見た目は青年、心はアラサー、異世界に降り立つ! ~チートスキル「ストレージ」で異世界を満喫中~
十二話
「ありがとう、フォレ。でももう大丈夫。ほら……って、あら?」
アンはフォレが差し出した手をそっと押し戻し、一人で立ち上がろうとしたが、再びペタンと尻餅をついてしまった。
あー、もしかして、まだ力が入らない感じか?
「ちょっとだけ待ってね、フォレ。よい、しょ……っと」
再度挑戦するも、結果は同じ。腰ぐらいの高さまですら立ち上がれず、尻餅をついている。
あー、見てらんないな。
「ほら、ちょっとおとなしくしてろよ」
「え? 何を……って、ふぇぇぇぇ!?」
俺はアンの膝裏と肩の辺りに腕を回し、そのままひょいッと持ち上げる。俗にいうお姫様抱っこスタイルだ。
いや、実際子供を抱き上げるのってこれが一番楽なんだよな。力も入りやすい上に安定するし
人を抱える時はしないけど、肩に担ぐのは逆に一番苦手だったりする。よく「これが一番楽」とか言う人もいるけど、俺から言わせればアレは本当に持ちにくくて仕方がない。首も肩も痛くなるし。
前に米俵を担ぐ時にやった事あるが、二度とやらないと思ったもんだ。
「ああ、あのあの! 一体何を!?」
「ん? ああ、大丈夫。ほら、ここに座るといい」
生憎部屋の中には椅子なんて物はなく、仕方がないから俺はそのままベッドの上にアンを座らせた。
とりあえず、ここでゆっくり休んでれば、力も入る様になるだろ。
「あ……」
俺がアンをベッドに座らせると、アンが少しだけ残念そうな声をあげた。
もっと抱っこしてて欲しかったのだろうか? もしそうだとしても、とりあえず先に俺の話を聞いて貰わないと、話が進まない。
「なあアン、聞きたい事があるんだけど」
「……あ、はい。何でしょうか?」
「実は……と、その前に」
俺はアンから話を聞く前に、一度フォレの方に向き直り。
「フォレ。俺はこれからアンと大事な話があるから、先に部屋に戻っててくれるか?」
正直これから話す内容は、あんまり面白いものじゃないし、フォレはここにいても退屈なだけだろう。
それなら、フォレは先に部屋に返してあげた方がいい。
そう思ったのだが。
「いや! おにいちゃんと一緒にいる!」
予想外のハッキリとした拒絶。まさかここまで言い切られるとは思わなかった。
そんなに部屋に戻るのが嫌か? いや、この場合自分だけ除け者にされるのが嫌なのか?
「でも、あんまり面白い話じゃないぞ? いいのか?」
「うん。へいき」
一応もう一回確認してみたが、結果は同じ。先に部屋に戻るつもりはなさそうだ。
うーん、まあ聞かれて困る様な話じゃないし、別にここに居てもいいんだけど。
「そうか。じゃあこのまま……?」
そう言って、俺は視線をフォレからアンに戻すと、アンの頬は薄っすらと赤く染まっており、瞳も若干熱を帯びている様で、ぼーっとしている。
あれ? これって……もしかしてアン、熱出してないか?
「アン、ちょっとごめんな」
「……ふぇ?」
俺は一言断ってから、アンのおデコに手の甲を当ててみた。
「うーん、熱は無さそうだけど」
だが、それなら何でこんなに顔が赤いんだ?
真っ赤って程じゃないけど、一目でわか分かるぐらいには赤くなってるんだけど。
「あ、いえ。別に熱は無いので大丈夫です」
俺がボソッと呟いたのが聞こえていたのか、アンが熱は無いと言う。
それじゃあ何で顔が赤いのかという話にはなるが、まあ本人が大丈夫って言うなら大丈夫なんだろう。
「アンがそう言うなら良いんだけど。なら、話を続けてもいいか?」
「はい。私に答えられる話なら、何でも聞いて下さい」
そう言うアンの表情は、さっきまでと違い、何か強い意志の様な物が宿っている様に感じられる。
一体今の僅かな時間でアンに何があったのだろう? 気にはなるが、今は話を進めるのが先だな。
「じゃあまず、そこの老人は、おじいちゃん――孤児院の院長先生で間違いないか?」
「はい、間違いないです」
まあこれは予想通りだな。
「じゃあ次の質問な。この人は、どのぐらい前から寝たきりだったんだ?」
「えっと、おじいちゃんが寝たきりになったのは……」
おや? 院長先生呼びじゃなくて、おじいちゃん呼びなのか? 確か前に話した時は院長先生って呼んでたと思うけど。
そういえばさっきもおじいちゃんって呼んでたし、もしかしたら本来はこっちが素なのかもしれない。
「今から大体半年ぐらい前ですね。それまでもたまに寝込む事はあったんですけど、こんなに長期間起き上がれなくなったのは、ここ半年ぐらいの間です」
なるほど。つまり逆に言えば、半年以上前はたまに寝込む事はあっても、まだ普通に生活してたって事か。
で、ここ半年ぐらいは、まともに起き上がれなくなった、と……ん? 起き「上がれ」なくなった?
起きなくなった、じゃなくて?
それって、俺が考えていたのとは少し違う様な……?
あれ? もしかして俺、何か勘違いしてるんじゃないか?
今の言い方だと、この人はここ半年の間、ずっと起き上がれなかっただけって事になる。
つまりそれは。
「なあアン、もしかしてだけど、院長先生って、意識はちゃんとあったのか?」
これは結構重要だ。
仮に起き上がれなかったのだとしても、意識があるのと無いのとでは大違いだからな。
「えっと……はい、一応。ただ、ご飯もほとんど食べなくなってましたけど」
俺の予想通り、この人は意識不明だった訳じゃないみたいだ。むしろ、僅かとは言え飯も食べてた事の方に驚いた。
まあもしも飯すら食べれない状態だったなら、もって数日といった所だったろうけど。
「……なら、もしかして老衰じゃない?」
仮にさっきのが老衰だったなら、心肺蘇生をした所で助かったかどうか。むしろ、素人のうろ覚えの知識で息を吹き返したんだから、原因は他にあるんじゃないかとも思う。
いや、医療関係の知識なんて俺には皆無だからよく分からないけど。
「っと、そんな事よりもだ」
俺はストレージを展開し、中からポーションと解毒薬を一つずつ取り出した。
効果があるかは分からないけど、無いよりはマシだろう。
「アン、次にこの人が目を覚ましたら、これを飲ませてあげてくれないか?」
俺はその二つをアンに差し出し、院長先生に飲ませるように言った。
生憎俺はいつまでもここに居る訳じゃないし、こういうのはアンに任せた方が良いだろう。
「え、この二つですか? これって……」
「ポーションと解毒薬だ」
一目見ただけでは何なのか分からないだろうと思い、この二つがポーションと解毒薬であるとアンに教えた。
ポーションに関しては、効果が無かったとしても、体力回復に役立つだろう。解毒薬は、まあアレだ。何事も無ければただの飲み物になるだけだ。体に害はない。
「え、ポーションと解毒薬? いいんですか?」
「ああ、いいとも」
むしろ貰ってくれないと困るまである。
でも、これで足りるか? もっと沢山あった方がいいんじゃないか? 足りないよりは余る方が良いと思うけど。
そう思ってアンに尋ねてみたが。
「いえいえ、大丈夫です! ありがとうございます! おじいちゃんもきっと喜んでくれるに違いありません!」
ポーションと解毒薬が? それは大袈裟じゃない? こんなの薬草と解毒草さえあればいくらでも作れるけど?
確かストレージの中には薬草も解毒草も残ってた筈だし。
「本当にありがとうございます、お兄さん!」
そう言うとアンは、受け取ったポーションと解毒薬を一度近くのテーブルの上に置き、再び俺に視線を向けてきた。
「あの、お兄さん」
「ん? 何だ?」
何かやたらと覚悟を決めた顔をしてるけど、気の所為か?
「あの、実は私、お兄さ「ゴホッゴホッ」え?」
アンが再び口を開いた次の瞬間だった。
まだ意識が戻らないと思い込んでいた院長先生が、ベッドの上で薄っすらと目を開けたのは。
アンはフォレが差し出した手をそっと押し戻し、一人で立ち上がろうとしたが、再びペタンと尻餅をついてしまった。
あー、もしかして、まだ力が入らない感じか?
「ちょっとだけ待ってね、フォレ。よい、しょ……っと」
再度挑戦するも、結果は同じ。腰ぐらいの高さまですら立ち上がれず、尻餅をついている。
あー、見てらんないな。
「ほら、ちょっとおとなしくしてろよ」
「え? 何を……って、ふぇぇぇぇ!?」
俺はアンの膝裏と肩の辺りに腕を回し、そのままひょいッと持ち上げる。俗にいうお姫様抱っこスタイルだ。
いや、実際子供を抱き上げるのってこれが一番楽なんだよな。力も入りやすい上に安定するし
人を抱える時はしないけど、肩に担ぐのは逆に一番苦手だったりする。よく「これが一番楽」とか言う人もいるけど、俺から言わせればアレは本当に持ちにくくて仕方がない。首も肩も痛くなるし。
前に米俵を担ぐ時にやった事あるが、二度とやらないと思ったもんだ。
「ああ、あのあの! 一体何を!?」
「ん? ああ、大丈夫。ほら、ここに座るといい」
生憎部屋の中には椅子なんて物はなく、仕方がないから俺はそのままベッドの上にアンを座らせた。
とりあえず、ここでゆっくり休んでれば、力も入る様になるだろ。
「あ……」
俺がアンをベッドに座らせると、アンが少しだけ残念そうな声をあげた。
もっと抱っこしてて欲しかったのだろうか? もしそうだとしても、とりあえず先に俺の話を聞いて貰わないと、話が進まない。
「なあアン、聞きたい事があるんだけど」
「……あ、はい。何でしょうか?」
「実は……と、その前に」
俺はアンから話を聞く前に、一度フォレの方に向き直り。
「フォレ。俺はこれからアンと大事な話があるから、先に部屋に戻っててくれるか?」
正直これから話す内容は、あんまり面白いものじゃないし、フォレはここにいても退屈なだけだろう。
それなら、フォレは先に部屋に返してあげた方がいい。
そう思ったのだが。
「いや! おにいちゃんと一緒にいる!」
予想外のハッキリとした拒絶。まさかここまで言い切られるとは思わなかった。
そんなに部屋に戻るのが嫌か? いや、この場合自分だけ除け者にされるのが嫌なのか?
「でも、あんまり面白い話じゃないぞ? いいのか?」
「うん。へいき」
一応もう一回確認してみたが、結果は同じ。先に部屋に戻るつもりはなさそうだ。
うーん、まあ聞かれて困る様な話じゃないし、別にここに居てもいいんだけど。
「そうか。じゃあこのまま……?」
そう言って、俺は視線をフォレからアンに戻すと、アンの頬は薄っすらと赤く染まっており、瞳も若干熱を帯びている様で、ぼーっとしている。
あれ? これって……もしかしてアン、熱出してないか?
「アン、ちょっとごめんな」
「……ふぇ?」
俺は一言断ってから、アンのおデコに手の甲を当ててみた。
「うーん、熱は無さそうだけど」
だが、それなら何でこんなに顔が赤いんだ?
真っ赤って程じゃないけど、一目でわか分かるぐらいには赤くなってるんだけど。
「あ、いえ。別に熱は無いので大丈夫です」
俺がボソッと呟いたのが聞こえていたのか、アンが熱は無いと言う。
それじゃあ何で顔が赤いのかという話にはなるが、まあ本人が大丈夫って言うなら大丈夫なんだろう。
「アンがそう言うなら良いんだけど。なら、話を続けてもいいか?」
「はい。私に答えられる話なら、何でも聞いて下さい」
そう言うアンの表情は、さっきまでと違い、何か強い意志の様な物が宿っている様に感じられる。
一体今の僅かな時間でアンに何があったのだろう? 気にはなるが、今は話を進めるのが先だな。
「じゃあまず、そこの老人は、おじいちゃん――孤児院の院長先生で間違いないか?」
「はい、間違いないです」
まあこれは予想通りだな。
「じゃあ次の質問な。この人は、どのぐらい前から寝たきりだったんだ?」
「えっと、おじいちゃんが寝たきりになったのは……」
おや? 院長先生呼びじゃなくて、おじいちゃん呼びなのか? 確か前に話した時は院長先生って呼んでたと思うけど。
そういえばさっきもおじいちゃんって呼んでたし、もしかしたら本来はこっちが素なのかもしれない。
「今から大体半年ぐらい前ですね。それまでもたまに寝込む事はあったんですけど、こんなに長期間起き上がれなくなったのは、ここ半年ぐらいの間です」
なるほど。つまり逆に言えば、半年以上前はたまに寝込む事はあっても、まだ普通に生活してたって事か。
で、ここ半年ぐらいは、まともに起き上がれなくなった、と……ん? 起き「上がれ」なくなった?
起きなくなった、じゃなくて?
それって、俺が考えていたのとは少し違う様な……?
あれ? もしかして俺、何か勘違いしてるんじゃないか?
今の言い方だと、この人はここ半年の間、ずっと起き上がれなかっただけって事になる。
つまりそれは。
「なあアン、もしかしてだけど、院長先生って、意識はちゃんとあったのか?」
これは結構重要だ。
仮に起き上がれなかったのだとしても、意識があるのと無いのとでは大違いだからな。
「えっと……はい、一応。ただ、ご飯もほとんど食べなくなってましたけど」
俺の予想通り、この人は意識不明だった訳じゃないみたいだ。むしろ、僅かとは言え飯も食べてた事の方に驚いた。
まあもしも飯すら食べれない状態だったなら、もって数日といった所だったろうけど。
「……なら、もしかして老衰じゃない?」
仮にさっきのが老衰だったなら、心肺蘇生をした所で助かったかどうか。むしろ、素人のうろ覚えの知識で息を吹き返したんだから、原因は他にあるんじゃないかとも思う。
いや、医療関係の知識なんて俺には皆無だからよく分からないけど。
「っと、そんな事よりもだ」
俺はストレージを展開し、中からポーションと解毒薬を一つずつ取り出した。
効果があるかは分からないけど、無いよりはマシだろう。
「アン、次にこの人が目を覚ましたら、これを飲ませてあげてくれないか?」
俺はその二つをアンに差し出し、院長先生に飲ませるように言った。
生憎俺はいつまでもここに居る訳じゃないし、こういうのはアンに任せた方が良いだろう。
「え、この二つですか? これって……」
「ポーションと解毒薬だ」
一目見ただけでは何なのか分からないだろうと思い、この二つがポーションと解毒薬であるとアンに教えた。
ポーションに関しては、効果が無かったとしても、体力回復に役立つだろう。解毒薬は、まあアレだ。何事も無ければただの飲み物になるだけだ。体に害はない。
「え、ポーションと解毒薬? いいんですか?」
「ああ、いいとも」
むしろ貰ってくれないと困るまである。
でも、これで足りるか? もっと沢山あった方がいいんじゃないか? 足りないよりは余る方が良いと思うけど。
そう思ってアンに尋ねてみたが。
「いえいえ、大丈夫です! ありがとうございます! おじいちゃんもきっと喜んでくれるに違いありません!」
ポーションと解毒薬が? それは大袈裟じゃない? こんなの薬草と解毒草さえあればいくらでも作れるけど?
確かストレージの中には薬草も解毒草も残ってた筈だし。
「本当にありがとうございます、お兄さん!」
そう言うとアンは、受け取ったポーションと解毒薬を一度近くのテーブルの上に置き、再び俺に視線を向けてきた。
「あの、お兄さん」
「ん? 何だ?」
何かやたらと覚悟を決めた顔をしてるけど、気の所為か?
「あの、実は私、お兄さ「ゴホッゴホッ」え?」
アンが再び口を開いた次の瞬間だった。
まだ意識が戻らないと思い込んでいた院長先生が、ベッドの上で薄っすらと目を開けたのは。
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