見た目は青年、心はアラサー、異世界に降り立つ! ~チートスキル「ストレージ」で異世界を満喫中~
三話
マリーはまるで神々しい物を見ているかの様に、ありがたそうに干し椎茸を見つめている。いや、拝んでいる。
いやいや、これ日本ならスーパーで普通に買える程度の物なんだけどな。
「うん、そう。これが干し椎茸。思ったよりも普通だろ?」
と、言ってはみたが、多分マリーにとっては普通じゃないんだろう。あの表情を見てたら分かる。絶望の中に差し込む一筋の光でも見ているかの様な顔してるし。
「それが……でも、本当に干し椎茸になってるんですか?」
「ん? というと?」
ストレージで確認もしたし、間違いなく干し椎茸の筈だ。念の為鑑定をかけてみると「干し椎茸」と出ているし、間違いない。
「いえ、もしかしたら干し椎茸によく似た別の食べ物の可能性もあるんじゃないかと。なので、ここは念の為味見をした方が……」
「マリー、何を言うかと思えば……」
マリーの言葉に、呆れた様な視線を向けるフーリ。まあ気持ちは分からないじゃない。
言い方を変えてはいるが、要は「早く食べたい」という事だ。
「だ、だって。折角目の前にあるんだから、食べたくなるのは普通でしょ?」
フーリの呆れた様な視線に、流石のマリーも気まずくなったのか、言い訳する声は少々小さめだ。
「……ふむ、まあマリーの食い意地は置いておくとして、私も少し興味が湧いてきていた所だ」
「でしょ! 流石は姉さん!」
すると、意外な事にフーリもこの「干し椎茸」に興味が湧いてきたという。
食い意地が張ってるって暗に言われてるけど、それは良いのかマリー?
それに、干し椎茸ってすぐに調理出来るような物じゃないよ? 確か、焼いて食べるにも、水で戻してからじゃないと無理だったと思うし、出汁を取るにしても結構時間がかかる筈。
でも、この雰囲気の中でそれを言うのか。
マリーは期待に満ちた目で。フーリも珍しく興味津々といった感じでこっちを見ている。
んー、どうしたもんか。
「皆さん、お待たせしました! って、どうかしたんですか?」
俺がどうしようかと悩んでいる時だった。馬に餌をやりに離れていたアルクが戻ってきたのは。
しめたっ!
「おーアルク、遅かったじゃないか! ささっ、時間は有限なんだし、早速出発しようじゃないか!」
アルクさえ戻ってくればこっちのものだ。
多少強引ではあるが、ここは話題を変える絶好のチャンス。
「え? ええ、そ、そうですね。お願いします」
俺の勢いにアルクは呆気に取られながらも、頷いて返してきた。よし、後は。
「って事だから、そろそろ出発しようじゃないか、二人共!」
このまま勢いで押し切るだけだ。
「……夕飯では食べさせて貰いますからね、干し椎茸」
「あ、はい、分かりました」
アルクの言葉もあって一応納得してくれたマリーだが、その言葉には不満がありありと含まれていた。
いや、怖いって。ちゃんと晩飯までには用意するから。
「まあ私は別にそれで構わないが」
フーリの方はそこまで不満という訳ではないらしい。まあフーリの場合は興味があるだけで、別に今すぐ食べたい訳じゃないんだろう。
特に何か言われる事も無かった。
さて、何を作るか、今から急いで考えないとな。
「なあ、アルク」
「はい、何ですか?」
昼飯も食べ終わり、再び王都へと向けて爆走する馬車の中、俺はアルクへと話しかけていた。
「アルクが取り扱ってる商品の中に、大豆ってあるか?」
干し椎茸を使った料理を考えていたのだが、俺が思いつく限りでは、どの料理も「醤油」や「味噌」が必須になってくる。
それらが簡単に手に入るのなら、それに越したことはないんだが、生憎今までその手の調味料は見た事がない。
もしかしたら大豆その物がこの世界に無いのかと思い、アルクに尋ねてみたのだが。
「大豆ですか? 確か侍の国の特産品の中に、そんな物があった様な……」
なんと、大豆という言葉はアルクにも通じた。それはつまり、この世界にもあるという事だ。大豆が。
アルクは「侍の国の特産品」だと言ったが、本当にどんな国なんだ?
日本語も侍の国の文字だというし、大豆もあるという。
それに、名前よりも名字が先にくるというし、どうにも日本の文化がチラ見えしてるんだよな。
その内機会があれば、一度侍の国に行ってみたいものだ。
まあ、今それを考えても仕方がない。今は目の前の大豆が最優先。
「本当か? もしあるなら、少し売ってくれないか?」
大豆さえあれば、ストレージを使って醤油や味噌が作れるかもしれない。もしこの辺が作れるなら、晩飯に味噌汁とか吸い物が作れるんだけど。
「ええ、いいですよ。一キロ銀貨一枚でお譲りしますけど、どのぐらい必要ですか?」
アルクは手綱を握りながら、器用にアイテムボックスを操作して、大豆の入った麻袋を取り出した。
アレで大体一キロぐらいで、銀貨一枚か。
「とりあえず十キロ貰えるか?」
「十キロですね。それじゃあ金貨一枚になります」
アルクはアイテムボックスから、さっきよりも更に大きな麻袋を取り出し、それを俺に向かって差し出してくる。
いや、これ十キロあるのに、片手で持てるのかよ。と思ったのだが、よく考えたら、アルクは一応冒険者でもあるんだった。
これぐらいなら軽い物か。
「金貨一枚な。ほい、コレ」
アルクから差し出される大豆を受け取ってから一度ストレージに仕舞い、財布から金貨を一枚だけ取り出してアルクへと差し出す。
よし、これで大豆は確保したし、早速ストレージを使って。
「はい、確かに。でも、急に大豆なんて、どうしたんですか?」
味噌を作ってみるか、と考えていたら、アルクから大豆の使い道について尋ねられた。
「ん? ああ、ちょっと晩飯にな」
別に隠す事でもないので、正直に話す。もちろんストレージについては伏せたままで。
「夕飯に、ですか? 昼食に用意して頂いた物はとても美味しかったですし、それも期待していいんですか?」
「ん-、そうだな。上手くいけば、な」
まだ味噌が作れると決まった訳じゃないから断言は出来ないが、まあ間違いなく作れるだろう。
あとは味噌汁が受けるかどうかだけど、地球の料理は基本的に受けが良い。これは異世界のお約束だ。
「それじゃあ、俺は戻ってるわ」
「はい、ありがとうございました」
アルクに一言だけそう告げてから、俺は馬車の荷台へと戻った。
「さて、味噌は作れるかな?」
ストレージ画面を開き、大豆の項目を探し始める。
えーっと、大豆、大豆っと、あったあった。
……うん、味噌も問題なく作れるみたいだ。
「カイトさん、何しに行ってたんですか?」
早速「生産」のコマンドを実行しようとしていると、マリーがすぐ傍まで近寄ってきて尋ねてきた。
ちなみにフーリは今夜見張りをする予定なので、それに向けて昼寝中だ。
こういう長旅の時は、交代で見張りをする。これも異世界のお約束だ。
「ちょっとアルクに大豆を譲って貰いにな」
「大豆、ですか? 確かウ舞茸と同じ、侍の国の特産品でしたよね? そんな物、一体どうするんですか?」
俺が大豆と言うと、マリーはすぐさま侍の国の特産品だと言い当ててみせた。
もしかして、結構有名なのか? まあ特産品っていうぐらいだし、当たり前か。
「今日の晩飯で作ろうと思ってる料理に、ちょっとな」
「夕飯に……もしかして、干し椎茸料理ですか 」
流石はマリーと言うべきか、すぐに当てられてしまった。まあ、正確には干し椎茸料理ではないけど。
「まあ、そうだな、俺の故郷の料理を作るから、期待しててくれ」
いくら俺でも、味噌汁ぐらいは作れる、具は……干し椎茸でいいか。別に食えない訳じゃないし。
「はい! 期待して待ってますね!」
期待するマリーの顔には「ようやく干し椎茸が食べられる」と、ハッキリと書かれている。
うん、これは絶対に旨い味噌汁を作らないとな。
そう考え、俺は再びストレージに視線を落とした。
いやいや、これ日本ならスーパーで普通に買える程度の物なんだけどな。
「うん、そう。これが干し椎茸。思ったよりも普通だろ?」
と、言ってはみたが、多分マリーにとっては普通じゃないんだろう。あの表情を見てたら分かる。絶望の中に差し込む一筋の光でも見ているかの様な顔してるし。
「それが……でも、本当に干し椎茸になってるんですか?」
「ん? というと?」
ストレージで確認もしたし、間違いなく干し椎茸の筈だ。念の為鑑定をかけてみると「干し椎茸」と出ているし、間違いない。
「いえ、もしかしたら干し椎茸によく似た別の食べ物の可能性もあるんじゃないかと。なので、ここは念の為味見をした方が……」
「マリー、何を言うかと思えば……」
マリーの言葉に、呆れた様な視線を向けるフーリ。まあ気持ちは分からないじゃない。
言い方を変えてはいるが、要は「早く食べたい」という事だ。
「だ、だって。折角目の前にあるんだから、食べたくなるのは普通でしょ?」
フーリの呆れた様な視線に、流石のマリーも気まずくなったのか、言い訳する声は少々小さめだ。
「……ふむ、まあマリーの食い意地は置いておくとして、私も少し興味が湧いてきていた所だ」
「でしょ! 流石は姉さん!」
すると、意外な事にフーリもこの「干し椎茸」に興味が湧いてきたという。
食い意地が張ってるって暗に言われてるけど、それは良いのかマリー?
それに、干し椎茸ってすぐに調理出来るような物じゃないよ? 確か、焼いて食べるにも、水で戻してからじゃないと無理だったと思うし、出汁を取るにしても結構時間がかかる筈。
でも、この雰囲気の中でそれを言うのか。
マリーは期待に満ちた目で。フーリも珍しく興味津々といった感じでこっちを見ている。
んー、どうしたもんか。
「皆さん、お待たせしました! って、どうかしたんですか?」
俺がどうしようかと悩んでいる時だった。馬に餌をやりに離れていたアルクが戻ってきたのは。
しめたっ!
「おーアルク、遅かったじゃないか! ささっ、時間は有限なんだし、早速出発しようじゃないか!」
アルクさえ戻ってくればこっちのものだ。
多少強引ではあるが、ここは話題を変える絶好のチャンス。
「え? ええ、そ、そうですね。お願いします」
俺の勢いにアルクは呆気に取られながらも、頷いて返してきた。よし、後は。
「って事だから、そろそろ出発しようじゃないか、二人共!」
このまま勢いで押し切るだけだ。
「……夕飯では食べさせて貰いますからね、干し椎茸」
「あ、はい、分かりました」
アルクの言葉もあって一応納得してくれたマリーだが、その言葉には不満がありありと含まれていた。
いや、怖いって。ちゃんと晩飯までには用意するから。
「まあ私は別にそれで構わないが」
フーリの方はそこまで不満という訳ではないらしい。まあフーリの場合は興味があるだけで、別に今すぐ食べたい訳じゃないんだろう。
特に何か言われる事も無かった。
さて、何を作るか、今から急いで考えないとな。
「なあ、アルク」
「はい、何ですか?」
昼飯も食べ終わり、再び王都へと向けて爆走する馬車の中、俺はアルクへと話しかけていた。
「アルクが取り扱ってる商品の中に、大豆ってあるか?」
干し椎茸を使った料理を考えていたのだが、俺が思いつく限りでは、どの料理も「醤油」や「味噌」が必須になってくる。
それらが簡単に手に入るのなら、それに越したことはないんだが、生憎今までその手の調味料は見た事がない。
もしかしたら大豆その物がこの世界に無いのかと思い、アルクに尋ねてみたのだが。
「大豆ですか? 確か侍の国の特産品の中に、そんな物があった様な……」
なんと、大豆という言葉はアルクにも通じた。それはつまり、この世界にもあるという事だ。大豆が。
アルクは「侍の国の特産品」だと言ったが、本当にどんな国なんだ?
日本語も侍の国の文字だというし、大豆もあるという。
それに、名前よりも名字が先にくるというし、どうにも日本の文化がチラ見えしてるんだよな。
その内機会があれば、一度侍の国に行ってみたいものだ。
まあ、今それを考えても仕方がない。今は目の前の大豆が最優先。
「本当か? もしあるなら、少し売ってくれないか?」
大豆さえあれば、ストレージを使って醤油や味噌が作れるかもしれない。もしこの辺が作れるなら、晩飯に味噌汁とか吸い物が作れるんだけど。
「ええ、いいですよ。一キロ銀貨一枚でお譲りしますけど、どのぐらい必要ですか?」
アルクは手綱を握りながら、器用にアイテムボックスを操作して、大豆の入った麻袋を取り出した。
アレで大体一キロぐらいで、銀貨一枚か。
「とりあえず十キロ貰えるか?」
「十キロですね。それじゃあ金貨一枚になります」
アルクはアイテムボックスから、さっきよりも更に大きな麻袋を取り出し、それを俺に向かって差し出してくる。
いや、これ十キロあるのに、片手で持てるのかよ。と思ったのだが、よく考えたら、アルクは一応冒険者でもあるんだった。
これぐらいなら軽い物か。
「金貨一枚な。ほい、コレ」
アルクから差し出される大豆を受け取ってから一度ストレージに仕舞い、財布から金貨を一枚だけ取り出してアルクへと差し出す。
よし、これで大豆は確保したし、早速ストレージを使って。
「はい、確かに。でも、急に大豆なんて、どうしたんですか?」
味噌を作ってみるか、と考えていたら、アルクから大豆の使い道について尋ねられた。
「ん? ああ、ちょっと晩飯にな」
別に隠す事でもないので、正直に話す。もちろんストレージについては伏せたままで。
「夕飯に、ですか? 昼食に用意して頂いた物はとても美味しかったですし、それも期待していいんですか?」
「ん-、そうだな。上手くいけば、な」
まだ味噌が作れると決まった訳じゃないから断言は出来ないが、まあ間違いなく作れるだろう。
あとは味噌汁が受けるかどうかだけど、地球の料理は基本的に受けが良い。これは異世界のお約束だ。
「それじゃあ、俺は戻ってるわ」
「はい、ありがとうございました」
アルクに一言だけそう告げてから、俺は馬車の荷台へと戻った。
「さて、味噌は作れるかな?」
ストレージ画面を開き、大豆の項目を探し始める。
えーっと、大豆、大豆っと、あったあった。
……うん、味噌も問題なく作れるみたいだ。
「カイトさん、何しに行ってたんですか?」
早速「生産」のコマンドを実行しようとしていると、マリーがすぐ傍まで近寄ってきて尋ねてきた。
ちなみにフーリは今夜見張りをする予定なので、それに向けて昼寝中だ。
こういう長旅の時は、交代で見張りをする。これも異世界のお約束だ。
「ちょっとアルクに大豆を譲って貰いにな」
「大豆、ですか? 確かウ舞茸と同じ、侍の国の特産品でしたよね? そんな物、一体どうするんですか?」
俺が大豆と言うと、マリーはすぐさま侍の国の特産品だと言い当ててみせた。
もしかして、結構有名なのか? まあ特産品っていうぐらいだし、当たり前か。
「今日の晩飯で作ろうと思ってる料理に、ちょっとな」
「夕飯に……もしかして、干し椎茸料理ですか 」
流石はマリーと言うべきか、すぐに当てられてしまった。まあ、正確には干し椎茸料理ではないけど。
「まあ、そうだな、俺の故郷の料理を作るから、期待しててくれ」
いくら俺でも、味噌汁ぐらいは作れる、具は……干し椎茸でいいか。別に食えない訳じゃないし。
「はい! 期待して待ってますね!」
期待するマリーの顔には「ようやく干し椎茸が食べられる」と、ハッキリと書かれている。
うん、これは絶対に旨い味噌汁を作らないとな。
そう考え、俺は再びストレージに視線を落とした。
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