に入れてしまったのだ。
月3,000ララも稼げれば、目標の1万ララまであっという間だ。

浮かれる俺はノエルシュタインに連れられ、綺麗な豪邸へやってきた。

「んっん、では、アイガ先生、こちらを」

俺はノエルシュタインこと、ノエルに木剣を渡される。

「ふっふふ、これからアイガ先生には、私が雇った傭兵団の方と戦っていただくのです!」
「あれ? そういう試験って師匠が弟子にするものじゃないか、普通」
「お喋りは無用なのですよ」
「えぇ……」
「これは本物を見極めるための試練なのですっ! アイガ先生が本物ならこの程度、そつなく倒せるでしょう!」

ノエルは庭の端っこに立つ。
屋敷の裏からぞろぞろと小綺麗な男たちが現れて、木剣をぬいて構えてきた。

「やるしかない、3千ララのためだ」

俺はノエルに渡された木剣を握り直した。


──しばらく後


俺は上着を拾い、芝生を払いながら、去っていく傭兵団たちに軽く頭を下げる。

今しがたの試験は無事合格だろう。

傭兵団らしい、現場仕込みの実直的な剣筋ばかりで、いろいろ学ばせてもらえた。
だが、身体が温まってきてからは、ほぼ一方的にノックダウンさせる事ができたと思われる。日頃の訓練の賜物だ。

「あ、アイガ先生……正直、あまり信じていませんでした。私と同い年のあなたが、これほどの実力者だったなんて……」

ノエルが演技臭いしゃべりをやめるくらい放心している。
そんなに驚いてくれたのか。うれしいな。

「アイガ先生の噂は知ってます……最近、ユニークスキルが使えるようになったって……今の剣技がそうなんですか?」
「いや、今のはスキルのバックアップも何もない剣技だよ、田舎のな。俺のスキルはこれだよ」

俺は時空剣を空間の裂け目から取り出す。
ノエルは目を見開いて「す、すごい…なんですか、それ!!」と感激している。

「時空を操る剣だ。俺のサポーターに教えてもらったところ、いろいろできるらしい」

ざっくり説明して、俺は時空剣をしまう。

これは手に持ってるだけで、お金が減っていく呪いの剣でもあるからな。

こわやこわや。

「わたしも時空剣使いたいです!」

俺は思案して「もう一本作れるのか?」と疑問に思いながら、試して見る。

時空の裂け目を作り、手を突っ込み、一本目をとりだし、二本目を手に取る。

「お、行ける──ちょっと、待てよ!」

俺はあわてて二本の時空剣を裂け目にもどした。

まずい、二本召喚したら、二倍の速さで口座からララが減っていくのがわかった。

双剣なんてしたら一瞬で金がなくなるな。

「? アイガ先生?」
「そう、だな、お前が一流になったら考えておこう」
「やった!」

木剣をノエルに渡す。

「これからよろしくな」

木剣をぎこちなく持ち、ノエルはキラキラした眼差しでこちらを見つめて来た。


──3ヶ月後


貯金は順調だ。
日々積み立てている分もふくめて、俺の魔力の口座も、順調に成長してきてる。

毎日、すこしずつララが貯まっている感覚が楽しい。積み立てコツコツこそ至高だな。

「号外だあああ! 号外だあああ!」

ノエルの別荘の外から声が聞こえてきた。
新聞を配っているらしく、風に乗って飛んできたそれをキャッチする。

「なに? 『剣姫』レイが冒険者デビュー? 旅する仲間募集中……選考会は、年末の武闘大会で……?!」
「どうしましたか、我が師よ、そんなに呆けた顔をして」

俺は震える手で新聞をしわくちゃにする。

来た。
ついに来た。
一生一代の大勝負の日が。

しかし、だとしたらまだまずいぞ。

武闘大会には俺より強い剣士がたくさんくるかもしれない。

それに、たぶん大会は”連戦”だ。

時空剣をもっと気兼ねなく、自由に使えないと、すぐにララがなくなってスタミナ切れを起こすかもしれない。

「?」
「ん……す、すまない、ボーっとしてた。続けてくれ」

ノエルは練習を再開する。

しかし、どうしたものか。
俺には継続戦闘能力がなさすぎる。

年末まで時間があるとはいえ、いまのままでは最大まで節約した生活をして、ララを貯めたとしても、使える技の回数が限られている。

俺はゴールドにもらった黒い指輪で、資産と、時空剣についてのステータスを確認できる映像を映し出す。

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残高
10,104ララ

──【時空剣】

技名:抜剣
コスト:-100ララ
備考:異界に返還すると+100ララ

技名:装備
コスト:-10ララ/毎秒
備考:装備中、継続して魔力消費

技名:収束重撃波・小
コスト:-8,000ララ

技名:収束斬・小
コスト:-1,000ララ


──────────────────

現状、俺が【時空剣】で使える技はこんなところだ。

もっとレパートリーを増やしたい。
というか燃費のいい技が欲しい。

考えろ、考えるんだ。
ゴールドはなんて言っていた?

『空間能力において暗黒界一、二を争う吾輩に言わせれば、空間や時間に干渉しようとするほど、高くつくものですよォ~!』

そういって教えてもらったのが収束重撃波・小を、さらにコンパクトにした収束斬・小だ。

でも、収束斬・小でもまだ重い。

「空間に鑑賞して、物理法則を曲げようとするからコストが重いのか? だとしたら、もっとシンプルな技のほうが……」

例えば、時空剣を──ぶつけるとか?

俺が技をイメージした瞬間。

俺の顔横の裂け目から、剣が飛び出し、練習するノエルの横をぬけていった。

時空剣は屋敷の壁に深々と突き刺さる。

俺は驚きながらも、ステータスを確認した。

──────────────────

残高
9,954ララ

──【時空剣】

技名:抜剣
コスト:-100ララ
備考:異界に返還すると+100ララ

技名:装備
コスト:-10ララ/毎秒
備考:装備中、継続して魔力消費

技名:収束重撃波・小
コスト:-8,000ララ

技名:収束斬・小
コスト:-1,000ララ

技名:抜剣・射出 NEW!
コスト:-150ララ
備考:異界に還元すると+100ララ

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消費ララ、たったの150だと?!

「あ、新技できたわ」
「我が師ぃ! 我が師ぃ! なんでしゅか、私、なにか怒られるようなことしましたかあ……っ! うぅ!」

ノエルは泣きながら抗議してきた。
俺はそんあ彼女に謝りながら、今の感覚をしっかりと記憶した。


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