魔界の天使アルトラの国造り奮闘譚

ヒロノF

第128話 街中が大惨事!?

 調査部隊二十人はすぐに病院へと運ばれた。
 早い段階で回復魔法が使われたため全員命に別状は無いらしいが、しばらくは絶対安静だとのこと。
 現在、会議室にて会議が行われている。

「雷雲に入ったのは調査部隊として選んだとは言え、全員精鋭だぞ!?」
「ラッセル殿が意識を無くす前に発した言葉によれば、聞き込みで聞いていた巨大サンダラバードがいたらしいな」
「中に入るのは危険だということはわかった」
「10mのサンダラバードなど、どれほど雷を貯め込んでるかわからんぞ?」
「それでどうする? 第二弾は調査部隊ではなく、撃滅部隊を送り込むか?」
「今まで、サンダラバードの産卵は風物詩程度で済んだが、巨大サンダラバードを放置すれば、この街も破壊されかねないかもしれないぞ」
「外側から強力な魔法で焼き払うか?」
「それでは他のサンダラバードまで焼き払ってしまう」
「サンダラバードは国鳥だぞ? 無闇に殺すべきではない。」
「ではどうするのだ!」

 対策を議論している最中に騎士の一人が外から走り込んで来た。
「報告します! 街中に空間の裂け目が複数発見されたとのこと! 中には腕や指を切断された者もいるようです!」

 えっ!? 私が以前実験したアレと同じ状況!?
      (第25話参照)

 何これ? 新たな問題が発生したの!?
 空間魔法系の問題ってことで、もしかしたら繋がりがある?

「あ! そこに空間の裂け目が!」
「「「なに!?」」」
 全員がそちらを振り向く。

「ぐぁああぁあ!!!」
 空間の裂け目が閉じられる前に引き抜けず、重役の一人の腕が切断されてしまった!

 そちらに注目していると、今度は私の腕が空間の裂け目に!
 ヤバイ! 閉じる!
 と思ったのも束の間、閉じたところで何の外傷も無かった。
 あれ? どういうこと? 助かった?
 これについては、この時には気付いてなかったが、腕を持って行かれなかった理由は後々知る。

「これかなりヤバイ状況なんじゃない? 街中こんな感じじゃ、いつ死者が出てもおかしくないよ!」
 すぐに腕を切断された重役に駆け寄り、回復魔法を施す。
 赤龍峰の一件で使った、『癒しの水球リジェネレート・スフィア』。時間はかかるが、徐々に再生させて元通りにしてくれる魔法。
 私の炭化した指を再生させた魔法だ。覚えてないけど多分。
      (第103話参照)

「痛みが……無くなった……!?」
「しばらくすれば完全に再生するので、安静にしててください」
「す、すまぬ、アルトラ殿、助かった……」

 『回復魔法 極大《ハイスト・ヒール》』で回復しても良いのだが、魔力消費量がかなり多いから『癒しの水球リジェネレート・スフィア』で代用する。時間がかかるが負傷者自身の魔力を使うため、使用者の魔力消費量が少ない。
 負傷者自身の魔力を消費するとは言え、その消費魔力も微々たるものなので睡眠を摂って魔力の補充をし続ければ完全回復するまでその場に留まり続ける。腕一本なら半日もあれば再生するだろう。
 この今の状況から考えると、この先どれくらい魔力使うか想像付かないし……節約しておくに越したことはない。

「もしかして、巨大サンダラバードに手を出したから怒ったんじゃない?」
「……でもサンダラバードが空間魔法を使えるなんて聞いたことない……」
「突然変異種なんじゃない?」
「……身体の大きさ考えると……可能性が無いとは言えないけど……」

 空間の揺らぎを感じた!

 急いでアスモの腕を引き、私の方へ身体を引き寄せる!
 アスモの居た場所に空間の裂け目が!

「ふぅ……危なかった……」
「……あ……ありがと……」
 空間魔法で無差別に攻撃を仕掛けられてる?
 これがもし街全体に及んでいたとこたら、恐ろしいことになってるんじゃ……?

 最悪な想像をしていると、再び騎士が走り込んで来た。
「報告します! 現在街中に空間の裂け目が多数発生! 街の建物や道路などがどんどん削り取られています! 死者まで出てしまった模様です!」
 最悪な想像が現実のものとなってしまった……

 と、突然停電!?

「なに!? どうしたの!?」
「……電気系統が削られたのかも……でも、各家に自家発電装置が備え付けてあるから問題無い……」
 そう言う通り、すぐに電気は戻った。
 思った通り、この国にはもうすでに自家発電装置があるのね。

「これ、もう議論してる余裕無いんじゃない?」
 サンダラバードは無闇に殺しちゃいけないっていうなら、これはもう私が行くしかない!
 今回もこの身体が無効化してくれるだろう………………何て高をくくって赤龍峰では大分痛い目見たけど……
 あ、私もしかして今失敗フラグ打ち立てちゃったかしら?

「……こうなったら最終手段……私が行く……」
「女王様が!? 危険でございます!!」
「……雷の魔王である私はみんなより雷耐性が高いから、私が行くより他は無い……それに時間が経てば経つほど怪我人が増える……今すぐに出る……!」
「しかし……」
「……それに私が行けば、ターゲットに接触した時点で勝利が確定する……」

 勝利が確定する? そんな凄いチート能力があるの?
 ここは私も同行するか……私もレベル11でなければ雷を無効化できるし、耐性はかなり高いはずだ。魔法で雷バリアかけておけば、レベル11にもある程度耐えることができる。弾避けくらいにはなるだろう。

「じゃあ、私も同行します」
「アルトラ殿が!?」
「先程の回復魔法は素晴らしかった。しかし……失礼ですが、それほど強そうには見えませんが……あなたは……どう見ても少女……」
 それはアスモにも言えることだと思うけど……
 ハッ! まさか……胸か! 胸の戦闘力が足りないのか!?

「だ……大丈夫です、レッドドラゴンの炎にも耐えられる頑丈な身体ですので」
「ドラゴンの炎に!?」
「……それに彼女、元・風の魔王だから……」
「「「魔王!?」」」
 あれ? そこは伝わってなかったのか。知ってたのは……もしかしてレヴィから聞いてたアスモだけ?

「それでしたら、アスモデウス様のことをよろしくお願い致します」

 最終的な結論として、二人で出撃することになった。
 それにしてもターゲットに接触さえできれば、勝利って言ってたけど、どういうこと?
 ということは、私の今回の目的はアスモをターゲットに接触させる手伝いをするってことなのかな?






「……フンッ……フンッ……!」
 アスモは騎士たちと同じように、樹脂で固めた兜と鎧、小手、具足を着こんでいる。
 吸雷のアンエレアス鉱石製のマントも着用。
 もっとも……大罪の影響で完全に着込むと暴れまわるらしいから、相変わらずお腹から下はかなり防御力が低いけど……
 果たしてあれで絶縁してるって言えるのかしらね……?
 でも、凄い気合が入ってるのはわかる。

 私も同じように鎧と兜、小手、具足を着せられ、マントを被せられた。
 未だかつてない超フル装備だ!
 今まで自身の防御力で何とかしてきたから、これは……重い……重いし苦しい……動きにくいな……
 それに、一応女性用とは言え、かなりブカブカだ。

「と、とにかく早めに決着を付けよう! 街が空間の裂け目でどんどんボロボロになってきてる」
「……じゃあ、行ってくる……」
「お気を付けて!!」

 正門から飛び立つ。
 雷雲は首都の四分の一ほどの大きさに拡大している。大きさにして直径50kmほど。
 普通、これだけ広大だとどこにターゲットがいるかわからないが、そもそもの内蔵魔力量が巨大サンダラバードと通常のものとで天地ほどの差があるから、私程度の魔力感知能力でも、どの辺りにいるかすぐにわかる。
 こういうボスのセオリー通り、首都中心部の上空辺りからでっかい魔力を感じる。
 ましてや、私の先を飛んでるのは雷の魔王だ。一直線にターゲットがいる雷雲の下へ向かって行く。



 果たしてアスモのチート能力とは!?

 次回は11月27日の20時20時15分頃の投稿を予定しています。
  第129話【vs巨大サンダラバード】

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