見た目は青年、心はアラサー、異世界に降り立つ! ~チートスキル「ストレージ」で異世界を満喫中~
四話
「あ、ニーナさん」
「コノエさん? こんにちは」
「あ、こんにちは」
アミィと一階まで来ると、丁度ニーナさんが受付の奥から顔を出した所だった。
「こんにちは、ニーナさん。すみません、今日も厨房を貸して貰えませんか?」
「こんにちは、アミィちゃん。厨房を? ええ、構わないわよ」
アミィが厨房を貸して欲しいと頼むと、ニーナさんは二つ返事で了承していた。ていうかこの二人って、結構仲が良いのか?
光の料理を手伝ってる時にでも仲良くなったのかな?
「ありがとうございます。それじゃあお兄ちゃん。私はこのまま晩御飯の準備をするから、さっきの出して貰ってもいい?」
「ん? ああ、あれな。ちょっと待ってろ」
俺はストレージを開き、さっき仕舞った晩飯の材料を取り出した。
うん、相変わらず結構な重さがあるな。
「ここで渡して良いのか?」
「うん、厨房はすぐそこだから大丈夫だよ」
アミィは迷いなくそう言い切る。本当に大丈夫か? 別に厨房まで運んでもいいんだけど。
とりあえず問題ないというアミィが言うのであれば、それ以上は何も言わないけど。
俺が抱えた籠をアミィに向かって差し出すと、アミィはそれを両手でしっかりと受け取る。
「わわっ」
「っと、大丈夫か?」
俺から籠を受け取ったアミィが一瞬よろけたので、慌ててその体を支えようと身を乗り出す。
だが、俺が支える前に、自分で態勢を整えたアミィは、俺の方を見て。
「うん、大丈夫だよ。平気平気」
平気そうな顔をしてそう言った。そして更に満面の笑みを浮かべると。
「ほら、私は大丈夫だから、お兄ちゃんは気にせず孤児院に行っていいよ」
「そうか?」
俺を心配させまいとしているのか、何でもない様な声音でそう言った。
「コノエさん、孤児院に行かれるんですか?」
今のやり取りを見ていたニーナさんが「孤児院」という単語に反応して尋ねてくる。やっぱり孤児院の話は気になるのか?
「ええ、ちょっと顔を見せに。フォレと約束してるんで」
なるべく早く孤児院に帰るって約束したからな。お土産も沢山用意するって言ったし、早く向かわないと。
「そうなんですか。それは、お引止めしてすみませんでした」
「いえいえそんな。挨拶しただけじゃないですか」
知り合いに会ったから一言挨拶をする。それは別に悪い事じゃない。それを「引き止められた」なんて言う筈がない。
ただ、それをここで言っても時間を食うだけだ。ニーナさんも本気で「引き止めて申し訳ない」とか思ってる訳じゃないだろうし。
「それじゃあ、ちょっと出かけてきますね」
「はい、いってらっしゃいませ」
「いってらっしゃい!」
俺が一言声をかけると、二人から見送りの言葉を掛けられる。
そのまま二人に見送られながら、俺は渡り鳥亭を出て孤児院へと向かった。
「さてと」
孤児院に行く前に、フォレと約束したお土産を用意しないとな。ストレージの中には出店で買った物が結構な量保管されてるけど、それはフォレへのお土産とは少し違う気がする。
お土産を買って来るって言ったからには、ちゃんとフォレの好みを考えて用意するのが筋だ。
という事で。
「パレード会場を覗きに行くか」
あんまり時間はかけられないから、なるべく早く済ませよう。
俺は一般区の方へと足を向け、そのままパレード会場目指して歩き出した。
「うーん、ここに来たはいいけど、何買って行こう?」
お好み焼きとか串焼きはなんか違うよな。いや、多分買って行ったら喜んで食べるのは目に見えてるけど、それは何かが違う。
もっとこう、お土産っぽいというか、女の子が喜びそうな物を買って行きたいんだけど。
そんな事を考えながら出店を順に覗いていた時だった。
目の前の屋台に並んでいる、キラキラと輝く真っ赤な宝石の様な物を見つけたのは。
「りんご飴か」
そう、りんご飴。見た目はとても綺麗で、食べると甘酸っぱさが口いっぱいに広がるお菓子。いや、りんご飴ってお菓子でいいのか? お菓子とはちょっと違う気がするけど……まあ今はどうでもいいか。
それよりも今重要なのは、これをお土産に買って行くどうかだ。
正直りんご飴なら、今もストレージの中にいくつか保管されている。初日に買った分だ。
だから、別にここで買わなくても、保管してある分をあげればいいだけなんだけど、そこで少し迷う。
「確かに理屈ではそうなんだけど、これは理屈じゃないからなぁ」
フォレの事を考えて用意する事に意味がある訳で、安易に「手持ちがあるから」と考えるのはあんまりよろしくない。
うーん……よし、決めた!
「すみません、ここに並んでるりんご飴全部下さい!」
俺は出店の店主に向かって一言声をかける。店先にあるりんご飴は、全部で二十以上はありそうで、これだけあればフォレ以外の子にもあげられそうだ。
ただ、これだけだと孤児院の子全員分には足りないから、出来ればもっと欲しい所だけど。
「はいはい、まいど……全部!? あんた今、全部って言ったかい!?」
「え? はい、言いましたけど」
店主のおばちゃんは随分と驚いている様だが、俺何か変な事言ったか? ここに並んでる分って言っても、そんな大した数じゃないし、このぐらい普通だと思うけど。
「全部って言うと二十個ぐらいあるけど、そんなに買ってどうするつもりなんだい?」
おばちゃんは不可解な物を見る様な目で俺の事を見て言った。
いやまあ確かに一人で二十個も買う人なんて滅多にいないだろうから、おばちゃんの言いたい事も分からないじゃないけど。
「ちょっとお土産に買って帰ろうかと思いまして。何分配る人数が多いものですから」
孤児院にいる子達は、少なく見積もっても四十人以上はいたと思う。
それだけの人数に配るなら、むしろこれでも足りないぐらいだ。
「へー、そうなのかい? まあウチとしては大助かりだけどね。それで、そこにあるの全部でいいんだね?」
おばちゃんは驚いてはいたものの、俺が事情を説明するとすぐに納得し、早速商売に移ってくれた。
こういう切り替えの早い人っていいよな。話が早くて。
普段みたいに時間がある時なら、世間話に花を咲かせるのもいいんだけど、生憎今の俺は急ぎの身。あまり長居する時間はない。
そんな事を考えていると。
「でも、あんた一人でそんなに持ちきれないだろう? どうやって持ち歩くつもりだい?」
「あ、俺アイテムボックス持ちなんで、その辺の心配はしなくても大丈夫です」
おばちゃんの尤もな質問に、俺はストレージから財布を取り出して見せながら答えた。百聞は一見に如かずって言うし、実際に見た方がすぐに納得するだろう。
それにしても、この「アイテムボックス持ち」って言い訳にも随分と慣れてきたな。
「あんたアイテムボックス持ちなのかい? へえ、人は見かけによらないねぇ」
感心したように何度も頷き、失礼な事を言うおばちゃん。
いや、見かけによらないってどういうこっちゃねん! だが、それをツッコんでも遅くなるだけなので、俺は喉元まで出掛けたツッコミをなんとか飲み込んだ。
「ええ、そうなんですよ。それで、このりんご飴もっと欲しいんですけど、まだ在庫余ってたりしないですか?」
「うん? 一応まだあるけど、いくつぐらい欲しいんだい?」
おばちゃんに尋ねてみると、まだあるという。いやあ、聞いてみるもんだなぁ!
「えっと……全部で五十個ぐらい欲しいんですけど」
「五十!?」
俺が孤児院の子供の数を頭に思い浮かべながら答えると、おばちゃんはまたしても素っ頓狂な声をあげて驚いていた。
「コノエさん? こんにちは」
「あ、こんにちは」
アミィと一階まで来ると、丁度ニーナさんが受付の奥から顔を出した所だった。
「こんにちは、ニーナさん。すみません、今日も厨房を貸して貰えませんか?」
「こんにちは、アミィちゃん。厨房を? ええ、構わないわよ」
アミィが厨房を貸して欲しいと頼むと、ニーナさんは二つ返事で了承していた。ていうかこの二人って、結構仲が良いのか?
光の料理を手伝ってる時にでも仲良くなったのかな?
「ありがとうございます。それじゃあお兄ちゃん。私はこのまま晩御飯の準備をするから、さっきの出して貰ってもいい?」
「ん? ああ、あれな。ちょっと待ってろ」
俺はストレージを開き、さっき仕舞った晩飯の材料を取り出した。
うん、相変わらず結構な重さがあるな。
「ここで渡して良いのか?」
「うん、厨房はすぐそこだから大丈夫だよ」
アミィは迷いなくそう言い切る。本当に大丈夫か? 別に厨房まで運んでもいいんだけど。
とりあえず問題ないというアミィが言うのであれば、それ以上は何も言わないけど。
俺が抱えた籠をアミィに向かって差し出すと、アミィはそれを両手でしっかりと受け取る。
「わわっ」
「っと、大丈夫か?」
俺から籠を受け取ったアミィが一瞬よろけたので、慌ててその体を支えようと身を乗り出す。
だが、俺が支える前に、自分で態勢を整えたアミィは、俺の方を見て。
「うん、大丈夫だよ。平気平気」
平気そうな顔をしてそう言った。そして更に満面の笑みを浮かべると。
「ほら、私は大丈夫だから、お兄ちゃんは気にせず孤児院に行っていいよ」
「そうか?」
俺を心配させまいとしているのか、何でもない様な声音でそう言った。
「コノエさん、孤児院に行かれるんですか?」
今のやり取りを見ていたニーナさんが「孤児院」という単語に反応して尋ねてくる。やっぱり孤児院の話は気になるのか?
「ええ、ちょっと顔を見せに。フォレと約束してるんで」
なるべく早く孤児院に帰るって約束したからな。お土産も沢山用意するって言ったし、早く向かわないと。
「そうなんですか。それは、お引止めしてすみませんでした」
「いえいえそんな。挨拶しただけじゃないですか」
知り合いに会ったから一言挨拶をする。それは別に悪い事じゃない。それを「引き止められた」なんて言う筈がない。
ただ、それをここで言っても時間を食うだけだ。ニーナさんも本気で「引き止めて申し訳ない」とか思ってる訳じゃないだろうし。
「それじゃあ、ちょっと出かけてきますね」
「はい、いってらっしゃいませ」
「いってらっしゃい!」
俺が一言声をかけると、二人から見送りの言葉を掛けられる。
そのまま二人に見送られながら、俺は渡り鳥亭を出て孤児院へと向かった。
「さてと」
孤児院に行く前に、フォレと約束したお土産を用意しないとな。ストレージの中には出店で買った物が結構な量保管されてるけど、それはフォレへのお土産とは少し違う気がする。
お土産を買って来るって言ったからには、ちゃんとフォレの好みを考えて用意するのが筋だ。
という事で。
「パレード会場を覗きに行くか」
あんまり時間はかけられないから、なるべく早く済ませよう。
俺は一般区の方へと足を向け、そのままパレード会場目指して歩き出した。
「うーん、ここに来たはいいけど、何買って行こう?」
お好み焼きとか串焼きはなんか違うよな。いや、多分買って行ったら喜んで食べるのは目に見えてるけど、それは何かが違う。
もっとこう、お土産っぽいというか、女の子が喜びそうな物を買って行きたいんだけど。
そんな事を考えながら出店を順に覗いていた時だった。
目の前の屋台に並んでいる、キラキラと輝く真っ赤な宝石の様な物を見つけたのは。
「りんご飴か」
そう、りんご飴。見た目はとても綺麗で、食べると甘酸っぱさが口いっぱいに広がるお菓子。いや、りんご飴ってお菓子でいいのか? お菓子とはちょっと違う気がするけど……まあ今はどうでもいいか。
それよりも今重要なのは、これをお土産に買って行くどうかだ。
正直りんご飴なら、今もストレージの中にいくつか保管されている。初日に買った分だ。
だから、別にここで買わなくても、保管してある分をあげればいいだけなんだけど、そこで少し迷う。
「確かに理屈ではそうなんだけど、これは理屈じゃないからなぁ」
フォレの事を考えて用意する事に意味がある訳で、安易に「手持ちがあるから」と考えるのはあんまりよろしくない。
うーん……よし、決めた!
「すみません、ここに並んでるりんご飴全部下さい!」
俺は出店の店主に向かって一言声をかける。店先にあるりんご飴は、全部で二十以上はありそうで、これだけあればフォレ以外の子にもあげられそうだ。
ただ、これだけだと孤児院の子全員分には足りないから、出来ればもっと欲しい所だけど。
「はいはい、まいど……全部!? あんた今、全部って言ったかい!?」
「え? はい、言いましたけど」
店主のおばちゃんは随分と驚いている様だが、俺何か変な事言ったか? ここに並んでる分って言っても、そんな大した数じゃないし、このぐらい普通だと思うけど。
「全部って言うと二十個ぐらいあるけど、そんなに買ってどうするつもりなんだい?」
おばちゃんは不可解な物を見る様な目で俺の事を見て言った。
いやまあ確かに一人で二十個も買う人なんて滅多にいないだろうから、おばちゃんの言いたい事も分からないじゃないけど。
「ちょっとお土産に買って帰ろうかと思いまして。何分配る人数が多いものですから」
孤児院にいる子達は、少なく見積もっても四十人以上はいたと思う。
それだけの人数に配るなら、むしろこれでも足りないぐらいだ。
「へー、そうなのかい? まあウチとしては大助かりだけどね。それで、そこにあるの全部でいいんだね?」
おばちゃんは驚いてはいたものの、俺が事情を説明するとすぐに納得し、早速商売に移ってくれた。
こういう切り替えの早い人っていいよな。話が早くて。
普段みたいに時間がある時なら、世間話に花を咲かせるのもいいんだけど、生憎今の俺は急ぎの身。あまり長居する時間はない。
そんな事を考えていると。
「でも、あんた一人でそんなに持ちきれないだろう? どうやって持ち歩くつもりだい?」
「あ、俺アイテムボックス持ちなんで、その辺の心配はしなくても大丈夫です」
おばちゃんの尤もな質問に、俺はストレージから財布を取り出して見せながら答えた。百聞は一見に如かずって言うし、実際に見た方がすぐに納得するだろう。
それにしても、この「アイテムボックス持ち」って言い訳にも随分と慣れてきたな。
「あんたアイテムボックス持ちなのかい? へえ、人は見かけによらないねぇ」
感心したように何度も頷き、失礼な事を言うおばちゃん。
いや、見かけによらないってどういうこっちゃねん! だが、それをツッコんでも遅くなるだけなので、俺は喉元まで出掛けたツッコミをなんとか飲み込んだ。
「ええ、そうなんですよ。それで、このりんご飴もっと欲しいんですけど、まだ在庫余ってたりしないですか?」
「うん? 一応まだあるけど、いくつぐらい欲しいんだい?」
おばちゃんに尋ねてみると、まだあるという。いやあ、聞いてみるもんだなぁ!
「えっと……全部で五十個ぐらい欲しいんですけど」
「五十!?」
俺が孤児院の子供の数を頭に思い浮かべながら答えると、おばちゃんはまたしても素っ頓狂な声をあげて驚いていた。
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