見た目は青年、心はアラサー、異世界に降り立つ! ~チートスキル「ストレージ」で異世界を満喫中~
四章 最終話
「カ、カイトさん、なんて事を! 相手は国王陛下ですよ!?」
「今すぐ謝るんだカイト君!」
「私達も一緒に謝ってあげるから!」
三人から立て続けに謝るように言われたが、正直そこまで心配しなくても大丈夫だと思うんだよな。
だって、さっきの光とのやりとりとか、馬車の中で橋本さんが言ってた事を考えれば、このぐらいでどうこうなるとも思えない。
光なんて、一国の王に対して「邪魔です!」なんて言ってたのに、この人笑って聞き流してたんだよ? 三人共慌て過ぎだって。
それに、まだこの人が国王だというのがデマだという可能性も残されているんだし。
「よいよい、気にするな。私は寛容だからな。この程度の事で目くじらを立てたりしない。「公衆の面前」だったら話は別だがな」
国王様は慌てる三人に笑って言い、今度は俺の方を向くと。
「貴公が勇者光の兄か? 名は?」
と、尋ねてきた。
俺が光の兄だっていうのは既に知ってるのか。今の発言をした上で、名前を聞いてくるって事は……。
「初めまして、国王陛下。私は光の兄の近衛海斗と申します」
俺は出来るだけ恭しく頭を垂れて答えた。
正直王族に対する礼儀作法なんか全く知らないし、不敬にならないか気になりはするが、まあ多分大丈夫だろう。
勘違いじゃなければ、これで大丈夫な筈。
「ふむ、なるほど。悪くはない、か」
国王様が小声でボソッと呟いたが、この距離だと全部丸聞こえなんだよな。あえて聞かせているという可能性もあるけど。
「こちらこそ、これから「色々」よろしく頼むぞ、勇者ヒカリの兄、カイトよ」
国王様はそう言うと、俺に手を差し出してきた。これは「友好の証の握手」という事でいいのか? もしそうだとして、果たしてこれに素直に応じて良い物か考える。
というのも、陛下は今ハッキリと「色々」よろしく頼むと言ったんだ。
色々って何だよ、色々って! ここで素直に頷くと、後々面倒毎に巻き込まれそうな気がするんだよな。
だが、流石にこれを無視すると、不敬になるんじゃないか?
「「……」」
一瞬の沈黙が俺と国王様の間に流れる。
国王様は一体何を考えているのか、終始無言の笑顔。その表情からは、イマイチ何を考えているのか読み取れない。
マリー達はその様子を、心配そうに見つめている。
「ちょっと、陛下! いい加減そこどいて下さい! 兄さんの所に行けないじゃないですか!」
「ん? おお、すまんな。すっかり忘れていた」
国王様の後ろから、光の声が響いてきて、まるで今思い出したかの様なリアクションでその場からずれる国王様。
いや、絶対ワザとだろ。
国王様がその場からずれた事によって、今までずっと部屋に入ろうとしていた光が、国王様の後ろから俺に向かって近づいてきた。
そのおかげで握手は曖昧になったのだから、光には感謝だな。
「遅くなってごめんね、兄さん」
光は俺のすぐ傍まで来ると、今度はマリー達に向かって。
「あなた達も、待たせてごめんなさいね。陛下への報告が思いの外時間が掛かっちゃって。全く、しつこいったらないんだから」
「おーい、聞こえてるぞ」
どうやら光は、一国の王に対して全く物怖じしていない様だ。ていうか、不敬罪とかないのかこの国?
まあもしあったとしても、召喚勇者相手に適用するかは怪しいものだが。
「兄さん、もう知ってると思うけど、この人が一応この国の国王、ギルガオン・K・ルロンド陛下よ」
「一応って……」
光に紹介された事で、この人が国王だというのがデマだという線は完全に無くなった訳だが、一国の王に対して「一応」はあんまりじゃないか?
「うむ、私が「一応」国王だ」
ほら、国王様も「一応」を強調してるし。流石に謝った方がいいって。
「陛下、カイト様達に何か話があるのではございませんでしたか?」
光に謝る様に言おうか考えていると、扉の傍で控えていたセバスチャンさんが口を開いた。
話? まだ会ったばかりの俺達に?
「ん? おお、そうだったなセバス! カイト、実は貴公らに頼みがあるのだが……」
ドンドンドンドン!
国王様が何か話をしようとしたタイミングで、部屋の扉が乱雑に叩かれ始めた。
「「「……」」」
その音に反応する様に、国王様、光、セバスチャンさんは顔をしかめて扉を睨む。
「おいセバス、あの馬鹿を追い払ってこい。手段は問わん」
国王様が物騒な事を口にした。いや、手段は問わないって。自分の家臣に一体何をさせる気だ、この人?
「ご冗談を。私の手が汚れてしまうではありませんか」
そっち!? 自分の手が汚れるのが嫌だからやりたくないの!?
冗談だと分かっているが、内心驚いてしまう。
「丁重にお引き取り願ってきますよ」
軽口を叩きながらも国王様の言葉には即座に応えようとするセバスチャンさんは流石としか言いようがない。
このやり取りだけでも、二人の関係性が何となく見えてくる。
国王様はセバスチャンさんを「セバス」と愛称で呼ぶし、セバスチャンさんも畏まった雰囲気は全く感じさせないながらも、その言葉には即座に応える。
所謂「気心が知れた仲」という奴なのかもしれない。
「では」
セバスチャンさんがそう言い、部屋の扉を開けると。
「陛下! どうかお考え直しをっ――」
バタンッ
扉が開くのと同時に、中に入って来ようとした男が一瞬見えたが、セバスチャンさんがそれを遮る様に、扉を閉めてしまった為、あまりよく見えなかった。
すげえ早業。流石はセバスチャンさんだ。
「これで邪魔者の心配はしなくて済むな。さて、早速本題だが」
国王様は扉を一瞥すると、再び俺達の方に向き直り。
「君達は噂に名高い「氷炎の美姫」で間違いないだろうか?」
「「っ!?」」
国王様の問いかけに、二人が驚愕の表情を浮かべる。まさか国王様が自分達の事を知っているとは思わなかったのだろう。
俺も思わなかった。
「君達の噂はよく聞いている。ペコライの期待のB級冒険者だとな。そして君は……」
陛下はそのまま視線をアミィへと移し、考える様な仕草をする。まあアミィは普通の一般人だし、流石に知らないか。
「どうも見覚えがあるな。君、名前は?」
「は、はい! 私はアミィといいますです! ただの平民です!」
緊張のあまり、声を上擦らせながらも、何とか答えたアミィ。
普通は平民が国王様と話す機会なんてまずないだろうし、これが当然の反応だよな。むしろアミィはよく答えた方だと思う。
「アミィか。失礼だが、母親の名は?」
「は、はい! 母はイレーヌといいますです、はい!」
「イレーヌ! なるほど、君はイレーヌの娘か! 道理で見覚えがある筈だ!」
「っ!?」
アミィの答えに、国王様は納得した様に何度も頷いた。この感じ。国王様はイレーヌさんの事を知ってるのか?
ていうか、国王様に認知されてるイレーヌさんって一体何者? ただの元A級冒険者じゃないのか?
「なら何も問題は無いな。さて本題だが」
そんな事を考えていると、国王様が話を進め、何が問題ないのか尋ねるタイミングを逃してしまった。
国王様は一度俺達を見回し、最後に光に視線を向けると「ニヤッ」っと笑みを浮かべる。
あ、何か嫌な予感。
「?」
光は陛下の行動の意味がイマイチ分かっていないのか、小首を傾げている。いや、俺より付き合い長いなら気付こうよ。あれ絶対悪い事企んでる顔だって。
「カイトよ。実はわが国で三日後に武闘大会を開くのだが、貴公達もそれに参加せよ」
「…………はい?」
興一番の素っ頓狂な声が出てしまった瞬間だった。
「今すぐ謝るんだカイト君!」
「私達も一緒に謝ってあげるから!」
三人から立て続けに謝るように言われたが、正直そこまで心配しなくても大丈夫だと思うんだよな。
だって、さっきの光とのやりとりとか、馬車の中で橋本さんが言ってた事を考えれば、このぐらいでどうこうなるとも思えない。
光なんて、一国の王に対して「邪魔です!」なんて言ってたのに、この人笑って聞き流してたんだよ? 三人共慌て過ぎだって。
それに、まだこの人が国王だというのがデマだという可能性も残されているんだし。
「よいよい、気にするな。私は寛容だからな。この程度の事で目くじらを立てたりしない。「公衆の面前」だったら話は別だがな」
国王様は慌てる三人に笑って言い、今度は俺の方を向くと。
「貴公が勇者光の兄か? 名は?」
と、尋ねてきた。
俺が光の兄だっていうのは既に知ってるのか。今の発言をした上で、名前を聞いてくるって事は……。
「初めまして、国王陛下。私は光の兄の近衛海斗と申します」
俺は出来るだけ恭しく頭を垂れて答えた。
正直王族に対する礼儀作法なんか全く知らないし、不敬にならないか気になりはするが、まあ多分大丈夫だろう。
勘違いじゃなければ、これで大丈夫な筈。
「ふむ、なるほど。悪くはない、か」
国王様が小声でボソッと呟いたが、この距離だと全部丸聞こえなんだよな。あえて聞かせているという可能性もあるけど。
「こちらこそ、これから「色々」よろしく頼むぞ、勇者ヒカリの兄、カイトよ」
国王様はそう言うと、俺に手を差し出してきた。これは「友好の証の握手」という事でいいのか? もしそうだとして、果たしてこれに素直に応じて良い物か考える。
というのも、陛下は今ハッキリと「色々」よろしく頼むと言ったんだ。
色々って何だよ、色々って! ここで素直に頷くと、後々面倒毎に巻き込まれそうな気がするんだよな。
だが、流石にこれを無視すると、不敬になるんじゃないか?
「「……」」
一瞬の沈黙が俺と国王様の間に流れる。
国王様は一体何を考えているのか、終始無言の笑顔。その表情からは、イマイチ何を考えているのか読み取れない。
マリー達はその様子を、心配そうに見つめている。
「ちょっと、陛下! いい加減そこどいて下さい! 兄さんの所に行けないじゃないですか!」
「ん? おお、すまんな。すっかり忘れていた」
国王様の後ろから、光の声が響いてきて、まるで今思い出したかの様なリアクションでその場からずれる国王様。
いや、絶対ワザとだろ。
国王様がその場からずれた事によって、今までずっと部屋に入ろうとしていた光が、国王様の後ろから俺に向かって近づいてきた。
そのおかげで握手は曖昧になったのだから、光には感謝だな。
「遅くなってごめんね、兄さん」
光は俺のすぐ傍まで来ると、今度はマリー達に向かって。
「あなた達も、待たせてごめんなさいね。陛下への報告が思いの外時間が掛かっちゃって。全く、しつこいったらないんだから」
「おーい、聞こえてるぞ」
どうやら光は、一国の王に対して全く物怖じしていない様だ。ていうか、不敬罪とかないのかこの国?
まあもしあったとしても、召喚勇者相手に適用するかは怪しいものだが。
「兄さん、もう知ってると思うけど、この人が一応この国の国王、ギルガオン・K・ルロンド陛下よ」
「一応って……」
光に紹介された事で、この人が国王だというのがデマだという線は完全に無くなった訳だが、一国の王に対して「一応」はあんまりじゃないか?
「うむ、私が「一応」国王だ」
ほら、国王様も「一応」を強調してるし。流石に謝った方がいいって。
「陛下、カイト様達に何か話があるのではございませんでしたか?」
光に謝る様に言おうか考えていると、扉の傍で控えていたセバスチャンさんが口を開いた。
話? まだ会ったばかりの俺達に?
「ん? おお、そうだったなセバス! カイト、実は貴公らに頼みがあるのだが……」
ドンドンドンドン!
国王様が何か話をしようとしたタイミングで、部屋の扉が乱雑に叩かれ始めた。
「「「……」」」
その音に反応する様に、国王様、光、セバスチャンさんは顔をしかめて扉を睨む。
「おいセバス、あの馬鹿を追い払ってこい。手段は問わん」
国王様が物騒な事を口にした。いや、手段は問わないって。自分の家臣に一体何をさせる気だ、この人?
「ご冗談を。私の手が汚れてしまうではありませんか」
そっち!? 自分の手が汚れるのが嫌だからやりたくないの!?
冗談だと分かっているが、内心驚いてしまう。
「丁重にお引き取り願ってきますよ」
軽口を叩きながらも国王様の言葉には即座に応えようとするセバスチャンさんは流石としか言いようがない。
このやり取りだけでも、二人の関係性が何となく見えてくる。
国王様はセバスチャンさんを「セバス」と愛称で呼ぶし、セバスチャンさんも畏まった雰囲気は全く感じさせないながらも、その言葉には即座に応える。
所謂「気心が知れた仲」という奴なのかもしれない。
「では」
セバスチャンさんがそう言い、部屋の扉を開けると。
「陛下! どうかお考え直しをっ――」
バタンッ
扉が開くのと同時に、中に入って来ようとした男が一瞬見えたが、セバスチャンさんがそれを遮る様に、扉を閉めてしまった為、あまりよく見えなかった。
すげえ早業。流石はセバスチャンさんだ。
「これで邪魔者の心配はしなくて済むな。さて、早速本題だが」
国王様は扉を一瞥すると、再び俺達の方に向き直り。
「君達は噂に名高い「氷炎の美姫」で間違いないだろうか?」
「「っ!?」」
国王様の問いかけに、二人が驚愕の表情を浮かべる。まさか国王様が自分達の事を知っているとは思わなかったのだろう。
俺も思わなかった。
「君達の噂はよく聞いている。ペコライの期待のB級冒険者だとな。そして君は……」
陛下はそのまま視線をアミィへと移し、考える様な仕草をする。まあアミィは普通の一般人だし、流石に知らないか。
「どうも見覚えがあるな。君、名前は?」
「は、はい! 私はアミィといいますです! ただの平民です!」
緊張のあまり、声を上擦らせながらも、何とか答えたアミィ。
普通は平民が国王様と話す機会なんてまずないだろうし、これが当然の反応だよな。むしろアミィはよく答えた方だと思う。
「アミィか。失礼だが、母親の名は?」
「は、はい! 母はイレーヌといいますです、はい!」
「イレーヌ! なるほど、君はイレーヌの娘か! 道理で見覚えがある筈だ!」
「っ!?」
アミィの答えに、国王様は納得した様に何度も頷いた。この感じ。国王様はイレーヌさんの事を知ってるのか?
ていうか、国王様に認知されてるイレーヌさんって一体何者? ただの元A級冒険者じゃないのか?
「なら何も問題は無いな。さて本題だが」
そんな事を考えていると、国王様が話を進め、何が問題ないのか尋ねるタイミングを逃してしまった。
国王様は一度俺達を見回し、最後に光に視線を向けると「ニヤッ」っと笑みを浮かべる。
あ、何か嫌な予感。
「?」
光は陛下の行動の意味がイマイチ分かっていないのか、小首を傾げている。いや、俺より付き合い長いなら気付こうよ。あれ絶対悪い事企んでる顔だって。
「カイトよ。実はわが国で三日後に武闘大会を開くのだが、貴公達もそれに参加せよ」
「…………はい?」
興一番の素っ頓狂な声が出てしまった瞬間だった。
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