見た目は青年、心はアラサー、異世界に降り立つ! ~チートスキル「ストレージ」で異世界を満喫中~
十一話
それからの三日間は、本当にあっという間だった。道中現れる魔物は、そのほとんどがゴブリンやホーンラビットといった、あまり強くない魔物ばかりで、俺達が後れを取る事はまずなかった。
まあそのおかげで比較的安全に旅が出来たとも言えるのだけど。
変わった事といえば、途中で全身鎧を着こんだ集団とすれ違ったぐらいか。あれは凄かった。まさに「騎士団」って言葉が似合いそうな集団だったからな。
だがその一番先頭は、マリー達とそう変わらないぐらいの年に見える女の子だった。手段の全員が全身鎧を着込んでいたのに、その子だけが全身鎧に身を包んでいなかったからよく覚えてる。
その子に「この先で山賊に襲われたりしませんでしたか?」と尋ねられたから「リーグ山脈で十人ぐらい見かけましたよ」とだけ返しておいた。
嘘は言ってない、うん。
俺が答えると、まだ何か聞きたそうな顔をしていたが、少しだけ考える素振りを見せると「分かりました。ご協力感謝します」とだけ答えてから、そのまま行ってしまったけど。
多分あの集団はリーグ山脈に向かったんだろうな。
アレは一体何だったのか、一応アルクに聞いてみたら、ルロンド王国の騎士団だろうという答えが返ってきた。
アルクは元々王都にいたって言ってたし、知っていても不思議ではない。
騎士団みたいだなぁ、とは思っていたけど、本当に騎士団だったのか。俺達に山賊に襲われたか聞いてきたし、多分例の山賊達を捕まえに行くのだろう。
……彼らは無事だろうか? 服を溶かされ、髪を溶かされ、挙句の果てには仲間割れまで。俺達がやった事だけど、今更ながら多少の罪悪感が湧いてくるが、山賊達の自業自得だと思う事にした。
「さて、そろそろ王都が見えて来る頃ですね。カイトさん、冒険者カードは持ってますよね?」
「ん? ああ、持ってるけど?」
確かコレが身分証の代わりになるって前にマリーが言ってたから、常に持ち歩く事にしている。といっても、普段はストレージの中に突っ込んでるだけだけど。
「ペコライと違って、王都は身元確認が厳しいですからね。冒険者カードが無いと、最悪入れない事もありますから」
「え? そうなのか?」
驚いた。ペコライではほとんど素通り状態だったから、てっきり王都も似た様な物なのかと思ってたけど、そういう訳じゃなかったらしい。
そりゃそうか。どこもかしこもあんなガバガバ警備な訳ない。ペコライが特別だっただけなんだ。
まああの警備でも治安は良かったのだから、問題はない……ないのか?
「王都は人の出入りが激しい分、治安も荒れ気味な部分がありますからね。王都の端の方にはスラム街や貧民街なんかもあるぐらいですから」
「スラム街に貧民街? そんなのあるのか?」
スラム街は日本には無かったけど、世界にはそういうのがある国も存在するって聞いた事がある。だが、貧民街は聞いた事がない。
もしかしたら俺が知らないだけで、世界にはそういう場所がある国もあるのかもしれないけど。
でも、スラム街に貧民街か。そうなってくると、もしかしたら孤児院なんかもあるのかもしれない。
今更確認する方法なんてないから、気にするだけ無駄だけど。
「あります。あまり褒められた事ではありませんけど、治安の悪化を深刻化させない為には必要ですから。褒められた事ではありませんけど」
マリーは苦虫を嚙み潰したような顔をしながら、二回も言った。多分相当不愉快なんだろう。表情を見れば分かる。
「本当なら、そんな物無い方がいいのだがな。あれだけ大きな都市になると、スラム街や貧民街はどうしても出来上がってしまう。仕方がないんだ」
「仕方がない、か」
確かにその二つがあれば、問題を起こしそうな人間は自然とそこに集中してくるだろう。人間後暗い事があると、どうしても人の目が気になってしまうものだ。それが真っ当に生きてる人間相手なら尚更。
だが、ここでスラムなんかがあったらどうだろう? 周りは自分と同じ、訳有りの人間ばかり。いわば同類の堪り場だ。
そんな所があれば、訳有りの人間は自然と集まるものだろう。
自分だけが訳有りじゃないんだと、言い訳が出来るから。多分、俺が逆の立場なら、そうしてると思う。
問題がある人間が一か所に集まれば、警備もしやすくなるというものだ。
まあ、あくまで昔こんな話をどこかで聞いた事がある気がするだけで、実際の所はどうなのか分からないけど。
「まあ、近付きさえしなければ何の問題も無いし、見えもしない。王都ではあまり端の方には行かない様にすれば大丈夫だ」
「それもそうだな」
残念ながら、俺にそのスラムや貧民街をどうにか出来るだけの力はない。ならいっそ見ない方が賢明だ。
だってどうにも出来ないから。
「さあ、そろそろ王都が見えて来るぞ」
気を取り直して正面に視線を向けてみると、大分先の方に遠目からでも分かる程大きな城の様な建物が目に入ってきた。
まだ結構距離がある様に見えるけど、ハッキリと城だと認識出来る程の大きさがある。
もしかして、アレが王都か?
ここからでも分かるぐらいだ。ペコライとは比べ物にならないぐらい大きい街だという事は分かる。
流石は一国の王都って事か。
「ようやく見えてきましたね。道中「色々」ありましたが、皆さんのおかげで無事王都に帰る事が出来ました」
アルクが王都に視線を向けながら、感慨深そうに頷いているが、気の所為か? 「色々」を強調してた気がするけど。
まあ確かに山賊イベントは色々とツッコミどころは多かったけど。
「気が早いぞアルク。王都に着くまで護衛は続くんだ。礼を言うのは無事王都に着いてからにしてくれ」
フーリの言う通り、まだ王都には着いていないのだから、礼を言うのは気が早い。アルクを無事王都に送り届けて、初めて依頼を達成したと言えるだろう。
目的地まで無事送り届ける事が護衛だ。
「さあ、王都まであと少しだが、油断しない様にな」
「後少しです。頑張りましょうね」
「ああ、そうだな」
王都まであと僅か。
アルクを送り届けたら、その後は王都観光が待ってる。
あれだけ大きな都市だ。きっと観光名所的な物もある筈だ。じっくり楽しませて貰うとしよう。
未だ見ぬ王都への期待を胸に、俺達は王都へと向けて再び馬車を走らせた。
「はい、並んで並んで! そこ、割り込みしない!」
「身分証の提示をお願いします」
「通行税は一人銀貨一枚です!」
王都に辿り着くと、そこは人の山だった。
入口の門へと続く長蛇の列。ペコライとは比べるべくもない。
警備もしっかりとしていて、俺が最初異世界に抱いていたイメージそのままの光景が、そこにはあった。
「ようやく着きましたね」
「ええ。久しぶりの王都です。これを見ると、帰って来たんだなって実感が湧いてきます」
アルクは目の前の長蛇の列を眺めながら、懐かしそうに呟いている。
「そんなに久しぶりなのか?」
懐かしいって言うぐらいだから、相当帰ってなかったんだろうな。
「ええ、一ヶ月ぶりです」
「え、そんなに経ってなくね?」
言う程久しぶりという訳ではなさそうで、ついツッコんでしまった。いや、一ヶ月ぐらいで懐かしいは大げさだろう。
てっきり年単位で帰ってないのかと思ってたけど、そうじゃないのか。
「そうですか? 私は王都を離れるのは今回が初めてだったので、これでも随分懐かしく感じたんですけど」
「え、今回が初めてなのか?」
「はい、そうです」
それは確かに懐かしく感じても不思議じゃないか。
いうなれば、初めて実家を離れて一人暮らしする新卒みたいなものだし。
「二人共、私達も並ぶぞ」
と、俺とアルクが話していると、フーリから声がかかり、俺達はその長蛇の列の最後尾へと並ぶ事になった。
まあそのおかげで比較的安全に旅が出来たとも言えるのだけど。
変わった事といえば、途中で全身鎧を着こんだ集団とすれ違ったぐらいか。あれは凄かった。まさに「騎士団」って言葉が似合いそうな集団だったからな。
だがその一番先頭は、マリー達とそう変わらないぐらいの年に見える女の子だった。手段の全員が全身鎧を着込んでいたのに、その子だけが全身鎧に身を包んでいなかったからよく覚えてる。
その子に「この先で山賊に襲われたりしませんでしたか?」と尋ねられたから「リーグ山脈で十人ぐらい見かけましたよ」とだけ返しておいた。
嘘は言ってない、うん。
俺が答えると、まだ何か聞きたそうな顔をしていたが、少しだけ考える素振りを見せると「分かりました。ご協力感謝します」とだけ答えてから、そのまま行ってしまったけど。
多分あの集団はリーグ山脈に向かったんだろうな。
アレは一体何だったのか、一応アルクに聞いてみたら、ルロンド王国の騎士団だろうという答えが返ってきた。
アルクは元々王都にいたって言ってたし、知っていても不思議ではない。
騎士団みたいだなぁ、とは思っていたけど、本当に騎士団だったのか。俺達に山賊に襲われたか聞いてきたし、多分例の山賊達を捕まえに行くのだろう。
……彼らは無事だろうか? 服を溶かされ、髪を溶かされ、挙句の果てには仲間割れまで。俺達がやった事だけど、今更ながら多少の罪悪感が湧いてくるが、山賊達の自業自得だと思う事にした。
「さて、そろそろ王都が見えて来る頃ですね。カイトさん、冒険者カードは持ってますよね?」
「ん? ああ、持ってるけど?」
確かコレが身分証の代わりになるって前にマリーが言ってたから、常に持ち歩く事にしている。といっても、普段はストレージの中に突っ込んでるだけだけど。
「ペコライと違って、王都は身元確認が厳しいですからね。冒険者カードが無いと、最悪入れない事もありますから」
「え? そうなのか?」
驚いた。ペコライではほとんど素通り状態だったから、てっきり王都も似た様な物なのかと思ってたけど、そういう訳じゃなかったらしい。
そりゃそうか。どこもかしこもあんなガバガバ警備な訳ない。ペコライが特別だっただけなんだ。
まああの警備でも治安は良かったのだから、問題はない……ないのか?
「王都は人の出入りが激しい分、治安も荒れ気味な部分がありますからね。王都の端の方にはスラム街や貧民街なんかもあるぐらいですから」
「スラム街に貧民街? そんなのあるのか?」
スラム街は日本には無かったけど、世界にはそういうのがある国も存在するって聞いた事がある。だが、貧民街は聞いた事がない。
もしかしたら俺が知らないだけで、世界にはそういう場所がある国もあるのかもしれないけど。
でも、スラム街に貧民街か。そうなってくると、もしかしたら孤児院なんかもあるのかもしれない。
今更確認する方法なんてないから、気にするだけ無駄だけど。
「あります。あまり褒められた事ではありませんけど、治安の悪化を深刻化させない為には必要ですから。褒められた事ではありませんけど」
マリーは苦虫を嚙み潰したような顔をしながら、二回も言った。多分相当不愉快なんだろう。表情を見れば分かる。
「本当なら、そんな物無い方がいいのだがな。あれだけ大きな都市になると、スラム街や貧民街はどうしても出来上がってしまう。仕方がないんだ」
「仕方がない、か」
確かにその二つがあれば、問題を起こしそうな人間は自然とそこに集中してくるだろう。人間後暗い事があると、どうしても人の目が気になってしまうものだ。それが真っ当に生きてる人間相手なら尚更。
だが、ここでスラムなんかがあったらどうだろう? 周りは自分と同じ、訳有りの人間ばかり。いわば同類の堪り場だ。
そんな所があれば、訳有りの人間は自然と集まるものだろう。
自分だけが訳有りじゃないんだと、言い訳が出来るから。多分、俺が逆の立場なら、そうしてると思う。
問題がある人間が一か所に集まれば、警備もしやすくなるというものだ。
まあ、あくまで昔こんな話をどこかで聞いた事がある気がするだけで、実際の所はどうなのか分からないけど。
「まあ、近付きさえしなければ何の問題も無いし、見えもしない。王都ではあまり端の方には行かない様にすれば大丈夫だ」
「それもそうだな」
残念ながら、俺にそのスラムや貧民街をどうにか出来るだけの力はない。ならいっそ見ない方が賢明だ。
だってどうにも出来ないから。
「さあ、そろそろ王都が見えて来るぞ」
気を取り直して正面に視線を向けてみると、大分先の方に遠目からでも分かる程大きな城の様な建物が目に入ってきた。
まだ結構距離がある様に見えるけど、ハッキリと城だと認識出来る程の大きさがある。
もしかして、アレが王都か?
ここからでも分かるぐらいだ。ペコライとは比べ物にならないぐらい大きい街だという事は分かる。
流石は一国の王都って事か。
「ようやく見えてきましたね。道中「色々」ありましたが、皆さんのおかげで無事王都に帰る事が出来ました」
アルクが王都に視線を向けながら、感慨深そうに頷いているが、気の所為か? 「色々」を強調してた気がするけど。
まあ確かに山賊イベントは色々とツッコミどころは多かったけど。
「気が早いぞアルク。王都に着くまで護衛は続くんだ。礼を言うのは無事王都に着いてからにしてくれ」
フーリの言う通り、まだ王都には着いていないのだから、礼を言うのは気が早い。アルクを無事王都に送り届けて、初めて依頼を達成したと言えるだろう。
目的地まで無事送り届ける事が護衛だ。
「さあ、王都まであと少しだが、油断しない様にな」
「後少しです。頑張りましょうね」
「ああ、そうだな」
王都まであと僅か。
アルクを送り届けたら、その後は王都観光が待ってる。
あれだけ大きな都市だ。きっと観光名所的な物もある筈だ。じっくり楽しませて貰うとしよう。
未だ見ぬ王都への期待を胸に、俺達は王都へと向けて再び馬車を走らせた。
「はい、並んで並んで! そこ、割り込みしない!」
「身分証の提示をお願いします」
「通行税は一人銀貨一枚です!」
王都に辿り着くと、そこは人の山だった。
入口の門へと続く長蛇の列。ペコライとは比べるべくもない。
警備もしっかりとしていて、俺が最初異世界に抱いていたイメージそのままの光景が、そこにはあった。
「ようやく着きましたね」
「ええ。久しぶりの王都です。これを見ると、帰って来たんだなって実感が湧いてきます」
アルクは目の前の長蛇の列を眺めながら、懐かしそうに呟いている。
「そんなに久しぶりなのか?」
懐かしいって言うぐらいだから、相当帰ってなかったんだろうな。
「ええ、一ヶ月ぶりです」
「え、そんなに経ってなくね?」
言う程久しぶりという訳ではなさそうで、ついツッコんでしまった。いや、一ヶ月ぐらいで懐かしいは大げさだろう。
てっきり年単位で帰ってないのかと思ってたけど、そうじゃないのか。
「そうですか? 私は王都を離れるのは今回が初めてだったので、これでも随分懐かしく感じたんですけど」
「え、今回が初めてなのか?」
「はい、そうです」
それは確かに懐かしく感じても不思議じゃないか。
いうなれば、初めて実家を離れて一人暮らしする新卒みたいなものだし。
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