魔界の天使アルトラの国造り奮闘譚
第234話 中立地帯の立ち位置が確定……
「では、話を戻しましょう。それでいつになれば暖かくなるのですか~?」
尋問染みた空気は一度リセットされ、トライアから再び寒暖への疑問を呈される。
「わ、私の土地でも初めてのことなので、“この時期になれば暖かくなる”と確定することはできませんが……恐らく四、五ヶ月先くらいには暖かくなってるかと思います。と、ところで、トライアさん、口調変わりました?」
「はい~、サタナエルさん怖かったので……」
ああ、サタナエルがいなくなったから、気を張る必要が無くなったとかそういうことか。
フッと何気なく隣に視線を送ると、フレアハルトが驚愕の表情で固まっている……思わず二度見してしまった……
『この寒さ、そんなに続くのか……』と言いたげな顔だ。
「半年か……まあそれくらいなら待つと致しましょうか。皆さんいかがでしょう?」
「わたくしはもう既に我が国の民が移住しているのでどちらでも構いません」
「……私はベル……アルトラ殿の意思の通りで良い……」
「我々も特に問題はありません」
「私たちも大丈夫で~す。ただ――」
トライアが言葉を続ける。一体どんな条件が……?
「前乗りは可能ですか~?」
「え? は? 前乗り? ええと……少数であれば……ただ、大使館などはまだ用意がありませんので、普通の住居に住んでもらうことになってしまいますが……」
「寒くなってきたって言いますけど、氷の国ほどの寒さがあるんですか~?」
氷の国がどの程度かわからないけど……流石に“氷”の国って言うくらいだから、そこまでは寒くないだろ。
以前リナさんにファッション雑誌見せてもらった時は、ロシア圏みたいな厚着が氷の国のファッションとして紹介されてたし。寒いとは言え現時点ではせいぜい私の地球での地元の二月程度の寒さだろう。
流石にマイナス何十度なんて気温にはならない。
「そこまで寒くはないと思います」
「でしたら、前乗りするかもしれませんが、その時にはよろしくお願いしますね~」
嬉々として話をするトライア。
よろしくって……まさか魔王代理が直接住むの? そんなわけないよね?
「では、駐在員派遣の時期は六月頃ということでよろしいですか?」
「そのことについてなのですが、大使館建設のためにあと二ヶ月ほどの猶予があった方が良いと考えます。もし今以上に寒くなってしまった場合、作業が滞る可能性がありますので」
「と言うことは、八月頃ということですか? 皆様いかがいたしましょうか?」
司会進行のカイムが各魔王・魔王代理へ答えを促す。
「少し延びるくらいなら問題ありませんな」
「わたくしは問題ありません」
「……問題無い……」
「異論ありません」
「前乗りは可能なんですよね!?」
「は、はい、少数なら……」
な、何にそんなに興味を惹かれたのかしら……?
「では、後日これについての話し合いの場を設けようと思います」
カイムが締めに入ろうとする。
その前に一応聞いておこうかな。
「あの……」
「はい、アルトラ様、どうぞ」
「大使館というものはどこの国が建てるものなのでしょうか?」
「大使派遣国が建設作業員を派遣致します。中立地帯を自由交流にするのは、七大国の多数決により決定事項となりましたので、駐在員派遣につきましても決定事項となります。作業員は次回会談直後に派遣されることになると思います。現地の土地を提供いただくと思いますが、よろしくお願いします」
「わ、わかりました」
駐在員派遣はもう決定事項なのね……
「では皆様、次にヴェルフェゴール様が起床すると予想される五月に再度会談の場を設けるということでよろしいでしょうか?」
「異議あり」
「ヴェルフェゴール様、いかがいたしましたか?」
「次の場はルシファー殿が参加しないようなので、必ずしも私が参加する必要は無いと考えます」
「確かにルシファー様は今回の提議に賛成されなかったので出席されませんが……しかし……よろしいのですか?」
「ええ、賛成された国は比較的温和な国が多い。私が参加せずともトラブルになることはまずありますまい。私のところは代理を立てますので、そこで話し合って決定してください。私はそれに従います」
「わかりました。では今よりおよそ二ヶ月後、三月下旬頃に話し合いの場を設けさせていただきたいと思いますがよろしいですか?」
全員が頷く。
「では細かい決まり事などは、次の話し合いの場で決めることと致します。つきましてはアルトラ様、本七大国会談以降、中立地帯を国として認めますので、新しい国の名前を次回会談までに考えておいてください」
国の名前!? まさかの国に格上げ!?
「では、次回会談を三月下旬頃とし、駐在員派遣を八月初旬頃と予定致します。次回会談を以って、五大国及びその属国、また七大国と関わりの無い独立小国には、中立地帯との自由交流を認めることと致します。またアルトレリアには一部国家に類する権限も認めます。では、取り決めについては、後日と致しましょう。日にちが決まり次第追って使者を差し向けます。これにてアルトラ様の提議、並びに全ての提議を締めくくりたいと思いますが、皆様よろしいですか?」
……
…………
………………
「異論は無いようなので、これにて提議を締めたいと思います。皆様、お疲れ様でした」
何だか大ごとになってしまった! 限定的とは言え、まさか国に格上げされるとは……
私、国家元首? ただの領主から?
思ってたことより、更に思った以上に大ごとになってしまった……まさか自分で国を作ることに加担することになるとは……
何だか先行き不安だ……
今後のことを考えると胃が痛い……実際は痛くないけど痛い……気がする。
再度言いますが……ドウシテコウナッタ……?
何でわざわざ書くのが大変な展開へ進むのアルトラさん!
次回は7月10日の20時から21時頃の投稿を予定しています。
第235話【風の国との奇妙な繋がり】
次話は明日投稿予定です。
尋問染みた空気は一度リセットされ、トライアから再び寒暖への疑問を呈される。
「わ、私の土地でも初めてのことなので、“この時期になれば暖かくなる”と確定することはできませんが……恐らく四、五ヶ月先くらいには暖かくなってるかと思います。と、ところで、トライアさん、口調変わりました?」
「はい~、サタナエルさん怖かったので……」
ああ、サタナエルがいなくなったから、気を張る必要が無くなったとかそういうことか。
フッと何気なく隣に視線を送ると、フレアハルトが驚愕の表情で固まっている……思わず二度見してしまった……
『この寒さ、そんなに続くのか……』と言いたげな顔だ。
「半年か……まあそれくらいなら待つと致しましょうか。皆さんいかがでしょう?」
「わたくしはもう既に我が国の民が移住しているのでどちらでも構いません」
「……私はベル……アルトラ殿の意思の通りで良い……」
「我々も特に問題はありません」
「私たちも大丈夫で~す。ただ――」
トライアが言葉を続ける。一体どんな条件が……?
「前乗りは可能ですか~?」
「え? は? 前乗り? ええと……少数であれば……ただ、大使館などはまだ用意がありませんので、普通の住居に住んでもらうことになってしまいますが……」
「寒くなってきたって言いますけど、氷の国ほどの寒さがあるんですか~?」
氷の国がどの程度かわからないけど……流石に“氷”の国って言うくらいだから、そこまでは寒くないだろ。
以前リナさんにファッション雑誌見せてもらった時は、ロシア圏みたいな厚着が氷の国のファッションとして紹介されてたし。寒いとは言え現時点ではせいぜい私の地球での地元の二月程度の寒さだろう。
流石にマイナス何十度なんて気温にはならない。
「そこまで寒くはないと思います」
「でしたら、前乗りするかもしれませんが、その時にはよろしくお願いしますね~」
嬉々として話をするトライア。
よろしくって……まさか魔王代理が直接住むの? そんなわけないよね?
「では、駐在員派遣の時期は六月頃ということでよろしいですか?」
「そのことについてなのですが、大使館建設のためにあと二ヶ月ほどの猶予があった方が良いと考えます。もし今以上に寒くなってしまった場合、作業が滞る可能性がありますので」
「と言うことは、八月頃ということですか? 皆様いかがいたしましょうか?」
司会進行のカイムが各魔王・魔王代理へ答えを促す。
「少し延びるくらいなら問題ありませんな」
「わたくしは問題ありません」
「……問題無い……」
「異論ありません」
「前乗りは可能なんですよね!?」
「は、はい、少数なら……」
な、何にそんなに興味を惹かれたのかしら……?
「では、後日これについての話し合いの場を設けようと思います」
カイムが締めに入ろうとする。
その前に一応聞いておこうかな。
「あの……」
「はい、アルトラ様、どうぞ」
「大使館というものはどこの国が建てるものなのでしょうか?」
「大使派遣国が建設作業員を派遣致します。中立地帯を自由交流にするのは、七大国の多数決により決定事項となりましたので、駐在員派遣につきましても決定事項となります。作業員は次回会談直後に派遣されることになると思います。現地の土地を提供いただくと思いますが、よろしくお願いします」
「わ、わかりました」
駐在員派遣はもう決定事項なのね……
「では皆様、次にヴェルフェゴール様が起床すると予想される五月に再度会談の場を設けるということでよろしいでしょうか?」
「異議あり」
「ヴェルフェゴール様、いかがいたしましたか?」
「次の場はルシファー殿が参加しないようなので、必ずしも私が参加する必要は無いと考えます」
「確かにルシファー様は今回の提議に賛成されなかったので出席されませんが……しかし……よろしいのですか?」
「ええ、賛成された国は比較的温和な国が多い。私が参加せずともトラブルになることはまずありますまい。私のところは代理を立てますので、そこで話し合って決定してください。私はそれに従います」
「わかりました。では今よりおよそ二ヶ月後、三月下旬頃に話し合いの場を設けさせていただきたいと思いますがよろしいですか?」
全員が頷く。
「では細かい決まり事などは、次の話し合いの場で決めることと致します。つきましてはアルトラ様、本七大国会談以降、中立地帯を国として認めますので、新しい国の名前を次回会談までに考えておいてください」
国の名前!? まさかの国に格上げ!?
「では、次回会談を三月下旬頃とし、駐在員派遣を八月初旬頃と予定致します。次回会談を以って、五大国及びその属国、また七大国と関わりの無い独立小国には、中立地帯との自由交流を認めることと致します。またアルトレリアには一部国家に類する権限も認めます。では、取り決めについては、後日と致しましょう。日にちが決まり次第追って使者を差し向けます。これにてアルトラ様の提議、並びに全ての提議を締めくくりたいと思いますが、皆様よろしいですか?」
……
…………
………………
「異論は無いようなので、これにて提議を締めたいと思います。皆様、お疲れ様でした」
何だか大ごとになってしまった! 限定的とは言え、まさか国に格上げされるとは……
私、国家元首? ただの領主から?
思ってたことより、更に思った以上に大ごとになってしまった……まさか自分で国を作ることに加担することになるとは……
何だか先行き不安だ……
今後のことを考えると胃が痛い……実際は痛くないけど痛い……気がする。
再度言いますが……ドウシテコウナッタ……?
何でわざわざ書くのが大変な展開へ進むのアルトラさん!
次回は7月10日の20時から21時頃の投稿を予定しています。
第235話【風の国との奇妙な繋がり】
次話は明日投稿予定です。
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