魔界の天使アルトラの国造り奮闘譚

ヒロノF

第270話 エレアースモ国立博物館探訪 その3(展示物:キマイラ)

 呼ばれて見に行った先は陸生生物の展示フロア。そこでリディアが見ていたのは――

「これって……キマイラ!?」

 凄い! ホントに居るんだこの生物!
 私の中で『見てみたい幻想生物トップ3』に確実に入ってる生物だわ!
 ライオンの身体に竜の頭とヤギの頭を合体させ、尻尾に毒蛇を合体、背中にコウモリの羽を合体させたような生物。

「えーとなになに? 『過去に氷の国と火の国が争った氷炎大戦にて、神話のキマイラを参考にして作られた生物兵器』――」

 オリジナルのキマイラって別にいるのか。神話のものと別物ってことかな?

「――『魔法によりライオン、竜、ヤギ、巨大コウモリ、毒蛇など複数の生物を融合させて造られた魔法生物。それぞれの首が意思を持って動く』――」

 これって、ライオンは右行きたくて、竜は左へ行きたい、ヤギは後ろへ行きたいなんて時はどこへ動くのかしら?
 この剥製の身体は、ベースがライオンっぽいから身体の動きはライオンに主導権があるのかもしれない。

「――『ライオンが稲妻を、竜が炎を、ヤギが吹雪を口から吐き出し、尻尾の毒蛇は酸性の毒液を噴射する。その巨体ながらコウモリの翼で短い距離なら飛行でき、強い風や真空波を放つ能力がある』――」

 凄い! 意味が分からない! 地球でライオンが稲妻吐いて、ヤギが吹雪吐いてるのなんて見たことない!
 この世界のライオンは稲妻吐いて、ヤギは吹雪を吐くのか!

「――『大戦の折、強力な生物兵器であったため多数量産されたがその歪な生態の所為か寿命は半年と持たなかった』――」

 そりゃ、この身体じゃあね……各首へのストレスが半端じゃなさそうだ……

「――『多種多様な亜種が実験的に生み出され、ワシ、タカ、ハヤブサ、コカトリスなど空中に特化した『キマイラ・スカイエア』や、ウミヘビ、海亀、サメ、タコなど海中に特化した『キマイラ・ネイビー』などが試作されたが、相性の悪い者同士を融合させた場合、共食いならぬ“自己食い”が発生するなど、最初に作られたスタンダードタイプ (※)ほどの成果は挙げられず早々に廃棄処分されたとされている』――」
   (※スタンダードタイプ:ライオン、竜、ヤギ、コウモリの翼、毒蛇が融合したよく目にするタイプ)

 わあぁ! 空中特化や海中特化したキマイラなんて見たことないわ! 是非見てみたかった!
 『自己食い』なんて単語を初めて目にするわ……要は自分で自分を食べるわけか……

「『亜種の中で、陸海空全てに対応させるため、スタンダードタイプに海亀を融合させたことがあったが、海中に潜ると海亀以外の首が酸欠により先に死滅、続いてすぐに海亀の部分も死んでしまったため、実用化に至らず』――」

 フフ……そりゃそうだ。ベースが陸上の生物ライオンなんだから。バカなことを考えるもんだ……

 よく見たら、その隣にグリフォン (※)とマンティコア (※)の剥製が置いてある。ここは混合獣のワンコーナーかな?
   (※グリフォン:ワシの頭、上半身、翼とライオンの下半身を持つ幻想生物)
   (※マンティコア:人のような頭とライオンの身体を持つ幻想生物。作品によっては尻尾が毒蛇のこともある)
 ちなみにキマイラ以外は、自然発生した生物で今でも魔界に現存するらしい。

「――『なお、融合魔法の行使者は偶然生まれたとされ、現在のところ使い手は公式には存在しない。剥製についても現存が確認されているのは本館の一体のみとなっている』か」

 なかなか面白い話だったわ。
 キマイラ見ることなんか滅多に無いだろうから剥製もちゃんと見ておこう。
 一番興味のあったのは体毛がどうなっているかということ。毛皮が途切れて繋ぎ合わされてるのか、一体化しているのか気になっていた。この剥製を見る限りには融合して一体化しているみたいだ。特に鱗を持つ竜と毛皮を持つ他の生物との境目が非常に歪。鱗と毛皮が混ざっている。正直言って……見た目がかなり汚い……鱗の間から毛が何本も出ている。まるでヒゲが沢山出たトウモロコシみたいだ。もっと綺麗に造れんかったのかな……?

「アルトラ様って合成獣好きなんですか?」
「いや、特別好きってわけじゃないけど……」

 あ、でも持ってないゲームの悪魔合体表とか、モンスターの配合表とか見るとワクワクしたっけな……私って合成獣好きだったのか?

「こ、こんな複数の生物が合体したようなの見たら誰でも興奮するでしょ?」

 と見回すと、カイベルはいつもの通りスンッとした、表情があるのか無いのかわからないような顔で黙って後ろにたたずんでいる、リディアは自分でキマイラを発見して私を呼び付けたが、もう既に別のものに興味が移っていて近くにいなかった。
 そしてエミリーさんはと言うと――

「いえ、私は特には……もっとカワイイものの方が好きですね。首が三つも四つもある生物にはあまり興味が持てないです……」

 今現在こんなに隅々までキマイラを観察して興奮してるのは私くらいだった。

   ◇

 他にここにあるもので目に留まったものはエンシェントドラゴンという巨大なドラゴン、巨大怪鳥ルフの卵幼体、ペガサス、ユニコーンなど。
 エンシェントドラゴンは、さっき亜人史の中に書いてあった初期に恐竜から進化した古代種。現在は絶滅して剥製もこの一体が確認されるのみ。

 ルフの卵幼体は、卵の中で幼体に成り切れずに死んでしまったものらしい。見た目が結構グロい。確か東南アジアで『ホビロン』とか言うんだっけ? 『花咲くほへと』ってアニメでその存在を初めて知ったけど……あ、ホビロンは卵の状態のことじゃなくて料理の名前だったかな?
 ルフは高位種族だからこれが成長したら人型に変身してコミュニケーション取れることを考えると少しだけ気の毒に感じる。 (本作のルフについては第235話参照)

 ペガサス、ユニコーンもこの冥球では絶滅しているらしい。
 およそ一万年前、七つの大罪堕天に巻き込まれて天球から迷い込んだものがいたような記述があるけど、ごく少量の闇の魔力を含んだ冥球の空気に適応できなかったのではないかと推測がなされている。
 でもユニコーンの代わりに『バイコーン』ってのは現在も存在してるらしい。
 これはユニコーンの亜種で、ユニコーンが一角獣で純潔を司るのに対し、バイコーンは二角獣で不純を司るとか。“不純を司る”って辺りが冥球に適応できた一因かもしれない。

「アルトラアルトラ! ケルベロスいるゾ!」
「ホントだ」

 リディアがケルベロスの剥製を見つけた。コイツって地獄の門以外にもいるのか……と思ったら、紹介文の最初に『作り物』って書いてある。本物の剥製ではないらしい。隣に弟のオルトロス (※)の作り物が飾られている。
   (※オルトロス:ケルベロスの弟分で二つ首を持つ犬。決してタコではない)
 ここって剥製以外も飾られてるのね。

 他にもいろいろ置いてあったが、種類が多いため陸生生物はここで割愛とする。

 幻想生物以外は、地球にもいるようなのが飾ってあった。犬科とか猫科の猛獣、ゾウ、ウマ、キリン、クマ、ヒツジ、サル他などに似たものを確認。地球にいるものと比較すると姿に多少の違いはあるがそれを見たら「あ、あの生物だ!」と言ってしまうくらいには似ている。
 そもそもキマイラに、ライオンとかヤギとか使ってる時点で、地球と似たようなものが存在していることになる。
 ウマやヒツジについては、この街から少し離れたところに帯電してるものがウジャウジャ生息してるしね。

   ◇

 次のフロアは虫フロアだった。
 私としてはあまり興味の持てないフロアだったが……

「でかーー!!」



 今回は興奮したアルトラによるキマイラの説明でした。
 最初にキマイラ考えた人は、これがどの首の思考を元に動くのか考えたことあるんですかね? 実際に現実世界に居たらどう動くのか興味ありますね。

 悪魔合体表については、ゲーム本体は持っていません。子供の頃に持っていないにも関わらず、攻略雑誌の合体表見ながら「ああなったら良いな、こうなったら良いな」と想像して楽しんでいた思い出があります(^_^;)
 機会が無く現在も手に入れられてはいません。
 モンスター配合表のゲームについては持っています。

 パロディしないとか言っておきながら、パロディに走ってしまいましたm(__)m
 まあそのうち修正します。そのうちそのうち……

 次回は9月15日の20時から21時頃の投稿を予定しています。
  第271話【エレアースモ国立博物館探訪 その4】
 次話は木曜日投稿予定です。

「魔界の天使アルトラの国造り奮闘譚」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く