見た目は青年、心はアラサー、異世界に降り立つ! ~チートスキル「ストレージ」で異世界を満喫中~
三十八話
「は、離してくれ! 俺は寝るぞ! 国王様との謁見なんて、俺がいなくても問題ないだろう!?」
謁見があるって聞いた時から考えていた俺のバックレ作戦。まさかそれがこんな簡単に阻止されるとは。
いや、まだだ。まだ終わらんよ!
「ところでお兄ちゃん、さっきの小動物の話だけど」
「さあ、謁見までまだ時間あるし、セバスチャンさんまだかな!」
折角セバスチャンさんがお茶を入れてくれるって言うし、ストレージから適当にお茶菓子でも出して小洒落たティータイムなんか良いかもしれないな!
アミィが何か言ってた? 気の所為じゃない?
「うん、それでいいんだよ、お兄ちゃん。小動物の話は、また今度じっくり聞かせて貰うからね?」
「……はい」
上手く誤魔化せたかと思ったが、どうやらアミィの掌の上だった様だ。ていうかアミィさんや、いつの間にそんな駆け引きを覚えたんだい?
「カイトさんの誤魔化し方って、ワンパターンですよね」
「最早お約束とさえ言えるだろうな」
「え、何それ? 俺初耳なんだけど?」
どうやら俺が駆け引きだと思っていたものは、マリーとフーリにとっては駆け引きでも何でもなかった様だ。
どうやら俺には駆け引きの才能は無かった様だ。いや、俺というよりも、男という生物は元来、駆け引きで女には勝てない様に出来ているに違いない。
「お待たせしました。お茶の準備が整いましたので……どうかなさいましたか?」
俺が若干黄昏れていると、お茶を運んできたセバスチャンさんから不思議そうな目を向けられてしまった。
「セバスチャンさん。男って、女には勝てない様に出来てるんですかね?」
「はい?」
いきなり話を振られ、素っ頓狂な声を上げるセバスチャンさん。正直そんな声を上げる様なキャラだと思ってなかったから、ちょっとだけ驚いた。
「ふふっ。何でもないんですよ、セバスチャンさん」
「ええ、何でもないので気にしないで下さい」
「はあ、そうですか?」
セバスチャンさんはイマイチ状況が理解出来ていなさそうだったが、二人に気にしないでいいと言われて、曖昧に頷いていた。
まあいきなりこんな状況に遭遇しても、何があったかなんて分からないよな、
「それではすぐにお茶の準備をさせて頂きますので、少々お待ちください」
セバスチャンさんは気を取り直す様に言うと、備え付けのテーブルの上にティーセットを並べ始めた。
目の前に並べられるティーカップと、テーブルの中心に置かれる大きなティースタンド。そこに並べられるクッキーやケーキ等のお茶菓子。
クッキーには、中心にジャムの様な物が塗られており、色鮮やかな光沢を放っている。
しかも、一つ一つ違う色をしており、色の数だけ味も違うのだろうと予想出来る。
ケーキはスポンジ生地と果物、薄っすら黄色がかったクリームを交互に重ねた、所謂ミルフィーユケーキで、層の合間から見える果物に、ほんのり垂れた黄色いクリームがその綺麗な色合いを更に引き立てている。
ていうか、この世界にクリームなんてあったんだ。生クリームには卵が使われている筈だから、逆に言えば、この世界にも探せば卵があるかもしれないという事だ。今度探してみようかな。
セバスチャンさんが用意したお茶菓子は部屋の雰囲気に合わせたのか、全体的に明るい色合いの物が多く、その全てに果物が使われていた。
前にエレナさんから貰ったクッキーからも、ほんのり柑橘系の匂いがしてたし、こっちだと甘い物=果物っていうのが普通なのかもしれない。
そもそも砂糖が存在してるかのも怪しいし。
「きれい……」
自分の席に座り。お茶の準備が整うのを待つアミィが、ティースタンドに並べられるお茶菓子を見て感嘆の声を漏らしていた。
確かに綺麗だよな。流石は王城といった所か。
「本当。こんなに綺麗なお菓子、滅多にお目にかかれませんよ」
アミィと同様、マリーもそう漏らす。
マリーは貴族といっても末妹だったらしいし、やっぱりこういうのには縁がなかったんだろうか?
「王都でも有名な菓子職人が作っている品ですので、きっとお気に召して貰える筈です」
王都でも有名って、よくそんな物をこの短時間で用意出来たな。この人すごくない?
「見た目だけでも既に満足してますよ。とても綺麗なお菓子ですね」
フーリが言う通り、このお茶菓子は見た目だけでも充分満足出来そうではある。後は味の方だが、王都でも有名な菓子職人が作ったお菓子なら、不味いという事はないだろう。
テーブルに着いた俺達の前に、セバスチャンさんが全員分のお茶菓子を取り分け、続けて紅茶を並べると。
「さあ、どうぞお召し上がり下さいませ」
セバスチャンさんの言葉で、俺達は各々目の前のお茶菓子に手を伸ばす。
「「「っ!?」」」
一口方張り、目を見開くマリー達。遅れて俺もケーキを一口食べ。
「……あ、旨い」
マリー達が目を見開くのも何となく分かる。
口に含んだ瞬間、ほんのり香る柑橘系の甘酸っぱい匂い。滑らかなクリームと、柔らかすぎない程よい弾力のスポンジ生地。
間に挟んである果物は瑞々しく、食べていて飽きない。
「これ、甘くてすっごく甘くて美味しいです!」
「ああ、まさかこれ程の物とは」
「んー、甘くて美味しい! コレ美味しいですね! カイトさん!」
「……うん、そうだな」
興奮気味のマリーに言われ、俺は曖昧に頷く。
皆の言う通り、確かにこれは旨い。旨いんだけど、そんなに騒ぐ程旨いかと聞かれたら、何とも言えない。正直これは旨いけど「思った以上に旨い」程度で、そんなに大騒ぎする程かと問われたら、答えはノーだ。。
日本だと、スーパーに売ってあるケーキよりば旨いけど、ケーキ屋とかに売ってある本格的なケーキには劣るレベルだ。もっと言えば、コンビニスイーツの方が旨い。
多分素材の差なんだろうけど、ねえ?
「何だか微妙な顔してますね。お口に合いませんでしたか?」
「え? いや、そういう訳じゃ」
しまった、折角皆が旨いって言ってるのに、水を差したかも。
「もしかして、異世界のお菓子の方が美味しい、ですか?」
俺が何と言えばいいか考えていると、その様子を見ていたセバスチャンさんがそう口にした。
「え? ええ、まあそうですけど」
何で俺の考えてる事が分かったんだ? もしかしてまた顔に出てたか?
「そうですか。実は勇者の方々も同じ事を仰ってましてね。光様のお兄様である海斗様も、もしかしたら勇者様方と同じ事を仰るかもしれないとは思っておりましたが」
光達が? あー、確かに皆若かったし、俺以上にスイーツにはうるさいかもな。俺はコンビニスイーツで満足出来るけど、若い子達はスイーツ専門店なんかに食べに行ったりするって聞いた事がある。
それじゃあこのお茶菓子じゃ満足出来ないのも仕方がないよな。
「コレが口に合わない?」
「カイトさん、舌が肥え過ぎじゃないですか?」
「お兄ちゃん達がいた世界って、そんなに美味しいお菓子があったの?」
三人が信じられない様な物を見る目で俺の事青見てくる。
まあ確かに、舌が肥えてるっていうのは否定しない。日本って食に関しては妥協しない国だと思うし、少なくともこの世界より旨い物は遙かに多かった。
「まあ、そうだな。ケーキ一つとっても旨いケーキが沢山あったよ。これも、俺のいた世界ではミルフィーユって言われてて、お手軽に食べれるケーキの一つだったんだ」
コンビニのミルフィーユってやたら旨いよね? 単純な甘さなのに、癖になるというか。ああいう安っぽい甘さでいいんだよな。
「これより美味しい、ですか? そんなの全然想像出来ませんね」
「ああ。これでも充分美味しいのだが」
「お兄ちゃんのいた世界って、凄かったんだね。私も食べてみたいな」
三者三様の反応。これが今まで食べた物の中で一番甘い物なら、コンビニスイーツが想像出来ないのも納得だ。
ちなみにアミィ、俺は作れないからな? 今度光に頼んでみるか。
謁見があるって聞いた時から考えていた俺のバックレ作戦。まさかそれがこんな簡単に阻止されるとは。
いや、まだだ。まだ終わらんよ!
「ところでお兄ちゃん、さっきの小動物の話だけど」
「さあ、謁見までまだ時間あるし、セバスチャンさんまだかな!」
折角セバスチャンさんがお茶を入れてくれるって言うし、ストレージから適当にお茶菓子でも出して小洒落たティータイムなんか良いかもしれないな!
アミィが何か言ってた? 気の所為じゃない?
「うん、それでいいんだよ、お兄ちゃん。小動物の話は、また今度じっくり聞かせて貰うからね?」
「……はい」
上手く誤魔化せたかと思ったが、どうやらアミィの掌の上だった様だ。ていうかアミィさんや、いつの間にそんな駆け引きを覚えたんだい?
「カイトさんの誤魔化し方って、ワンパターンですよね」
「最早お約束とさえ言えるだろうな」
「え、何それ? 俺初耳なんだけど?」
どうやら俺が駆け引きだと思っていたものは、マリーとフーリにとっては駆け引きでも何でもなかった様だ。
どうやら俺には駆け引きの才能は無かった様だ。いや、俺というよりも、男という生物は元来、駆け引きで女には勝てない様に出来ているに違いない。
「お待たせしました。お茶の準備が整いましたので……どうかなさいましたか?」
俺が若干黄昏れていると、お茶を運んできたセバスチャンさんから不思議そうな目を向けられてしまった。
「セバスチャンさん。男って、女には勝てない様に出来てるんですかね?」
「はい?」
いきなり話を振られ、素っ頓狂な声を上げるセバスチャンさん。正直そんな声を上げる様なキャラだと思ってなかったから、ちょっとだけ驚いた。
「ふふっ。何でもないんですよ、セバスチャンさん」
「ええ、何でもないので気にしないで下さい」
「はあ、そうですか?」
セバスチャンさんはイマイチ状況が理解出来ていなさそうだったが、二人に気にしないでいいと言われて、曖昧に頷いていた。
まあいきなりこんな状況に遭遇しても、何があったかなんて分からないよな、
「それではすぐにお茶の準備をさせて頂きますので、少々お待ちください」
セバスチャンさんは気を取り直す様に言うと、備え付けのテーブルの上にティーセットを並べ始めた。
目の前に並べられるティーカップと、テーブルの中心に置かれる大きなティースタンド。そこに並べられるクッキーやケーキ等のお茶菓子。
クッキーには、中心にジャムの様な物が塗られており、色鮮やかな光沢を放っている。
しかも、一つ一つ違う色をしており、色の数だけ味も違うのだろうと予想出来る。
ケーキはスポンジ生地と果物、薄っすら黄色がかったクリームを交互に重ねた、所謂ミルフィーユケーキで、層の合間から見える果物に、ほんのり垂れた黄色いクリームがその綺麗な色合いを更に引き立てている。
ていうか、この世界にクリームなんてあったんだ。生クリームには卵が使われている筈だから、逆に言えば、この世界にも探せば卵があるかもしれないという事だ。今度探してみようかな。
セバスチャンさんが用意したお茶菓子は部屋の雰囲気に合わせたのか、全体的に明るい色合いの物が多く、その全てに果物が使われていた。
前にエレナさんから貰ったクッキーからも、ほんのり柑橘系の匂いがしてたし、こっちだと甘い物=果物っていうのが普通なのかもしれない。
そもそも砂糖が存在してるかのも怪しいし。
「きれい……」
自分の席に座り。お茶の準備が整うのを待つアミィが、ティースタンドに並べられるお茶菓子を見て感嘆の声を漏らしていた。
確かに綺麗だよな。流石は王城といった所か。
「本当。こんなに綺麗なお菓子、滅多にお目にかかれませんよ」
アミィと同様、マリーもそう漏らす。
マリーは貴族といっても末妹だったらしいし、やっぱりこういうのには縁がなかったんだろうか?
「王都でも有名な菓子職人が作っている品ですので、きっとお気に召して貰える筈です」
王都でも有名って、よくそんな物をこの短時間で用意出来たな。この人すごくない?
「見た目だけでも既に満足してますよ。とても綺麗なお菓子ですね」
フーリが言う通り、このお茶菓子は見た目だけでも充分満足出来そうではある。後は味の方だが、王都でも有名な菓子職人が作ったお菓子なら、不味いという事はないだろう。
テーブルに着いた俺達の前に、セバスチャンさんが全員分のお茶菓子を取り分け、続けて紅茶を並べると。
「さあ、どうぞお召し上がり下さいませ」
セバスチャンさんの言葉で、俺達は各々目の前のお茶菓子に手を伸ばす。
「「「っ!?」」」
一口方張り、目を見開くマリー達。遅れて俺もケーキを一口食べ。
「……あ、旨い」
マリー達が目を見開くのも何となく分かる。
口に含んだ瞬間、ほんのり香る柑橘系の甘酸っぱい匂い。滑らかなクリームと、柔らかすぎない程よい弾力のスポンジ生地。
間に挟んである果物は瑞々しく、食べていて飽きない。
「これ、甘くてすっごく甘くて美味しいです!」
「ああ、まさかこれ程の物とは」
「んー、甘くて美味しい! コレ美味しいですね! カイトさん!」
「……うん、そうだな」
興奮気味のマリーに言われ、俺は曖昧に頷く。
皆の言う通り、確かにこれは旨い。旨いんだけど、そんなに騒ぐ程旨いかと聞かれたら、何とも言えない。正直これは旨いけど「思った以上に旨い」程度で、そんなに大騒ぎする程かと問われたら、答えはノーだ。。
日本だと、スーパーに売ってあるケーキよりば旨いけど、ケーキ屋とかに売ってある本格的なケーキには劣るレベルだ。もっと言えば、コンビニスイーツの方が旨い。
多分素材の差なんだろうけど、ねえ?
「何だか微妙な顔してますね。お口に合いませんでしたか?」
「え? いや、そういう訳じゃ」
しまった、折角皆が旨いって言ってるのに、水を差したかも。
「もしかして、異世界のお菓子の方が美味しい、ですか?」
俺が何と言えばいいか考えていると、その様子を見ていたセバスチャンさんがそう口にした。
「え? ええ、まあそうですけど」
何で俺の考えてる事が分かったんだ? もしかしてまた顔に出てたか?
「そうですか。実は勇者の方々も同じ事を仰ってましてね。光様のお兄様である海斗様も、もしかしたら勇者様方と同じ事を仰るかもしれないとは思っておりましたが」
光達が? あー、確かに皆若かったし、俺以上にスイーツにはうるさいかもな。俺はコンビニスイーツで満足出来るけど、若い子達はスイーツ専門店なんかに食べに行ったりするって聞いた事がある。
それじゃあこのお茶菓子じゃ満足出来ないのも仕方がないよな。
「コレが口に合わない?」
「カイトさん、舌が肥え過ぎじゃないですか?」
「お兄ちゃん達がいた世界って、そんなに美味しいお菓子があったの?」
三人が信じられない様な物を見る目で俺の事青見てくる。
まあ確かに、舌が肥えてるっていうのは否定しない。日本って食に関しては妥協しない国だと思うし、少なくともこの世界より旨い物は遙かに多かった。
「まあ、そうだな。ケーキ一つとっても旨いケーキが沢山あったよ。これも、俺のいた世界ではミルフィーユって言われてて、お手軽に食べれるケーキの一つだったんだ」
コンビニのミルフィーユってやたら旨いよね? 単純な甘さなのに、癖になるというか。ああいう安っぽい甘さでいいんだよな。
「これより美味しい、ですか? そんなの全然想像出来ませんね」
「ああ。これでも充分美味しいのだが」
「お兄ちゃんのいた世界って、凄かったんだね。私も食べてみたいな」
三者三様の反応。これが今まで食べた物の中で一番甘い物なら、コンビニスイーツが想像出来ないのも納得だ。
ちなみにアミィ、俺は作れないからな? 今度光に頼んでみるか。
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