魔界の天使アルトラの国造り奮闘譚
第257話 死神への代価
「アルトラ様!」
「カイベル! やっと来てくれた、わけもわからず死神に襲われてるの! どうしたら良い!? 代価ってなに!?」
「今すぐにお菓子を差し出してください!」
何で今お菓子の話?
「早く!」
わけもわからず、創成魔法で私が生前最も美味しいと思っていた大砂岳《だいさだけ》もどきを作り出す。 
「それを死神に捧げてください」
わけもわからず、作った大砂岳もどきを目の前に差し出す。
今まで問答無用で攻撃してきてた手が止まり、お菓子に手を伸ばすと…………そのまま食べた!
『美味しい! これ美味しいですね!』
何なの……?
『じゃあ、代価はお支払いいただけたので、これで契約成立ですね』
契約?
『じゃあ、私は別の亡者のところへ行くので失礼しますね』
闇の中に消えていった……何だったの?
「ふぅ~~~~……カイベル、アレ何だったの?」
「あれは地獄から逃げた亡者を捕まえる死神です」
「亡者って、ケルベロスから逃げおおせたらそこから先は自由なんじゃないの!?」
「もちろん終わりではありません。地獄側が脱走者を放っておくわけはありませんから」
「攻撃が全く効かなかったんだけど……」
「全く効き目が無いというわけではないですが、下級とは言え相手は神ですからね。格下のアルトラ様の攻撃では通じる一撃は中々出せないのでしょう。あの方々に通じるのはアルトラ様と同じでレベル11の攻撃だけですよ。しかもレベル11でも効果は薄いでしょう」
あ、あんな存在がいるとは……
ってことは、現状の私はレベル11の能力を一つも持っていないから彼女にダメージを与えられる攻撃は繰り出せないってことか……
カイベル来てくれて良かった~~、あのまま戦ってても絶対に勝てなかったってことじゃない!
この身体に転生して無敵かと思ったら、意外と死ぬ目にあったりする……
そして今度は死神か……また不安材料が増えてしまった……
「それでお菓子は何の意味があったの?」
「供物を捧げることで、少しだけ猶予を与えられます」
「猶予? ってことはまた来るってこと?」
「そうですね。なので逃げ出した亡者は、地獄に連れ帰られたくなければ何かしらお菓子を体に忍ばせておかねばなりません。地獄に入ると知らされることなので、亡者の間では当然のごとく知られていることです」
それって脱走も想定しているってことなんじゃ……?
「それって脱走されることを想定してない?」
「そうですね、脱走する者がいる以上、もしものために外での振舞い方も教えておくのでしょう。もっとも……刑期は外にいる限り縮むことはないので、地獄に戻されれば脱走の罪を加算した上で再び刑を執行されますが。要するに地獄の外で善良に暮らして死んだ時に魂の消滅を甘受するか、地獄で地獄の苦痛を受けて刑期を終わらせ人間界に転生するか、どちらにしても易い道ではないということでしょうね。消滅すれば待つのは永遠の痛苦ですから、本来なら脱走は賢い選択とは言えませんね」
地獄に堕とされるくらい悪いことをしたのだから当然の報いってことか。
でも、私には当てはまってないんだけどなぁ……
「ところで何でお菓子なの?」
「お菓子でなくても、食べ物なら何でも良いですよ。供物を捧げるという意味合いがありますが、お金だと彼らは亜人には見ることが出来ないので使えません。必然的に食べ物を供えることになるわけです。ただ、食べ物にしても好みがありますので、それで死神のお口に合わなければ契約不成立となって、再度供物を要求されます。以前あったケースでは香の物 (※)が好きな亡者が、それを供物として捧げたところ死神は好きではなかったために激怒させてしまったという事例があります」
(※香の物:漬物のこと)
ああ……匂いものだしね……人によってはかなり好みが分かれるから、その死神は好みではなかったんだろうなぁ……
「お菓子は好みがそれほど幅広くはないため、基本的にはコストにも優れたお菓子を捧げるのが良いとされているのです」
「死神は何で来たの? ただ食べ物を要求しに来たわけじゃないんでしょ?」
「亡者脱走後の行いの善悪を判断されるようです。供物はそれのおまけの捧げものですね」
「善悪?」
「何と言っても相手は地獄から脱走した亡者ですので、その者が地獄外に出て、魔界にとって有益なことをしているか、有害なことをしているかを判断されます。例え捧げものを差し出したとしても、その者が悪いことをして得た物なら、その時点で切られて地獄へ強制送還されます。お菓子のように安価なものすら差し出せないような金銭状況なら問答無用で地獄行きです。これはそのままにしておいても有害と判断されるためです。ただし現在持っていなくてもすぐさま用意できる金銭的余裕があるのなら、交渉次第では少しの間だけ待ってもらえる可能性もあります」
そ、そんなルールがあったのか……地獄行ったことなかったから知らなかった……死神が来る前に教えてほしかったわ……危うく強制的に地獄に送られるところだった……
「契約ってのは? まさか召喚契約とか?」
ちょっとした期待感!
「いえ、魂狩りの猶予を与える契約ですね。飴玉一個で一週間ほど、先ほどの大砂岳もどきなら三ヶ月というところでしょうか」
ま、そんなもんだよね……
お菓子程度で召喚契約って……イヌサルキジじゃないんだから……
でも飴玉一個で一週間の猶予って、凄くコスパ良いわ。
でも――
「三ヶ月にまた追い回されるのね……」
危うく地獄に強制送還されるところでしたね……
次回は8月12日の20時から21時頃の投稿を予定しています。
第258話【死神に憑かれた……】
次話は明日投稿予定です。
「カイベル! やっと来てくれた、わけもわからず死神に襲われてるの! どうしたら良い!? 代価ってなに!?」
「今すぐにお菓子を差し出してください!」
何で今お菓子の話?
「早く!」
わけもわからず、創成魔法で私が生前最も美味しいと思っていた大砂岳《だいさだけ》もどきを作り出す。 
「それを死神に捧げてください」
わけもわからず、作った大砂岳もどきを目の前に差し出す。
今まで問答無用で攻撃してきてた手が止まり、お菓子に手を伸ばすと…………そのまま食べた!
『美味しい! これ美味しいですね!』
何なの……?
『じゃあ、代価はお支払いいただけたので、これで契約成立ですね』
契約?
『じゃあ、私は別の亡者のところへ行くので失礼しますね』
闇の中に消えていった……何だったの?
「ふぅ~~~~……カイベル、アレ何だったの?」
「あれは地獄から逃げた亡者を捕まえる死神です」
「亡者って、ケルベロスから逃げおおせたらそこから先は自由なんじゃないの!?」
「もちろん終わりではありません。地獄側が脱走者を放っておくわけはありませんから」
「攻撃が全く効かなかったんだけど……」
「全く効き目が無いというわけではないですが、下級とは言え相手は神ですからね。格下のアルトラ様の攻撃では通じる一撃は中々出せないのでしょう。あの方々に通じるのはアルトラ様と同じでレベル11の攻撃だけですよ。しかもレベル11でも効果は薄いでしょう」
あ、あんな存在がいるとは……
ってことは、現状の私はレベル11の能力を一つも持っていないから彼女にダメージを与えられる攻撃は繰り出せないってことか……
カイベル来てくれて良かった~~、あのまま戦ってても絶対に勝てなかったってことじゃない!
この身体に転生して無敵かと思ったら、意外と死ぬ目にあったりする……
そして今度は死神か……また不安材料が増えてしまった……
「それでお菓子は何の意味があったの?」
「供物を捧げることで、少しだけ猶予を与えられます」
「猶予? ってことはまた来るってこと?」
「そうですね。なので逃げ出した亡者は、地獄に連れ帰られたくなければ何かしらお菓子を体に忍ばせておかねばなりません。地獄に入ると知らされることなので、亡者の間では当然のごとく知られていることです」
それって脱走も想定しているってことなんじゃ……?
「それって脱走されることを想定してない?」
「そうですね、脱走する者がいる以上、もしものために外での振舞い方も教えておくのでしょう。もっとも……刑期は外にいる限り縮むことはないので、地獄に戻されれば脱走の罪を加算した上で再び刑を執行されますが。要するに地獄の外で善良に暮らして死んだ時に魂の消滅を甘受するか、地獄で地獄の苦痛を受けて刑期を終わらせ人間界に転生するか、どちらにしても易い道ではないということでしょうね。消滅すれば待つのは永遠の痛苦ですから、本来なら脱走は賢い選択とは言えませんね」
地獄に堕とされるくらい悪いことをしたのだから当然の報いってことか。
でも、私には当てはまってないんだけどなぁ……
「ところで何でお菓子なの?」
「お菓子でなくても、食べ物なら何でも良いですよ。供物を捧げるという意味合いがありますが、お金だと彼らは亜人には見ることが出来ないので使えません。必然的に食べ物を供えることになるわけです。ただ、食べ物にしても好みがありますので、それで死神のお口に合わなければ契約不成立となって、再度供物を要求されます。以前あったケースでは香の物 (※)が好きな亡者が、それを供物として捧げたところ死神は好きではなかったために激怒させてしまったという事例があります」
(※香の物:漬物のこと)
ああ……匂いものだしね……人によってはかなり好みが分かれるから、その死神は好みではなかったんだろうなぁ……
「お菓子は好みがそれほど幅広くはないため、基本的にはコストにも優れたお菓子を捧げるのが良いとされているのです」
「死神は何で来たの? ただ食べ物を要求しに来たわけじゃないんでしょ?」
「亡者脱走後の行いの善悪を判断されるようです。供物はそれのおまけの捧げものですね」
「善悪?」
「何と言っても相手は地獄から脱走した亡者ですので、その者が地獄外に出て、魔界にとって有益なことをしているか、有害なことをしているかを判断されます。例え捧げものを差し出したとしても、その者が悪いことをして得た物なら、その時点で切られて地獄へ強制送還されます。お菓子のように安価なものすら差し出せないような金銭状況なら問答無用で地獄行きです。これはそのままにしておいても有害と判断されるためです。ただし現在持っていなくてもすぐさま用意できる金銭的余裕があるのなら、交渉次第では少しの間だけ待ってもらえる可能性もあります」
そ、そんなルールがあったのか……地獄行ったことなかったから知らなかった……死神が来る前に教えてほしかったわ……危うく強制的に地獄に送られるところだった……
「契約ってのは? まさか召喚契約とか?」
ちょっとした期待感!
「いえ、魂狩りの猶予を与える契約ですね。飴玉一個で一週間ほど、先ほどの大砂岳もどきなら三ヶ月というところでしょうか」
ま、そんなもんだよね……
お菓子程度で召喚契約って……イヌサルキジじゃないんだから……
でも飴玉一個で一週間の猶予って、凄くコスパ良いわ。
でも――
「三ヶ月にまた追い回されるのね……」
危うく地獄に強制送還されるところでしたね……
次回は8月12日の20時から21時頃の投稿を予定しています。
第258話【死神に憑かれた……】
次話は明日投稿予定です。
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