魔界の天使アルトラの国造り奮闘譚
第62話 川の掘削開始! しかしその工事日数が……
「あ、戻って来た!」
「アルトラ様! ご無事ですか!」
「うん、話をつけて帰ってもらったよ」
正直に言っても、ややこしくなるだけだろうからそういう体にしておく。
「あんな巨大な生物をどうやって……」
「物理的に話をつけた」
「つまり力で追い払ったってことですか?」
ザワザワし出す。
「また来たら私が追い返すから火山へ行きましょう」
多少強引にだが話を戻す。
再び火山の麓へ移動。
作業員の一人がフレアハルトたちに気付いた。
「あの人たちはここ数日うちの村に来ているお客人ですよね?」
「そう、彼らも手伝ってくれるって言うから労働力としてカウントしてくれて良いよ。あと怪物関連も彼らを頼ってくれて良い、私同様追い返すくらいの強さがあるから」
まあ、その怪物本人なんだけど……
みんなを一か所に集合させる。
「えー、みんなにやってもらいたいのはここから集落までの掘削作業です! あの二つの杭の間隔で半円状に掘り進めてください」
河川敷のことまで考えて、杭の間隔 (川幅)は大体50mくらいに設定した。河川敷20m、川本体が30mくらいの割合。土手も10m間隔くらい欲しいかな。
ちょっと大きい気もするけど、ここから支流とか作るとなると、こんな感じなんじゃないかなと思う。
潤いの木Ver2は枝打ちで水量調節できるようにする予定だし、集落まで50kmある。これくらいあれば氾濫や水没などが起こっても、対処には十分な距離だろう。
「どっちの方向に進めば良いんだい?」
「ここから見えると思いますが、100mくらい先に次の杭を埋めてあります」
「おー! アレか!」
「俺には遠すぎて見えないな……」
やっぱり100mだと見えない人もいるか。
「あそこまで掘ったら、次はまた100m先に杭があります」
「道具は何の道具を使うんですか?」
「こちらで用意しました」
昨日せっせと作ったシャベルやスコップ、金属製のハンマー、セリ矢、つるはしも必要かと思って作った。あと一輪車を複数台。
この道具全部、恐らく全員が見たことないものだと思うけど、以前から「私が突然都合の良いアイテムを出してきても『そういうものだ』って解釈してもらえると助かる」と言っているため、どうやって取り揃えたかは、みんなあまり気にしていない様子だ。
しかし、道具には興味あるようで、みんな集まって見始めた。
出来ることならシャベルカーとか大型の重機を取り揃えたいところだけど、私は機械類の構造が理解出来てないから作れない。作ったところで、動かないか、ちょっと動かしたら壊れるかのどちらかだろう。要はゴミが増えるだけってこと。
それに……作ったところでこの中に免許持ってる人がいないから、動かせる人いないしな……
「はい! 何でそんな畏まった話し方してるんですか?」
あれホントだ、人数多い所為かな? 日本人的な癖が抜けない。
「ゴホン、他に質問は無い?」
「掘った土はどうするんですか?」
「川の両横に積んでいって。外から見て2mくらいの高さがある土手にしようと思う」
「深さはどれくらい掘れば良いんですか?」
川ってどれくらい深いんだろう? う~ん……
「3mくらいかな? とりあえず3~4mでお願い」
まあ川幅30m、水深5mで、70kmの長さがあればそうそう氾濫も無いだろう。潤いの木の枝打ち調整でダムのような機能もさせられると思うし。
「では、みなさん、そういう感じでよろしくお願いします」
川を作る計画が本格的にスタートした。
スコップやシャベルも使ったことないだろうし。本格的な穴掘りは、多分初めてなのだろう。みんな試行錯誤して掘り進めている。
ガチンッ!
「ん? 硬いな、石が出てきた」
1m以上はありそうな大きい石。普通は砕いて取り除くものだけど、さてどうする?
「周りを掘って取り出すか」
どれくらい埋まってるかわからない石の周りを掘るのか。中には5mとか10mとかある石もあるのに……
「砕いてパーツごとに分ければ取り出しやすいよ」
私も土木に詳しいわけではないが、わからないなりにちょっとした助言。
「そうですね! じゃあ……ハンマーとこのセリ矢を使って砕きましょう」
砕いてみれば2mくらいある石だった。屈強でも魔力強化の無い普通の亜人では到底持ち上げられない重さだ。
「こっちの土硬ってぇな……」
「それはつるはしを使って、土を柔らかくしてから掘るのよ」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
開始から3時間ほどが経った。
フレアハルトは岩のようなものが出てきた時に火のスキルを活かして、壊しながら掘り進めている。
豪快組と馬が合うようだ。
アリサとレイアはただ二人の女性ということもあってか、周りからチヤホヤされている。
あれ? 私は? 私は女性じゃないのかしら? 誰かチヤホヤして。
塩作り三兄弟は、黙々と掘り進めている。
掘り進める役、石や岩が出てきたら壊す役、土や石や岩を運び出す役の三つを見事なコンビネーションで、且つローテーションで進めている。流石肉体派だ。
その弟のナナトスとカンナーはもう既にぐったりしている。彼らは見た目通りあまり体力が無さそうだ。
しかし、私が見た彼ら種族の体質を考えると、塩作り三兄弟は最初はガリガリの体型だったのに四日後に会った時にはもうムッキムキのマッチョだった。
この二人も明日か明後日辺りにはきっとムッキムキのマッチョになっていることだろう。
さて、そろそろ正午になる。
ご飯にでもするか。
お昼ご飯はハンバームちゃんに頼んでおいた。いつもハンバームちゃん頼みでホントありがたい!
とは言え毎日々々筆頭料理人の彼女にお願いするわけにはいかないから、今後は別の人にも頼まなければならない。
フレハルが凄く上機嫌。
アイツもしかしてこれを見越してた?
以前アリサの前でおバカ呼ばわりした時に「実は頭が良い」みたいなことを濁しながら話されたけど、ホントに見通してたのかも?
お昼ご飯も終わったところで午後の作業を開始。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
午前に比べれば、かなりやり慣れてきているとは思うけど……やっぱり土木作業自体が初めての人が多いためか、ペースは午前の三分の二ほどの速度。疲れも出てきている。
私も経験者じゃないから勝手がわからないしなぁ……
3時間ほど経った後、早めに切り上げることにした。
「みんな今日はありがとう! 今日のところはここで終了とします。体調が悪い人はゆっくり休んでください」
みんなを集落まで送り届け、私は我が家へ帰った。
みんなには内緒にしているけど、私なら土魔法でドーンとやれば、その後の整地は大変だと思うけど5回くらいで50km掘れると思う。けどやらない。
こうやってみんなで作ってもらう過程や実績が大事だと考えるからだ。
しかし――
今日出来たところは50mほど。進みは遅いと言わざるを得ない。
まあ初日だから仕方がない。さて、明日は何人来てくれるかな?
ん? ちょっと待ってよ? 50mしか進んでないってことはもしこのまま行くと……
70km (合流予定の川までの距離 ÷ 50m 
「アルトラ様! ご無事ですか!」
「うん、話をつけて帰ってもらったよ」
正直に言っても、ややこしくなるだけだろうからそういう体にしておく。
「あんな巨大な生物をどうやって……」
「物理的に話をつけた」
「つまり力で追い払ったってことですか?」
ザワザワし出す。
「また来たら私が追い返すから火山へ行きましょう」
多少強引にだが話を戻す。
再び火山の麓へ移動。
作業員の一人がフレアハルトたちに気付いた。
「あの人たちはここ数日うちの村に来ているお客人ですよね?」
「そう、彼らも手伝ってくれるって言うから労働力としてカウントしてくれて良いよ。あと怪物関連も彼らを頼ってくれて良い、私同様追い返すくらいの強さがあるから」
まあ、その怪物本人なんだけど……
みんなを一か所に集合させる。
「えー、みんなにやってもらいたいのはここから集落までの掘削作業です! あの二つの杭の間隔で半円状に掘り進めてください」
河川敷のことまで考えて、杭の間隔 (川幅)は大体50mくらいに設定した。河川敷20m、川本体が30mくらいの割合。土手も10m間隔くらい欲しいかな。
ちょっと大きい気もするけど、ここから支流とか作るとなると、こんな感じなんじゃないかなと思う。
潤いの木Ver2は枝打ちで水量調節できるようにする予定だし、集落まで50kmある。これくらいあれば氾濫や水没などが起こっても、対処には十分な距離だろう。
「どっちの方向に進めば良いんだい?」
「ここから見えると思いますが、100mくらい先に次の杭を埋めてあります」
「おー! アレか!」
「俺には遠すぎて見えないな……」
やっぱり100mだと見えない人もいるか。
「あそこまで掘ったら、次はまた100m先に杭があります」
「道具は何の道具を使うんですか?」
「こちらで用意しました」
昨日せっせと作ったシャベルやスコップ、金属製のハンマー、セリ矢、つるはしも必要かと思って作った。あと一輪車を複数台。
この道具全部、恐らく全員が見たことないものだと思うけど、以前から「私が突然都合の良いアイテムを出してきても『そういうものだ』って解釈してもらえると助かる」と言っているため、どうやって取り揃えたかは、みんなあまり気にしていない様子だ。
しかし、道具には興味あるようで、みんな集まって見始めた。
出来ることならシャベルカーとか大型の重機を取り揃えたいところだけど、私は機械類の構造が理解出来てないから作れない。作ったところで、動かないか、ちょっと動かしたら壊れるかのどちらかだろう。要はゴミが増えるだけってこと。
それに……作ったところでこの中に免許持ってる人がいないから、動かせる人いないしな……
「はい! 何でそんな畏まった話し方してるんですか?」
あれホントだ、人数多い所為かな? 日本人的な癖が抜けない。
「ゴホン、他に質問は無い?」
「掘った土はどうするんですか?」
「川の両横に積んでいって。外から見て2mくらいの高さがある土手にしようと思う」
「深さはどれくらい掘れば良いんですか?」
川ってどれくらい深いんだろう? う~ん……
「3mくらいかな? とりあえず3~4mでお願い」
まあ川幅30m、水深5mで、70kmの長さがあればそうそう氾濫も無いだろう。潤いの木の枝打ち調整でダムのような機能もさせられると思うし。
「では、みなさん、そういう感じでよろしくお願いします」
川を作る計画が本格的にスタートした。
スコップやシャベルも使ったことないだろうし。本格的な穴掘りは、多分初めてなのだろう。みんな試行錯誤して掘り進めている。
ガチンッ!
「ん? 硬いな、石が出てきた」
1m以上はありそうな大きい石。普通は砕いて取り除くものだけど、さてどうする?
「周りを掘って取り出すか」
どれくらい埋まってるかわからない石の周りを掘るのか。中には5mとか10mとかある石もあるのに……
「砕いてパーツごとに分ければ取り出しやすいよ」
私も土木に詳しいわけではないが、わからないなりにちょっとした助言。
「そうですね! じゃあ……ハンマーとこのセリ矢を使って砕きましょう」
砕いてみれば2mくらいある石だった。屈強でも魔力強化の無い普通の亜人では到底持ち上げられない重さだ。
「こっちの土硬ってぇな……」
「それはつるはしを使って、土を柔らかくしてから掘るのよ」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
開始から3時間ほどが経った。
フレアハルトは岩のようなものが出てきた時に火のスキルを活かして、壊しながら掘り進めている。
豪快組と馬が合うようだ。
アリサとレイアはただ二人の女性ということもあってか、周りからチヤホヤされている。
あれ? 私は? 私は女性じゃないのかしら? 誰かチヤホヤして。
塩作り三兄弟は、黙々と掘り進めている。
掘り進める役、石や岩が出てきたら壊す役、土や石や岩を運び出す役の三つを見事なコンビネーションで、且つローテーションで進めている。流石肉体派だ。
その弟のナナトスとカンナーはもう既にぐったりしている。彼らは見た目通りあまり体力が無さそうだ。
しかし、私が見た彼ら種族の体質を考えると、塩作り三兄弟は最初はガリガリの体型だったのに四日後に会った時にはもうムッキムキのマッチョだった。
この二人も明日か明後日辺りにはきっとムッキムキのマッチョになっていることだろう。
さて、そろそろ正午になる。
ご飯にでもするか。
お昼ご飯はハンバームちゃんに頼んでおいた。いつもハンバームちゃん頼みでホントありがたい!
とは言え毎日々々筆頭料理人の彼女にお願いするわけにはいかないから、今後は別の人にも頼まなければならない。
フレハルが凄く上機嫌。
アイツもしかしてこれを見越してた?
以前アリサの前でおバカ呼ばわりした時に「実は頭が良い」みたいなことを濁しながら話されたけど、ホントに見通してたのかも?
お昼ご飯も終わったところで午後の作業を開始。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
午前に比べれば、かなりやり慣れてきているとは思うけど……やっぱり土木作業自体が初めての人が多いためか、ペースは午前の三分の二ほどの速度。疲れも出てきている。
私も経験者じゃないから勝手がわからないしなぁ……
3時間ほど経った後、早めに切り上げることにした。
「みんな今日はありがとう! 今日のところはここで終了とします。体調が悪い人はゆっくり休んでください」
みんなを集落まで送り届け、私は我が家へ帰った。
みんなには内緒にしているけど、私なら土魔法でドーンとやれば、その後の整地は大変だと思うけど5回くらいで50km掘れると思う。けどやらない。
こうやってみんなで作ってもらう過程や実績が大事だと考えるからだ。
しかし――
今日出来たところは50mほど。進みは遅いと言わざるを得ない。
まあ初日だから仕方がない。さて、明日は何人来てくれるかな?
ん? ちょっと待ってよ? 50mしか進んでないってことはもしこのまま行くと……
70km (合流予定の川までの距離 ÷ 50m 
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