【完結】 外れスキル【観察記録】のせいで幼馴染に婚約破棄されたけど、最強能力と判明したので成りあがる

ノベルバユーザー542862

王都縦断チェイス


──10分前

ブラッドファングのジャックにまたがり、アルバートは大通りを爆走する。

赤い獣が追いかけるのは、同じく夜中の大通りを騒音など構わずに、全速力で駆ける戦車だ。

血で強化された巨馬が2頭がかりで引いており、装甲は厚い。要人警護用の馬車だ。

馬車のまわりには、騎馬にまたがった血の騎士たちがいる。全部で10騎、精鋭揃いだ。

アルバートは恐れず、ジャックの速度をあげていき、ぐんぐん距離を詰めていく。

「あのイカれたガキを殺せ!」

『血の王』フレデリックの激昂に呼応して、騎士たちがアルバートを包囲する陣形をつくりはじめた。

「我が王のため、ここで死ね!」

背後から紅い斬撃がせまる。「それは無理な相談だ」アルバートは頭を下げて、死角からの一撃を避ける。

空振りして体勢を崩した騎士を、アルバートすかさず馬から蹴り落とした。

反対側からも、騎士がせまってくる。

今度は聖火杖を投げて、騎馬の足元を爆破し、騎士を振り落とさせる。

「貴族のくせに汚い手ばかり使いやがって!」
「汚い手? 名乗りをあげて決闘するだけが戦いだとでも? 騎士学校で学んで来たのは、ナイフとフォークの使い方だけなのか」
「この卑劣な犯罪者がッ! たとえクズだとしても許せん侮辱だッ!」

怒りに身を任せて襲って来た騎士を、足蹴にして転倒させる。

アルバートは「やっぱり使えないな」と、ため息を漏らす。

背後での戦いを、馬車から見ていたフレデリックは、拳で椅子の肘掛けを何度も叩きつける。

何故だ!
何故、アルバート・アダンを殺せない!

「クソが、たった6年前まで指先ひとつで砕け散るようなゴミだった分際で調子付きおって……ッ! おい、お前、アイリスとアギトは何処にいる?!」
「お嬢様は第3段層のお屋敷です! アギト様もおそらく、そちらにいらっしゃるかと!」
「さっさとこっちに寄越せ! あのクソガキを殺させろ! ええい、腑抜けの鬼席どもめ、こぞって姿を隠しおって、なんたる叛逆だ!」

頭の血が沸騰するほどに、怒り狂っていた。
フレデリックは馬車の正面、王都の内部に存在する巨大な絶壁を睨む。

あそこまで逃げれば、自分の勝ち。
その前に捕まれば、あのガキの勝ち。

絶壁の正体は、段層都市として名高い王都アーケストレスが、ジャヴォーダンと同じく山の峰を切りだすことで建造された歴史にある。

王都は合計で5段層からなり、各段層は高さ400m以上の、絶壁によって隔絶されている。

現在、フレデリックが『怪物』から逃げているのは第2段層だ。
アイリスが滞在しているサウザンドラの別荘は第3段層にある。

フレデリックは、第3段層にいけば、齢10歳にして、血の奥義と悪魔に辿り着いた、最強の魔術師アイリスを動かせるのだ。

アイリスを動かせるという事は、すなわち巨大な軍隊を動かせることを意味する。

実のところ、サウザンドラ家内ではアイリスが目覚めてから家の権力の譲渡が進んでいた。

本来なら刻印の継承が終わった後、すこしずつ行われる手続きだった。アイリスの家出から始まり、長期間の昏睡状態が続いたせいで、ごく最近までさきのばしにされていたものだ。

現在では、すこしずつ権力の譲渡が進んでおり、アイリスとフレデリック、2人のもとに、6つの騎士団は指揮系統が分かれている。

先日のジャヴォーダンの戦いで、ジャヴォーダン城から迅速に撤退した第一騎士団、第二騎士団、第六騎士団は、本来なら、すべてアイリスが指揮権をもっている騎士団だ。

ジャヴォーダンでの暴挙では、フレデリックは、直轄の指揮下にある6人の鬼席を動かして、彼ら鬼席を最高指導者とする、それぞれの騎士団を、間接的に出陣させたにすぎない。

此度の、審問会のための王都遠征においては、騎士団の指揮は、しっかりと分割されているのだ。

ゆえに、アイリスの屋敷に駐屯している騎士団は消耗していない。候補者も、血の騎士たちもいる。第二鬼席と第六鬼席は責任追求から逃げるため姿を消したが、それでも十分すぎる戦力が、アイリスの元には残っているのだ。

「アイリスさえ動けば、時間は稼げる。そうすれば、教会の力を借りて、国中から殺し屋を雇ってあのガキを抹殺すればいい……ふふ、フハハハハ、まだ大丈夫だ、いけるいけるぞ!」

フレデリックは怪しく笑い出す。

「あ! フレデリック様、あれを!」

フレデリックの執事がキラキラした瞳で、前を指さした。

視線を向ければ、第三段層の絶壁方面から、血の騎士の騎馬隊が、応援として駆けつけているではないか。

騎馬隊を率いるのは、第二騎士団の候補者『超人』ガブリエル・ハンドレッドだ。

その数は実に30騎にもおよぶ。

「フレデリック様! ガブリエル参上しました!」
「おおお! 最高だ! お前は最高だ! 名前負けのマスター級パーティも、生意気そうな封印部の娘も、使えないやつらばかりのところへ、よく来てくれたッ! 素晴らしい、アルバート・アダンを討ったらお前を鬼席にしてやるからな!」
「おぉ、ありがたき幸せ! フレデリック様、必ずや、このガブリエル・ハンドレッドが、我が最高最強の血の魔術であの男を討ち取ってみせましょう!」

ガブリエルは騎馬隊を展開して、アルバートを取り囲むように動かす。

「では、推して参ります!」
「ま、待て、ガブリエル、ほかの候補者たちはどうした? 第二騎士団がきたのではないのか?」
「ほかの騎士たちは、アイリス様のお屋敷を警備としており、出動しておりません!」
「な…………ば、馬鹿なのか?! こっちのほうが襲われてるんだぞ!? お前が動けて、なぜ他の騎士が動かんのだ!!?? どうして、まだ悠長に警備などしてある!!!」
「で、ですが、アイリス様の屋敷の騎士たちは、アイリス様派の者が多いので……」
「ええい! 今はまだ私が当主だと言うのに……ッ、私より、私の娘を選ぶだと? 許せん許せん! すべてが片付いたら、その騎士たち全員首を刎ねてやる!」
「ふ、フレデリック様、このガブリエルはフレデリックを熱く崇拝しております!」
「ああ、お前は最高だ。だが、アイリス派のバカどもは最悪だ。はあ……もういい、いつまで喋っている、さっさとガキを殺してこいッ!」

フレデリックの怒鳴り声に、ガブリエルは「はっ!」と一礼した。

ガブリエルの騎馬隊が、アルバートと横並びになって、完全に包囲を完成させた。

「この数はまずいか」

アルバートは数の劣勢を、強力な個でもって打破することにした。

近年のお気に入りダ・マンの再出撃である。

とはいえ、ダ・マンに機動力はない。
地面から湧いて出ても、ブラッドファングとサウザンドラの騎馬隊のチェイスに追いつけはしない。

「はははは! 馬鹿めが、あんなデカブツ召喚してなにができる!」

血の騎士たちは、遥か後方へと取り残されていくダ・マンをゲラゲラと笑いはじめた。

アルバートは、アナザーウィンドウを開く。

───────────────────

アルバート・アダン
スキル:【観察記録Ⅴ】
レベル100+85(ex)
体力2329/2500
魔力17,000/1,000,000
スタミナ3410/3710

───────────────────

「第二形態だ」
「ははははは! ──なに?」
「ガブリエル様! あのデカイのが!」

騎士の報告で、ガブリエルは背後をかえり見た。

トレンチコートを着た青い巨漢は、その服を脱ぎ捨て、著しく骨格を変形させて、クラウチングスタートの姿勢をとっていた。

嫌な予感が頭をよぎる。

大通り中央部分が爆発した。
強すぎる脚力によって、石畳みが踏み砕かれたのである。

人類には真似できない驚異のスプリントと、理想的で美しいフォームでダ・マンは、あっという間に騎馬隊とアルバートに追いついた。

「うぁあああああああ!」

最後尾の騎士が、巨大な手に掴まれて、大空へぶん投げられる。

「やめ、や、あごああああ!」

後ろから2番目の騎士は、掴まれるなり、そのまま握りつぶされ、冬眠に入った。

「ぶっ殺してやるッ!」

馬から跳躍し、勇敢に戦いを挑む騎士は、ダ・マンの太い首へ造血剣を振り下ろす。

が、造血剣は分厚い皮膚に引っかかった。

高速で表面をすべるノコギリの機構、液体ゆえに再現できる薄さと、摩擦熱による熱切断、斬るためのあらゆる能力を素肌で受け止めるなど、現代物理魔術学を否定する所業だった。

「ば、馬鹿な……っ!む

かつて第三鬼席が感じたショックは、同じくこの騎士にも硬直をもたらした。

ダ・マンの白目が、首にぶら下がっている騎士を見る。騎士は「ご、ごめんなさ──」と謝罪をしかけ、雑に握りつぶされて捨てられた。

ガブリエルは想像を絶するダ・マンの戦闘能力に震えあがった。

しかし、ここまで来て逃げ帰る訳にはいかない。

「人造人間は任せろ! お前たちはアルバート・アダンを狙え!」
「無理です! もう追い抜かれてます!」
「なにぃ?!」

部下の声でようやく気がついた。
ブラッドファングの健脚は、馬より優れているのだと。

騎馬隊をしりぞけたアルバートは後方を見る。
ダ・マンに蹂躙される騎馬隊へ「余計な出費をさせやがって」と悪態をついた。


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アルバート・アダン
スキル:【観察記録Ⅴ】
レベル100+85(ex)
体力2329/2500
魔力12,000/1,000,000
スタミナ3410/3710

───────────────────

ダ・マン1体を第二形態にするだけで、5,000もの魔力を持っていかれていた。

ダ・マンは万能に見えるが、アルバートにとっては非常に″ピーキー″なキメラだ。

圧倒的な戦闘力を誇るが、それゆえに維持費が高く、運用コストは非常に高い。

連続稼働は20時間が限界で、激しく動くほどに稼働限界は短くなる。

長く使う為には、限界を迎える前に、研究室に一度もどす必要がある。
そして、ポットの中で、約50リットルの青い血──ペイルブラッドを30時間かけて透析を行い、入れ替えなければならない。

また、人間の形を維持するために、何十種類もの投薬を行わなければならない。

食事は、一食で、肉をたくさん食べる。牛3頭分は食べる。もちろん、野菜も同じくらい食べる。魚も同じくらい食べる。

そうして、最後には暗示をかけて、自分は人型生物だと思いこませるのだ。

アルバートはモンスターを、人間と全く同じに考えている。作るのは簡単、だが、育てるのは非常に手間がかかる。

ゆえに、アルバートは特に″重たい″モンスターであるダ・マンをポンポン作る事はない。
あまり傷つけられないように、高い防具を着せて、治して、大切に使う。

「やれやれ、手こずらせてくれる。……ん、フレデリックの馬車が……」

いつの間にか距離を離されていた。
まっすぐ追いかけて来れば、アルバートは絶壁まで1,000mほどの所まで来てしまっていた。

耳に汽笛の音が聞こえて来る。
アルバートはハッとして、懐中時計を見た。

時刻は4時59分。
街中を逃げ回られて、かなり時間を稼がれていた。

「列車に乗ったのか!」

アルバートは第三段層へ登っていく、本日の始発列車を見て、チッ、と舌打ちした。

段層都市である王都には、ジャヴォーダンと同じように列車が段層間を移動する手段だ。

柵の向こう側、すでに列車は発車している。
しかも、馬車用の車両には、フレデリックが乗っていた馬車がしっかりと乗車している。

アルバートは息の切れているジャックを撫でて「あと少し頼む」と、最後の全力ダッシュをお願いした。

ジャックは主人の願いに応えて、ダッシュする。走る走る走る。加速する列車に追いついた。ジャンプして柵を飛び越え、線路内に侵入した。
アルバートは「助かった」と礼を述べると、ジャックを背中を踏み台に、さらに大ジャンプをした。

列車の屋根に着地する。
間に合ったことに一息つくのも束の間だ。

アルバートは、聖火杖の持ち手を懐から取り出して、魔力で杖身を編み出した。

列車のような場において、モンスターを召喚せずとも戦えるのも、自身に力を身につけた理由でもある。市民の犠牲は出したくない。

アルバートは、フレデリックの馬車を見つけて、中を確認する。もぬけの殻だった。

馬車を捨てて、もう逃げていた。

アルバートは怪書を召喚する。
そして、このような時の為に、ストックされているモンスターを呼び出した。

「わんわん!」

怪物学者の呼び声に反応して、黒い液体から現れたのは、臭いの名探偵ワンワンだ。

ワンワンは馬車の匂いを嗅ぐと、すぐに走って列車のなかを案内しはじめた。

アルバートはワンワンの後を追いかける。

列車の中は始発だというのに、席すべてが埋まっているほど混んでいる。

「失礼、失礼、通して」
「あ、もしかして、アルバート・アダン様ですか? はぅ、まさかこんなところで本物に会えるなんて……っ、私、怪物学者シリーズの大ファンなんです!」
「それはどうも、嬉しいよ。でも、今は急いでいるんだ。良い1日を、お嬢さん」

アルバートは、早朝から出勤する労働者たちたちへ敬意を払い、自著の読者だという興奮する少女に握手しながら先を急ぐ。

「わんわん!」
「いたな」

先頭車両にフレデリックを見つけた。

フレデリックとその執事は、身体の大きい血の騎士2人が最後の砦として守っていた。

騎士の一人は、何かが入った布袋を抱えていた。子供一人くらいが入りそうなサイズだ。

「アルバート・アダン、勝負!」
騎士の一人が造血剣を抜剣した。

「バカか、ここは一般車両だぞ」
アルバートは真面目な声で言う。

まさか『最悪の犯罪者』に、そんなマトモな事を説教されるとは思ってもいない騎士は「それもそうだな……」と造血剣を下ろした。

まわりの市民たちが、ただならぬ気配を感じとり、青ざめ、悲鳴をあげて、後方車両に逃げはじめた。思わぬ停戦時間が生まれる。

アルバートとフレデリックは睨み合う。

「まさか、こうも簡単に追い詰められるとは思っていなかった。アルバート……ッ、聞かせてくれ、主席である私を、本気で殺すつもりなのか?」
「コスモオーダー卿から殺人許可証を得たからな。無論、抵抗せず、身を委ねるなら、殺す必要はなくなる。かもしれない。もしかしたらな」

あとで記憶魔術を使われた時に訂正されそうな発言であった。

「今夜死ねば私が貴様に殺されたことは明白だぞ。主席魔術師を殺せば、ほかの主席が黙っていない。そうさ、お前なぞ吹き飛ぶぞ! 学会もろとも、紙屑のように吹き飛ぶんだ!」
「その前に、お前を吹き飛ばせればいい」
「クソが、クソがクソが! 本当に話のわからんガキめ! 我々は紳士的な魔術師であったはずなのに、感情に流され、愚かな選択をするとは! 恥を知れ、この裏切り者!」
「もう黙れ」

一般市民が全員いなくなった。
それが、開戦の合図になった。

「はああああ!」

屈強な騎士が、造血剣でアルバートへ斬りかかる。

その隙にフレデリックと執事、もう一人の騎士の3人は、車両横の非常口を開けて、外へ逃げた。

アルバートは体術と杖術で、騎士を11秒で撲殺ならぬ、撲眠させ、追いかけた。

やって来たのは、車両の屋根だ。

屋根に登るなり、今度は空から大きな影がやってくる。ただならぬ気配だった。アルバートはソレを見て、目を大きく開いた。

夜空を覆い隠す巨大な翼。ぎょろりとした目玉は充血に染まる。これは、魔の物だ。
紅い羽根は一枚一枚が人を越える大きさで、黒いくちばしは獲物をついばみ殺す武器だ。

アルバートはその存在を知っていた。
古い文献に示唆される、いにしえの吸血鬼の眷属、その名を──

「怪鳥アラクバーバー……存在していたのか」
「おおお! よくやったぞ、アイリス!!! まさか、上古の眷属召喚に成功するなんて! 流石は我が娘、天晴れである!」

歓喜するフレデリック。
彼は強気になって、70歳の老人とは思えない獰猛な眼差しで、アルバートを見やる。

暴力的な、その目は言っていた。
殺してやる。辱めて、誇りを踏みにじり、全てを蹂躙してやる──と。

「アイリスが召喚したのか。面倒だな」
「ははは! アルバート、貴様の運も尽きたようだな!! ここで血の怪物の贄としてくれるわい!!」
「そう思うか」
「ああ!! 思うとも! さあ、許しをこえ! というか脱げ、全部脱いで、そこで這いつくばり、謝罪をしろッ!!」

狂喜乱舞して、踊り出しそうなフレデリックをよそに、アルバートは空を見上げる。

夜空の向こうから、何かが飛んでくる。
音はなく、されど濃密な死の匂いはする。

それは、1匹目がやられた後、すぐにジャヴォーダン城から緊急出動させていたモンスター──天空の覇者スカイホーンドラゴンである。

夜空を見上げて、ドラゴンに気がついたフレデリックは「ああああ!! そうだ……こいつにはドラゴンが……!」と、思い出したように委縮してしまった。

形勢逆転が5秒で、またくつがえされた事で、彼は再び逃げを選択した。
執事と、布袋を抱える血の騎士とともに、アラクバーバーの足に掴まって、空へ舞い上がる。

直接、第3段層へ向かおうとしているらしい。

スカイホーンドラゴンは、すぐに列車で待つ主人をピックアップして、アラクバーバーを追いかける。

火炎の放射をして、怪鳥を焼き落とそうとするドラゴンとアルバート。
アラクバーバーはすぐれた飛行能力で、ドラゴンの攻撃をかわす。

アルバートは自分の知らないモンスターの能力に、怪訝に眉をひそめる。これもまたアイリスのせいだ。またアイツに邪魔された。

「わかった。もういい。そんなに俺と直接戦いたいんなら、付き合ってやる」

アルバートはアラクバーバーが、ドラゴンよりも優れた大型飛行モンスターと認めた。

数分後、ドラゴンのすべての攻撃をかわしたアラクバーバーは、朝日が昇る第三段層に到着した。

フレデリックを乗せた怪鳥は、サウザンドラの巨大な敷地を誇る別荘の空を旋回する。

ドラゴンに乗るアルバートは険しい顔で、屋敷の庭を見下ろした。
よく手入れの行き届いた庭園には、朝日に輝く金髪をした美しい少女がいる。意志の強い瞳で空を見上げ、たたずんでいた。

アルバートはその目の意味を、やる気、と捉えた。

いいだろう。
その気なら、ここで終わらせてやる。

「焼き払え、あの太陽のように眩しく、熱く、そして、早朝の空気のように、風に涼しく、清々しいフィナーレを迎えさせてやれ」

ドラゴンの吐き出す火炎に、アルバートの火の魔力が融合して、獄炎となり放たれる。

地上を焼き尽くす怒りの炎は、サウザンドラの屋敷に残酷の雨となって降り注いだ──。



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