見た目は青年、心はアラサー、異世界に降り立つ! ~チートスキル「ストレージ」で異世界を満喫中~
五章 一話
ひょんな事から王城に連れて来られた俺達は、そこでこの国の国王である「ギルガオン・K・ルロンド」陛下に謁見する事になった。
王族との謁見だなんて絶対に嫌だと思った俺は、その場から逃走を謀るも、マリー達によって阻止される。
無情にも、マリー達によって逃走を阻止された俺は、来客室までやって来たギルガオン陛下と謁見。軽く自己紹介だけ済ませると、突然武闘大会に参加せよ、という無茶ぶりを命じられたのだった。
果たして、俺の運命や如何に!
……いや、冗談言ってる場合じゃねえな。流石に説明不足にも程があるわ。
「あの、陛下?」
「何だカイト?」
俺が説明要求をしようと陛下に話しかけると、当たり前の様に下の名前で呼び捨てにする陛下。
さっきも思ったけど、この人下々の物に対してフランクすぎやしませんかね?
だが、それを指摘するのも憚られる、というか、絶対言っても聞かない気がするけど……まあいっか。他ならぬ陛下がそう呼んでるんだし、深くは気にしない事にしよう。
「いや、いきなり武闘大会に出場せよだなんて。ていうか、そもそも武闘大会って何ですか?」
俺は陛下に対し、当然の疑問をぶつける。いや、別に武闘大会の意味が分からないって事じゃないよ? 流石に武闘大会の意味ぐらい、俺だって分かるさ。
分からないのは、何で俺が武闘大会に出場しないといけないのかっていう事だ。
正直俺は召喚勇者である光の兄ではあるが、ただそれだけ。何の変哲もない、只の一般人だ。高ランク冒険者という訳でもなく、これといった功績を立てた訳じゃない。そんな俺に、何故陛下は武闘大会に出場せよと命じるのか。
……もしかして、俺には分からない、崇高な考えでもあるので「面白そうだからだ」は……って、そんだけかい!
「カイトは勇者ヒカリの兄なのだろう? そんな面白そうな男を武闘大会に出場させないだなんて勿体ないではないか」
事も無げにいう陛下。いや、別に勿体なくはないと思う。
「いやでも、俺は光の兄って事以外は、これといった功績も立ててない、只のCランク冒険者ですよ? 流石に身に余るというか」
正直俺以外に適任者は沢山いる筈だ。わざわざ俺を誘う意味がない。
「ふむ、只のCランク。しかも、何も功績を立てていない、か」
俺の言葉に、陛下が考え込むような仕草をする。これは、もう一押しか?
「そうそう、そうです。こんな一介の冒険者風情を、陛下の独断で武闘大会になんて出場させたら、陛下の評判に傷が付きますよ。だから、考え直して……」
「オーガエンペラー」
陛下が呟いた一言。その一言に俺は言葉を失い、背筋を嫌な汗が伝う。
いやいや、何であの場にいなかった陛下がその事を知ってるんだ? ブラフを掛けたにしても、ピンポイント過ぎる。
……なんか嫌な予感。
「確か、一月程前に報告が上がっていたな。何でも辺境の地に、史実でしかその存在を確認されていなかった魔物、オーガエンペラーが出現したとか」
「……」
俺は無言を貫く。下手に喋るとボロを出しかねない。
「それを討伐するべく討伐隊を編成したが、予想以上の戦闘力。そして、討伐隊のリーダーであるモーヒ・カンテルが転移魔法で飛ばされた事もあり、討伐隊のほとんどが戦闘不能状態に陥り、最早敗北は必至。そういう状況だったか?」
「「……」」
陛下の言葉に、マリーとフーリが苦い顔をしている。真面目な二人だ。きっとあの時の事を思い出しているのだろう。
言葉にしなくても、二人の表情を見れば分かる。
「そこに思いもよらない助っ人が、思いもよらない方法で駆け付けた……だったか、セバス?」
「左様で御座います」
陛下が声をかけると、いつの間にか来客室に戻って来ていたセバスチャンさんが、それを肯定する。
いつの間に戻ってきたんだ、セバスチャンさん? 全然気付かなかった。
「いや、俺も報告を聞いた時は自分の耳を疑ったぞ」
「……何がですか?」
駄目元で尋ねてみる。一人称が俺に変化した事なんて、最早些細な事だ。
流石に当時の状況は知られているみたいだが、だからといって、それと俺との関係性を見出す事は出来ない筈だ。
「何でも、空から降ってきた男が、オーガエンペラーを蹴り飛ばしたらしいじゃないか」
「へえ、そうなんですか。世の中には凄い人がいたもんですね」
陛下の言葉を聞き、俺は他人事の様に返す。
「しかもその後、単独でオーガエンペラーの撃破に成功したとか。世の中非常識な人間がいたものだ。お前もそう思わないか、カイト?」
「全くです。非常識にも程がありますね!」
「「はっはっはっはっ!」」
陛下と共に声を上げて笑う。もう笑うしかない。空から降ってきてオーガエンペラーを蹴り飛ばした挙句、単独撃破するとか、非常識の塊みたいな奴だ。
へそで茶が沸くわ。誰だそんな事した奴。
「経緯はどうあれ、立派な功績を上げたな、カイトよ。そんな君を、私が個人的に武闘大会へ招待しても、誰も文句は言うまい。お雨を正式に武闘大会へ招待しよう。拒否権は無いぞ」
「あんまりだ! 訴えてやる!」
そんな面倒臭いイベント、絶対出たくない!
何が悲しくてそんな面倒なイベントに出場しないといけないのか。俺はペコライに帰って果ての洞窟探索を再開しないといけないんだ!
絶対に出ないぞ!
「カイトさん、諦めましょう」
「残念だが、受け入れるしかない」
だが、俺のそんな考えとは裏腹に、マリーとフーリが俺の両肩に手を置いて諭す様な言葉をかけて来る。
「訴えてもいいが、この国の王は私だぞ?」
「……」
そうだった。こんなんでもこの人は一応この国の王なんだ。
訴えても勝ち目なんてある訳ない。って事は、俺は出場するしかないのか?
「……はぁ、仕方ないか」
少しの間考えた結果、俺はそう結論を出した。文句を言ってもどうしようもないなら、素直に受け入れるしかない。
「大丈夫よ兄さん。兄さんなら優勝も夢じゃないわ。それに」
落ち込む俺に声をかけて来る光。だが、その声音には、俺を気遣う色とは別の色が混ざっている様にも感じた。
「実は私も、召喚勇者として武闘大会に参加する事になってて。兄さんさえ良かったら、私と一緒に……」
「何を言ってる? お前は他の二人と共に参加するに決まっているだろう?」
「え? 何を言ってるんですか陛下? 冗談は存在だけにして下さい」
存在否定した!? それは流石に言い過ぎじゃないか!? いや、気持ちは分からないでもないけどね?
「まったく、お前は……。兄絡みの話になると冷静さを欠くのは、お前の悪い癖だぞ?」
対する陛下は、何でもない事の様に聞き流している。えぇ……、それは一国の王として良いのか?
「とにかく、お前は勇者トモコ、ケイタの二人と共に武闘大会に出場。カイトは後二人、一緒に出場する選手を探しておく様に。とは言っても、既に決まっている様なものか」
陛下は俺の後ろに視線を移しながら話す。
その視線の先にいるのは、マリーとフーリの二人。確かに、武闘大会に出場しないといけないのなら、俺は迷わず二人に一緒に出てくれる様お願いする。
「あの、陛下。本当に出場しないといけませんか?」
念の為もう一度確認してみる。流石に「俺の決定は絶対だ」なんて言わないだろうけど、それでも確認しておかないといけない。
「まあ、どうしてもというのなら、その限りではないがな。俺がお前に興味があるから招待しているんだ。無理矢理出場させても面白みはない」
やっぱり、流石にそこまで無茶苦茶な事は言わないか。
王族との謁見だなんて絶対に嫌だと思った俺は、その場から逃走を謀るも、マリー達によって阻止される。
無情にも、マリー達によって逃走を阻止された俺は、来客室までやって来たギルガオン陛下と謁見。軽く自己紹介だけ済ませると、突然武闘大会に参加せよ、という無茶ぶりを命じられたのだった。
果たして、俺の運命や如何に!
……いや、冗談言ってる場合じゃねえな。流石に説明不足にも程があるわ。
「あの、陛下?」
「何だカイト?」
俺が説明要求をしようと陛下に話しかけると、当たり前の様に下の名前で呼び捨てにする陛下。
さっきも思ったけど、この人下々の物に対してフランクすぎやしませんかね?
だが、それを指摘するのも憚られる、というか、絶対言っても聞かない気がするけど……まあいっか。他ならぬ陛下がそう呼んでるんだし、深くは気にしない事にしよう。
「いや、いきなり武闘大会に出場せよだなんて。ていうか、そもそも武闘大会って何ですか?」
俺は陛下に対し、当然の疑問をぶつける。いや、別に武闘大会の意味が分からないって事じゃないよ? 流石に武闘大会の意味ぐらい、俺だって分かるさ。
分からないのは、何で俺が武闘大会に出場しないといけないのかっていう事だ。
正直俺は召喚勇者である光の兄ではあるが、ただそれだけ。何の変哲もない、只の一般人だ。高ランク冒険者という訳でもなく、これといった功績を立てた訳じゃない。そんな俺に、何故陛下は武闘大会に出場せよと命じるのか。
……もしかして、俺には分からない、崇高な考えでもあるので「面白そうだからだ」は……って、そんだけかい!
「カイトは勇者ヒカリの兄なのだろう? そんな面白そうな男を武闘大会に出場させないだなんて勿体ないではないか」
事も無げにいう陛下。いや、別に勿体なくはないと思う。
「いやでも、俺は光の兄って事以外は、これといった功績も立ててない、只のCランク冒険者ですよ? 流石に身に余るというか」
正直俺以外に適任者は沢山いる筈だ。わざわざ俺を誘う意味がない。
「ふむ、只のCランク。しかも、何も功績を立てていない、か」
俺の言葉に、陛下が考え込むような仕草をする。これは、もう一押しか?
「そうそう、そうです。こんな一介の冒険者風情を、陛下の独断で武闘大会になんて出場させたら、陛下の評判に傷が付きますよ。だから、考え直して……」
「オーガエンペラー」
陛下が呟いた一言。その一言に俺は言葉を失い、背筋を嫌な汗が伝う。
いやいや、何であの場にいなかった陛下がその事を知ってるんだ? ブラフを掛けたにしても、ピンポイント過ぎる。
……なんか嫌な予感。
「確か、一月程前に報告が上がっていたな。何でも辺境の地に、史実でしかその存在を確認されていなかった魔物、オーガエンペラーが出現したとか」
「……」
俺は無言を貫く。下手に喋るとボロを出しかねない。
「それを討伐するべく討伐隊を編成したが、予想以上の戦闘力。そして、討伐隊のリーダーであるモーヒ・カンテルが転移魔法で飛ばされた事もあり、討伐隊のほとんどが戦闘不能状態に陥り、最早敗北は必至。そういう状況だったか?」
「「……」」
陛下の言葉に、マリーとフーリが苦い顔をしている。真面目な二人だ。きっとあの時の事を思い出しているのだろう。
言葉にしなくても、二人の表情を見れば分かる。
「そこに思いもよらない助っ人が、思いもよらない方法で駆け付けた……だったか、セバス?」
「左様で御座います」
陛下が声をかけると、いつの間にか来客室に戻って来ていたセバスチャンさんが、それを肯定する。
いつの間に戻ってきたんだ、セバスチャンさん? 全然気付かなかった。
「いや、俺も報告を聞いた時は自分の耳を疑ったぞ」
「……何がですか?」
駄目元で尋ねてみる。一人称が俺に変化した事なんて、最早些細な事だ。
流石に当時の状況は知られているみたいだが、だからといって、それと俺との関係性を見出す事は出来ない筈だ。
「何でも、空から降ってきた男が、オーガエンペラーを蹴り飛ばしたらしいじゃないか」
「へえ、そうなんですか。世の中には凄い人がいたもんですね」
陛下の言葉を聞き、俺は他人事の様に返す。
「しかもその後、単独でオーガエンペラーの撃破に成功したとか。世の中非常識な人間がいたものだ。お前もそう思わないか、カイト?」
「全くです。非常識にも程がありますね!」
「「はっはっはっはっ!」」
陛下と共に声を上げて笑う。もう笑うしかない。空から降ってきてオーガエンペラーを蹴り飛ばした挙句、単独撃破するとか、非常識の塊みたいな奴だ。
へそで茶が沸くわ。誰だそんな事した奴。
「経緯はどうあれ、立派な功績を上げたな、カイトよ。そんな君を、私が個人的に武闘大会へ招待しても、誰も文句は言うまい。お雨を正式に武闘大会へ招待しよう。拒否権は無いぞ」
「あんまりだ! 訴えてやる!」
そんな面倒臭いイベント、絶対出たくない!
何が悲しくてそんな面倒なイベントに出場しないといけないのか。俺はペコライに帰って果ての洞窟探索を再開しないといけないんだ!
絶対に出ないぞ!
「カイトさん、諦めましょう」
「残念だが、受け入れるしかない」
だが、俺のそんな考えとは裏腹に、マリーとフーリが俺の両肩に手を置いて諭す様な言葉をかけて来る。
「訴えてもいいが、この国の王は私だぞ?」
「……」
そうだった。こんなんでもこの人は一応この国の王なんだ。
訴えても勝ち目なんてある訳ない。って事は、俺は出場するしかないのか?
「……はぁ、仕方ないか」
少しの間考えた結果、俺はそう結論を出した。文句を言ってもどうしようもないなら、素直に受け入れるしかない。
「大丈夫よ兄さん。兄さんなら優勝も夢じゃないわ。それに」
落ち込む俺に声をかけて来る光。だが、その声音には、俺を気遣う色とは別の色が混ざっている様にも感じた。
「実は私も、召喚勇者として武闘大会に参加する事になってて。兄さんさえ良かったら、私と一緒に……」
「何を言ってる? お前は他の二人と共に参加するに決まっているだろう?」
「え? 何を言ってるんですか陛下? 冗談は存在だけにして下さい」
存在否定した!? それは流石に言い過ぎじゃないか!? いや、気持ちは分からないでもないけどね?
「まったく、お前は……。兄絡みの話になると冷静さを欠くのは、お前の悪い癖だぞ?」
対する陛下は、何でもない事の様に聞き流している。えぇ……、それは一国の王として良いのか?
「とにかく、お前は勇者トモコ、ケイタの二人と共に武闘大会に出場。カイトは後二人、一緒に出場する選手を探しておく様に。とは言っても、既に決まっている様なものか」
陛下は俺の後ろに視線を移しながら話す。
その視線の先にいるのは、マリーとフーリの二人。確かに、武闘大会に出場しないといけないのなら、俺は迷わず二人に一緒に出てくれる様お願いする。
「あの、陛下。本当に出場しないといけませんか?」
念の為もう一度確認してみる。流石に「俺の決定は絶対だ」なんて言わないだろうけど、それでも確認しておかないといけない。
「まあ、どうしてもというのなら、その限りではないがな。俺がお前に興味があるから招待しているんだ。無理矢理出場させても面白みはない」
やっぱり、流石にそこまで無茶苦茶な事は言わないか。
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