見た目は青年、心はアラサー、異世界に降り立つ! ~チートスキル「ストレージ」で異世界を満喫中~
二十六話
「御剣君がこういの得意というか、サラッとこなすのよ。それで、智子ちゃんもそれに引っ張られる感じで一緒に行動してるの。それに……」
光はそこまで言うと一度言葉を区切り、もう一度二人に視線を向けた。
「私も馬には蹴られたくないしね」
と、まるで微笑ましいものでも見る様な目をする光。
何か随分と柔らかな笑みを浮かべてるけど、あの二人がどうかしたのか?
「……あ、もしかして」
光の言葉と表情で何か思い当たる節でもあったのか、マリーがハッとした表情になった。
「なるほど、そういう事か」
更にフーリまで何か分かったのか、二人を見る目が柔らかな物へと変わった。その目はまるで、何かを見守る様な色を帯びている様に感じる。
「ええ、そうなんです。だから、ここは二人の邪魔にならない様に引っ込んでいようかと思って」
「そうですね。でも、ヒカリさんの立場的に、ずっとここに居る訳にもいかないのでは?」
「そうですね。流石にそろそろ戻ろうかとは思ってます。ただ、その前に兄さんの声を聞いておきたくなって」
「カイト君の声を、か。それはあの二人を見ていたからか?」
状況をイマイチきちんと把握出来ていない俺をよそに、女子組の話は順調に進んで行く。つまり、俺は順調に取り残されている。
これはよくない。俺も何とかして話に加わらないと、完全に置いてきぼりを喰らってしまう!
「あの二人って、本当に仲いいよな。もしかして、付き合ってたりして?」
女子が好きな会話ベストスリー(俺調べ)に入る話題、恋バナだ。これに乗って来ない女子はいない筈!
「「「……」」」
そう思っていたのに、何故か三人共恋バナには乗って来ず、無言で俺の事を見つめている。
え、その間は一体何?
「に、兄さんが」
「カイトさんが」
「カイト君が」
え、俺? 俺がいったい何?
……いや、こういう時はもっと気の利いたセリフを言わないとダメか。
「あれ? もしかして俺、また何かやっちゃいまし……」
「「「男女の仲に気が付くなんて!?」」」
「泣くぞこら!」
ツッコんでしまった。それはもう盛大に。
いやだって、いくら何でも失礼すぎるだろ! 俺だってそのぐらい気付けるわ!
「ほら、良いんか!? 大の大人が公衆の面前で声をあげて泣くぞ!」
自分で言ってて何がしたいのか分からなくなってくるが、こういうのは考えたらダメだ。
「いや、どんな脅しよそれ?」
光から尤もなツッコミが入る。いや、確かにそうなんだけど。
「カイトさん、いい子だから落ち着きましょ? ね?」
マリーからまるで小さい子を宥めるかの様に話しかけられ。
「カイト君、言ってて悲しくならないか?」
フーリから哀れみの視線を向けられる。
だが、ここまで誰一人として、さっきの事を謝ってはくれない。
……え、嘘やろ?
「「「「……」」」」
誰も言葉を発しない、奇妙な静寂が場を支配する。
おい、何だこの空気。一体誰の所為だよ!? ……あ、もしかして俺?
「お待たせしました! これより、トーナメントの組み合わせを発表します!」
絶妙なタイミングで戻って来る司会。まるで狙ったかの様なタイミングだが、おかげでこの沈黙の空間を逃れる事が出来る。
「そ、それじゃあ私はもう戻るわね!」
光が「助かった」と言わんばかりにこの場を立ち去る。
それに合わせた訳じゃないだろうが、武舞台の上の選手達も移動を開始し、会場内には少しずつざわめきが広がり始めた。
「さ、さあ、いよいよですね!」
「ああ、胸が高鳴るな」
マリーも光と似た様な反応なんだけど、フーリはいつも通りの反応をしている。
って事は、フーリにとって今の出来事は、特に気まずいものではなかったって事?
え、それはそれでちょっと傷つくけど、まあ変な事言われるよりはマシか。
そう思い、俺はトーナメントの組み合わせを発表する司会に意識を向けた。
「まずは第一試合 勇者パーティ VS ホーリーナイツ」
ホーリーナイツ? 何だその背中がむず痒くなりそうな名前。しかも絶妙にダサいし。なんか厨二病患者が変に背伸びして付けた名前って感じがするな。
一体どんなメンバーなんだろうかと思い、会場内を見回すと、一目で分かった。
全身真っ白に輝く派手な鎧に身を包み、優雅に髪をかき上げる様な仕草を見せている。しかも三人全員で。
えぇ……何あれ、ダサ。
しかも自分達はカッコいいとでも思っているのか、無差別に流し目を送ってるし。
いや、君達誰に対してそんな事してんの?
会場内の人々は俺と同じ事を考えている人が多いのか、ホーリーナイツへと向けられているのは、大半が痛々しい物を見る目だ。
「ふっ、僕達ホーリーナイツと当たったのが運の尽き。このホーリーソードの錆にしてくれよう!」
そう言って腰に帯刀している剣を引き抜き、高らかに掲げるのは、メンバーの中で一番派手な鎧を着込んだ男。
おそらくアレがリーダーなんだろう。痛々しさが他の二人よりも二割増しぐらいになっている。
それを見ていた御剣君が。
「えーっと……すみません司会者さん、次をお願いします」
「え? あ、はい、そうですね」
華麗にスルーした。それはもう見事なまでに。
本能的に関わったらダメだって判断したんだろうな。おかげでホーリーナイツのリーダー君は変なポーズで固まったままになっている。
あ、涙目になってる。
「ゴホン。少々アクシデントがありましたが、気を取り直して、次の発表に移りたいと思います」
しかもアクシデント扱い。いやあ、最初は厨二を拗らせた、痛々しい人達なんだなと思ってたけど、こうなると哀れに見えてくるな。
同情はしないけど。
「第二試合 守護者 VS 狩人」
続いて発表された組み合わせ。どっちも聞き覚えのないパーティ名だったので、いったいどんなパーティなのかと確認してみると、そこには何というか、これといった特徴のない、普通の冒険者パーティがいた。
武器もショートソードや弓、槍などの至って普通の武器。
防具も、重鎧を装備している者もいれば、最低限の部位だけを守り、動きやすさを重視した軽装の者もいる。
パーティ構成も、前衛二人に後衛一人という構成。
苦手な戦場は少ないだろうが、同時に得意な戦場も少ないだろう。よく言えばオールマイティの万能型。
悪く言えば個性の無い、ごく一般的な構成。
要はどこにでもいそうなパーティという事だ。
だからこそ怖い。
得意な戦場が無い。それはつまり、何かに特化した訳でもないのに、予選を勝ち抜いてきたという事を意味している。
何かに特化した相手なら、それに合わせて戦い方を変えるとかの対策も打てるのだが、それが無いという事は、戦う時は純粋な実力勝負という事になる。
そしてそれは、ある意味俺にとって一番苦手といってもいい分野だ。
冒険者歴がまだ浅い俺にとって、経験や勘という分野はどうしても不足しがちになる能力で、それで勝ち上がってきた相手と戦うとなれば、圧倒的に不利だ。
しかも、苦手な分野も少なそうだから、変に搦手を駆使しても普通に対応されかねないという事にもなる。
出来れば当たりたくないなぁ。
「よろしくお願いします」
「あ、これはご丁寧にどうも。こちらこそよろしくお願いします」
両パーティのリーダーと思われる人物が、お互いに挨拶を交わし合っている。
お互いにこういう挨拶がすんなりと出てくる辺り、人格の方も特に問題は無さそうだ。
リーダー以外のメンバーもお互いに頭を下げ合い、とても平和そうに見える。
冒険者が全員こういう人達なら、揉め事も少なそうなんだが、それは難しそうだ。寧ろ、この二パーティみたいなのが少数派だろうし。
「両パーティとも、冒険者ランクはAランク。その実力は本物です」
強そうだなとは思ったが、二パーティともAランクなのか。それは強そうに見えて当然だ。
っていうか、勇者杯ってもしかしなくても、ほとんどAランク以上のパーティばっかりなのか?
ウチはフーリとマリーはBランク、俺に至ってはCランクなんだけど?
今更ながら「俺達って実は場違いなのでは?」といった事を考え始めたのだが、今更考えても一緒だな。
そんな事を考えている間も、トーナメントの組み合わせの発表は続いていく。
光はそこまで言うと一度言葉を区切り、もう一度二人に視線を向けた。
「私も馬には蹴られたくないしね」
と、まるで微笑ましいものでも見る様な目をする光。
何か随分と柔らかな笑みを浮かべてるけど、あの二人がどうかしたのか?
「……あ、もしかして」
光の言葉と表情で何か思い当たる節でもあったのか、マリーがハッとした表情になった。
「なるほど、そういう事か」
更にフーリまで何か分かったのか、二人を見る目が柔らかな物へと変わった。その目はまるで、何かを見守る様な色を帯びている様に感じる。
「ええ、そうなんです。だから、ここは二人の邪魔にならない様に引っ込んでいようかと思って」
「そうですね。でも、ヒカリさんの立場的に、ずっとここに居る訳にもいかないのでは?」
「そうですね。流石にそろそろ戻ろうかとは思ってます。ただ、その前に兄さんの声を聞いておきたくなって」
「カイト君の声を、か。それはあの二人を見ていたからか?」
状況をイマイチきちんと把握出来ていない俺をよそに、女子組の話は順調に進んで行く。つまり、俺は順調に取り残されている。
これはよくない。俺も何とかして話に加わらないと、完全に置いてきぼりを喰らってしまう!
「あの二人って、本当に仲いいよな。もしかして、付き合ってたりして?」
女子が好きな会話ベストスリー(俺調べ)に入る話題、恋バナだ。これに乗って来ない女子はいない筈!
「「「……」」」
そう思っていたのに、何故か三人共恋バナには乗って来ず、無言で俺の事を見つめている。
え、その間は一体何?
「に、兄さんが」
「カイトさんが」
「カイト君が」
え、俺? 俺がいったい何?
……いや、こういう時はもっと気の利いたセリフを言わないとダメか。
「あれ? もしかして俺、また何かやっちゃいまし……」
「「「男女の仲に気が付くなんて!?」」」
「泣くぞこら!」
ツッコんでしまった。それはもう盛大に。
いやだって、いくら何でも失礼すぎるだろ! 俺だってそのぐらい気付けるわ!
「ほら、良いんか!? 大の大人が公衆の面前で声をあげて泣くぞ!」
自分で言ってて何がしたいのか分からなくなってくるが、こういうのは考えたらダメだ。
「いや、どんな脅しよそれ?」
光から尤もなツッコミが入る。いや、確かにそうなんだけど。
「カイトさん、いい子だから落ち着きましょ? ね?」
マリーからまるで小さい子を宥めるかの様に話しかけられ。
「カイト君、言ってて悲しくならないか?」
フーリから哀れみの視線を向けられる。
だが、ここまで誰一人として、さっきの事を謝ってはくれない。
……え、嘘やろ?
「「「「……」」」」
誰も言葉を発しない、奇妙な静寂が場を支配する。
おい、何だこの空気。一体誰の所為だよ!? ……あ、もしかして俺?
「お待たせしました! これより、トーナメントの組み合わせを発表します!」
絶妙なタイミングで戻って来る司会。まるで狙ったかの様なタイミングだが、おかげでこの沈黙の空間を逃れる事が出来る。
「そ、それじゃあ私はもう戻るわね!」
光が「助かった」と言わんばかりにこの場を立ち去る。
それに合わせた訳じゃないだろうが、武舞台の上の選手達も移動を開始し、会場内には少しずつざわめきが広がり始めた。
「さ、さあ、いよいよですね!」
「ああ、胸が高鳴るな」
マリーも光と似た様な反応なんだけど、フーリはいつも通りの反応をしている。
って事は、フーリにとって今の出来事は、特に気まずいものではなかったって事?
え、それはそれでちょっと傷つくけど、まあ変な事言われるよりはマシか。
そう思い、俺はトーナメントの組み合わせを発表する司会に意識を向けた。
「まずは第一試合 勇者パーティ VS ホーリーナイツ」
ホーリーナイツ? 何だその背中がむず痒くなりそうな名前。しかも絶妙にダサいし。なんか厨二病患者が変に背伸びして付けた名前って感じがするな。
一体どんなメンバーなんだろうかと思い、会場内を見回すと、一目で分かった。
全身真っ白に輝く派手な鎧に身を包み、優雅に髪をかき上げる様な仕草を見せている。しかも三人全員で。
えぇ……何あれ、ダサ。
しかも自分達はカッコいいとでも思っているのか、無差別に流し目を送ってるし。
いや、君達誰に対してそんな事してんの?
会場内の人々は俺と同じ事を考えている人が多いのか、ホーリーナイツへと向けられているのは、大半が痛々しい物を見る目だ。
「ふっ、僕達ホーリーナイツと当たったのが運の尽き。このホーリーソードの錆にしてくれよう!」
そう言って腰に帯刀している剣を引き抜き、高らかに掲げるのは、メンバーの中で一番派手な鎧を着込んだ男。
おそらくアレがリーダーなんだろう。痛々しさが他の二人よりも二割増しぐらいになっている。
それを見ていた御剣君が。
「えーっと……すみません司会者さん、次をお願いします」
「え? あ、はい、そうですね」
華麗にスルーした。それはもう見事なまでに。
本能的に関わったらダメだって判断したんだろうな。おかげでホーリーナイツのリーダー君は変なポーズで固まったままになっている。
あ、涙目になってる。
「ゴホン。少々アクシデントがありましたが、気を取り直して、次の発表に移りたいと思います」
しかもアクシデント扱い。いやあ、最初は厨二を拗らせた、痛々しい人達なんだなと思ってたけど、こうなると哀れに見えてくるな。
同情はしないけど。
「第二試合 守護者 VS 狩人」
続いて発表された組み合わせ。どっちも聞き覚えのないパーティ名だったので、いったいどんなパーティなのかと確認してみると、そこには何というか、これといった特徴のない、普通の冒険者パーティがいた。
武器もショートソードや弓、槍などの至って普通の武器。
防具も、重鎧を装備している者もいれば、最低限の部位だけを守り、動きやすさを重視した軽装の者もいる。
パーティ構成も、前衛二人に後衛一人という構成。
苦手な戦場は少ないだろうが、同時に得意な戦場も少ないだろう。よく言えばオールマイティの万能型。
悪く言えば個性の無い、ごく一般的な構成。
要はどこにでもいそうなパーティという事だ。
だからこそ怖い。
得意な戦場が無い。それはつまり、何かに特化した訳でもないのに、予選を勝ち抜いてきたという事を意味している。
何かに特化した相手なら、それに合わせて戦い方を変えるとかの対策も打てるのだが、それが無いという事は、戦う時は純粋な実力勝負という事になる。
そしてそれは、ある意味俺にとって一番苦手といってもいい分野だ。
冒険者歴がまだ浅い俺にとって、経験や勘という分野はどうしても不足しがちになる能力で、それで勝ち上がってきた相手と戦うとなれば、圧倒的に不利だ。
しかも、苦手な分野も少なそうだから、変に搦手を駆使しても普通に対応されかねないという事にもなる。
出来れば当たりたくないなぁ。
「よろしくお願いします」
「あ、これはご丁寧にどうも。こちらこそよろしくお願いします」
両パーティのリーダーと思われる人物が、お互いに挨拶を交わし合っている。
お互いにこういう挨拶がすんなりと出てくる辺り、人格の方も特に問題は無さそうだ。
リーダー以外のメンバーもお互いに頭を下げ合い、とても平和そうに見える。
冒険者が全員こういう人達なら、揉め事も少なそうなんだが、それは難しそうだ。寧ろ、この二パーティみたいなのが少数派だろうし。
「両パーティとも、冒険者ランクはAランク。その実力は本物です」
強そうだなとは思ったが、二パーティともAランクなのか。それは強そうに見えて当然だ。
っていうか、勇者杯ってもしかしなくても、ほとんどAランク以上のパーティばっかりなのか?
ウチはフーリとマリーはBランク、俺に至ってはCランクなんだけど?
今更ながら「俺達って実は場違いなのでは?」といった事を考え始めたのだが、今更考えても一緒だな。
そんな事を考えている間も、トーナメントの組み合わせの発表は続いていく。
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