魔界の天使アルトラの国造り奮闘譚
第181話 税金制度の構想
通貨制度を始めたい旨をリーヴァントにも話しておく。
「村も町になって、新しい名前も決まったし、これを機に通貨制度を試験的に始めたいと思うんだけど」
「以前からアルトラ様が提案していたものですね。その元となるお金はどう用意するんですか?」
「フィンツさんに製造をお願いしてきたよ」
「用意が良いですね。それでどういう算段で行うのですか?」
「最初はみんなお金持ってないから、まずばら撒いてみようと思う」
地球の歴史で見れば、この紙切れ《おかね》の価値を貴重品 の担保によって保証した『兌換通貨』ってのがあったらしいけど、生憎とこの町には金銀財宝なんて存在せず、現在まで完全な物々交換で成り立っていたから、最初から紙のお金を導入しても全くと言って良いくらい問題無い。
(※兌換:紙幣を金や銀など、価値のある物と引き換えること)
更に言うなら歴史的に見て、この紙のお金の価値もその土地の統治者なり支配者なり国自体なりが保証していたらしい。これについても私が領主で、『この紙切れの価値を保証できる』という立場からこの問題もクリアできている。
歴史的に見ると、紙幣を導入するのに貨幣から徐々に浸透していって何百年もの長い期間を要したらしいけど、そもそもこの町では、お金の代わりになりそうなもので『売買』という行為をしたことがないから、最初から紙の通貨を採り入れるという力業が可能なわけだ。
通貨制度を導入する流れとしてはこうだ。
一.近々物々交換から通貨制度にすると回覧板にて通達を出す
↓
二.お金をばら撒く
最初は一人当たり十万くらいで良いかな? みんなお金を一銭も持って
ないからいわゆる給付金。
配給金と言った方が正しいかもしれない。
経営者には従業員人数に応じて三百万から五百万ほどを配る。
その中から従業員に対して給料を支払ってもらう。
↓
三.通貨制度を始める日を何日か前から通達
通貨が完成するのも三ヶ月先だし、今から通達しておいても良い
かもしれない。
↓
四.通貨制度開始
売買の仕方を水の国旅行組とアクアリヴィアからの移住組に任せて
しばらくの間様子を見る。
お金貰ったからと言って、すぐに沢山使うのはNGってことも伝えて
おかなきゃね。
今後は好意以外では物々交換できなくなるってことも。
村民たちは物々交換の習慣が染みついてるから、お金使って
すっからかんになってしまっても
大丈夫とか思うかもしれないし。
ただ、物々交換で成り立つならそこを制限することはしない。
いきなり完全制限するのは困ると思う。
これ以降に不具合があれば、その都度調整していく。
具体的にはお金の流通量の増減とか。
こんな感じかな?
カイベルに聞いたところによると日本で出回ってるお金が百十兆から百二十兆円の間くらいらしい。人口が一億二千万人だから……一人当たり十万円弱くらい? そんなに少ないの!?
ほとんどが金融機関のデータ上の取引だから、実際に出回ってるお金は少ないってことなのかな?
金融機関とか深く関わったことないからわからないけど、とりあえず始めてみて、不都合な部分は調整していくくらいしかない。私もいつもやってるトライ&エラーだ!
でも……確か私が魔界へ来る直前に、世界中でウィルスが流行って、日本では十万円を全国民にばら撒いた気がするけど……それで何で百兆円しか出回ってないのかしら?
配られたところで、ほとんどが銀行に眠ってるってこと? 金融……よくわからない……
この町でのばら撒きも十万円くらいがちょうど良いってことになるのかな? 十万って少ない気がする……やっぱり二倍の二十万からにしておこう。あと川作りに貢献してくれた人たちには少ないけど追加で十万。
お金が成り立った創成期の、最初のお金って一体どうやって得てたの? 配るくらいしか思い浮かばないんだけど……ここもやっぱりトライ&エラーになるのかな。
あと――
「同時に、税金制度も導入したいと思う」
これも導入しておかないと、役所勤務の人たちが生活できないし、公共事業が出来ない。
「税金? それは初めて出て来た言葉ですね」
「所得税って言う種類なんだけど、これがまた厄介な制度なのよ。通貨制度が出来た後に導入すると絶対に不満が出る。と言うか、最初から導入しても不満が出るかもしれない」
「それはまた、恐ろしげな制度ですが、どういったものなんですか?」
「働いて得た給料の中から少しずつ貰って、私たちが集めて溜めておくって制度なの」
「溜めてどうするのですか?」
「公共施設の整備や福祉のために使う。道を整備したり、町を美化したり、生活に困っている人たちに分けたりって感じに。あと、私たちの給料はその溜めた中から少し貰う」
要するに、私やリーヴァントや役所勤務は公務員ってわけね。
「他人から集めたお金を自分の物にするのですか? 倫理的にどうなんですか?」
「その辺りは多からず少なからず貰って、住民にも納得してもらうしかない」
ここ、魔界なのに妙に倫理観が良いのよね……
もしかして『永久的知性上昇 (大)』って、善人にする副次効果でもあるのかしら?
「じゃあ、売る物が無い私たちは、あくせく働いてどこからお金を得るの? あなたなんて、ついこの間まで神経すり減らして仕事してたのに何も報酬は無かったでしょう?」
「確かにそうなんですが……」
私から見れば、労働対価が物々交換くらいしか無い状況で、よくあれだけ身体を酷使して飛び回ってくれたなと感心している。
「私たちは他人のために働いて、その対価として税金から給料を貰うの。だから税金ドロボウって言われないように、きちんと仕事しなきゃいけない」
現実では固定資産税みたいな、動かないようなものに対する税金もあるけど、これはどうしよう……ただでさえ働いた中から持ってかれるのは不満があるだろうし……
あと、この町で関係ありそうなのは住民税と法人税と消費税か。
住民税って、住んでるだけでお金取るのか……
法人税はきっと今後会社が設立されてくるだろうから、絶対に導入しておく必要がある。
酒税とたばこ税。これらはこの村に無いから必要無いか。
これ、急に全部やったら守銭奴みたいね……とは言え途中からやったらそれはそれで守銭奴に見えるし……
ああ……日本の政治家が消費税上げるのに慎重になるのがわかる気がするわ。
この中ではとりあえず所得税と消費税だけで良いか。後は後々徐々に考えて行けば……
それで年度末には確定申告とか……?
そんなのは大分先の未来の話だとは思うけど……
今から考えても……めんどくせぇ……
…………異世界に転生されて私は一体何を考えているのだろう……?
誰かに丸投げしたいわ……
他人からお金吸い取るって、考えただけでもちょっと罪悪感が……
一からお金の制度作るって、素人の私には難しいことだらけです……
ですので、お金関係に明るい方で、ここまで読んでいただけてる方は「これはどう考えてもおかしい、どう考えても間違ってる」ってところがあった場合は、ご教示いただけると幸いですm(__)m (2回目)
次回は3月25日の20時から21時頃の投稿を予定しています。
第182話【通貨制度って……銀行も必要なんじゃ……?】
「村も町になって、新しい名前も決まったし、これを機に通貨制度を試験的に始めたいと思うんだけど」
「以前からアルトラ様が提案していたものですね。その元となるお金はどう用意するんですか?」
「フィンツさんに製造をお願いしてきたよ」
「用意が良いですね。それでどういう算段で行うのですか?」
「最初はみんなお金持ってないから、まずばら撒いてみようと思う」
地球の歴史で見れば、この紙切れ《おかね》の価値を貴重品 の担保によって保証した『兌換通貨』ってのがあったらしいけど、生憎とこの町には金銀財宝なんて存在せず、現在まで完全な物々交換で成り立っていたから、最初から紙のお金を導入しても全くと言って良いくらい問題無い。
(※兌換:紙幣を金や銀など、価値のある物と引き換えること)
更に言うなら歴史的に見て、この紙のお金の価値もその土地の統治者なり支配者なり国自体なりが保証していたらしい。これについても私が領主で、『この紙切れの価値を保証できる』という立場からこの問題もクリアできている。
歴史的に見ると、紙幣を導入するのに貨幣から徐々に浸透していって何百年もの長い期間を要したらしいけど、そもそもこの町では、お金の代わりになりそうなもので『売買』という行為をしたことがないから、最初から紙の通貨を採り入れるという力業が可能なわけだ。
通貨制度を導入する流れとしてはこうだ。
一.近々物々交換から通貨制度にすると回覧板にて通達を出す
↓
二.お金をばら撒く
最初は一人当たり十万くらいで良いかな? みんなお金を一銭も持って
ないからいわゆる給付金。
配給金と言った方が正しいかもしれない。
経営者には従業員人数に応じて三百万から五百万ほどを配る。
その中から従業員に対して給料を支払ってもらう。
↓
三.通貨制度を始める日を何日か前から通達
通貨が完成するのも三ヶ月先だし、今から通達しておいても良い
かもしれない。
↓
四.通貨制度開始
売買の仕方を水の国旅行組とアクアリヴィアからの移住組に任せて
しばらくの間様子を見る。
お金貰ったからと言って、すぐに沢山使うのはNGってことも伝えて
おかなきゃね。
今後は好意以外では物々交換できなくなるってことも。
村民たちは物々交換の習慣が染みついてるから、お金使って
すっからかんになってしまっても
大丈夫とか思うかもしれないし。
ただ、物々交換で成り立つならそこを制限することはしない。
いきなり完全制限するのは困ると思う。
これ以降に不具合があれば、その都度調整していく。
具体的にはお金の流通量の増減とか。
こんな感じかな?
カイベルに聞いたところによると日本で出回ってるお金が百十兆から百二十兆円の間くらいらしい。人口が一億二千万人だから……一人当たり十万円弱くらい? そんなに少ないの!?
ほとんどが金融機関のデータ上の取引だから、実際に出回ってるお金は少ないってことなのかな?
金融機関とか深く関わったことないからわからないけど、とりあえず始めてみて、不都合な部分は調整していくくらいしかない。私もいつもやってるトライ&エラーだ!
でも……確か私が魔界へ来る直前に、世界中でウィルスが流行って、日本では十万円を全国民にばら撒いた気がするけど……それで何で百兆円しか出回ってないのかしら?
配られたところで、ほとんどが銀行に眠ってるってこと? 金融……よくわからない……
この町でのばら撒きも十万円くらいがちょうど良いってことになるのかな? 十万って少ない気がする……やっぱり二倍の二十万からにしておこう。あと川作りに貢献してくれた人たちには少ないけど追加で十万。
お金が成り立った創成期の、最初のお金って一体どうやって得てたの? 配るくらいしか思い浮かばないんだけど……ここもやっぱりトライ&エラーになるのかな。
あと――
「同時に、税金制度も導入したいと思う」
これも導入しておかないと、役所勤務の人たちが生活できないし、公共事業が出来ない。
「税金? それは初めて出て来た言葉ですね」
「所得税って言う種類なんだけど、これがまた厄介な制度なのよ。通貨制度が出来た後に導入すると絶対に不満が出る。と言うか、最初から導入しても不満が出るかもしれない」
「それはまた、恐ろしげな制度ですが、どういったものなんですか?」
「働いて得た給料の中から少しずつ貰って、私たちが集めて溜めておくって制度なの」
「溜めてどうするのですか?」
「公共施設の整備や福祉のために使う。道を整備したり、町を美化したり、生活に困っている人たちに分けたりって感じに。あと、私たちの給料はその溜めた中から少し貰う」
要するに、私やリーヴァントや役所勤務は公務員ってわけね。
「他人から集めたお金を自分の物にするのですか? 倫理的にどうなんですか?」
「その辺りは多からず少なからず貰って、住民にも納得してもらうしかない」
ここ、魔界なのに妙に倫理観が良いのよね……
もしかして『永久的知性上昇 (大)』って、善人にする副次効果でもあるのかしら?
「じゃあ、売る物が無い私たちは、あくせく働いてどこからお金を得るの? あなたなんて、ついこの間まで神経すり減らして仕事してたのに何も報酬は無かったでしょう?」
「確かにそうなんですが……」
私から見れば、労働対価が物々交換くらいしか無い状況で、よくあれだけ身体を酷使して飛び回ってくれたなと感心している。
「私たちは他人のために働いて、その対価として税金から給料を貰うの。だから税金ドロボウって言われないように、きちんと仕事しなきゃいけない」
現実では固定資産税みたいな、動かないようなものに対する税金もあるけど、これはどうしよう……ただでさえ働いた中から持ってかれるのは不満があるだろうし……
あと、この町で関係ありそうなのは住民税と法人税と消費税か。
住民税って、住んでるだけでお金取るのか……
法人税はきっと今後会社が設立されてくるだろうから、絶対に導入しておく必要がある。
酒税とたばこ税。これらはこの村に無いから必要無いか。
これ、急に全部やったら守銭奴みたいね……とは言え途中からやったらそれはそれで守銭奴に見えるし……
ああ……日本の政治家が消費税上げるのに慎重になるのがわかる気がするわ。
この中ではとりあえず所得税と消費税だけで良いか。後は後々徐々に考えて行けば……
それで年度末には確定申告とか……?
そんなのは大分先の未来の話だとは思うけど……
今から考えても……めんどくせぇ……
…………異世界に転生されて私は一体何を考えているのだろう……?
誰かに丸投げしたいわ……
他人からお金吸い取るって、考えただけでもちょっと罪悪感が……
一からお金の制度作るって、素人の私には難しいことだらけです……
ですので、お金関係に明るい方で、ここまで読んでいただけてる方は「これはどう考えてもおかしい、どう考えても間違ってる」ってところがあった場合は、ご教示いただけると幸いですm(__)m (2回目)
次回は3月25日の20時から21時頃の投稿を予定しています。
第182話【通貨制度って……銀行も必要なんじゃ……?】
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