見た目は青年、心はアラサー、異世界に降り立つ! ~チートスキル「ストレージ」で異世界を満喫中~
十五話
「へ? 何で二人が孤児院に? 渡り鳥亭にいる筈じゃ……」
確か二人は装備の点検なんかをしたいって言って宿にいた筈じゃなかったか? 少なくとも、孤児院に一緒に来た記憶はない。
「何でって、アンちゃんに頼まれたからですよ!」
「アンに?」
ふとアンを見てみると、アンは今にも泣き出しそうな顔をしていた。
……あ、そういう事か。
「それでカイト君、敵はどこだ?」
フーリが鞘から剣を抜いて構え、周囲を警戒しながら部屋の中を見回している。
恐らくアンは、二人に助けを求めに渡り鳥亭まで走ったんだろう。多分、俺がピンチに陥ってるから助けて欲しい、みたいな事でも言って。
ていうか、凄いな。この短時間で渡り鳥亭まで走ったのかアンは?
「二人共、後ろに下がっててね。私達がちゃんと守るから」
マリーはアンとフォレを後ろに庇いながら、再び俺に視線を向け。
「カイトさん、敵はどこ、に……?」
聞きながら、だんだんと言葉尻が小さくなっていき、困惑気味になるマリー。
多分俺の様子を見て、何かがおかしい事に気が付いたんだろう。
少し遅れてフーリも気が付いたのか、マリー同様困惑し始める。
「あ、あれ? 確かにさっき、おじいちゃんが……」
アンも部屋の中を見て、二人同様目を白黒させて驚いている。アンはさっきのリヒトさんの様子を見ているから、余計に理解が追い付いていないんだろう。
そんなアンを尻目に、フーリは溜息を一つ吐くと。
「カイト君、私達は君がピンチだと聞いて駆け付けたんだが?」
鞘に剣を帯刀しながら尋ねてくる。うん、まあピンチに見えるよね、アレは。実際ストレージのおかげで危な気なく片が付いた様なものだし。
もしもストレージが無かったとしたら、面倒な事になっていたかもしれない。
「いや、まあ、見ての通りというか、なんというか」
だが、それを正直に二人に話すのは非常に気まずい。
二人は俺がピンチだと思って、急いで駆け付けてくれたんだ。それなのに「もう解決したけど」なんて、言える訳ないよね。
だが、言わないと話が進まないから、言葉を濁してフーリに伝えてみた。実は相手がそこまで強くなかった、とか。ストレージのおかげでもう事後処理も終わりそうだとか。
そういうのを大分遠回しに。
するとマリーとフーリの表情が、俺を心配する様なものから、徐々に呆れ顔に変わっていった。
アンは未だに困惑しており、フォレは恐る恐るといった感じで、マリーの後ろから部屋の中を覗いている。
うん、大分シュールな光景だな。それもこれも、全部あの邪神の僕が悪いんだ。そう、あくまで邪神の僕が悪いのであって、俺は断じて悪くない!
決して俺の所為なんかじゃない! いや、マジで今回俺は何も悪くないからね? だからそんな「またお前か」みたいな目で人を見るのはやめて頂きたいんだが?
「カイトさん、今度は何をしでかしたんですか?」
「今度「は」って何!? 今度「は」って!?」」
いかにも俺が、普段から色々やらかしてるみたいな言い方はやめて貰いたいんだけど!?
「いや、君は充分やらかしているだろう? 少しは自覚を持った方がいいぞ?」
フーリが溜息を吐きながらそんな事を言うが、それは誤解だ。俺だって好きでやらかしてる訳じゃない。
問題が向こうから俺に寄って来るんだ。そう、いうなれば不可抗力だな、うん!
「いえ、言いたい事は分かりますよ。でもカイトさんの場合は、問題が向こうから近寄って来なかった場合も、逆に自分から問題に首を突っ込みに行くじゃないですか」
「……」
どうしよう、反論出来ない。確かに問題に自分から首を突っ込みに行った事も少しはあるし、その自覚もある。あくまで少しだよ? そんなに頻繁にじゃない。
でも、マリーの言う事にも一理ある。
「……はぁ、このままでは話しが進まないな。カイト君、結論から教えてくれ。敵はもういないんだな?」
「あ、ああ、それは間違いない」
少なくとも、邪神の僕は既に倒した……ていうか収納したから、少なくともさっきまでいた敵は既にいない。
一応ストレージの中に「邪神の僕の魂」として存在しているが、俺が取り出さない限りは大丈夫だろう。
「そうか。それならいい」
俺がそう答えると、フーリは今度こそ警戒の糸を緩めた様だった。
いや、本当に申し訳ない。思ったよりもすぐに問題が解決したばっかりに、二人には無駄足を踏ませちゃったな。
「それで、実際の所は何があったんですか? アンちゃんに聞いた話だと、只事じゃなかったみたいですけど」
やっぱりそこは気になるか。まあ確かにこのまま何の説明もしないっていうのは流石にあり得ないよな。
さて、何て説明しようか。
「それなんだけど、実は……」
俺がたった今起こった出来事をみんなに説明しようとした時だった。
「うっ、ゴホッゴホッ」
ベッドの方から、リヒトさんの咳き込む声が聞こえてきた。
「……嘘っ」
「おじい、ちゃん?」
それにアンとフォレが、真っ先に反応を示す――って、あれ? デジャヴ?
何かさっきも同じ様な事無かったか?
確かさっきもリヒトさんが急に咳き込んで、それにアンとフォレが反応したよな。
リヒトさんは意識が戻ったのか、その上体をゆっくりと起こし、俺達の方を向くと。
「……アン? フォレ?」
アンとフォレ、二人の名前を呼んだ。うん、さっきと全く同じやり取りだこれ。
違う点と言えば、リヒトさんの表情から気持ち悪さが抜けてるのと、今はマリーとフーリが一緒って事か。
アンとフォレは無意識なのか、俺の背後に怯える様にして隠れてリヒトさんの事を眺める。
「二人共、どうしたの?」
さっきの出来事をまだ知らない二人からしたら、アンとフォレの行動は奇妙な物に見えたのだろう。二人の行動を怪訝に思ったのか、マリーが二人に尋ねた。
「いや、その」
「だって、さっきおじいちゃん、怖かった」
アンは言葉を濁して、フォレははっきりと答えた。
確かにさっきはリヒトさんが目を覚ましたと思ったら、急に襲われたからな。二人のこの行動も仕方がない。
「どうしたんだい、二人共?」
リヒトさんはそんな二人の様子を見て、不思議そうに首を傾げている。
あれ? もしかして、さっきの事覚えてない?
「あの、リヒトさん」
そんな様子が気になり、俺はリヒトさんに声をかけてみる事にした。
「ん? おお、これは失礼しました。お客様がいらしてたのですね」
「あ、いえ、お気遣いなく」
俺が声を掛けた事でリヒトさんは俺達の存在に気が付いたのか、俺達にも話しかけてきた。
リヒトさんのこの感じ、さっきとは全然違うな。さっきは見ていて気持ちの悪くなる様な悪意に満ち溢れていたからな。やっぱりさっきリヒトさんから邪神の僕の魂を分離した事で、リヒトさんは正気に戻ったのだろう。
アンとフォレも、しばらくリヒトさんを見ていて、リヒトさんが正気に戻っていると感じたのか、恐る恐るといった感じで近寄って行く。
「二人共、どうしたんだい? ほら、おいで」
そう言って優し気に微笑むリヒトさんを見て、二人はとうとう我慢の限界に達してしまった様だった。
「お、おじいちゃん!」
「おじいちゃぁん!」
二人がリヒトさんの胸に飛び込んでいく。
その姿が年頃の子供の姿そのもので、俺は初めてみる二人のそんな姿を、微笑ましく見ていた。
「「うわあぁぁん!」」
さっきあんな事があったからか、二人はリヒトさんの胸の中で、声をあげて泣き始める。
「おやおや、これは。二人共、一体どうしたんだい?」
そんな事情を知らない――いや、覚えていないリヒトさんが、二人の様子を見て困惑した様子で尋ねる。
だが、二人はそんなリヒトさんに答える事無く、ただただ泣き続けている。その姿はまるで、親に甘える子供の様にも見える。
これは、邪魔をする訳にはいかないな。そう考えていると、マリーとフーリが俺の肩に手を置いて。
「カイトさん、色々話したい事もあるかもしれませんけど」
「ああ、ここは出直した方がいいだろう」
どうやら二人も俺と同じ事を考えていた様だ。
俺達はそのままリヒトさんの胸の中で泣き続ける二人とリヒトさんを置いて、一度宿へと戻る事にした。
確か二人は装備の点検なんかをしたいって言って宿にいた筈じゃなかったか? 少なくとも、孤児院に一緒に来た記憶はない。
「何でって、アンちゃんに頼まれたからですよ!」
「アンに?」
ふとアンを見てみると、アンは今にも泣き出しそうな顔をしていた。
……あ、そういう事か。
「それでカイト君、敵はどこだ?」
フーリが鞘から剣を抜いて構え、周囲を警戒しながら部屋の中を見回している。
恐らくアンは、二人に助けを求めに渡り鳥亭まで走ったんだろう。多分、俺がピンチに陥ってるから助けて欲しい、みたいな事でも言って。
ていうか、凄いな。この短時間で渡り鳥亭まで走ったのかアンは?
「二人共、後ろに下がっててね。私達がちゃんと守るから」
マリーはアンとフォレを後ろに庇いながら、再び俺に視線を向け。
「カイトさん、敵はどこ、に……?」
聞きながら、だんだんと言葉尻が小さくなっていき、困惑気味になるマリー。
多分俺の様子を見て、何かがおかしい事に気が付いたんだろう。
少し遅れてフーリも気が付いたのか、マリー同様困惑し始める。
「あ、あれ? 確かにさっき、おじいちゃんが……」
アンも部屋の中を見て、二人同様目を白黒させて驚いている。アンはさっきのリヒトさんの様子を見ているから、余計に理解が追い付いていないんだろう。
そんなアンを尻目に、フーリは溜息を一つ吐くと。
「カイト君、私達は君がピンチだと聞いて駆け付けたんだが?」
鞘に剣を帯刀しながら尋ねてくる。うん、まあピンチに見えるよね、アレは。実際ストレージのおかげで危な気なく片が付いた様なものだし。
もしもストレージが無かったとしたら、面倒な事になっていたかもしれない。
「いや、まあ、見ての通りというか、なんというか」
だが、それを正直に二人に話すのは非常に気まずい。
二人は俺がピンチだと思って、急いで駆け付けてくれたんだ。それなのに「もう解決したけど」なんて、言える訳ないよね。
だが、言わないと話が進まないから、言葉を濁してフーリに伝えてみた。実は相手がそこまで強くなかった、とか。ストレージのおかげでもう事後処理も終わりそうだとか。
そういうのを大分遠回しに。
するとマリーとフーリの表情が、俺を心配する様なものから、徐々に呆れ顔に変わっていった。
アンは未だに困惑しており、フォレは恐る恐るといった感じで、マリーの後ろから部屋の中を覗いている。
うん、大分シュールな光景だな。それもこれも、全部あの邪神の僕が悪いんだ。そう、あくまで邪神の僕が悪いのであって、俺は断じて悪くない!
決して俺の所為なんかじゃない! いや、マジで今回俺は何も悪くないからね? だからそんな「またお前か」みたいな目で人を見るのはやめて頂きたいんだが?
「カイトさん、今度は何をしでかしたんですか?」
「今度「は」って何!? 今度「は」って!?」」
いかにも俺が、普段から色々やらかしてるみたいな言い方はやめて貰いたいんだけど!?
「いや、君は充分やらかしているだろう? 少しは自覚を持った方がいいぞ?」
フーリが溜息を吐きながらそんな事を言うが、それは誤解だ。俺だって好きでやらかしてる訳じゃない。
問題が向こうから俺に寄って来るんだ。そう、いうなれば不可抗力だな、うん!
「いえ、言いたい事は分かりますよ。でもカイトさんの場合は、問題が向こうから近寄って来なかった場合も、逆に自分から問題に首を突っ込みに行くじゃないですか」
「……」
どうしよう、反論出来ない。確かに問題に自分から首を突っ込みに行った事も少しはあるし、その自覚もある。あくまで少しだよ? そんなに頻繁にじゃない。
でも、マリーの言う事にも一理ある。
「……はぁ、このままでは話しが進まないな。カイト君、結論から教えてくれ。敵はもういないんだな?」
「あ、ああ、それは間違いない」
少なくとも、邪神の僕は既に倒した……ていうか収納したから、少なくともさっきまでいた敵は既にいない。
一応ストレージの中に「邪神の僕の魂」として存在しているが、俺が取り出さない限りは大丈夫だろう。
「そうか。それならいい」
俺がそう答えると、フーリは今度こそ警戒の糸を緩めた様だった。
いや、本当に申し訳ない。思ったよりもすぐに問題が解決したばっかりに、二人には無駄足を踏ませちゃったな。
「それで、実際の所は何があったんですか? アンちゃんに聞いた話だと、只事じゃなかったみたいですけど」
やっぱりそこは気になるか。まあ確かにこのまま何の説明もしないっていうのは流石にあり得ないよな。
さて、何て説明しようか。
「それなんだけど、実は……」
俺がたった今起こった出来事をみんなに説明しようとした時だった。
「うっ、ゴホッゴホッ」
ベッドの方から、リヒトさんの咳き込む声が聞こえてきた。
「……嘘っ」
「おじい、ちゃん?」
それにアンとフォレが、真っ先に反応を示す――って、あれ? デジャヴ?
何かさっきも同じ様な事無かったか?
確かさっきもリヒトさんが急に咳き込んで、それにアンとフォレが反応したよな。
リヒトさんは意識が戻ったのか、その上体をゆっくりと起こし、俺達の方を向くと。
「……アン? フォレ?」
アンとフォレ、二人の名前を呼んだ。うん、さっきと全く同じやり取りだこれ。
違う点と言えば、リヒトさんの表情から気持ち悪さが抜けてるのと、今はマリーとフーリが一緒って事か。
アンとフォレは無意識なのか、俺の背後に怯える様にして隠れてリヒトさんの事を眺める。
「二人共、どうしたの?」
さっきの出来事をまだ知らない二人からしたら、アンとフォレの行動は奇妙な物に見えたのだろう。二人の行動を怪訝に思ったのか、マリーが二人に尋ねた。
「いや、その」
「だって、さっきおじいちゃん、怖かった」
アンは言葉を濁して、フォレははっきりと答えた。
確かにさっきはリヒトさんが目を覚ましたと思ったら、急に襲われたからな。二人のこの行動も仕方がない。
「どうしたんだい、二人共?」
リヒトさんはそんな二人の様子を見て、不思議そうに首を傾げている。
あれ? もしかして、さっきの事覚えてない?
「あの、リヒトさん」
そんな様子が気になり、俺はリヒトさんに声をかけてみる事にした。
「ん? おお、これは失礼しました。お客様がいらしてたのですね」
「あ、いえ、お気遣いなく」
俺が声を掛けた事でリヒトさんは俺達の存在に気が付いたのか、俺達にも話しかけてきた。
リヒトさんのこの感じ、さっきとは全然違うな。さっきは見ていて気持ちの悪くなる様な悪意に満ち溢れていたからな。やっぱりさっきリヒトさんから邪神の僕の魂を分離した事で、リヒトさんは正気に戻ったのだろう。
アンとフォレも、しばらくリヒトさんを見ていて、リヒトさんが正気に戻っていると感じたのか、恐る恐るといった感じで近寄って行く。
「二人共、どうしたんだい? ほら、おいで」
そう言って優し気に微笑むリヒトさんを見て、二人はとうとう我慢の限界に達してしまった様だった。
「お、おじいちゃん!」
「おじいちゃぁん!」
二人がリヒトさんの胸に飛び込んでいく。
その姿が年頃の子供の姿そのもので、俺は初めてみる二人のそんな姿を、微笑ましく見ていた。
「「うわあぁぁん!」」
さっきあんな事があったからか、二人はリヒトさんの胸の中で、声をあげて泣き始める。
「おやおや、これは。二人共、一体どうしたんだい?」
そんな事情を知らない――いや、覚えていないリヒトさんが、二人の様子を見て困惑した様子で尋ねる。
だが、二人はそんなリヒトさんに答える事無く、ただただ泣き続けている。その姿はまるで、親に甘える子供の様にも見える。
これは、邪魔をする訳にはいかないな。そう考えていると、マリーとフーリが俺の肩に手を置いて。
「カイトさん、色々話したい事もあるかもしれませんけど」
「ああ、ここは出直した方がいいだろう」
どうやら二人も俺と同じ事を考えていた様だ。
俺達はそのままリヒトさんの胸の中で泣き続ける二人とリヒトさんを置いて、一度宿へと戻る事にした。
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