魔界の天使アルトラの国造り奮闘譚
第18話 私の前々世、魔王でした!
次はレヴィアタンを調べてみよう。
「オルシンジテン、レヴィアタンのことを教えて」
「七つの大罪の『嫉妬』を司り、海に棲む巨大な蛇の姿の生物とされている魔界七強の一角です。最強の生物とされており、その硬い鱗はいかなる武器も通用しないとされます。レヴィアタンは神によって創造された、巨獣『ベヒモス』と二頭一対、または異説としてここに怪鳥『ジズ』を加えた三頭一対の巨大生物とされ、世界の終末には最後の審判を生き残った人間たちに食べ物として振舞われる役目とされています」
振舞われるって……人間たちに食べられるのか……何かちょっと可哀想な役目ね。
ベヒモスは知ってるけど、ジズって初めて聞いたわ。
「姿は口から炎を吐き、鼻から煙を吹く、口には鋭く巨大な歯が生えており、目はギラついています。体中に鱗がありどんな攻撃でも跳ね返してしまうとされます」
海の生物なのに炎を吐くのか。何か炎を吐く架空の生物って多いな……
鱗でどんなものでも跳ね返すってことは、さっきここに来た彼女も防御力高いのかな?
「対応される動物は蛇、犬、猫、土竜、蜻蛉」
蛇は有名だから知ってるけど、犬に猫に土竜? これらからは嫉妬のイメージはあまりないわね。何で海の怪物なのに蜻蛉?
「対応される幻獣はマーメイドです」
あら、綺麗な幻獣ね。
私の手のかかるケルベロスと交換して欲しいわ。
「――と言うのは人間界で伝えられている伝説です」
「人間界に伝わる伝説上のレヴィアタンのことはいいから、この世界のレヴィアタンについて教えてもらえる?」
「通称水の国と呼ばれるアクアリヴィアの魔王です。水資源が豊富で水に関連するマーメイドやマーマン、魚人、水棲の亜人、水棲の魔人などが多く暮らし、水力発電など科学技術が進んでおり、ここと比べると文明的にかなり進んだ国と言えます。また、魔界一水の綺麗な国として有名です。女王は自由奔放で知られ、度々側近を困らせるようですが、国民には人気があります。魔界にある七つの国の中でもかなり住みやすい国と言えるでしょう」
「ステータスも見せてもらえる?」
▼名前:レヴィアタン ▼種族:魔人 (魔王)
ん? 名前と種族しか出てこないが……
「オルシンジテン、他のステータスは?」
「対象の力が強過ぎて照会できません。許可を申請しますか?」
強過ぎて? やっぱり魔王だから?
それよりも許可の申請って……誰に?
「誰に許可を申請するの?」
「この場合レヴィアタンに申請します」
「それ申請したら相手にも伝わっちゃわないの?」
「相手には『何かよくわからない攻撃を受けた』と認識されるかもしれません」
「じゃあ、キャンセルで」
相手に伝わるのではリスクが高すぎて使えない。もしかしたらオルシンジテンの魔力の残滓からここを辿ってくる能力を持ってるやつとかいるかもしれないし。
相手が魔王だと言うなら、なおさら簡単に申請など出せない。
それに申請しなければならないということは、相手は拒否できるわけで、拒否された場合はステータスは当然見られないし、こちらの『何かしらの攻撃』が認識されてしまうなど、リスクしかない。できることなら無用な争いはしたくないし、ましてや魔王を敵にしたくはない。
かと言って、自分より弱い相手のステータス見ても何の意味も無いし……
「このステータス照覧機能はイマイチ使い道は無さそうね……自分の現在の能力を知るには良いかもしれないけど……」
「………………ねえ、あなたは私がベルゼビュートの転生者だと思う?」
「はい」
「その情報はロックがかかってたりしないんだ」
………………
少しだけ合点がいく。
私の人間の亡者らしからぬこの強過ぎる魔力は、前々世が魔王だったからに違いない。
そこに何者かの意思で、天使の力をも付加されて魔界に送り込まれたのだ。
何者かの意思……
私は自分のスキルの中に『神の恩寵』があったことを思い浮かべる。
「何者か……どう考えても私に天使の力をプラスしたのはこの方よね……」
“何者か”は恐らく『神』、かもしくはそれに連なる者。人間を天使や悪魔に変質させるなど神業でもなければ説明がつかない。もしそれ以外があるとするなら私の頭では思い付かない。
しかし、天使の見た目で魔王ベルゼビュートか……
ベルゼビュートは元々は熾天使だったって話だし、天使の見た目でもおかしくないのかな?
随分大物の転生者だったのね、私。
この際だから、ベルゼビュートの転生者の私も魔王を名乗ってやろうか。
『ベルゼビュート』の名をそのまま受け継ぐと、狙われたりとか厄介ごとを引き付けそうだから名前は新たに作ろう。
あと、人間界の観点で言って、『蝿の王』はイメージが悪い。
本名に『様』付けされるのは何だかむず痒いから別の名前を考えよう。
私の名前は『地野 改 (チノ・カイ)』だから名前の『改』から連想していこうか。
「何が良いかな……私の名前は『改』……改だから、カスタマイズ……地獄の門の前にいるからヘルカスタマイザー、略してヘルカス………何か地獄のカス野郎みたいだ……他にないかな……改造は英語でアルター……魔王アルター。
もうちょっと捻るか。アルター (改造)とウルトラ (超越)を足して、魔王アルトラってどうだろう? いや、将来の魔王か。なれればの話だけど………………
よし! 今後は『地野 改』改め、アルトラと名乗ろう!」
七人の魔王がいて、そのうちの一人が私ってことは、空席になった残りの一枠は今誰が担っているんだろう?
◇
いきなり魔王を名乗るのが出てきて、ちょっとビビった。何も無かったから良かったけど……
最初に遭遇した一番人間に近い見た目の人が魔王って……
『また来る』的なこと言ってたけど、正直あの強さの人物にそう何度も来られるのは心臓に悪い。
まあ、そのまま何の悪事もせずに帰ったところを見ると、今のところ害意は無いように思う。
この話はまた彼女がやってきた時へ先送りしよう。
今は一刻も早くトロルの集落の衣と食をどうするかだ。
今日は魔王襲来で疲れたし、もう寝よう。
今回は主人公カイに新たな名前が付きました。
今後はアルトラと名乗って行きます!
次回は8月9日の20時頃の投稿を予定しています。
第19話【水と食問題を思案 活路は潤いの木にあり?】
「オルシンジテン、レヴィアタンのことを教えて」
「七つの大罪の『嫉妬』を司り、海に棲む巨大な蛇の姿の生物とされている魔界七強の一角です。最強の生物とされており、その硬い鱗はいかなる武器も通用しないとされます。レヴィアタンは神によって創造された、巨獣『ベヒモス』と二頭一対、または異説としてここに怪鳥『ジズ』を加えた三頭一対の巨大生物とされ、世界の終末には最後の審判を生き残った人間たちに食べ物として振舞われる役目とされています」
振舞われるって……人間たちに食べられるのか……何かちょっと可哀想な役目ね。
ベヒモスは知ってるけど、ジズって初めて聞いたわ。
「姿は口から炎を吐き、鼻から煙を吹く、口には鋭く巨大な歯が生えており、目はギラついています。体中に鱗がありどんな攻撃でも跳ね返してしまうとされます」
海の生物なのに炎を吐くのか。何か炎を吐く架空の生物って多いな……
鱗でどんなものでも跳ね返すってことは、さっきここに来た彼女も防御力高いのかな?
「対応される動物は蛇、犬、猫、土竜、蜻蛉」
蛇は有名だから知ってるけど、犬に猫に土竜? これらからは嫉妬のイメージはあまりないわね。何で海の怪物なのに蜻蛉?
「対応される幻獣はマーメイドです」
あら、綺麗な幻獣ね。
私の手のかかるケルベロスと交換して欲しいわ。
「――と言うのは人間界で伝えられている伝説です」
「人間界に伝わる伝説上のレヴィアタンのことはいいから、この世界のレヴィアタンについて教えてもらえる?」
「通称水の国と呼ばれるアクアリヴィアの魔王です。水資源が豊富で水に関連するマーメイドやマーマン、魚人、水棲の亜人、水棲の魔人などが多く暮らし、水力発電など科学技術が進んでおり、ここと比べると文明的にかなり進んだ国と言えます。また、魔界一水の綺麗な国として有名です。女王は自由奔放で知られ、度々側近を困らせるようですが、国民には人気があります。魔界にある七つの国の中でもかなり住みやすい国と言えるでしょう」
「ステータスも見せてもらえる?」
▼名前:レヴィアタン ▼種族:魔人 (魔王)
ん? 名前と種族しか出てこないが……
「オルシンジテン、他のステータスは?」
「対象の力が強過ぎて照会できません。許可を申請しますか?」
強過ぎて? やっぱり魔王だから?
それよりも許可の申請って……誰に?
「誰に許可を申請するの?」
「この場合レヴィアタンに申請します」
「それ申請したら相手にも伝わっちゃわないの?」
「相手には『何かよくわからない攻撃を受けた』と認識されるかもしれません」
「じゃあ、キャンセルで」
相手に伝わるのではリスクが高すぎて使えない。もしかしたらオルシンジテンの魔力の残滓からここを辿ってくる能力を持ってるやつとかいるかもしれないし。
相手が魔王だと言うなら、なおさら簡単に申請など出せない。
それに申請しなければならないということは、相手は拒否できるわけで、拒否された場合はステータスは当然見られないし、こちらの『何かしらの攻撃』が認識されてしまうなど、リスクしかない。できることなら無用な争いはしたくないし、ましてや魔王を敵にしたくはない。
かと言って、自分より弱い相手のステータス見ても何の意味も無いし……
「このステータス照覧機能はイマイチ使い道は無さそうね……自分の現在の能力を知るには良いかもしれないけど……」
「………………ねえ、あなたは私がベルゼビュートの転生者だと思う?」
「はい」
「その情報はロックがかかってたりしないんだ」
………………
少しだけ合点がいく。
私の人間の亡者らしからぬこの強過ぎる魔力は、前々世が魔王だったからに違いない。
そこに何者かの意思で、天使の力をも付加されて魔界に送り込まれたのだ。
何者かの意思……
私は自分のスキルの中に『神の恩寵』があったことを思い浮かべる。
「何者か……どう考えても私に天使の力をプラスしたのはこの方よね……」
“何者か”は恐らく『神』、かもしくはそれに連なる者。人間を天使や悪魔に変質させるなど神業でもなければ説明がつかない。もしそれ以外があるとするなら私の頭では思い付かない。
しかし、天使の見た目で魔王ベルゼビュートか……
ベルゼビュートは元々は熾天使だったって話だし、天使の見た目でもおかしくないのかな?
随分大物の転生者だったのね、私。
この際だから、ベルゼビュートの転生者の私も魔王を名乗ってやろうか。
『ベルゼビュート』の名をそのまま受け継ぐと、狙われたりとか厄介ごとを引き付けそうだから名前は新たに作ろう。
あと、人間界の観点で言って、『蝿の王』はイメージが悪い。
本名に『様』付けされるのは何だかむず痒いから別の名前を考えよう。
私の名前は『地野 改 (チノ・カイ)』だから名前の『改』から連想していこうか。
「何が良いかな……私の名前は『改』……改だから、カスタマイズ……地獄の門の前にいるからヘルカスタマイザー、略してヘルカス………何か地獄のカス野郎みたいだ……他にないかな……改造は英語でアルター……魔王アルター。
もうちょっと捻るか。アルター (改造)とウルトラ (超越)を足して、魔王アルトラってどうだろう? いや、将来の魔王か。なれればの話だけど………………
よし! 今後は『地野 改』改め、アルトラと名乗ろう!」
七人の魔王がいて、そのうちの一人が私ってことは、空席になった残りの一枠は今誰が担っているんだろう?
◇
いきなり魔王を名乗るのが出てきて、ちょっとビビった。何も無かったから良かったけど……
最初に遭遇した一番人間に近い見た目の人が魔王って……
『また来る』的なこと言ってたけど、正直あの強さの人物にそう何度も来られるのは心臓に悪い。
まあ、そのまま何の悪事もせずに帰ったところを見ると、今のところ害意は無いように思う。
この話はまた彼女がやってきた時へ先送りしよう。
今は一刻も早くトロルの集落の衣と食をどうするかだ。
今日は魔王襲来で疲れたし、もう寝よう。
今回は主人公カイに新たな名前が付きました。
今後はアルトラと名乗って行きます!
次回は8月9日の20時頃の投稿を予定しています。
第19話【水と食問題を思案 活路は潤いの木にあり?】
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