魔界の天使アルトラの国造り奮闘譚

ヒロノF

第299話 捕まえた野生生物リザルト

 そして本日の十七時――
 無事、野生生物の捕獲は終了した。

 今回捕獲された野生生物は――

  赤い狼ガルム:百五十六匹
  大豚ピビッグ:四十一匹
  小豚ピスモル:百四十五匹
  六脚馬スレイプル:八頭
  二角兎:三百二十八羽
  白い鹿のようなやつ:一頭
  ライオンのようなやつ:一頭
  バルバル鳴く鳥バルバルイス:三十二羽
  はぐれイクシオン:一頭
  はぐれカトブレパス:一頭
  ルガイアトータス:一頭

 ガルム、ピビッグ、ピスモル、二角兎は五分の二ほどが食用として加工され、残りは第二壁の外へ逃がされた。
 スレイプルは馬車用にアルトレリアで飼うことに。

 バルバルイスと名付けられた鳥は、朝に限って「バルバルバルバル」とバイクのエンジン音のような声で鳴く五月蠅うるさい鳥。最近飛来してくるようになったらしく、町付近でも朝方に鳴いていたりするため、日本で言うところのニワトリのようなポジションになってしまった。
 もっとも……鶏と違うのは、卵はあまり美味しくない。何だか妙な臭みがあって食用に適さない。町のほぼ全員が食べるのを避ける臭い。物好きくらいしか食べない。こいつを食べる時は主に肉目的で狩られる。肉はチキンに似て美味しい。

 やべぇヤツら《イクシオン・カトブレパス》 が一頭ずついたけど、生態調査部が対処してくれたらしい。何人かが石化し、何人かが感電したが、流石生命力の高いトロル族、死者は一人たりとも出なかった。石化した者も後々クリスティン他、光魔法を使えるものが解石していて無事。感電した者に死者が出なかったのは、雷の国に住むものと違って蓄えている電気があまり多くなかったというところが幸いしたみたいだ。
 この二頭については捕獲しておくだけで危ないヤツらだから即殺処分。肉は小分けにされて競売にかけられ、高値を付けた肉屋が買って行った。
   (※やべぇヤツら:見ただけで対象を石に変える一目牛のカトブレパス。たてがみに電気を蓄える馬イクシオン。蓄えられた電気次第では感電死する可能性も。詳しくは第31話から第35話、第119話参照)

 白い鹿のようなやつは見たことない。これもどこかからのはぐれ者かな?
 肉にしようという話が出て競売にかけられたが、カイベルに聞いたところ、ヒーリングディアーという種族らしく、周囲を軽微に癒してくれる能力があるとかで役所の誰かが競り落として連れ帰ったようだ。どうやら樹の国からのはぐれ鹿らしい。
 その後、役所付近で飼われてるのを目にすることになる。

 ライオンのようなやつも見たことがない。
 これもカイベルに聞いてみたところ雷の国からのはぐれ者だそうだ。
 イクシオン同様たてがみで電気を蓄え、口から稲妻を吐くライオンで、種族名はそのまま『ライオン』。特徴を考えると「雷音ライオン」って当て字が似合いそうだ。
 キマイラの構成生物の元の種族らしい。(第270話参照)
 これも生かしておくと危ないため即殺処分。カトブレパスらと同様に肉は小分けされたが、肉食獣であるためか結構臭みが強い。食べる人を選ぶかも。

 アース (ルガイアトータス)は第二壁の外側に住み着くことになった。
 大きさの割にはその場に居ても特に害は無く、寝ている間は微動だにしないため寝相の悪さで周囲に被害をもたらすことも無さそう。その巨体さから話題性もあり、第二壁の門付近に居ると威圧感で内側から逃がした野生生物も中に入って来なくなり、門番にもなりそうということで、みんなからも特に否定的な意見は聞かれなかった。
 ただ、今後他国の者が来訪した時に、恐がって近寄って来ない可能性も考えて、立て札でも立てておいた方が良いかもしれない。『門の前には巨大な亀が寝ていることがありますが、善人には無害です』とか。“善人には”の部分は、効果が如何ほどあるか分からないけど悪い人への牽制のつもり。
 一応、不審な人物がいたら追い払ってくれと言っておいたけど、その優しい性格を考えると“門”を“番”すること以上の働きはあまり期待しない方が良いかもとも思う。

 人型へ変身可能な高位種族の特徴に漏れずかなりの魔力を持ち、土魔法の性能が恐ろしく高い。
 魔力感知能力も高いのだが、そもそも誰がどこに居てもあまり気にしない性格なため、個人識別しようとは思わないらしい。故に私とドワーフの区別すら付けない。下手すると目の前で話してた私のことが男か女かすら区別が付いてないかもしれない。要するに『超々のんびり屋』の性格。頻繁に顔を合わせれば覚えてもらえるかもしれないが……

 突然変異種であるため希少生物らしいのだが、あまりの外殻・外皮の硬さに普通の亜人では密猟も不可能。
 のんびり屋とは言え、さっき私が引き起こした超局地的地震バリアレンジ・アースシェイクの時の慌てぶりを考えると、自身に害が及びそうな時にはきちんと身を守るので、放っておいても殺されて何かの素材にされるなんて事態は多分起こらないと思う。
 食べるものもそこら辺にある草を食べて生活でき、なおかつ物凄く省エネらしく少量で事足りるとか。何であの巨体がそれで維持されてるのか分からないけど……
 起きてる間は第二壁の外側を散歩していたりするので、亜人が近くを通ると危ないかと思いきや、魔力感知能力が高いため、アースの方から気付いて止まってくれる。あと、割と話好きらしく、話しかけると会話に応じてくれる。

 余談だけど、本人 (本亀?)に年齢を聞いたら「分からない」と言われたため、カイベルに聞いたら何と! 二千三百九十歳らしい。ほぼ二十四世紀分生きている……同種の中でもかなり長命に位置する。それで人型になった時の見た目が三十代ほどってことは……この亀はもしかしたらホントに万年生きられるのかもしれない。

 (※以下ルガイアトータスの設定的な話なので読み飛ばし可)
 なお、ルガイアトータスの長命の生存個体数は極端に少ない。
 ルガイアトータスには十歳を超えるまでと八百歳を超える辺りの二回生死の分かれ目があるそうで、生まれたてから十歳までは天敵に捕食される可能性が高い。それ以降でも八百歳に達する前はまだ無敵というほどの硬度は持たないため、襲われて死ぬ可能性はそれなりに高い。
 八百を超えた辺りから体組織に変質が起こり、ルガイアタイトの成分が多くなる。しかしその際一時期身体の硬度が低くなり、この変質期間内に死んでしまう者が多いため、八百辺りを境に個体数が更に激減するそうだ。体組織の変質期間は個人差があり十年で終わる者もいれば百年続く者もいる。
 二十五個ほどの卵を産むらしいが、このうち十歳に到達できるのが二匹ほど、百歳に達する者が五千分の一匹ほど、八百歳に達するのが五千万分の一匹ほど、ここから変質を終えて千歳を超えられる者はざっくり五百億分の一匹ほどの確率。その多くは幼少期に死に、生き残った少数もほぼ全てが八百歳頃に死ぬ。その変質を乗り超えた者が無敵に近い硬度を持ち得る。それらを考えるとアースは奇跡的な生物かもしれない。

 現在千を超えて生きているのは五頭でアースは二番目に長命。一番下は千百二十一歳、一番上は三千二百十歳らしい。ちなみに最も年取ってるルガイアトータスの体重は千七百六十四トンだそうだ。
 ちなみに、今も一年で〇.五センチほど体長が伸びて行ってるため、もし彼が一万歳に達するようなことがあれば、彼の体長はほぼ六十メートルに達し、体重は五千七百トンを超えことになる。



 本エピソードで第12章終了となります。
 次回遂に投稿300回に達しますね! 第13章は初めて樹の国に足を踏み入れますのでお楽しみに(^^)

 ここまで追いかけて読んでくださってる方々、ブクマ、評価、いいね、感想をくれた方々、ありがとうございます(^^)

 次回は12月15日の20時から21時頃の投稿を予定しています。
  第300話【余計な訪問者】
 次話は明後日投稿予定です。

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