見た目は青年、心はアラサー、異世界に降り立つ! ~チートスキル「ストレージ」で異世界を満喫中~
十八話
「そ、そりゃあ、意識するに決まってんじゃん」
そんな当たり前な事、今更聞いてどうするってんだ? ていうか、恥ずかしいから言わせないで欲しい。
「え!? 意識……するんですか?」
「いや、当たり前だろ?」
むしろ意識しないと思ってたのか? 意識してるからこそ、どうしようか必死に考えてたんだけど。
「そ、そうですか。意識……するんですか……」
俺が「意識する」と言うと、マリーは段々と声が小さくなっていき、恥ずかし気に頬を掻いたりし始めた。
あれ? この反応、もしかして。
「なあひょっとして「俺がマリーの事意識してない」とでも思ってた?」
「ぎくっ」
ぎくって……。実際にそれ言う人間初めて見たんだけど。
どうやらマリーは、俺がマリーと同室になっても、全く意識してないと勘違いしていたらしい。
いや、流石にそんな訳ないって。俺だって健全な男だぞ?
「そ、それより! だったらどうしましょうか? いっそアンちゃんに話して、もう一部屋用意して貰いますか?」
マリーは誤魔化す様に話題を変えてきた。それに対してツッコミを入れたい気分に駆られたが、今はマリーの言う通り、この状況をどうするか考える方が先決だ。
だが。
「もう一部屋か。でも、まだ部屋があると思うか? 子供達だってみんな一緒の部屋で寝てるんだ。もう空いてる部屋は無いんじゃないか?」
確かに部屋自体はまだあるみたいだったけど、もしまだ部屋に余裕があるのなら、もっと自分達の為に使ってる筈だ。いや、なんならこの部屋だって、俺達を泊める為に無理して用意した可能性すらある。
元々は子供達が使ってた部屋を、今日一日の為に空けたとか。
そう考えたら、子供達が一部屋で寝てるのにも説明がつく。
そしてもしそうなら、これ以上無理を言う訳にいかない。
「……マリーは気にしないって言ってたよな?」
「え? ……あ、えっと。そう、ですね。カイトさんの事は信じてますから。だから、私は、気に……しませんよ?」
何で疑問形? まあそれは良いとして。
「それなら、今夜一晩だけは我慢しないか? あんまりアンに無理言うのも悪いしさ」
「ふぇっ!? ……はっ! そ、そうですね! アンちゃんに悪いですもんね! そうしましょう!」
マリーは一度素っ頓狂な声を上げたかと思うと、何かを誤魔化す様に声を上げて賛同してきた。
大丈夫か?
「そ、そうか。なら決まりだな」
「は、はい、そうですね」
「……」
今度はやたら覚悟を決めた様な声で頷くマリー。俺の事、本当に信じてくれてるんだよね?
俺はその信じてるって言葉を信じていいのか?
「さて、あまり夜更かしするのも良くないですし、も、もう寝ましょうか!」
「あ、ああ、そうだな」
マリーの必死さに、俺は若干気圧されながらも頷いた。
「そ、それじゃあ私はこっちのベッドを使いますけど、良いですか?」
マリーは窓側に置かれたベッドを指差しながら尋ねてきた。
「ああ、分かった。じゃあ俺はこっちのベッドを使うな」
消去法で、俺は残りの一つを使う事になる。別に窓際かどうかのこだわりは無いし、なんなら一晩泊まるだけだ。
そう考え、俺はマリーに答えながら自分のベッドに腰かけた。
「わ、私、明かり消しますね!」
「あ、ああ。ありがとう」
マリーは部屋の入り口に設置されたランプの元まで歩いて行き、それを吹き消すと、今度は同じ様に反対側に設置されたランプを手に取り。
「それじゃあ、おやすみなさい、カイトさん」
「お、おう、おやすみ」
残りのランプも吹き消すと、部屋の中に心地よい暗闇が訪れた。
普段なら寝るのに最適な暗さだが、残念ながら今の俺は心臓が張り裂けそうなぐらいバクバクしていて、とても眠れそうにない。
今俺は、この狭くもなく、広くもない部屋に、マリーと二人きり。
そう、俺のすぐ近くでは、マリーが寝ているのだ。そう考えると、とても寝てなんていられない。それはマリーも同じで……。
「すぅ、すぅ」
「……」
いや寝てるんかい! さっきめっちゃ意識してるみたいな言い方してたのに、いざ寝るタイミングになると、あっさりと寝てしまった様だ。
「なんか、力抜けたな」
変に意識してた自分が馬鹿みたいに思えてきた。
「……寝るか」
今ならすぐに寝れそうな気がする。
そう思い、俺は一度寝返りを打ってから、そのまま眠りについた。
「帰って来ないわね、兄さん」
「帰って来ませんね、お兄ちゃん」
ここは渡り鳥亭という宿。その一室で神妙な表情で話し合う二人の人影がある。
一人は近衛海斗のいもう「義理のよ」失礼しました。義理の妹、近衛光。
もう一人は、賢者の息吹の看板娘、アミィ。
二人は未だに帰らない部屋の主、近衛海斗の事について話をしていた。何で二人が海斗の部屋にいるのか、などとツッコんではいけない。そういう物なのだと思って貰いたい。
「流石にこんな時間まで夕飯をご馳走になるなんて、あり得ないわよね?」
「はい、あり得ません。ウチの手伝いをしていた時でも、お夕飯がここまで遅くなるなんて事はありませんでした」
「ちょっと待って。その話詳しく……」
「とにかく!」
アミィは光の言葉を遮る様に声を被せた。
「この状況、どう見ますか、光さん?」
アミィが確認する様に光に尋ねた。その表情は真剣そのもの。どうやら、本気で海斗の心配をしているよう……。
「朝帰りね」
心配を……
「やっぱり、朝帰りなんでしょうか?」
……。
「ええ、きっとそう。やっぱり無理を言ってでも、兄さんに付いて行くべきだったわ」
「そうですね。まさか朝帰りなんて。お兄ちゃん、信じてたのに」
どうやら海斗の心配している訳ではなかった様だ。
二人は海斗がこんな時間になっても帰って来ないのを、朝帰りでもするつもりだと考えている様だ。
実際はアンの厚意に甘えて孤児院に泊まっているだけなのだが、二人がそれを知る由もない。
それどころか朝帰りだと勘違いしている。
やはり連絡というのは重要だという典型である。
「どうしましょうか、光さん?」
「どうしましょうね、アミィ?」
二人は顔を見合わせると。
「「ふふふふっ」」
暗い表情で笑いあう。
「二人共、ここにいるのか?」
二人が笑い合っていると、部屋の外から声が聞こえてくる。
「「フーリさん」」
渡り鳥亭に泊まるマリーの姉、フーリだ。
「いい加減夜も遅いんだ。早めに寝るんだぞ」
「あ、はい、分かりました」
「はい、大丈夫です」
フーリに返事を返す二人の顔には、先程の様な暗い表情は浮かんでいなかった。どうやら感情の切り替えは出来ている様だ。
「それじゃあ私はもう寝るからな。ああ、それと」
二人が答えると、フーリはそのまま踵を返そうとして、何かを思い出したかのようにその足を止めた。
「はい?」
「何ですか?」
扉越しに聞き返す二人。そんな二人にフーリは。
「カイト君達だが、恐らくアンに言われて孤児院に泊まっているだけだと思うぞ。ニーナさんにも聞いてみたから、恐らく間違いない」
二人の誤解を解きそうな話をした。
「「な、何の話を?」」
二人の声が見事に被る。どうやら自分達が話していた内容に対する答えを、ピンポイントで話したフーリに動揺している様だ。
二人が動揺しているのが伝わったのか、扉の外のフーリは溜息を一つ吐くと。
「とにかく、二人共心配しなくても大丈夫だ。あのカイト君だぞ? 何も起きる訳が無いだろう?」
「「……確かに!」」
フーリの言葉に二人は考え込むような仕草をした後「それは盲点だった」とでも言いた気に大きく頷いた。
二人も大概失礼である。
部屋の中から聞こえてくる、喜ぶような声に、フーリはもう一度大きな溜息を吐くと、今度こそ踵を返して自室へと戻るのだった。
そんな当たり前な事、今更聞いてどうするってんだ? ていうか、恥ずかしいから言わせないで欲しい。
「え!? 意識……するんですか?」
「いや、当たり前だろ?」
むしろ意識しないと思ってたのか? 意識してるからこそ、どうしようか必死に考えてたんだけど。
「そ、そうですか。意識……するんですか……」
俺が「意識する」と言うと、マリーは段々と声が小さくなっていき、恥ずかし気に頬を掻いたりし始めた。
あれ? この反応、もしかして。
「なあひょっとして「俺がマリーの事意識してない」とでも思ってた?」
「ぎくっ」
ぎくって……。実際にそれ言う人間初めて見たんだけど。
どうやらマリーは、俺がマリーと同室になっても、全く意識してないと勘違いしていたらしい。
いや、流石にそんな訳ないって。俺だって健全な男だぞ?
「そ、それより! だったらどうしましょうか? いっそアンちゃんに話して、もう一部屋用意して貰いますか?」
マリーは誤魔化す様に話題を変えてきた。それに対してツッコミを入れたい気分に駆られたが、今はマリーの言う通り、この状況をどうするか考える方が先決だ。
だが。
「もう一部屋か。でも、まだ部屋があると思うか? 子供達だってみんな一緒の部屋で寝てるんだ。もう空いてる部屋は無いんじゃないか?」
確かに部屋自体はまだあるみたいだったけど、もしまだ部屋に余裕があるのなら、もっと自分達の為に使ってる筈だ。いや、なんならこの部屋だって、俺達を泊める為に無理して用意した可能性すらある。
元々は子供達が使ってた部屋を、今日一日の為に空けたとか。
そう考えたら、子供達が一部屋で寝てるのにも説明がつく。
そしてもしそうなら、これ以上無理を言う訳にいかない。
「……マリーは気にしないって言ってたよな?」
「え? ……あ、えっと。そう、ですね。カイトさんの事は信じてますから。だから、私は、気に……しませんよ?」
何で疑問形? まあそれは良いとして。
「それなら、今夜一晩だけは我慢しないか? あんまりアンに無理言うのも悪いしさ」
「ふぇっ!? ……はっ! そ、そうですね! アンちゃんに悪いですもんね! そうしましょう!」
マリーは一度素っ頓狂な声を上げたかと思うと、何かを誤魔化す様に声を上げて賛同してきた。
大丈夫か?
「そ、そうか。なら決まりだな」
「は、はい、そうですね」
「……」
今度はやたら覚悟を決めた様な声で頷くマリー。俺の事、本当に信じてくれてるんだよね?
俺はその信じてるって言葉を信じていいのか?
「さて、あまり夜更かしするのも良くないですし、も、もう寝ましょうか!」
「あ、ああ、そうだな」
マリーの必死さに、俺は若干気圧されながらも頷いた。
「そ、それじゃあ私はこっちのベッドを使いますけど、良いですか?」
マリーは窓側に置かれたベッドを指差しながら尋ねてきた。
「ああ、分かった。じゃあ俺はこっちのベッドを使うな」
消去法で、俺は残りの一つを使う事になる。別に窓際かどうかのこだわりは無いし、なんなら一晩泊まるだけだ。
そう考え、俺はマリーに答えながら自分のベッドに腰かけた。
「わ、私、明かり消しますね!」
「あ、ああ。ありがとう」
マリーは部屋の入り口に設置されたランプの元まで歩いて行き、それを吹き消すと、今度は同じ様に反対側に設置されたランプを手に取り。
「それじゃあ、おやすみなさい、カイトさん」
「お、おう、おやすみ」
残りのランプも吹き消すと、部屋の中に心地よい暗闇が訪れた。
普段なら寝るのに最適な暗さだが、残念ながら今の俺は心臓が張り裂けそうなぐらいバクバクしていて、とても眠れそうにない。
今俺は、この狭くもなく、広くもない部屋に、マリーと二人きり。
そう、俺のすぐ近くでは、マリーが寝ているのだ。そう考えると、とても寝てなんていられない。それはマリーも同じで……。
「すぅ、すぅ」
「……」
いや寝てるんかい! さっきめっちゃ意識してるみたいな言い方してたのに、いざ寝るタイミングになると、あっさりと寝てしまった様だ。
「なんか、力抜けたな」
変に意識してた自分が馬鹿みたいに思えてきた。
「……寝るか」
今ならすぐに寝れそうな気がする。
そう思い、俺は一度寝返りを打ってから、そのまま眠りについた。
「帰って来ないわね、兄さん」
「帰って来ませんね、お兄ちゃん」
ここは渡り鳥亭という宿。その一室で神妙な表情で話し合う二人の人影がある。
一人は近衛海斗のいもう「義理のよ」失礼しました。義理の妹、近衛光。
もう一人は、賢者の息吹の看板娘、アミィ。
二人は未だに帰らない部屋の主、近衛海斗の事について話をしていた。何で二人が海斗の部屋にいるのか、などとツッコんではいけない。そういう物なのだと思って貰いたい。
「流石にこんな時間まで夕飯をご馳走になるなんて、あり得ないわよね?」
「はい、あり得ません。ウチの手伝いをしていた時でも、お夕飯がここまで遅くなるなんて事はありませんでした」
「ちょっと待って。その話詳しく……」
「とにかく!」
アミィは光の言葉を遮る様に声を被せた。
「この状況、どう見ますか、光さん?」
アミィが確認する様に光に尋ねた。その表情は真剣そのもの。どうやら、本気で海斗の心配をしているよう……。
「朝帰りね」
心配を……
「やっぱり、朝帰りなんでしょうか?」
……。
「ええ、きっとそう。やっぱり無理を言ってでも、兄さんに付いて行くべきだったわ」
「そうですね。まさか朝帰りなんて。お兄ちゃん、信じてたのに」
どうやら海斗の心配している訳ではなかった様だ。
二人は海斗がこんな時間になっても帰って来ないのを、朝帰りでもするつもりだと考えている様だ。
実際はアンの厚意に甘えて孤児院に泊まっているだけなのだが、二人がそれを知る由もない。
それどころか朝帰りだと勘違いしている。
やはり連絡というのは重要だという典型である。
「どうしましょうか、光さん?」
「どうしましょうね、アミィ?」
二人は顔を見合わせると。
「「ふふふふっ」」
暗い表情で笑いあう。
「二人共、ここにいるのか?」
二人が笑い合っていると、部屋の外から声が聞こえてくる。
「「フーリさん」」
渡り鳥亭に泊まるマリーの姉、フーリだ。
「いい加減夜も遅いんだ。早めに寝るんだぞ」
「あ、はい、分かりました」
「はい、大丈夫です」
フーリに返事を返す二人の顔には、先程の様な暗い表情は浮かんでいなかった。どうやら感情の切り替えは出来ている様だ。
「それじゃあ私はもう寝るからな。ああ、それと」
二人が答えると、フーリはそのまま踵を返そうとして、何かを思い出したかのようにその足を止めた。
「はい?」
「何ですか?」
扉越しに聞き返す二人。そんな二人にフーリは。
「カイト君達だが、恐らくアンに言われて孤児院に泊まっているだけだと思うぞ。ニーナさんにも聞いてみたから、恐らく間違いない」
二人の誤解を解きそうな話をした。
「「な、何の話を?」」
二人の声が見事に被る。どうやら自分達が話していた内容に対する答えを、ピンポイントで話したフーリに動揺している様だ。
二人が動揺しているのが伝わったのか、扉の外のフーリは溜息を一つ吐くと。
「とにかく、二人共心配しなくても大丈夫だ。あのカイト君だぞ? 何も起きる訳が無いだろう?」
「「……確かに!」」
フーリの言葉に二人は考え込むような仕草をした後「それは盲点だった」とでも言いた気に大きく頷いた。
二人も大概失礼である。
部屋の中から聞こえてくる、喜ぶような声に、フーリはもう一度大きな溜息を吐くと、今度こそ踵を返して自室へと戻るのだった。
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