魔界の天使アルトラの国造り奮闘譚

ヒロノF

第279話 雷の国の発電技術

 アルトレリアに帰って来た。
 役所に向かうとリーヴァントが迎えてくれた。

「アルトラ様、お帰りなさいませ! その方々が発電所建設を指導してくださる方々ですか?」
「そう、この方が統括責任者のローレンスさん、以下ジョンさん、ハーバートさん、ヘンリーさん」
「「「「よろしくお願いし致します」」」」
「みなさん、こちらが我が町の、え~~と……」

 リーダーって他の町で何に当たるんだ?
 その辺の名称は曖昧なままだったから、よく考えてなかった。
 そろそろ町長とかの肩書を決めた方が良いかも。とりあえず――

「我が町の統括責任者リーヴァントです」
「何卒よろしくお願い致します」

「アルトラアルトラ!」
「なに、リディア?」
「長くなりそうだから先に家に帰ってるナ」
「わかった。カイベル、リディアをお願い」
「はい」

「さて、早速ですがアルトラさん、本題の発電施設の話をしましょう」
この地アルトレリアには雷という強い魔力の源はありませんが、雷発電以外にどんな発電方法があるんですか?」
「一般的には火力発電、風力発電、水力発電というところですね。珍しいところでは地熱発電、氷力発電、光力発電というものもありますが」

 前半に出て来た発電方法は、多分地球と大して変わらないわね。
 それより後半の氷力発電に光力発電?
 氷力? 何それ? 熱が出ない氷で発電が可能なの?
 光力は太陽光発電みたいなものかしら?

「氷力発電って何ですか!?」
氷の国アイスサタニアくらいでしか使ってませんが、氷から発する冷気を魔力に変換して、更にそれを電気に変換する方法です。氷の魔力に満ちている氷の国でしか使えませんね。雪が降り積もるので家に魔力変換装置を取り付けて、そこから電力を得ます」

 へぇ~、便利なシステム。

「光力発電は?」

 この光の無い魔界せかいに光で発電できるような場所があるのかどうか……

「これも限定的な場所でしか使われていません。樹の国ユグドマンモンくらいです」

 樹の国で光? 全く関連性が分からないけどどういうことかしら?

「樹の国には独自進化した、強い光を放つ木があるので、そこから魔力を取り入れて電気に変換します。もっとも……そこまで強い魔力ではないので、作れる電力もそれなりというところですが……」

 この中だと……この街で使えそうなのは水力発電くらいかな?
 少し前なら地熱発電も選択肢に入ったかもしれないけど。

「じゃあ水力発電が良いんじゃないかと」
「お心当たりがあるのですか?」
「はい、この町の西側に結構大きめの川が流れています」

 ただ……最近川沿いは物作りの工場と化してるところもあるけど……
 工業廃水を気にして、川に私が与り知らぬところで分流を作られていたから、町へ来る水が汚染されることはない。清水の国アクアリヴィアのドワーフさんの作ったものだからなのか、極力工業廃水が生まれないようにフィルターのようなものも設置されている。
 ちなみに分流は町の生活に支障が無いところまで来たら合流するように作られていた。

「ではそこへ案内してください」

   ◇

 ゲートで川の上流へと移動。

「これは……随分長い川ですね、先が見えない……ジョン、ヘンリー川がどれくらい長いか見てきてくれ」
「了解、じゃあちょっと空から見てくるよ」

 そう言ってヘルヘヴン族のジョンさん、ガーゴイル族のヘンリーさんが上空へ飛ぶ。
 ひとしきり辺りを見回して、少ししたら戻って来た。

「この近くにある町はアルトレリアだけかな?」
「そうです」
「上空から見てみましたがかなり長い川ですねー」
「町が物凄く小さく見えるよ」

 二人の意見を聞いた後にローレンスさんに質問を受ける。

「町までどれほどの距離があるのですか?」
「ここからだと四十キロくらいです」
「四十!? それだけあれば電気を作るのに申し分ないかと思います」
「じゃあ水力発電で?」
「そうですね、これだけ長い川なら水力発電装置を川に沿って置くだけで、かなりの魔力を作れると思います」
「電線はどうするんですか?」
「電線? 電線を使ってるところはもう世界中探しても少ないのではないかと思います。水力で得た電気を魔力変換してこの地域にばら撒きます。あとは各家庭でそれを電気に変換してくれれば、個人宅で電気が使用可能になります」

 今までのこと聞いてるとな~んか二度手間のような気がするのよねぇ……
 だって、水力で電気を作る⇒魔力変換⇒再び電力に変換だから……
 水力で電気を起こさずに、水⇒直接魔力に変換⇒電気に変換かじゃダメなのかしら?

「その魔力変換装置って、電気だけじゃなくて水も魔力に変換できるんですか?」
「これは電気専用ですね。他のエネルギー体 (※)も出来なくはないですが……電気が最も魔力変換効率が良いようです」
   (エネルギー体:ここでは火、電気、水など形が無いもの)

 ふ~ん、そういうもんなのか。

「何だか発生させた電気を魔力にして再び電気に戻すって二度手間のように感じるんですけど、水から直接魔力に変換できないんですか?」
「水を魔力変換したら、水が無くなってしまうので、水を使うことはありません。なので、水力で作った電気を魔力に変えて、各家庭で再び電気に戻すのです」

 あ、そうか、この町は潤いの木によってほぼ無制限に水が出てるけど、普通はそんなの有り得ないんだ。

「電気を魔力に変換するにはどうやるんですか?」
「エネルギー体を分解できる魔石があります。土の国で多く採れるものですが、これに雷を落としてみましょう……ジョン、雷を落してくれ」
「了解」

 ピシャッ!!

「おぉっ!?」
「このように雷エネルギーが分解して魔力になります。分解直後の魔力はシャボン玉のように虹色の光が薄っすらと見えます。この魔石を装置に組み込んで発電した電気を魔力に変換します」

 あ、ホントだ薄っすらと虹色の層が見えるわ。魔力が濃い状態だとこうなるのか。でもすぐ消えた。

「家庭で使うには、これを別の魔石で吸着します。これが魔力を吸着する石です」

 透明の箱に入った両拳大りょうこぶしだいの石を見せられた。

「この箱は魔力を遮断する箱です。この石はそのまま放置しておくと魔力をどんどん集めて危険なので、絶縁性のある箱に入れて持ち運びます」
「へぇ~、これ箱から出しておくとどうなるんですか?」
「石に魔力が吸着し続けます。吸着にも限界はありますが、この石の大きさだと直径十メートル前後まで膨らむと思います。見た目は虹色のキラキラした魔力の塊になりますが、一般の亜人が間違ってその中に入ってしまうと体調不良を起こすので絶縁しておかないといけないのです。一説によると魔王の魔力許容量は個人差はあるもののこれと同程度だと云われています」

 おお、それは凄いな……

「その魔石って兵器に使ったりとかされないんですか?」
「大昔はあったようです。しかし扱いはかなり危険で戦死者が膨大に出過ぎて、現在では兵器転用は禁止されています。現在でもし兵器として使った場合は各国から袋叩きに遭うので、リスクを考えても使おうとするバカはいませんね」

 なるほど……
 地球で言うところ“核”のようなポジションってわけね。

「話を戻しますが、この石を砕いて粉にしたものをパネルに加工し、それを電力に変換することで家庭で電気として使用します。この石の大きさがあればこの町くらいは賄えると思います。この石も土の国のとある魔力濃度地帯で見つかったものです。今はもう採取方法も確立していますが、発見された当初は採掘が困難だったと歴史書に記されています」

 へぇ~、雷の国の家庭の電気事情ってこういう仕組みだったのか。

「魔力を電力に変換するのは何を用いるんですか?」
「魔力電気変換パネルによって電気に変換します。詳しいことは専門性が高いため、お話しても恐らく分からないと思いますので割愛ということで」
「あ、ああそうですよね。確かに……」

 紙のすかしの仕組みすら、説明聞いてて眠くなってくるのだから、電気関係のこと聞いても多分全くわからん。話が難しくなる前に止めてもらえて良かった。



 アルトレリアにも電気が通りそうな予感。
 ちなみに魔力を電気に変換させる仕組みは、太陽光発電と似たような仕組みです。
 ………………はい、私には太陽光発電の仕組みは分かりません(笑) まあ分からないところは専門家に任せてしまいましょう(笑)

 発電施設について全く詳しくはないため、水力発電について何かおかしい、矛盾してるというところがある場合、指摘していただけると大変ありがたく思いますm(__)m

 少々長くなったので今回も二分割しました。次は明日投稿します。
 少し章終了宣言よりはみ出しましたが今回の章は明日が最後です。

 次回は10月11日の20時から21時頃の投稿を予定しています。
  第280話【リディアの買った食器セット】

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