魔界の天使アルトラの国造り奮闘譚

ヒロノF

第144話 畑の開墾をしたけど……

 ゲートでアクアリヴィアへ。

 とある路地裏の一角に出現。
「どこじゃここは?」
「以前広場に出現したところ、目立ちすぎてスパイ容疑で逮捕されたことがあったので、なるべく目立たない路地裏に来ました」
「「「逮捕!?」」」
「お前さん、何やったんだ……?」
「ただの冤罪ですよ。さあ、酒屋へ行きましょう」

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 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 酒屋へ来た。
 酒は生前からあまり飲まなかったから、何が何かわからん……
 思えばザルだと知ったのは忘年会の飲み会だったっけ。どれだけ飲んでも大して酔わなかった。
 まあ、あまり美味しいとも思えなかったから、飲むのは忘年会や新年会の時くらいしかなかったけど……

「これにするかな」
 買おうとしているのは五千ウォル弱。

「高っ! お酒ってこんなに高いの!?」
 生前、自分では買わなかったから知らなかった。
 まあ、この方々はお金沢山持ってるだろうから自分たちで買うんだろうし、私が口を出すことでもないか。

 三千から五千ウォルの酒を十五本、六万弱。たった十五本でゲーム機本体が買える以上の値段だよ……

「ああ……しまった、サイフを家に忘れて来た。立て替えてもらえるか?」
 えっ!? 私持ってないよ?
 一昨日旅行行った人たちに宿泊費とお小遣いとして渡した時に余った四万ウォル弱くらいしかない。とても六万なんて……

「フロセルさんは?」
 ズボンのポケットを引き出して「持ってないよ」アピール。

「ルドルフさんは?」
「そもそもサイフを持ち歩いたことがない、全部フィンツに任せておるよ、がっはっは」
 それは社会人としてどうなんだ?

「残念ですけど、今四万しか持ってません」
「なんじゃ、シケてるのう……」
 人の金アテにしておいて言うセリフじゃないわね。

「じゃあ、これは全部やめじゃ! 千ウォル弱のにするぞ! それなら四十本買える」
「え? 全部やめなくても良いのでは?」
「質より量じゃ! 高くても沢山飲めねば意味が無いわい、がっはっは」

 う~ん……まあ本人たちが良いなら良いか。
 四万ウォル弱を立て替え、村へ帰った。
 もちろん、四万弱は後で取り立てた。






 お酒を買い出しに行った後、畑へ。

「どうですか、この畑! 随分沢山の作物が収穫できるようになりましたよ!」

 人参、じゃがいも、たまねぎ、カレーに使える野菜は揃っている。
 この村にメインの肉が無いことが悔やまれる……あと致命的なのはスパイスが無い。この村でカレーが食べられるのはまだ先になりそうね……
 他にも、大根、ほうれん草、トウモロコシ、レタス、キャベツ、キュウリ、ナス、トマト、枝豆、イチゴに、以前川の流域で見つけたって言ってた緑色の大きいやつ、あれはどうやらスイカだったらしい。
 以前と比べると、品数がかなり増えた。
 ちゃんとビニールハウスとかも作ってあって温度管理もされている。
 ビニールハウスはアクアリヴィアで買って来たビニールを加工して作ってくれたみたいだ。

「凄い! ここまで沢山出来るようになってるなんて! ありがとうみんな! でも、よくあの硬い土でこれだけの作物が育ったね」
「カイベルさんにアドバイスいただきました。樹皮を粉々の屑にして畑に撒いたり、腐葉土を混ぜると良いと。葉っぱを沢山集めて樹魔法が使える子が腐葉土作成を頑張ってくれました」
「よかったよ、こんな硬い土地では食べ物も満足に出来ないんじゃないかと思ってたから。それで、新たに開墾かいこんしたいってところはどこ?」
「村の外に広げたいと思います。果実が成る木を作りたいですよね」
「あれ? そういえばさっき言ってたブドウは?」
「美味しかったですよ」
「そうじゃなくて、育ててないの?」
「ここにあるものとは実の成り方が違うので、今回の話に至りました」

 なるほど、そこも繋がってるわけね。

「あとこんな実も」
 と言って出してきたのはリンゴとミカンらしき果実。
 これらは日本では気候の関係で育てられないところも多いけど、この辺で見つけたってことは、やっぱりこの辺で育てられるものなのかしら?

 ・・・
 ・・・・・・
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 新たに開墾かいこんするため壁の外へ。

「どの辺りにするの?」
 現状土地の所有権の概念が無いから、どこでも開墾かいこんし放題。
 今現在としては、誰々が土地を持ってるっていう感じじゃなくて、『村の土地』ってイメージで動いてる。
 ただ……後々所有権の問題とか出てくると面倒だな……
 とは言え、今私が「この土地は使っちゃダメ」と言うのも何かおかしい話だし。
 何より、メイフィー以下、畑組はこの村の食事情を豊かにするために懸命に動いてくれてるわけだから無下に扱うことはできない。

「じゃあ、ここを開墾かいこんしましょう!」
「で、私はどうしたら良いの?」
「土魔法でドーンとお願いします!」
「わかったよ」

 範囲は……まあ土地はかなり広いし、広めに掘り起こして大丈夫かな。サッカーコート二面分くらいを目安に、土反射バリアを内側に向けて張る。

「何やってるんですか?」
「土バリア張らないと、ドーンってやった時に土がまき散らされるから、これ使っておかないと、私たち土まみれよ?」
「な、なるほど……」
「じゃあ、ドーンってやるから耳塞いでて、『土壌撹拌ソイル・アジテーション』」

 ゴゴオオオォォォォンンンン!!!!!
     ゴゴオオオォォォォンンン!!!
        ……オオォォォンンン…………
           …………オォォンン…………

 うわっ! やり過ぎたか!?
 土魔法で土壌を撹拌かくはんしようとしたところ、範囲が広過ぎたためか、軽い地震のような感じに……
 少しの間大地が揺れる!

「何だ!? 何だ!?」
「何があった!?」
「揺れてるよ!?」
「地震か!?」
「避難しろ!!」

 多くの村人がゾロゾロと村の門から出てくる。
 土埃が広範囲に舞う。

「アルトラ様! 何かやったんですか!?」
「ゴホッゴホッ! ちょっと畑を拡張しようと思って、掘り起こそうと撹拌を……ごめん……ちょっとやり過ぎちゃった……村への被害は大丈夫?」
「ちょっと揺れた程度です。被害はありません」

 ホッ……良かった……

「とは言え……もうちょっと加減してください!」
「もう! ホントにビックリしましたよ!」
「ご……ごめんなさい……猛省します……」

 少し掘り返すつもりでやってみたら、土まみれどころじゃ済まなかった……サッカーコート二面分の撹拌かくはんはやり過ぎたか……
 土バリアも反射にしたところがマズかった……撹拌かくはんしたものを更に反射したため、威力が倍増してしまったらしい……土無効バリアにしておくべきだった。
 “大地は繋がっている”という当たり前のことが、考えから抜けていた。
 結局のところ全身土まみれ……

「アハハ……また私に開墾かいこん頼む?」
「いえ……もう頼まないことにします…………いや、次は加減してお願いします、何と言っても楽ですので!」
 これでもまたお願いされるんだ……でも後半部分、包み隠さず言うのは好感が持てるわ。

「とは言え、硬い地面ですので、本当に助かりますよ! じゃあ畑に出来るようにみんなで整地しましょう!」
「「「はい!」」」

「これ、開墾かいこんした後思ったんだけど、種植えるところまでは良いとして、水はどうするの? 潤いの木から汲んでえっほえっほ運ぶの?」
「いえ、それも魔法で賄います。水術師も沢山募集に応じてくれたので」
「ああ、そうなのか」

 この世界は魔力さえあれば、足りないところが補えるから便利な世界だ。
 とは言え、川の本流を作った後は、畑へ流れる支流も作らないといけないな。特に米や麦を作ることを考えると、大量の水が必要だし。これは流石に水術師では賄い切れない。

「次は壁内の畑の成長促進魔法をお願いします!」

 もし次頼まれた時は、もうちょっと抑えめでやるか。
 今ので気付いた。私は簡単に村を破壊出来るくらいの能力があるということを。
 今までは漠然と「それなりの魔力を持ってる」程度の認識でいたけど、本気でやったら国すら滅ぶかもしれない。
 特にこの土魔法は結構ヤバイ。大地は繋がっているから少し強めの振動でも結構な広範囲に影響がある。ゲームとかに登場する土魔法は割と地味なのが多かったから気付いてなかった。
 『ワンピィス』の『グラグラする実』が何で最強なのかわかった気がするわ。
 これからはそこら辺も自覚して注意してやらなきゃいけないな。

 その後、元からある畑に、成長促進魔法をかけて、作物の成長を促した。



 ゲームの土魔法って、火魔法とかと比べても地味なので、威力弱く見えますよね。
 見栄えの関係上、地震より火を炸裂させる方が派手なので、地震を起こす魔法は (私は)あまり好んで使いませんし。
 その辺りが、今回のアルトラの思い違いの元ですね。

 次回は12月13日の20時から20時15分頃の投稿を予定しています。
  第145話【変わった訪問者】

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