魔界の天使アルトラの国造り奮闘譚
第132話 回復術師の招集
集められたのは三属性全部使える回復術師が五人、回復と闇が使えるのが八人、回復だけが一人、水と闇が使えるのが九人、回復術師はここにいる者で半数だから全部で三十人弱くらいか。そもそも光魔法を使える人が少ないから回復術師って希少なのかな?
護衛にも白天使の方がいるけど、あの亜人たちは回復魔法が使えないのかな?
そもそも魔界は闇魔法が使える者が多数だから、回復と水が使えれば、三つ使える者も珍しくない。念のため水、闇両方が使える亜人を用意してくれた。
三十人弱となると、負傷者は千八百六人だから、単純計算で一人当たり六十人から七十人を治療しないといけないわけか。大回復なんかやってたらあっと言う間にMPは空っぽね。
そして呼んでもらった負傷者が十四人。
生前はもちろんのこと、漫画やアニメでも四肢のどこかが切断されたばかりの人がこんなに集まっているのは見たことがない。空間魔法災害ってこんなにもヤバイものなのね。
この方々には申し訳ないけど、実習に使わせてもらう。
当然だけど、全員衰弱が激しい……早めに治療実習を始めよう。
「回復術師の半数に集まれって言ってたけど何が行われるの?」
「早く重傷者の治療をしないといけないのに!」
「半数も集まれなんて何考えてるの!?」
「それに……何でこんな場に防衛大臣がいるの?」
治療者も疲れが出て、気が立っている。
集まってくれた人たちのところへ顔を出す。
「みなさん、こんにちは、今回とある目的のために集まってもらいました」
「誰だあの子? 子供?」
「でも、回復術師の格好をしているぞ?」
「コスプレか?」
「ふざけんな! 早く治療しないと危ない者がいるっていうのに! お遊びじゃないんだぞ!!」
「何だその眼帯は! 顔をちゃんと見せろ!」
「ちょ、ちょっと落ち着いてください!」
私がなだめようとするものの、この見た目からか聞く耳を持ってくれない。
「不愉快だ! 俺はすぐに治療へ向かう!」
「私も!」
「私も行く! 全く! 一秒を争う時だって言うのにこんなおままごとに付き合ってられないわ!」
「みんなちょっと静まって!!」
珍しくアスモが大声を張り上げた。
シンと静まり返る現場。
「……このままだと収拾付かないから私から説明する。この人は私が連れて来た回復魔法のエキスパート」
エキスパートになったつもりはないが……
「……この人によると、みんながやってる方法だと消費魔力が大きすぎて非効率らしい……今からエネルギーを節約して使う魔法の使い方を教えてもらう……」
「エ……エキスパート!?」
「あの年で!?」
「でも女王様が言うならホントなのかも……」
アスモもそれほど変わらない見た目だと思うんだけど……何この対応の差。やっぱり胸?
「そうです、エキスパートなのです! ですので私の言うことをちゃんと聞いてください!」
さっきまでの喧騒はどこへやら、水を打ったように静まり返る。
「まず三属性全てが使える亜人とそれ以外の亜人の二組に分かれてください」
事前に聞いていた通り、全て使える者が五人、それ以外が十八人に分かれた。
「それ以外に分けられた亜人は使える属性を考慮の上、光、水、闇の全てが使えるようにペアを作ってください」
九組のペアが出来る。
「今から教える魔法は光と水と闇を組み合わせる『癒しの水球』という魔法なので、その三つの属性が必要になります。この魔法は一人で全部やる必要は無いので、ペアになった方々は二人で連携して術を完成させてください。では手順を実演するので覚えてください。負傷者のあなたこちらへ来てください」
「……はい……」
片腕が無くなった負傷者を一人引き寄せる。
傷口を縛って包帯で応急処置はされているが、まだ血が滲んでいる。痛々しい……だがそれがいい!! その傷がいい!!
傷口が皮膚に覆われてしまっている状態だと回復魔法を使っても腕として再生させることができない。例え腕を失っている状態だったとしても、骨や肉が皮膚で覆われた状態が『完全な状態』であると見なされてしまうためだ。
この状態になってしまっていると腕を腕として再生させるには、再度傷を付けて骨を露出させる必要がある。
だから今はこの血の滲んでいる状態が、非常に良い!
「まず、水球で傷を覆います。その後に自己再生効果のある『自己再生魔法』を水球に付与します。最後に弱めのMPドレインを付与します」
「あっ……痛みが消えました……」
「あとは安静にしていれば半日くらいで再生されると思います」
「半日!? 本当ですか!? あ、ありがとうございます!!」
「以上で実演を終わります。質問のある方はいますか?」
少し現場がザワザワし出す。率先して質問しようかどうか迷ってるみたいだ。
「あんな水の球で本当に回復するのか?」
「まだ全然再生できてないじゃないか」
「腕を再生させるのに半日って、再生するにしても遅すぎない? 『ヒールレスト』なら一瞬なのに」
「あれで本当に腕が生えてくるのか、今すぐ証拠を見せて欲しいところだよな」
『ヒールレスト』ってのは、多分この方々の回復魔法なのかな?
否定的な意見が出てきた。無茶を言う人がいるな……
しかし、これを予想してたからエドワードさんに同行をお願いしたのだ。
「みんな静まってくれ!」
エドワードさんが話し始めた。
「この方の使った『癒しの水球』は本物だ。私もこれのお蔭で痛み無く回復することができた」
「大臣が!?」
「痛み無く? ……ホントに?」
「それって凄いんじゃないの!?」
「昨日の空間魔法災害の折り、私も右腕が持って行かれてしまったが、その時すぐにそばにこの方が居たため、こうして右腕を失うことなく済んだのだ!」
「極大回復魔法でもないのに、右腕が一日で!?」
「それは凄い!!」
この国の亜人、しかも国の重役が言うと、説得力が全く違ってくる。
もうこの魔法に対する疑念も大分無くなってきたみたいだ。
今回、防衛大臣が言った「痛み無く」というのが大事なポイントになります。
次回は12月1日の20時22分頃の投稿を予定しています。
第133話【画期的な回復術の指導】
護衛にも白天使の方がいるけど、あの亜人たちは回復魔法が使えないのかな?
そもそも魔界は闇魔法が使える者が多数だから、回復と水が使えれば、三つ使える者も珍しくない。念のため水、闇両方が使える亜人を用意してくれた。
三十人弱となると、負傷者は千八百六人だから、単純計算で一人当たり六十人から七十人を治療しないといけないわけか。大回復なんかやってたらあっと言う間にMPは空っぽね。
そして呼んでもらった負傷者が十四人。
生前はもちろんのこと、漫画やアニメでも四肢のどこかが切断されたばかりの人がこんなに集まっているのは見たことがない。空間魔法災害ってこんなにもヤバイものなのね。
この方々には申し訳ないけど、実習に使わせてもらう。
当然だけど、全員衰弱が激しい……早めに治療実習を始めよう。
「回復術師の半数に集まれって言ってたけど何が行われるの?」
「早く重傷者の治療をしないといけないのに!」
「半数も集まれなんて何考えてるの!?」
「それに……何でこんな場に防衛大臣がいるの?」
治療者も疲れが出て、気が立っている。
集まってくれた人たちのところへ顔を出す。
「みなさん、こんにちは、今回とある目的のために集まってもらいました」
「誰だあの子? 子供?」
「でも、回復術師の格好をしているぞ?」
「コスプレか?」
「ふざけんな! 早く治療しないと危ない者がいるっていうのに! お遊びじゃないんだぞ!!」
「何だその眼帯は! 顔をちゃんと見せろ!」
「ちょ、ちょっと落ち着いてください!」
私がなだめようとするものの、この見た目からか聞く耳を持ってくれない。
「不愉快だ! 俺はすぐに治療へ向かう!」
「私も!」
「私も行く! 全く! 一秒を争う時だって言うのにこんなおままごとに付き合ってられないわ!」
「みんなちょっと静まって!!」
珍しくアスモが大声を張り上げた。
シンと静まり返る現場。
「……このままだと収拾付かないから私から説明する。この人は私が連れて来た回復魔法のエキスパート」
エキスパートになったつもりはないが……
「……この人によると、みんながやってる方法だと消費魔力が大きすぎて非効率らしい……今からエネルギーを節約して使う魔法の使い方を教えてもらう……」
「エ……エキスパート!?」
「あの年で!?」
「でも女王様が言うならホントなのかも……」
アスモもそれほど変わらない見た目だと思うんだけど……何この対応の差。やっぱり胸?
「そうです、エキスパートなのです! ですので私の言うことをちゃんと聞いてください!」
さっきまでの喧騒はどこへやら、水を打ったように静まり返る。
「まず三属性全てが使える亜人とそれ以外の亜人の二組に分かれてください」
事前に聞いていた通り、全て使える者が五人、それ以外が十八人に分かれた。
「それ以外に分けられた亜人は使える属性を考慮の上、光、水、闇の全てが使えるようにペアを作ってください」
九組のペアが出来る。
「今から教える魔法は光と水と闇を組み合わせる『癒しの水球』という魔法なので、その三つの属性が必要になります。この魔法は一人で全部やる必要は無いので、ペアになった方々は二人で連携して術を完成させてください。では手順を実演するので覚えてください。負傷者のあなたこちらへ来てください」
「……はい……」
片腕が無くなった負傷者を一人引き寄せる。
傷口を縛って包帯で応急処置はされているが、まだ血が滲んでいる。痛々しい……だがそれがいい!! その傷がいい!!
傷口が皮膚に覆われてしまっている状態だと回復魔法を使っても腕として再生させることができない。例え腕を失っている状態だったとしても、骨や肉が皮膚で覆われた状態が『完全な状態』であると見なされてしまうためだ。
この状態になってしまっていると腕を腕として再生させるには、再度傷を付けて骨を露出させる必要がある。
だから今はこの血の滲んでいる状態が、非常に良い!
「まず、水球で傷を覆います。その後に自己再生効果のある『自己再生魔法』を水球に付与します。最後に弱めのMPドレインを付与します」
「あっ……痛みが消えました……」
「あとは安静にしていれば半日くらいで再生されると思います」
「半日!? 本当ですか!? あ、ありがとうございます!!」
「以上で実演を終わります。質問のある方はいますか?」
少し現場がザワザワし出す。率先して質問しようかどうか迷ってるみたいだ。
「あんな水の球で本当に回復するのか?」
「まだ全然再生できてないじゃないか」
「腕を再生させるのに半日って、再生するにしても遅すぎない? 『ヒールレスト』なら一瞬なのに」
「あれで本当に腕が生えてくるのか、今すぐ証拠を見せて欲しいところだよな」
『ヒールレスト』ってのは、多分この方々の回復魔法なのかな?
否定的な意見が出てきた。無茶を言う人がいるな……
しかし、これを予想してたからエドワードさんに同行をお願いしたのだ。
「みんな静まってくれ!」
エドワードさんが話し始めた。
「この方の使った『癒しの水球』は本物だ。私もこれのお蔭で痛み無く回復することができた」
「大臣が!?」
「痛み無く? ……ホントに?」
「それって凄いんじゃないの!?」
「昨日の空間魔法災害の折り、私も右腕が持って行かれてしまったが、その時すぐにそばにこの方が居たため、こうして右腕を失うことなく済んだのだ!」
「極大回復魔法でもないのに、右腕が一日で!?」
「それは凄い!!」
この国の亜人、しかも国の重役が言うと、説得力が全く違ってくる。
もうこの魔法に対する疑念も大分無くなってきたみたいだ。
今回、防衛大臣が言った「痛み無く」というのが大事なポイントになります。
次回は12月1日の20時22分頃の投稿を予定しています。
第133話【画期的な回復術の指導】
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