魔界の天使アルトラの国造り奮闘譚
第113話 月の定例集会で避難訓練を実施した!(地震、落石対処偏)
今まで触れてこなかったが、一ヶ月に一回ほど催される定例の集会がある。
村人の多くを集めて集会を開いている。参加は自由参加。
普段は特別何かがあるわけではないため集合して、私の挨拶後解散。暇がある人はおしゃべりを交わして時間を潰す。情報共有などもここで行われる。
紙が入手出来てからは回覧板で、回覧板が無い時分はリーヴァント以下、元・避難所員 (現・役所員)に次の日に集会を開く旨を触れ回ってもらっていた。
カレンダーが出来る前は、私が数えておよそ三十日ほど経った辺りに開催していた。
今回はちょっと特別。
今日は九月九日。『救急の日』ということで、今回の集会では避難訓練について取り上げてみようと思う。
今後有事の際に役に立つし。
その前に――
「今回新たに村人に加わった者を紹介します! まずはみなさんはもう知っている方が多いと思います、フレハルさん、アリサさん、レイアさんの三人。火山麓に住む亜人の方々です」
「フレハルさん、よろしくな!」
「アリサさんとレイアさんもよろしく!」
赤龍峰での一件の後処理後、赤龍峰を出て、トロル村に移り住んで来た。
真の正体は未だ明かせないが、正式に村人になった。
今までも、こっちに住みたいような気配を醸し出してはいたが、王位継承権を持ってる手前、「町を出たい」とは言い出せなかったのだろう。そこに赤龍峰での一件があり、族長から「好きにしていい」という言葉を引き出せたため、晴れてここへ移り住んで来たといったところ。
王位継承の件は、弟に一任したらしい。それに伴って、弟が『フレアハルト九世』を襲名することになったとのこと。
もっとも……二人を区別するために現地では弟の呼び名は『フレイムハルト』のままだそうだが……
後々、四人制での『聖炎耐火の儀』も行うらしい。危険な儀なので弟くんには頑張ってほしい。
「次に我が家に招いたクラーケンの娘・リディア。この子ももう大勢の人が知ってると思います」
「みんなよろしくナ!」
「リディアちゃん、改めてよろしくな!」
最初からクラーケンだと紹介しているため、特に風当たりは強くない。
たまに力仕事を頼まれることがあるらしく、クラーケンの姿でも村に貢献している。
子供達とも仲良くやっているようだ。
もう十分に村に馴染んでいる。先日私が落ち込んだ時には、彼女のお蔭で元気になったと言っても過言ではない。
「次にアクアリヴィアで、こちらのことを手伝ってくれることになった人魚の青年・トーマスさん」
「トーマスさん、よろしくな!」
「トーマスさん、カッコイイ!」
もちろん、村人たちにはここに来た本当の理由は明かしていない。
一緒に連れて来たリッチはいなくなってしまったが、トーマスはこの村に残って村のために尽力してくれている。
美形の多い人魚族ということで、既にファンクラブが出来ているとの噂……
現在のところは、村の門衛をやってもらっており、その付近に仮住まいしてもらっている。後々川が通ったら水の管理をお願いする予定。
「次に、正式な村人ではないものの、村の発展のキーマンとも呼べる方々、ドワーフのヘパイトスさん、娘のヤポーニャさん、その弟子のフィンツさん、フロセルさん、ルドルフさんです」
「ドワーフさん、よろしくお願いします!」
川が出来たらアクアリヴィアに帰る契約だが、顔を知っているのと知っていないのでは、親近感がまるで違ってくるので、最初の一回だけでもと、村人の一員として無理を言って参加してもらった。
工事現場付近に、私が即席で立てた家を更に改造して住んでいる。
「最後に、私がアクアリヴィアでスカウトしてきた私の専属メイドのカイベルさん」
「みなさま、よろしくお願い致します」
「カイベルさん、よろしくなー!」
もちろん正体は明かせないから、あくまで『私がアクアリヴィアで見つけた異世界転移してきた日本人』という設定。
今後もカイベルに村と関わってもらう以上、顔見せは必要だ。
何か……こうやって書き出してみると私が秘密にしてること多いな……まあ、それも無用なトラブルを避けるためだ、仕方ない!
「これにて、新顔さんの紹介は終わりとします」
そして、今回のメイン。
「突然ですが今日の集会は、避難訓練を行います!!」
みんなザワザワしだす。
「はいはい!!」
「はい、ナナトスくん!」
「避難訓練って何スか?」
「有事があった際に慌てることがないように、有事を想定して訓練をしておくことです。この村の生活環境も大分安定してきたので、次は文化的な生活を目指してみようと思います。私の故郷では九月に入った辺りに避難訓練をしていたので、ここにも取り入れてみようと思います」
「毎回集会の度に思うんスけど、何でそんな畏まった話し方なんスか?」
「主催する立場だから、口調を崩すべきところと、崩すべきじゃないところは切り替えないといけないかなと思って」
「はい!」
「はい、ミリアンさん!」
「具体的にどんなことをやるんですか?」
避難訓練って言ったら、学校なら机の下に隠れたり、防災頭巾を被ったり、校庭へ避難したり、折り畳まれた滑り台みたいなやつで三階から滑ったり、消火器で火を消したり、煙の中を進んだりとかやった。
そうだなぁ……この村で具体的に出来ることって言えば……
「例えば地震が起こった場合、はい、あなたはどうする」
一人のトロルを指さす。
「ええっと……何もできません、いつもは地震が来ても立ち尽くしています」
「はい、それだと建物付近に居た時に潰されてしまうかもしれません。建物が倒れても大丈夫なところへすぐに避難してください。周りに何も無いところなら立ち尽くすのも良いかもしれませんが、その場合も地割れなどが起こる場合があるので気を付けましょう。近くに何か建物がある場合、石片とか岩片とか、建物の破片なんかも落下してくることがあるかもしれません。では今からそれらから身を守ることを実践してみましょうか。何人かに実際に体験してもらいます」
二人ピックアップして並ばせる。
「今から役員の人が軽石を投げます。当たっても大した痛みはありませんが、本物の石や岩だと思って対応してください。実際にお手本を見せます」
合図すると軽石が飛んでくる。
「炎の壁」
飛んできた軽石を炎の壁を出して防いだ。
「「「おおぉぉーー!!」」」
地球では、石なんかが飛んできたら避けるか、腕で頭をガードするか、近くに落ちてるもので対処するしかないが、この世界では魔法が使えるので対処方法が大分異なってくる。
魔法を使いこなすことができれば、地球に比べたら遥かに簡単だと言えるだろう。
「しかし、我々は炎を使える者ばかりではないですが?」
「炎でなくても良いんです。流石に巨岩とかが襲ってきたら対処は難しいかもしれませんが、石つぶて程度なら水や風でも魔法壁を作るだけでかなりの衝撃を和らげることができます。この村のみんな何らかの属性魔力を持っているので、各々得意な方法を見出してください。では代表者にやってもらいましょう」
「準備は良いですか?」
「「はい」」
役員が軽石を飛ばす。
「ストーンウォール!」
「アイスウォール!」
と、叫んだものの――
「痛て!」
「痛た!」
石壁と氷壁の構築速度が遅く、頭の高さに達する前に軽石が当たってしまった。
「土や氷は下から作るとなると少し時間がかかるので、咄嗟の時には自身の全面にだけ作れるように訓練しておいてください。例えばこんな感じなら今の速度なら防げたと思います」
石の壁
前面にだけ石壁を一瞬で作る。
「「「おおぉぉーー!!」」」
「この構築速度も訓練次第で一瞬の間に完成させることが出来るようになるので、訓練しておくと良いと思います。いざ有事の際には役に立ってくれるでしょう。もちろん、避けられそうなら避けてしまうのも手段の一つです。とにかく自分の出来る最善の方法で身を守ってください」
次は火消し訓練。
油を溜めた入れ物を置き、そこへ火を着ける。
魔法がある世界の避難訓練を実施してみましたが、いかがだったでしょうか?
私の考えとしては、魔法があると色々な対処に幅が出来て良いなと思いますね。落石なども咄嗟の判断で炎で消してしまえば無傷で済みそうですし。
で、いつになったら人間は魔法を使えるようになるんでしょうね。
次回は11月12日の20時から20時15分頃の投稿を予定しています。
第114話【月の定例集会で避難訓練を実施した!(消火訓練、煙発生避難偏)】
村人の多くを集めて集会を開いている。参加は自由参加。
普段は特別何かがあるわけではないため集合して、私の挨拶後解散。暇がある人はおしゃべりを交わして時間を潰す。情報共有などもここで行われる。
紙が入手出来てからは回覧板で、回覧板が無い時分はリーヴァント以下、元・避難所員 (現・役所員)に次の日に集会を開く旨を触れ回ってもらっていた。
カレンダーが出来る前は、私が数えておよそ三十日ほど経った辺りに開催していた。
今回はちょっと特別。
今日は九月九日。『救急の日』ということで、今回の集会では避難訓練について取り上げてみようと思う。
今後有事の際に役に立つし。
その前に――
「今回新たに村人に加わった者を紹介します! まずはみなさんはもう知っている方が多いと思います、フレハルさん、アリサさん、レイアさんの三人。火山麓に住む亜人の方々です」
「フレハルさん、よろしくな!」
「アリサさんとレイアさんもよろしく!」
赤龍峰での一件の後処理後、赤龍峰を出て、トロル村に移り住んで来た。
真の正体は未だ明かせないが、正式に村人になった。
今までも、こっちに住みたいような気配を醸し出してはいたが、王位継承権を持ってる手前、「町を出たい」とは言い出せなかったのだろう。そこに赤龍峰での一件があり、族長から「好きにしていい」という言葉を引き出せたため、晴れてここへ移り住んで来たといったところ。
王位継承の件は、弟に一任したらしい。それに伴って、弟が『フレアハルト九世』を襲名することになったとのこと。
もっとも……二人を区別するために現地では弟の呼び名は『フレイムハルト』のままだそうだが……
後々、四人制での『聖炎耐火の儀』も行うらしい。危険な儀なので弟くんには頑張ってほしい。
「次に我が家に招いたクラーケンの娘・リディア。この子ももう大勢の人が知ってると思います」
「みんなよろしくナ!」
「リディアちゃん、改めてよろしくな!」
最初からクラーケンだと紹介しているため、特に風当たりは強くない。
たまに力仕事を頼まれることがあるらしく、クラーケンの姿でも村に貢献している。
子供達とも仲良くやっているようだ。
もう十分に村に馴染んでいる。先日私が落ち込んだ時には、彼女のお蔭で元気になったと言っても過言ではない。
「次にアクアリヴィアで、こちらのことを手伝ってくれることになった人魚の青年・トーマスさん」
「トーマスさん、よろしくな!」
「トーマスさん、カッコイイ!」
もちろん、村人たちにはここに来た本当の理由は明かしていない。
一緒に連れて来たリッチはいなくなってしまったが、トーマスはこの村に残って村のために尽力してくれている。
美形の多い人魚族ということで、既にファンクラブが出来ているとの噂……
現在のところは、村の門衛をやってもらっており、その付近に仮住まいしてもらっている。後々川が通ったら水の管理をお願いする予定。
「次に、正式な村人ではないものの、村の発展のキーマンとも呼べる方々、ドワーフのヘパイトスさん、娘のヤポーニャさん、その弟子のフィンツさん、フロセルさん、ルドルフさんです」
「ドワーフさん、よろしくお願いします!」
川が出来たらアクアリヴィアに帰る契約だが、顔を知っているのと知っていないのでは、親近感がまるで違ってくるので、最初の一回だけでもと、村人の一員として無理を言って参加してもらった。
工事現場付近に、私が即席で立てた家を更に改造して住んでいる。
「最後に、私がアクアリヴィアでスカウトしてきた私の専属メイドのカイベルさん」
「みなさま、よろしくお願い致します」
「カイベルさん、よろしくなー!」
もちろん正体は明かせないから、あくまで『私がアクアリヴィアで見つけた異世界転移してきた日本人』という設定。
今後もカイベルに村と関わってもらう以上、顔見せは必要だ。
何か……こうやって書き出してみると私が秘密にしてること多いな……まあ、それも無用なトラブルを避けるためだ、仕方ない!
「これにて、新顔さんの紹介は終わりとします」
そして、今回のメイン。
「突然ですが今日の集会は、避難訓練を行います!!」
みんなザワザワしだす。
「はいはい!!」
「はい、ナナトスくん!」
「避難訓練って何スか?」
「有事があった際に慌てることがないように、有事を想定して訓練をしておくことです。この村の生活環境も大分安定してきたので、次は文化的な生活を目指してみようと思います。私の故郷では九月に入った辺りに避難訓練をしていたので、ここにも取り入れてみようと思います」
「毎回集会の度に思うんスけど、何でそんな畏まった話し方なんスか?」
「主催する立場だから、口調を崩すべきところと、崩すべきじゃないところは切り替えないといけないかなと思って」
「はい!」
「はい、ミリアンさん!」
「具体的にどんなことをやるんですか?」
避難訓練って言ったら、学校なら机の下に隠れたり、防災頭巾を被ったり、校庭へ避難したり、折り畳まれた滑り台みたいなやつで三階から滑ったり、消火器で火を消したり、煙の中を進んだりとかやった。
そうだなぁ……この村で具体的に出来ることって言えば……
「例えば地震が起こった場合、はい、あなたはどうする」
一人のトロルを指さす。
「ええっと……何もできません、いつもは地震が来ても立ち尽くしています」
「はい、それだと建物付近に居た時に潰されてしまうかもしれません。建物が倒れても大丈夫なところへすぐに避難してください。周りに何も無いところなら立ち尽くすのも良いかもしれませんが、その場合も地割れなどが起こる場合があるので気を付けましょう。近くに何か建物がある場合、石片とか岩片とか、建物の破片なんかも落下してくることがあるかもしれません。では今からそれらから身を守ることを実践してみましょうか。何人かに実際に体験してもらいます」
二人ピックアップして並ばせる。
「今から役員の人が軽石を投げます。当たっても大した痛みはありませんが、本物の石や岩だと思って対応してください。実際にお手本を見せます」
合図すると軽石が飛んでくる。
「炎の壁」
飛んできた軽石を炎の壁を出して防いだ。
「「「おおぉぉーー!!」」」
地球では、石なんかが飛んできたら避けるか、腕で頭をガードするか、近くに落ちてるもので対処するしかないが、この世界では魔法が使えるので対処方法が大分異なってくる。
魔法を使いこなすことができれば、地球に比べたら遥かに簡単だと言えるだろう。
「しかし、我々は炎を使える者ばかりではないですが?」
「炎でなくても良いんです。流石に巨岩とかが襲ってきたら対処は難しいかもしれませんが、石つぶて程度なら水や風でも魔法壁を作るだけでかなりの衝撃を和らげることができます。この村のみんな何らかの属性魔力を持っているので、各々得意な方法を見出してください。では代表者にやってもらいましょう」
「準備は良いですか?」
「「はい」」
役員が軽石を飛ばす。
「ストーンウォール!」
「アイスウォール!」
と、叫んだものの――
「痛て!」
「痛た!」
石壁と氷壁の構築速度が遅く、頭の高さに達する前に軽石が当たってしまった。
「土や氷は下から作るとなると少し時間がかかるので、咄嗟の時には自身の全面にだけ作れるように訓練しておいてください。例えばこんな感じなら今の速度なら防げたと思います」
石の壁
前面にだけ石壁を一瞬で作る。
「「「おおぉぉーー!!」」」
「この構築速度も訓練次第で一瞬の間に完成させることが出来るようになるので、訓練しておくと良いと思います。いざ有事の際には役に立ってくれるでしょう。もちろん、避けられそうなら避けてしまうのも手段の一つです。とにかく自分の出来る最善の方法で身を守ってください」
次は火消し訓練。
油を溜めた入れ物を置き、そこへ火を着ける。
魔法がある世界の避難訓練を実施してみましたが、いかがだったでしょうか?
私の考えとしては、魔法があると色々な対処に幅が出来て良いなと思いますね。落石なども咄嗟の判断で炎で消してしまえば無傷で済みそうですし。
で、いつになったら人間は魔法を使えるようになるんでしょうね。
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