魔界の天使アルトラの国造り奮闘譚
第111話 自家発電機を作ってもらった!
現在の川状況。
掘削はしなくて良くなったが、次は土の整備と形成が必要なため、一旦解散した掘削組が半分くらいは戻ってきている。
コンクリート部分の進捗は、乾かす時間も必要なので、どうしても遅くならざるを得ない。きちんとしたコンクリートになるまで7日くらい水かけたりするらしく、火魔法のような熱で急激に乾かそうとすると、ひび割れや強度低下などの原因になりかねないそうだ。
ここは大分乾燥した土地だから、塗ったコンクリートにしばらくシートをかけて守ったりもしている。
川掘削は村の死活問題だとみんなわかっているから、協力してくれるトロルは多い。
もっとも、前々から自由参加と言っているから、多い時もあれば少ない時もある。
ただ、大工組は勉強したいという意欲があるのか、全員が毎日参加している。
現在は、掘削方面がほぼ終わったため、当時ほどの人数は来なくなったというのが実際のところかな。
「このコンクリの撹拌、すげぇ大変なんスけど、何とかならないッスか?」
それならコンクリートミキサー車でも作ってもらうか、オルシンジテンに頼めば設計図は用意できそうだし。動かせるから、運ぶのも楽だし。
「それならこういうのがあるぞ?」
ヘパイトスさんが出して来たのは、手動でグルグル回すタイプのコンクリートミキサー。
「何でそんなのあるんなら早く出してくれないんスか!?」
「若い頃の苦労は買ってでもするもんだ」
「俺っちは楽に生きたいッス」
もうコンクリ始めて、三週間くらい経つが……その間ずっと手動でかき回してたらしい。
心なしか、身体がかなりガッシリしてきている気がする。それでもイチトスたち塩作り三兄弟には及ばない。彼らは三人はどうやってたった四日であの身体になったのだろう……個人差?
コンクリートミキサー車を作ろうなんて頭をよぎったけど、まだ止めておいた方が良さそうだな……今作ると、車すら無いこの場所ではかなりのオーパーツになってしまいそうだ……
「超楽になったッスよ~!」
「まあ、こんなのもあるがな」
出して来たのは電動で動くコンクリートミキサー。
「何で最初にそれを出さなんスか!?」
「これは電気式だからここでは使えんよ。」
「それって自家発電機があれば動きますか?」
「自家発電機? 聞き慣れない名だな。小型の発電所みたいなもんか?」
「そんなところです。私の故郷で使われていた発電機で、太陽光やオイルを使って電気を起こせる発電機なんですよ」
「そんなのはまだアクアリヴィアでは聞いたことがないな」
アクアリヴィアにすら無いとなると、ちょっとオーパーツ気味になってしまうけど、車作るよりはまだ大丈夫だろう。作ってみるか。
「ちょっと待っててください」
ゲートを出して我が家へ帰る。
「どこへ行ったんだ?」
「さあ?」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「カイベル!」
「はい」
家の中を見回す。
「リディアはいないね?」
「遊びに行っております」
オルシンジテン起動してるところを見られるわけにはいかない。
「オルシンジテン起動、自家発電機の設計図って出してもらえる?」
「はい、どうぞ」
ホログラムには自家発電機の設計図が映っている。私が見ても全くわからないが……
「これって品質はどれくらい?」
「最上級です」
「じゃあ品質を少し落として、それでも少なくとも数年使っても壊れないレベルのもので、ソーラーパネル付きのものを出して」
「はい、どうぞ」
さっきとは違うらしき設計図が映された。
うん! さっきと何が違うかまるでわからん!
まあ、オルシンジテンがこれを私のリクエストしたものだということで表示してくれたのだから、間違いは無いだろう。
「これの文字を魔界文字に変換できる?」
「可能です」
「じゃあ、魔界文字に置き換えてから、これを印刷して」
「よろしいのですか? まだここには無い機械だと思われますが……」
「多分大丈夫」
「わかりました、ではそこへ紙を」
バシュッ
よし! これをヘパイトスさんに見せて作ってもらえば、太陽光でエネルギーを賄える自家発電機が出来る!
ゲートで工事現場へ戻る。
「これって作れますか?」
ヘパイトスさんへ今印刷した設計図を見せる。
「作れないことはないが……これは何だ?」
「自家発電機です」
「これがそうなのか? ………………ワシらすら知らないものを、お前さんどこから持ってくるんだ?」
「私から都合の良い物が出てきても『そういうものだ』と思ってください」
「ああ、暗黙の了解だったな。まあワシらにはどうでも良いことか。じゃあ試しに作ってみるか、材料は調達してくれるんだろ?」
先日私が即席で作った家へ帰って行った。
私が即席で作ったこの家、耐震補強も万全にされて、軽い工房のようになっている。
私が作った時の強度とは雲泥の差だ。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
一日かけて発電機が出来上がった。
次の日の朝。
「作ってみたが……この黒いパネル、こんなのでホントに電気が作れるのか?」
「はい、それを地面に敷いておくだけで大丈夫だと思います」
「燃料すらないのに?」
「はい」
怪訝な顔をしている。
「……じゃあ試運転してみるか、電動ミキサーを発電機に繋げてくれ」
これでちゃんと動いてくれれば、村でも電気が賄えるようになるはず。
「おぉ!? ミキサーが勝手に動き出しましたよ!」
「これでめっちゃ大変なコンクリ撹拌からオサラバできるッスね!」
「こりゃすげぇな。太陽から電気を作るなんて、闇に閉ざされたこの世界では思いつかないことだな」
「がはは、これでコンクリ作りも楽になるな」
「それで相談なんですけど……成功したこれをもう複数台作ってもらえませんか? 村の主要機関に設えたいと思います」
「ああ、いいぞ。その代わりと言ってはなんだが、この発電機を参考にさせてもらって良いか?」
「参考に?」
設計図あるんだから、そのまま持っていけば良いと思うんだけど……
ドワーフだからそれはプライドが許さないのかな。
「参考にするのなんて許可取る必要ないですよ。ご自由にどうぞ」
「それはありがたい」
「設計図はどうします?」
「それはワシらには必要無い。参考にさせてもらえるだけで、自分で考えて作る。じゃあワシはアルトラに頼まれた発電機を作るから、川の方はお前たちで頼む」
「「「了解しやした!」」」
ナナトスは「楽に生きたい」と言いつつ、割と努力家。
あと、コンクリや自家発電機について、それほど詳しくはないので間違っていたら指摘していただけるとありがたく思います。
次回は11月10日の20時から20時15分頃の投稿を予定しています。
第112話【トロル村に電気が来た!】
掘削はしなくて良くなったが、次は土の整備と形成が必要なため、一旦解散した掘削組が半分くらいは戻ってきている。
コンクリート部分の進捗は、乾かす時間も必要なので、どうしても遅くならざるを得ない。きちんとしたコンクリートになるまで7日くらい水かけたりするらしく、火魔法のような熱で急激に乾かそうとすると、ひび割れや強度低下などの原因になりかねないそうだ。
ここは大分乾燥した土地だから、塗ったコンクリートにしばらくシートをかけて守ったりもしている。
川掘削は村の死活問題だとみんなわかっているから、協力してくれるトロルは多い。
もっとも、前々から自由参加と言っているから、多い時もあれば少ない時もある。
ただ、大工組は勉強したいという意欲があるのか、全員が毎日参加している。
現在は、掘削方面がほぼ終わったため、当時ほどの人数は来なくなったというのが実際のところかな。
「このコンクリの撹拌、すげぇ大変なんスけど、何とかならないッスか?」
それならコンクリートミキサー車でも作ってもらうか、オルシンジテンに頼めば設計図は用意できそうだし。動かせるから、運ぶのも楽だし。
「それならこういうのがあるぞ?」
ヘパイトスさんが出して来たのは、手動でグルグル回すタイプのコンクリートミキサー。
「何でそんなのあるんなら早く出してくれないんスか!?」
「若い頃の苦労は買ってでもするもんだ」
「俺っちは楽に生きたいッス」
もうコンクリ始めて、三週間くらい経つが……その間ずっと手動でかき回してたらしい。
心なしか、身体がかなりガッシリしてきている気がする。それでもイチトスたち塩作り三兄弟には及ばない。彼らは三人はどうやってたった四日であの身体になったのだろう……個人差?
コンクリートミキサー車を作ろうなんて頭をよぎったけど、まだ止めておいた方が良さそうだな……今作ると、車すら無いこの場所ではかなりのオーパーツになってしまいそうだ……
「超楽になったッスよ~!」
「まあ、こんなのもあるがな」
出して来たのは電動で動くコンクリートミキサー。
「何で最初にそれを出さなんスか!?」
「これは電気式だからここでは使えんよ。」
「それって自家発電機があれば動きますか?」
「自家発電機? 聞き慣れない名だな。小型の発電所みたいなもんか?」
「そんなところです。私の故郷で使われていた発電機で、太陽光やオイルを使って電気を起こせる発電機なんですよ」
「そんなのはまだアクアリヴィアでは聞いたことがないな」
アクアリヴィアにすら無いとなると、ちょっとオーパーツ気味になってしまうけど、車作るよりはまだ大丈夫だろう。作ってみるか。
「ちょっと待っててください」
ゲートを出して我が家へ帰る。
「どこへ行ったんだ?」
「さあ?」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「カイベル!」
「はい」
家の中を見回す。
「リディアはいないね?」
「遊びに行っております」
オルシンジテン起動してるところを見られるわけにはいかない。
「オルシンジテン起動、自家発電機の設計図って出してもらえる?」
「はい、どうぞ」
ホログラムには自家発電機の設計図が映っている。私が見ても全くわからないが……
「これって品質はどれくらい?」
「最上級です」
「じゃあ品質を少し落として、それでも少なくとも数年使っても壊れないレベルのもので、ソーラーパネル付きのものを出して」
「はい、どうぞ」
さっきとは違うらしき設計図が映された。
うん! さっきと何が違うかまるでわからん!
まあ、オルシンジテンがこれを私のリクエストしたものだということで表示してくれたのだから、間違いは無いだろう。
「これの文字を魔界文字に変換できる?」
「可能です」
「じゃあ、魔界文字に置き換えてから、これを印刷して」
「よろしいのですか? まだここには無い機械だと思われますが……」
「多分大丈夫」
「わかりました、ではそこへ紙を」
バシュッ
よし! これをヘパイトスさんに見せて作ってもらえば、太陽光でエネルギーを賄える自家発電機が出来る!
ゲートで工事現場へ戻る。
「これって作れますか?」
ヘパイトスさんへ今印刷した設計図を見せる。
「作れないことはないが……これは何だ?」
「自家発電機です」
「これがそうなのか? ………………ワシらすら知らないものを、お前さんどこから持ってくるんだ?」
「私から都合の良い物が出てきても『そういうものだ』と思ってください」
「ああ、暗黙の了解だったな。まあワシらにはどうでも良いことか。じゃあ試しに作ってみるか、材料は調達してくれるんだろ?」
先日私が即席で作った家へ帰って行った。
私が即席で作ったこの家、耐震補強も万全にされて、軽い工房のようになっている。
私が作った時の強度とは雲泥の差だ。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
一日かけて発電機が出来上がった。
次の日の朝。
「作ってみたが……この黒いパネル、こんなのでホントに電気が作れるのか?」
「はい、それを地面に敷いておくだけで大丈夫だと思います」
「燃料すらないのに?」
「はい」
怪訝な顔をしている。
「……じゃあ試運転してみるか、電動ミキサーを発電機に繋げてくれ」
これでちゃんと動いてくれれば、村でも電気が賄えるようになるはず。
「おぉ!? ミキサーが勝手に動き出しましたよ!」
「これでめっちゃ大変なコンクリ撹拌からオサラバできるッスね!」
「こりゃすげぇな。太陽から電気を作るなんて、闇に閉ざされたこの世界では思いつかないことだな」
「がはは、これでコンクリ作りも楽になるな」
「それで相談なんですけど……成功したこれをもう複数台作ってもらえませんか? 村の主要機関に設えたいと思います」
「ああ、いいぞ。その代わりと言ってはなんだが、この発電機を参考にさせてもらって良いか?」
「参考に?」
設計図あるんだから、そのまま持っていけば良いと思うんだけど……
ドワーフだからそれはプライドが許さないのかな。
「参考にするのなんて許可取る必要ないですよ。ご自由にどうぞ」
「それはありがたい」
「設計図はどうします?」
「それはワシらには必要無い。参考にさせてもらえるだけで、自分で考えて作る。じゃあワシはアルトラに頼まれた発電機を作るから、川の方はお前たちで頼む」
「「「了解しやした!」」」
ナナトスは「楽に生きたい」と言いつつ、割と努力家。
あと、コンクリや自家発電機について、それほど詳しくはないので間違っていたら指摘していただけるとありがたく思います。
次回は11月10日の20時から20時15分頃の投稿を予定しています。
第112話【トロル村に電気が来た!】
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