見た目は青年、心はアラサー、異世界に降り立つ! ~チートスキル「ストレージ」で異世界を満喫中~
五話
「それじゃあ、私はこのまま見張りを始めるから、皆は明日に備えて休んでくれ」
フーリは焚火の近くに腰を下ろしてそう言うと、焚火に追加の薪をくべ始めた。
そういえば途中で休憩してからずっと御者の真似事をしてたけど、眠くはないのだろうか?
一応休憩前に昼寝はしていたけど、少し心配だな。
「フーリ、さっきまで御者をしてたけど、眠くないのか?」
「ん? いや、まったく眠くないぞ。昼寝もしたしな」
いや、確かに昼寝はしてたけど、たったあれだけの昼寝で足りるのだろうか?
もっとギリギリまで寝ていた方が良かったのでは?
今からでも遅くないから、俺と交代で見張りをした方が良いんじゃないか?
「まあまあカイトさん。心配しなくても、姉さんなら大丈夫ですよ」
「そうなのか?」
俺がフーリに交代で見張りをしないか提案しようとすると、マリーがやんわりと止めに入ってきた。
「はい。むしろあれ以上寝ると、逆に眠気が強くなるタイプの人ですから、姉さんは。だから、今ぐらいが丁度いいんですよ」
「あー、まあ言いたい事は分かるけど」
確かにそういう人がいるのは知っているし、俺自身もどちらかと言えば寝過ぎると逆に調子が悪くなる方だ。
そう考えると、心配する必要はないのか。
「分かった。それじゃあフーリ、後は頼んだ」
あまりしつこく言うのも良くないと思い、俺はそこで話をやめ、フーリに一言声をかけた。
「ああ、任せろ。皆はゆっくり休むといい。おやすみ」
「ああ、おやすみ」
「おやすみ、姉さん」
「おやすみなさい、フレイアさん」
フーリに一言告げてから、俺達はそのまま馬車の隣に併設したテントへと移動した。
真っ白な動物の皮の様な物で作られたテントは、撥水性に優れているだけではなく、多少の衝撃ではビクともしなさそうだ。
なんでも「湿原リザードマン」とかいう、そのまんまの名前の魔物の皮で作られているらしい。
撥水性と防御力の両方を兼ね備えたそれは、冒険者にとって重宝するアイテムの一つであり、野営をする時は、こういうテントに寝るのが基本らしい。
俺とアルクは同じテントに。そしてマリーはもう一つのテント内へと移動する。
いくら一緒に行動しているとはいえ、流石に男女が同じテント内で眠るのはよくないからな。
「それじゃあマリー、おやすみ」
「おやすみなさい、マリエールさん」
「はい、それじゃあまた明日。おやすみなさい」
テントに入る前にマリーに一言声をかけ、テント内へと入って行くのを見届けてから、俺もテント内へと入った。
その後、特にトラブルが起こる事も無く、そのまま朝までゆっくりと眠る事が出来た。
次の日。
「……ん、んぅ?」
肌を冷やす冷気を感じて意識が覚醒した俺は、ベッドから起き上が……ろうとして、今の状況を思い出した。
(そうだった。今は護衛の最中だったんだ)
どうりで普段と違って寝起きがあまり良くない訳だ。
アルクは……まだ寝てるみたいだな。起こすのもアレだし、このまま寝かせておくか。
俺はアルクを起こさない様起き上がり、音を立てない様気を付けながら静かにテントの外に出た。
「ん、んーっ、はぁっ。よく寝た」
軽く伸びをして全身の筋肉を伸ばす。それから肩を数回軽く回す。うん、まだ少し眠いけど、初めての野宿にしてはよく眠れた方だろうな。
「おや、起きたみたいだな。おはよう、カイト君」
「ああ、フーリ。おはよう」
テントの外では見張りをしていたフーリが、焚火の周りに串に刺した肉を並べている所だった。
あれ? 肉なんてどこで手に入れたんだ?
「フーリ、それは?」
気になった俺が、フーリに尋ねてみると。
「それ? ああ、これの事か。実はホーンラビットを数匹程仕留めてな。朝食代わりに焼こうと思っていた所だったんだ」
フーリの言葉に彼女の背後に視線を移すと、そこには確かにホーンラビットの物と思われる毛皮と角がまとめて置いてあった。
既に解体は終わっている様で、肉は綺麗に切り分けて別の所にまとめてある。
流石にフーリがホーンラビット程度にやられるとは思わないけど、戦闘があったにしては随分と静かだったような?
「まあ、全て一撃で仕留めたからな。音らしい音は立てていないつもりだ」
俺の考えている事が分かったのか、フーリは俺の疑問に答える様に説明をしてくれた。
一撃で。つまり、声を上げる間もないぐらいの素早さで仕留めた、という事だろう。確かにその程度、フーリなら難なくやってのけそうだ。
「なるほどな。なら今日の朝飯は絞めたての兎肉か」
朝から豪勢だな。肉にしろ魚にしろ、やっぱり絞めたては旨いからな。
昔親戚の猟師のおっちゃんから分けて貰った鹿肉は絶品だった。
柔らかくて無駄な脂肪がついてない肉は、旨味が溢れてくるのに全くくどくなかった。
絞め方が上手かったのか、えぐみや臭みなんかも全然無かったんだよな。
「おはようござい……ふぁふ」
と、そんな事を考えていると、すぐ後ろから眠そうなマリーの声が聞こえてきた。
「ああ。おはよう、マリー」
「おはよう。まだ眠そうだな。顔でも洗ってくるといい」
「うん、そうする」
「そういえば、カイト君もまだだったな」
「あ、そういえば」
ホーンラビットに気を取られてすっかり忘れてた。でも、川の水で顔を洗うのは出来れば遠慮したいし。
ストレージの中の水で洗うか。
そう思い、マリーにも声をかけようとしたのだが。
「……は?」
そこには、水魔法で作ったであろう水の塊を空中に浮かべ、そこに顔を付けて洗っているマリーの姿があった。
確かにアレならわざわざ川で顔を洗わなくてもいいけど
いや、それにしても器用な事するな。しかも、髪が水で濡れないように風魔法で後ろに流してるときた。
「ふぅ、さっぱりした! って、カイトさん? どうかしたんですか?」
「いや、器用な事するなって思って」
顔を洗い終わったマリーは、俺の視線に気が付いた様だったので、思ったままの事をマリーに告げた。
「器用、ですか? もしかして、今のがですか?」
今の、とは間違いなく水魔法の事を言っているのだろう。
流石に分かるか。
「俺も水魔法使えるし、試しにやってみようかな」
確かマリーは空中に丸い水の塊を浮かべてたよな。そのイメージを頭に浮かべながら、水魔法を発動。すると。
「お、出来「バシャン!」て、ないな、うん」
一瞬「出来た」と思ったのだが、水の塊は本当に一瞬だけ空中に浮かぶと、そのまま形を失い、まるで風船が割れる様弾けた。その拍子に俺は水浸しに。
上手くいったと思ったんだけどな。
「は、はくしゅんっ!」
う、今の時期にびしょ濡れになるのは流石に寒いな。とりあえず上着だけでも脱いどくか。
「大丈夫ですか? すぐに乾かしますね」
それを見ていたマリーが、風魔法を使って俺の服を乾かし始めてくれた。暖かい風が心地いい。なんか、風魔法って便利だな。
使い勝手が良いっていうか。色々応用が利きそうだ。
「ありがとう、マリー」
「いえいえ、どういたしまして。それより、ズボンは大丈夫でしたか?」
マリーが俺のズボンを見ながら尋ねてきたが、流石にズボンは大丈夫だ。二重の意味で。
「ああ、ズボンは大丈夫」
「そうですか?」
仮に濡れていたとしても、ズボンを脱ぐわけにはいかない。そう、問題ないのだ。
「カイト君、いきなりマリーの真似をしようとするのは無謀だぞ」
「ああ、身に染みて分かったわ」
いきなりマリーの真似をしようとしたのが間違いだったんだ。
当たり前の様にやってたから忘れてたけど、マリーの魔力操作の腕は相当な物だったんだ。
「大丈夫です。ちょっと練習すれば、カイトさんもすぐに出来る様になりますよ」
簡単そうに言うマリーだが、本当にそうだろうか?
とりあえず、王都までの道中ちょこちょこ練習してみるか。
その後、数分もしない内に乾いた上着を羽織る頃にはアルクも起き出して来て、俺達はそのままフーリが用意してくれた朝飯を食べてから、再び王都へ向けて出発した。
フーリは焚火の近くに腰を下ろしてそう言うと、焚火に追加の薪をくべ始めた。
そういえば途中で休憩してからずっと御者の真似事をしてたけど、眠くはないのだろうか?
一応休憩前に昼寝はしていたけど、少し心配だな。
「フーリ、さっきまで御者をしてたけど、眠くないのか?」
「ん? いや、まったく眠くないぞ。昼寝もしたしな」
いや、確かに昼寝はしてたけど、たったあれだけの昼寝で足りるのだろうか?
もっとギリギリまで寝ていた方が良かったのでは?
今からでも遅くないから、俺と交代で見張りをした方が良いんじゃないか?
「まあまあカイトさん。心配しなくても、姉さんなら大丈夫ですよ」
「そうなのか?」
俺がフーリに交代で見張りをしないか提案しようとすると、マリーがやんわりと止めに入ってきた。
「はい。むしろあれ以上寝ると、逆に眠気が強くなるタイプの人ですから、姉さんは。だから、今ぐらいが丁度いいんですよ」
「あー、まあ言いたい事は分かるけど」
確かにそういう人がいるのは知っているし、俺自身もどちらかと言えば寝過ぎると逆に調子が悪くなる方だ。
そう考えると、心配する必要はないのか。
「分かった。それじゃあフーリ、後は頼んだ」
あまりしつこく言うのも良くないと思い、俺はそこで話をやめ、フーリに一言声をかけた。
「ああ、任せろ。皆はゆっくり休むといい。おやすみ」
「ああ、おやすみ」
「おやすみ、姉さん」
「おやすみなさい、フレイアさん」
フーリに一言告げてから、俺達はそのまま馬車の隣に併設したテントへと移動した。
真っ白な動物の皮の様な物で作られたテントは、撥水性に優れているだけではなく、多少の衝撃ではビクともしなさそうだ。
なんでも「湿原リザードマン」とかいう、そのまんまの名前の魔物の皮で作られているらしい。
撥水性と防御力の両方を兼ね備えたそれは、冒険者にとって重宝するアイテムの一つであり、野営をする時は、こういうテントに寝るのが基本らしい。
俺とアルクは同じテントに。そしてマリーはもう一つのテント内へと移動する。
いくら一緒に行動しているとはいえ、流石に男女が同じテント内で眠るのはよくないからな。
「それじゃあマリー、おやすみ」
「おやすみなさい、マリエールさん」
「はい、それじゃあまた明日。おやすみなさい」
テントに入る前にマリーに一言声をかけ、テント内へと入って行くのを見届けてから、俺もテント内へと入った。
その後、特にトラブルが起こる事も無く、そのまま朝までゆっくりと眠る事が出来た。
次の日。
「……ん、んぅ?」
肌を冷やす冷気を感じて意識が覚醒した俺は、ベッドから起き上が……ろうとして、今の状況を思い出した。
(そうだった。今は護衛の最中だったんだ)
どうりで普段と違って寝起きがあまり良くない訳だ。
アルクは……まだ寝てるみたいだな。起こすのもアレだし、このまま寝かせておくか。
俺はアルクを起こさない様起き上がり、音を立てない様気を付けながら静かにテントの外に出た。
「ん、んーっ、はぁっ。よく寝た」
軽く伸びをして全身の筋肉を伸ばす。それから肩を数回軽く回す。うん、まだ少し眠いけど、初めての野宿にしてはよく眠れた方だろうな。
「おや、起きたみたいだな。おはよう、カイト君」
「ああ、フーリ。おはよう」
テントの外では見張りをしていたフーリが、焚火の周りに串に刺した肉を並べている所だった。
あれ? 肉なんてどこで手に入れたんだ?
「フーリ、それは?」
気になった俺が、フーリに尋ねてみると。
「それ? ああ、これの事か。実はホーンラビットを数匹程仕留めてな。朝食代わりに焼こうと思っていた所だったんだ」
フーリの言葉に彼女の背後に視線を移すと、そこには確かにホーンラビットの物と思われる毛皮と角がまとめて置いてあった。
既に解体は終わっている様で、肉は綺麗に切り分けて別の所にまとめてある。
流石にフーリがホーンラビット程度にやられるとは思わないけど、戦闘があったにしては随分と静かだったような?
「まあ、全て一撃で仕留めたからな。音らしい音は立てていないつもりだ」
俺の考えている事が分かったのか、フーリは俺の疑問に答える様に説明をしてくれた。
一撃で。つまり、声を上げる間もないぐらいの素早さで仕留めた、という事だろう。確かにその程度、フーリなら難なくやってのけそうだ。
「なるほどな。なら今日の朝飯は絞めたての兎肉か」
朝から豪勢だな。肉にしろ魚にしろ、やっぱり絞めたては旨いからな。
昔親戚の猟師のおっちゃんから分けて貰った鹿肉は絶品だった。
柔らかくて無駄な脂肪がついてない肉は、旨味が溢れてくるのに全くくどくなかった。
絞め方が上手かったのか、えぐみや臭みなんかも全然無かったんだよな。
「おはようござい……ふぁふ」
と、そんな事を考えていると、すぐ後ろから眠そうなマリーの声が聞こえてきた。
「ああ。おはよう、マリー」
「おはよう。まだ眠そうだな。顔でも洗ってくるといい」
「うん、そうする」
「そういえば、カイト君もまだだったな」
「あ、そういえば」
ホーンラビットに気を取られてすっかり忘れてた。でも、川の水で顔を洗うのは出来れば遠慮したいし。
ストレージの中の水で洗うか。
そう思い、マリーにも声をかけようとしたのだが。
「……は?」
そこには、水魔法で作ったであろう水の塊を空中に浮かべ、そこに顔を付けて洗っているマリーの姿があった。
確かにアレならわざわざ川で顔を洗わなくてもいいけど
いや、それにしても器用な事するな。しかも、髪が水で濡れないように風魔法で後ろに流してるときた。
「ふぅ、さっぱりした! って、カイトさん? どうかしたんですか?」
「いや、器用な事するなって思って」
顔を洗い終わったマリーは、俺の視線に気が付いた様だったので、思ったままの事をマリーに告げた。
「器用、ですか? もしかして、今のがですか?」
今の、とは間違いなく水魔法の事を言っているのだろう。
流石に分かるか。
「俺も水魔法使えるし、試しにやってみようかな」
確かマリーは空中に丸い水の塊を浮かべてたよな。そのイメージを頭に浮かべながら、水魔法を発動。すると。
「お、出来「バシャン!」て、ないな、うん」
一瞬「出来た」と思ったのだが、水の塊は本当に一瞬だけ空中に浮かぶと、そのまま形を失い、まるで風船が割れる様弾けた。その拍子に俺は水浸しに。
上手くいったと思ったんだけどな。
「は、はくしゅんっ!」
う、今の時期にびしょ濡れになるのは流石に寒いな。とりあえず上着だけでも脱いどくか。
「大丈夫ですか? すぐに乾かしますね」
それを見ていたマリーが、風魔法を使って俺の服を乾かし始めてくれた。暖かい風が心地いい。なんか、風魔法って便利だな。
使い勝手が良いっていうか。色々応用が利きそうだ。
「ありがとう、マリー」
「いえいえ、どういたしまして。それより、ズボンは大丈夫でしたか?」
マリーが俺のズボンを見ながら尋ねてきたが、流石にズボンは大丈夫だ。二重の意味で。
「ああ、ズボンは大丈夫」
「そうですか?」
仮に濡れていたとしても、ズボンを脱ぐわけにはいかない。そう、問題ないのだ。
「カイト君、いきなりマリーの真似をしようとするのは無謀だぞ」
「ああ、身に染みて分かったわ」
いきなりマリーの真似をしようとしたのが間違いだったんだ。
当たり前の様にやってたから忘れてたけど、マリーの魔力操作の腕は相当な物だったんだ。
「大丈夫です。ちょっと練習すれば、カイトさんもすぐに出来る様になりますよ」
簡単そうに言うマリーだが、本当にそうだろうか?
とりあえず、王都までの道中ちょこちょこ練習してみるか。
その後、数分もしない内に乾いた上着を羽織る頃にはアルクも起き出して来て、俺達はそのままフーリが用意してくれた朝飯を食べてから、再び王都へ向けて出発した。
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