魔界の天使アルトラの国造り奮闘譚
第313話 vsキャノンエラテリウム その2
少し時を遡り、三発目の種大砲を喰らった後のアルトラ――
ふぅ~……どうやら三発で撃ち止めみたいだ。
近寄っても膨らんで強い風を吹き付けられるだけで種が出て来なくなった。
近付いては吹き飛ばされ、近付いては吹き飛ばされして面倒な相手だった。
「でも、三発で撃ち止めって、他と比べると随分少ないのね」
あの巨大な種を作るエネルギーも規格外ってわけか。
よし! じゃあみんなを迎えに行こう。
その前に、
「≪スキルドレイン≫」
久しぶりのスキルドレイン。≪種マシンガン≫の能力を得た。
「予想はしてたけど、人体から種が出るのかしら? 種マシンガン!」
早速使ってみたところ、ダダダダダダッと種が勢いよく射出。
何で私の身体から植物の種が出るのか分からないけど、それはこの能力のがそういう能力だからってことで納得しておこう。多分魔力で生成された疑似種なんだろう。
「あ、込める魔力によって種の大きさを変えられるみたいだ」
そこで試し撃ちがてら、さっき何度も大砲をお見舞いされたキャノンエラテリウムを退治してしまおうとの考えに至った。
現在の川岸は、幸いにもまだ削られた範囲が軽微なため、川の分流が出来たり、氾濫したりの危険性は薄い。
しかし、このキャノンエラテリウムは他のマシンガンエラテリウムと比べたら段違いに危ない。今後コイツを放置していたら、死人が増えるだろうし、川が氾濫する可能性も極めて高い。
幸いにも突然変異したのはアレ一輪だけみたいだから、ここで駆除してしまえばまた突然変異でも起きない限り再び発生する可能性は低い。
キャノンエラテリウムに向かって手をかざし、ロックオン。
魔力を沢山込め――
「種マシンガン! ……えっ!? あ?」
射出の勢いで遥か後ろまで吹き飛ばされてしまった。その威力を全く想定してなかったため、脚に力を込めておらず、踏ん張ることもできなかった。
感覚としては、花だけを滅ぼす魔力を込めたはずだったが……
ドゴゴゴオオォォォォン!!
予想以上に強力な能力だったらしい。込めた魔力が強すぎたのか、目の前のキャノンエラテリウムの原木に直径五メートルはあろうかという大穴が開いた。
「嘘でしょ!? こんなに威力があるなんて……」
魔力を大して込めてない種マシンガンは豆鉄砲のような威力なのに……
直後、キャノンエラテリウムの原木は別の木を巻き込みながら倒れていった。
「あ、ああ……花だけ狙ったつもりが原木まで倒しちゃったけど大丈夫かしら……? こ、この能力は魔力を込めると実質『種大砲』ね……適切な魔力量を練習しておく必要があるかも……あの威力で放ったら死人が出そうだ……まあ、このキャノンエラテリウム、何人も殺してるみたいだし元となる原木ごと退治できて結果オーライ……かな?」
今まで、身体が小さい私としては、特定の攻撃以外ダメージを受けない頑強な身体に対して攻撃面ではとても非力だった。戦う際にはいつも筋力強化の魔法で補強する必要があった。
そこにこの種マシンガンを得たことによって攻撃面でも十分な牽制が出来るようになった。
「でも、魔力の調整をしっかりしないと大惨事になりかねないから練習が必要ね」
さて、みんなを迎えに行こう。
帰路の道中、練習しながら迎えに行くか。
◇
「みんなお待たせ」
「あ、アルトラ様、良かった~~~……無事だったんですね! 帰って来てホント、ホッとしました!」
トリニアさんが本気で心配している。
「遅かったッスね」
「道にある全ての花の種を空にするのが中々時間かかっちゃってね」
「と、途中凄い音が四回ほどしましたが、あれは何ですか?」
ああ、トリニアさんが心配しているのはあの大きい音のことか。確かに普通の亜人なら即死してるし、心配するのも分かる。
「マシンガンエラテリウム街道の最後の方に、ボスみたいなのが居まして、大砲みたいな種で三回吹き飛ばされてしまいました」
「大砲って……アルトラ様、そんなのに撃たれても平気なんですね……」
「……三回……? 音は四回聞こえたはずだけど……四回目の大きい音は何……?」
「ああ、最後のは私がそのボスを倒した音かな。似たような術を叩き込んだら、相手の大砲より威力が強くて、ボスが生えてた原木まで倒れていっちゃった」
「こ、攻撃力高いッスね!」
「私を怒らせたら種が飛ぶかもね」
ニヤリと笑いつつナナトスを見る。
「……冗談でも怖いッス……」
『今後は怒らせないようにするッス』とは言わないのね。
「さっき遠くで木が倒れていくように見えたのはそれだったんですね」
「大砲……ですか……わたくしもそんな大きい種を飛ばす個体は見たことがないですよ! どんな見た目だったんですか?」
「う~ん……見た目は普通のマシンガンエラテリウムを三倍くらいにした感じで、花柱には複数の穴じゃなくて、巨大な穴が一つだけ開いてました。色が違ってたりとかそういうのはなかったですね。その風貌から自分の中でキャノンエラテリウムって名前を付けました」
紙にキャノンエラテリウムの絵を描いて説明する。
「へぇ~、穴は一個なんですね」
「花柱の穴の数と身体が大きいこと以外、違いは無いといった感じですかね?」
「はい、その巨大な穴からでっかい種を飛ばして来ました。通常のものと比べると威力が段違いに強くて何十メートルか吹き飛ばされたみたいです。最初の一発目は不意打ちで喰らったらしくて、少し気を失っていたようです」
「気を失ったんスか!? アルトラ様が!?」
「痛みが無くても気絶はするみたいだね」
気絶って痛みから逃れるためにするのかと思ってたけど、必ずしもそうってわけじゃないんだな……
「ただ、パワーが強いためなのか他の要因があるのかは分かりませんが、ストックされている種が少なく、三発撃ったら撃ち止めになったみたいで、その後は膨らむだけで種を撃ち出してくることはありませんでした」
「なるほど……大量の種を作るエネルギーを、大きく強い種を作る方に転換するよう突然変異を起こしたということでしょうか」
「見たところ大砲のような風貌なのはソイツ一輪だけのようでしたけど、“遊び心”で種を飛ばしてると言うには度が過ぎていると感じたので、退治しました」
「その巨大なマシンガンエラテリウムを退治してくださったんですか?」
「そうですね。突然変異種っぽかったから、今後発生する可能性は低いと思いますけど、危険度が段違いに高いってことで原木ごと切り倒しちゃいました。問題無いですよね?」
「はい、ありがとうございます。どちらかと言えばマシンガンエラテリウム自体、我々受肉した高位精霊や亜人たちにとっては害になるので倒していただいて良かったです。このまま進んでいたら、わたくしたちもアルトラ様以外は全滅していたかもしれませんね……」
もう一つ、何か言わなきゃいけない大事なことがあったような気がするんだけど……何だっけ……
「あ、そういえば吹き飛ばされたところに沢山ご遺体が転がってました」
「ご遺体!? それも沢山!?」
「はい、もうほとんど骨になってましたが、恐らくキャノンエラテリウムの犠牲者たちでしょう。何体くらいあるとかそういったことは、放置された遺体がバラバラだったので分かりませんが……」
「それは気の毒な方たちですね……新しいご遺体が無いということは、最近のガイドはここを避けて通行してるということでしょうか? すみません、ガイドのブランクが長かったとは言え、皆様の命を危険に晒すようなルートを計画に入れてしまいました……」
「いえ、大丈夫ですよ。幸いにも誰も怪我を負っていませんし、結果的には早く現地に着けますしね。ご遺体の収容はお任せしても良いですか?」
「はい、ユグドフロントに引き取って供養してもらえるよう連絡しておきます」
「じゃあこの話はここでおしまいとしましょう。改めて出発しましょうか」
「あ、ちょっと時間かけて歩いてよろしいでしょうか?」
「構いませんけど……どうしましたか?」
「マシンガンエラテリウムが種を出さない機会などそうそう無いことですので、この場に光を咲かせる花の種を植えながら歩こうと思います。歩きながら投げつけて植えるので少し歩調をゆっくりめにしていただくだけで構いません」
そっか、明るくなればそれだけ被弾する可能性も低くなる。種を放って来ないとなれば花を植える絶好の機会だものね。
「分かりました、ではゆっくり進みましょう」
前回の後書きで書いた通り、FF10とテッポウウリから着想を得ていますが、テッポウウリの種飛ばしってどの程度の威力があるのでしょうね?
人間が喰らったら痛いくらいには強いのでしょうか?
仮に現実世界にキャノンエラテリウムなんてのが存在したら、間違いなく討伐対象でしょうね。繁殖されたら危険過ぎますし。
次回は2月6日の20時から21時頃の投稿を予定しています。
第314話【樹人たちと神樹ユグドラシル】
次回は来週の月曜日投稿予定です。
ふぅ~……どうやら三発で撃ち止めみたいだ。
近寄っても膨らんで強い風を吹き付けられるだけで種が出て来なくなった。
近付いては吹き飛ばされ、近付いては吹き飛ばされして面倒な相手だった。
「でも、三発で撃ち止めって、他と比べると随分少ないのね」
あの巨大な種を作るエネルギーも規格外ってわけか。
よし! じゃあみんなを迎えに行こう。
その前に、
「≪スキルドレイン≫」
久しぶりのスキルドレイン。≪種マシンガン≫の能力を得た。
「予想はしてたけど、人体から種が出るのかしら? 種マシンガン!」
早速使ってみたところ、ダダダダダダッと種が勢いよく射出。
何で私の身体から植物の種が出るのか分からないけど、それはこの能力のがそういう能力だからってことで納得しておこう。多分魔力で生成された疑似種なんだろう。
「あ、込める魔力によって種の大きさを変えられるみたいだ」
そこで試し撃ちがてら、さっき何度も大砲をお見舞いされたキャノンエラテリウムを退治してしまおうとの考えに至った。
現在の川岸は、幸いにもまだ削られた範囲が軽微なため、川の分流が出来たり、氾濫したりの危険性は薄い。
しかし、このキャノンエラテリウムは他のマシンガンエラテリウムと比べたら段違いに危ない。今後コイツを放置していたら、死人が増えるだろうし、川が氾濫する可能性も極めて高い。
幸いにも突然変異したのはアレ一輪だけみたいだから、ここで駆除してしまえばまた突然変異でも起きない限り再び発生する可能性は低い。
キャノンエラテリウムに向かって手をかざし、ロックオン。
魔力を沢山込め――
「種マシンガン! ……えっ!? あ?」
射出の勢いで遥か後ろまで吹き飛ばされてしまった。その威力を全く想定してなかったため、脚に力を込めておらず、踏ん張ることもできなかった。
感覚としては、花だけを滅ぼす魔力を込めたはずだったが……
ドゴゴゴオオォォォォン!!
予想以上に強力な能力だったらしい。込めた魔力が強すぎたのか、目の前のキャノンエラテリウムの原木に直径五メートルはあろうかという大穴が開いた。
「嘘でしょ!? こんなに威力があるなんて……」
魔力を大して込めてない種マシンガンは豆鉄砲のような威力なのに……
直後、キャノンエラテリウムの原木は別の木を巻き込みながら倒れていった。
「あ、ああ……花だけ狙ったつもりが原木まで倒しちゃったけど大丈夫かしら……? こ、この能力は魔力を込めると実質『種大砲』ね……適切な魔力量を練習しておく必要があるかも……あの威力で放ったら死人が出そうだ……まあ、このキャノンエラテリウム、何人も殺してるみたいだし元となる原木ごと退治できて結果オーライ……かな?」
今まで、身体が小さい私としては、特定の攻撃以外ダメージを受けない頑強な身体に対して攻撃面ではとても非力だった。戦う際にはいつも筋力強化の魔法で補強する必要があった。
そこにこの種マシンガンを得たことによって攻撃面でも十分な牽制が出来るようになった。
「でも、魔力の調整をしっかりしないと大惨事になりかねないから練習が必要ね」
さて、みんなを迎えに行こう。
帰路の道中、練習しながら迎えに行くか。
◇
「みんなお待たせ」
「あ、アルトラ様、良かった~~~……無事だったんですね! 帰って来てホント、ホッとしました!」
トリニアさんが本気で心配している。
「遅かったッスね」
「道にある全ての花の種を空にするのが中々時間かかっちゃってね」
「と、途中凄い音が四回ほどしましたが、あれは何ですか?」
ああ、トリニアさんが心配しているのはあの大きい音のことか。確かに普通の亜人なら即死してるし、心配するのも分かる。
「マシンガンエラテリウム街道の最後の方に、ボスみたいなのが居まして、大砲みたいな種で三回吹き飛ばされてしまいました」
「大砲って……アルトラ様、そんなのに撃たれても平気なんですね……」
「……三回……? 音は四回聞こえたはずだけど……四回目の大きい音は何……?」
「ああ、最後のは私がそのボスを倒した音かな。似たような術を叩き込んだら、相手の大砲より威力が強くて、ボスが生えてた原木まで倒れていっちゃった」
「こ、攻撃力高いッスね!」
「私を怒らせたら種が飛ぶかもね」
ニヤリと笑いつつナナトスを見る。
「……冗談でも怖いッス……」
『今後は怒らせないようにするッス』とは言わないのね。
「さっき遠くで木が倒れていくように見えたのはそれだったんですね」
「大砲……ですか……わたくしもそんな大きい種を飛ばす個体は見たことがないですよ! どんな見た目だったんですか?」
「う~ん……見た目は普通のマシンガンエラテリウムを三倍くらいにした感じで、花柱には複数の穴じゃなくて、巨大な穴が一つだけ開いてました。色が違ってたりとかそういうのはなかったですね。その風貌から自分の中でキャノンエラテリウムって名前を付けました」
紙にキャノンエラテリウムの絵を描いて説明する。
「へぇ~、穴は一個なんですね」
「花柱の穴の数と身体が大きいこと以外、違いは無いといった感じですかね?」
「はい、その巨大な穴からでっかい種を飛ばして来ました。通常のものと比べると威力が段違いに強くて何十メートルか吹き飛ばされたみたいです。最初の一発目は不意打ちで喰らったらしくて、少し気を失っていたようです」
「気を失ったんスか!? アルトラ様が!?」
「痛みが無くても気絶はするみたいだね」
気絶って痛みから逃れるためにするのかと思ってたけど、必ずしもそうってわけじゃないんだな……
「ただ、パワーが強いためなのか他の要因があるのかは分かりませんが、ストックされている種が少なく、三発撃ったら撃ち止めになったみたいで、その後は膨らむだけで種を撃ち出してくることはありませんでした」
「なるほど……大量の種を作るエネルギーを、大きく強い種を作る方に転換するよう突然変異を起こしたということでしょうか」
「見たところ大砲のような風貌なのはソイツ一輪だけのようでしたけど、“遊び心”で種を飛ばしてると言うには度が過ぎていると感じたので、退治しました」
「その巨大なマシンガンエラテリウムを退治してくださったんですか?」
「そうですね。突然変異種っぽかったから、今後発生する可能性は低いと思いますけど、危険度が段違いに高いってことで原木ごと切り倒しちゃいました。問題無いですよね?」
「はい、ありがとうございます。どちらかと言えばマシンガンエラテリウム自体、我々受肉した高位精霊や亜人たちにとっては害になるので倒していただいて良かったです。このまま進んでいたら、わたくしたちもアルトラ様以外は全滅していたかもしれませんね……」
もう一つ、何か言わなきゃいけない大事なことがあったような気がするんだけど……何だっけ……
「あ、そういえば吹き飛ばされたところに沢山ご遺体が転がってました」
「ご遺体!? それも沢山!?」
「はい、もうほとんど骨になってましたが、恐らくキャノンエラテリウムの犠牲者たちでしょう。何体くらいあるとかそういったことは、放置された遺体がバラバラだったので分かりませんが……」
「それは気の毒な方たちですね……新しいご遺体が無いということは、最近のガイドはここを避けて通行してるということでしょうか? すみません、ガイドのブランクが長かったとは言え、皆様の命を危険に晒すようなルートを計画に入れてしまいました……」
「いえ、大丈夫ですよ。幸いにも誰も怪我を負っていませんし、結果的には早く現地に着けますしね。ご遺体の収容はお任せしても良いですか?」
「はい、ユグドフロントに引き取って供養してもらえるよう連絡しておきます」
「じゃあこの話はここでおしまいとしましょう。改めて出発しましょうか」
「あ、ちょっと時間かけて歩いてよろしいでしょうか?」
「構いませんけど……どうしましたか?」
「マシンガンエラテリウムが種を出さない機会などそうそう無いことですので、この場に光を咲かせる花の種を植えながら歩こうと思います。歩きながら投げつけて植えるので少し歩調をゆっくりめにしていただくだけで構いません」
そっか、明るくなればそれだけ被弾する可能性も低くなる。種を放って来ないとなれば花を植える絶好の機会だものね。
「分かりました、ではゆっくり進みましょう」
前回の後書きで書いた通り、FF10とテッポウウリから着想を得ていますが、テッポウウリの種飛ばしってどの程度の威力があるのでしょうね?
人間が喰らったら痛いくらいには強いのでしょうか?
仮に現実世界にキャノンエラテリウムなんてのが存在したら、間違いなく討伐対象でしょうね。繁殖されたら危険過ぎますし。
次回は2月6日の20時から21時頃の投稿を予定しています。
第314話【樹人たちと神樹ユグドラシル】
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