魔界の天使アルトラの国造り奮闘譚

ヒロノF

第273話 エレアースモ国立博物館探訪 その6(四大精霊王)

 エミリーさんの勧めで精霊展に来た。今回は時間も無いしここを見て終わりかな。

 入り口は、生物展と同じように精霊の成り立ちや解説のようなもの。
 この解説によると――

 この世界には、十二の属性の魔法があるのはご存じだと思う。
 この十二属性にそれぞれ精霊がおり、火なら火に関する炎の精霊とか、火と土が混ざり合ったマグマの精霊とか、水なら水に関する滝の精霊とか泉の精霊とか、土なら石ころの精霊、ダイヤモンドの精霊、風と混ざり合った砂塵の精霊とか、十二の属性を親属性としてそこから分化した細かい精霊が無数に存在しているとか。
 物質属性は特に分化が激しく、鉄の精霊とか、金の精霊とか、ガラスの精霊とか、布の精霊とかがいるらしい。更に言うなら鉄なら砂鉄の精霊とか、サビの精霊とかに分化し、布にだって種類があるから、麻の精霊とか、木綿の精霊とかそんなのまでいるとか。
 要は、日本で言うところの八百万の神々に近い感じかな?

 ここではその基本的な姿を擬人化した絵図があって、炎が人の形をしていたり、水が人の形をしていたりと、精霊を擬人化した姿が綺麗に描画されている。

 また、精霊は総じて魔力が高く、亜人と比べると比較にならない。魔人と比べても精霊の方が魔力は上だという。

 更に精霊には下位精霊、上位精霊、大精霊という分類がある。
 これを説明するにはまず、『受肉』という単語を知る必要がある。この受肉というのは魂もしくは霊体・幽体だけの存在が肉体を得ること。地球でも創作の世界では割と良く出てくる単語。聖書にすら出てくるらしい。
 精霊の場合は、生物の肉体だけに受肉するわけではなく、主に自分の属性に合ったものに受肉する。火なら火に受肉、土なら土や岩石などに受肉して魔界で活動するための身体を得る。

 アクアリヴィアからアルトレリアへ出張してくれてる銀行員・シーラさんは『ルサールカ』という水の精霊なのだが、水に受肉して身体を形成しているらしい。以前『なぜ水の精霊なのに触っても濡れないのか』と訊ねたら、その受肉体の上から魔力の膜のようなもので補強しているらしく、触ったところで濡れるようなことはないという話だった。『銀行員ですので書類や電子機器が濡れたら致命的ですしね』と苦笑いしながら答えてくれた。

 話を戻そう。再度言うが精霊には下位精霊、上位精霊、大精霊という分類がある。
 そのおおよその分類はこうなっているらしい。

  ・下位精霊
   まだあまり自我を持たない小さな魔力しか持たない精霊。
   受肉しても単純な動きしか出来ず、受肉したまま悪い魔力に
   充てられて悪霊化すると、受肉対象 (物体)が朽ちた時自然に還り、
   自然災害の元になる可能性もある。
   自然災害化すると、災害が通り過ぎるのを待つか、魔人や魔王などの
   大きい力で対処するしかない。

  ・上位精霊
   物体に宿って魔界で受肉してコミュニケーションが可能な精霊。
   魔界で私たちが目に出来るのは大抵この階位。
   ただし受肉しているのはほんの一部で、大抵は自然界に魂のような形で
   存在しているらしい。
   自我があるため悪霊化することはほぼ無い。

  ・大精霊
   各十二属性 (※)の頂点の一体 (一柱?)のみしか存在しない精霊。
   火には火の大精霊、水には水の大精霊など各属性ごとに一体 (一柱?)だけが
   存在し、全部で十二体 (十二柱?)の大精霊がいるとのこと。
   そして、その希少さから魔界で受肉してる大精霊はいないのではないかと
   推察されている。
 (※十二属性:火、水、土、風、雷、氷、光、闇、樹、物質、時間、空間の十二要素)

 そして少し例外に当たるのが、樹属性、物質属性、時間属性、空間属性の四つの大精霊。
 この四属性の大精霊は他の八属性より一段階格上とみなされており、『精霊王』とも称されるとか。
 その精霊王の名が――

  ・精霊界への門を司る大樹の精霊『ユグド』
  ・物質全般を司る根源の精霊『オリジン』
  ・時間全般を司る時の精霊『クロノス』
  ・空間全般を司る次元の精霊『ウラノス』

 ――の四人 (四柱?)の大精霊だそうだ。
 ユグドは、精霊界への門を守護する精霊だとか。樹の国にあるユグドラシルという巨大樹が精霊界へ通じているという伝説があり、精霊はその樹にある扉を通じてこの世界へ来るという。もっとも……証明した学者は居らず、上位精霊の伝聞でしかないうえ、精霊しか通ることができないため、魔界に住む者には真偽のほどは現時点でも分かっていない。

 クロノスとウラノスは神にも同じ名前がいるが、同一人物だとか、そうでないとか、どちらの説もあるとか。
 何せ精霊王に会ったことがある者が皆無に等しいので確認のしようがないとのこと。歴史上、受肉した上位精霊ですら精霊王に会ったことのある者は一握りだそうだ。

「へぇ~、四大精霊王……カッコイイ響きだナ……」

 私もそう思う。でも出会える確率なんてきっと皆無に等しいんだろうな。



 八百万の神々ならぬ、八百万の精霊ですね。
 まあ、精霊=神という考え方の地域も存在するので、それほど間違ってない……かも?

 前回体調が悪いと後書きしましたが、以前患っていた持病が再発してしまったようで依然体調は悪いままです。
 今回は推敲が間に合ったものの、今後、もしかしたら予告無くお休みしてしまうかもしれません。何とか早めに治したいところですが、ご了承いただけるとありがたいです。

 次回は9月26日の20時から21時頃の投稿を予定しています。
  第274話【エレアースモ国立博物館探訪 その7】
 次話は来週月曜日の投稿予定ですが、上述のごとく不都合がある場合は来週の木曜日になります。ご了承いただけると幸いです。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品