見た目は青年、心はアラサー、異世界に降り立つ! ~チートスキル「ストレージ」で異世界を満喫中~
二十六話
喫茶店を出たら次の目的地へ。
新しい魔石のアクセサリーが出てないか確認したいとマリーに話した所、マリーも一緒に表通りに行くというので、二人で表通りへと向かう事にした。
「おばちゃん、何か新作はある?」
最早慣れたもので、このアクセサリー店のおばちゃんとも気軽に話す程度には仲良くなっていた。
こういうタイプのおばちゃんって、話しやすいんだよな。
「おや、エンペラーのお兄さんじゃないか! 新作かい? ちょっと待っておくれ」
おばちゃんはカウンターの下にその身を滑り込ませ、ごそごそと何かを漁っている。さて、今日はどんな物が出てくるかな?
何か珍しい物でも手に入れば良いんだけど。
「カイトさんって、いつもこのお店に寄ってるんですか?」
「ん? いや、たまにだよ。この店は掘り出し物が多いし、穴場なんだ」
各属性の魔石もこの店で手に入れたし、無属性の魔石もここで手に入れた。
俺からすると、ここは隠れた名店といっても過言じゃないかもしれない。全然隠れてないけど。
「お、あったあった。お兄さんは高級品よりも、こういう物の方が好きだろ?」
カウンターの下から出てきたおばちゃんは、その手に縦長の木枠で囲われたガラスケースの様な物を持っていた。中には雪を思わせる様な、白く淡い光を放つ半透明の綺麗な石が内包されている。
「これはかの有名なスノウドラゴンの魔石だよ。その美しい輝きは、見る物全てを魅了するとまで言われている代物さ!」
「ドラゴン!?」
掘り出し物でもあるかと思って来てみれば、想像以上の物が飛び出してきた。
ていうか、この世界には実在するのか、ドラゴン。
「おばちゃん、ちょっと鑑定していい? 鑑定!」
「せめて返事を聞いてからにしたらどうだい!?」
俺はおばちゃんの返事さえ待ちきれなくて、つい鑑定をかけてしまった。
結果は「スノウドラゴンの魔石」と出ていた。間違いない、本物だ!
「どうだい? 本物だっただろう?」
「え、ええ」
おばちゃんは不敵に笑って確認してきたが、何で分かったのだろうか?
「分からいでか。お兄さんの表情を見ればすぐに分かるよ」
どうやら表情に出ていたらしい。
いや、これは流石に仕方がない。なんせドラゴンの魔石だ。そんな物をこの目で拝める日がくるなんて、夢にも思っていなかったのだから。
「カイトさん、これは是が非でも手に入れるべきですよ!」
「マリー?」
それまで俺とおばちゃんのやり取りを、黙って眺めているだけだったマリーからの突然の提案。
「スノウドラゴンなんて滅多に遭遇できる魔物じゃありませんから、魔石を手に入れる機会なんてほとんどありません。仮にスノウドラゴンが現れても、手に入れるのは容易ではないでしょう。なので、ここは絶対に手に入れておくべきです」
マリーの言う通り、これは絶対に手に入れるべき代物なのだろう。それに、ドラゴンの魔石なんて興味しかない。是が非でも手に入れたいけど。
「でも、お高いんでしょう?」
そう、値段だ。ドラゴンの魔石なんてそうそう入手する機会はないだろうから、値段も張るに決まってる。
そう思っておばちゃんに尋ねてみたのだが。
「そうさね。ざっと計算して、金貨三枚分は」
「買います!」
即決だった。迷いもしなかった。こんなに珍しい代物が金貨三枚で手に入るなら安いものだ。
「相変わらず迷いがないねえ、お兄さん。普通はそこで考えるもんだよ」
俺が即決で決めると、おばちゃんはまるで分かっていたかの様に、スノウドラゴンの魔石をカウンターに置いた。
「まあ、あたしゃ助かるけどね。さて、他にはあるかい? 残りは今そこに出てる分だけだよ」
おばちゃんが自分の店の商品を見ながら俺に尋ねてきたが、他には特に欲しいと感じるものは無い。
……あ、そうでもないな。
「おばちゃん、それは?」
俺が指差すその先。そこには小指の先ほどの大きさの、小さな宝石をあつらえたイヤリングが置いてあった。
その宝石は、ずっと見ていると飲み込まれてしまうのではないかと思う程、深い青色をしている。
「これかい? これはただのイヤリングだよ。魔石を使っている訳でも、いわく付きって訳でもない、ね」
おばちゃんは意味ありげな視線を俺に向けながら答えてくれた。何でそんな顔で俺の事見るの?
しかし、おばちゃんは隣のマリーに視線を向けると、その表情は意味ありげな物から、徐々に好奇心に満ちた物へと変わっていった。
あ、嫌な空気。
「ん? ははーん、なるほど。お兄さんも隅に置けないねぇ。彼女さんにプレゼントかい?」
「か、かのっ!? ち、違いますよ!」
彼女という言葉に、マリーは自分の事でもないのに言葉を詰まらせ、慌てふためいている。
だが、俺は違う。こういうやり取りも既に何度も経験済みだし、大して驚きはしない。いつもの事だ。
「だからおばちゃん、何度も言ってるだろ? 俺に彼女なんていないって」
「おや? そうなのかい? てっきりそこのお嬢さんと付き合ってるんだとばかり思ってたけど」
そこのお嬢さん? それってマリーの事か?
自分の事でもないのに慌てるマリー。おばちゃんの物言い。
……え? もしかして?
「マリーが俺の……はぁ!?」
思わず声に出して驚いてしまった。
いやいや、何で!? 俺とマリーが恋人!? そんな馬鹿な!
「気付いてなかったのかい!? わたしゃ最初から二人の事を言ってたんだよ!」
「……カイトさんは、こういう人ですから。肝心な所が抜けてるというか。鈍いんですよ」
「はぇー、驚いた。苦労してるねぇ、えっと……」
「マリエールです。マリーって呼んで下さい」
「マリーちゃんだね。覚えとくよ。エンペラーのお兄さんが初めて連れてきた彼女さんだしね」
「あの、本当に彼女では……」
「でも、気になってるんじゃないかい?」
「え? ど、どうしてそう思うんですか?」
「そりゃあ――」
マリーとおばちゃんが何やら話し込んでいる様だが、今の俺にはその会話に混ざる程の余裕はない。
それより誤解を解かないと! マリーもいきなりそんな勘違いをされて困ってるだろうし。えっと……。
「カイトさん、いつまでそうしてるんですか?」
「へ? マリー?」
俺がどう誤解を解こうか考えていると、既に落ち着きを取り戻しているマリーに声をかけられた。
見ると、マリーとおばちゃんの会話はいつの間にか終わっていた。一体何の話をしてたんだろうか?
もしかしてマリーが誤解を解いてくれたとか?
「ありがとう、マリー。おかげで助かったよ」
マリーに一言お礼を告げ、おばちゃんの方に視線を移してみると、おばちゃんはニヤニヤしながらも、俺の言葉を待っている様だった。
なので俺は。
「おばちゃん、これも一つ追加して、会計お願いします」
努めて冷静に言葉を発した。
大丈夫、声も上擦っていない筈だ。
「はいよ! そうだね、両方合わせて金貨……」
「あ、すみません、やっぱりこれも追加で」
俺は会計が終わるギリギリ前に、あるものを追加した。
「これかい? 別にいいけど、マリーちゃんにこれはあんまり似合わないんじゃないかい?」
俺が追加した物。それは真っ赤に輝く宝石をあつらえたイヤリングだった。
ガラスを赤く着色してあるのか、それともそういう宝石か魔石が存在するのか。それは他のイヤリングとは違う、異彩を放っていた。
その輝きは、火の魔石とはまた違った輝きの様にも見える。いや、別にそういうのに詳しい訳じゃないけど。
「いえ、これは彼女の姉にあげようかと思いまして」
青といえばマリー。赤といえばフーリ。俺の中ではそういうイメージだ。使う魔法が水と火っていうのもあって、このイメージは強い。
「へえ、お姉さんに。まあ私としては売れるなら構わないけどね。それじゃあ全部で金貨三枚と銀貨二枚って所かね」
「金貨三枚と銀貨二枚ですね」
スノウドラゴンの魔石が金貨三枚だから、これは二つで銀貨二枚か。思っていたよりも安く済んだな。
「はい、マリー。あげる」
「……はい、ありがとうございます」
俺がマリーにイヤリングを手渡すと、いつもならマリーは遠慮して渡すのも一苦労な筈のマリーが、今日は珍しく素直に受け取ってくれた。
不思議に思っていると、ニヤニヤとこちらを見るおばちゃんの姿が。
さては、さっきおばちゃんに何か吹き込まれたか? まあ俺としては素直に受け取ってくれるのならば文句はないけど。
「どうですか? 似合いますか?」
「うん、よく似合ってる」
マリーは早速自分の耳にイヤリングを付けて俺に見せてくれた。
うん、やっぱり青と言えばマリーなんだよな。
新しい魔石のアクセサリーが出てないか確認したいとマリーに話した所、マリーも一緒に表通りに行くというので、二人で表通りへと向かう事にした。
「おばちゃん、何か新作はある?」
最早慣れたもので、このアクセサリー店のおばちゃんとも気軽に話す程度には仲良くなっていた。
こういうタイプのおばちゃんって、話しやすいんだよな。
「おや、エンペラーのお兄さんじゃないか! 新作かい? ちょっと待っておくれ」
おばちゃんはカウンターの下にその身を滑り込ませ、ごそごそと何かを漁っている。さて、今日はどんな物が出てくるかな?
何か珍しい物でも手に入れば良いんだけど。
「カイトさんって、いつもこのお店に寄ってるんですか?」
「ん? いや、たまにだよ。この店は掘り出し物が多いし、穴場なんだ」
各属性の魔石もこの店で手に入れたし、無属性の魔石もここで手に入れた。
俺からすると、ここは隠れた名店といっても過言じゃないかもしれない。全然隠れてないけど。
「お、あったあった。お兄さんは高級品よりも、こういう物の方が好きだろ?」
カウンターの下から出てきたおばちゃんは、その手に縦長の木枠で囲われたガラスケースの様な物を持っていた。中には雪を思わせる様な、白く淡い光を放つ半透明の綺麗な石が内包されている。
「これはかの有名なスノウドラゴンの魔石だよ。その美しい輝きは、見る物全てを魅了するとまで言われている代物さ!」
「ドラゴン!?」
掘り出し物でもあるかと思って来てみれば、想像以上の物が飛び出してきた。
ていうか、この世界には実在するのか、ドラゴン。
「おばちゃん、ちょっと鑑定していい? 鑑定!」
「せめて返事を聞いてからにしたらどうだい!?」
俺はおばちゃんの返事さえ待ちきれなくて、つい鑑定をかけてしまった。
結果は「スノウドラゴンの魔石」と出ていた。間違いない、本物だ!
「どうだい? 本物だっただろう?」
「え、ええ」
おばちゃんは不敵に笑って確認してきたが、何で分かったのだろうか?
「分からいでか。お兄さんの表情を見ればすぐに分かるよ」
どうやら表情に出ていたらしい。
いや、これは流石に仕方がない。なんせドラゴンの魔石だ。そんな物をこの目で拝める日がくるなんて、夢にも思っていなかったのだから。
「カイトさん、これは是が非でも手に入れるべきですよ!」
「マリー?」
それまで俺とおばちゃんのやり取りを、黙って眺めているだけだったマリーからの突然の提案。
「スノウドラゴンなんて滅多に遭遇できる魔物じゃありませんから、魔石を手に入れる機会なんてほとんどありません。仮にスノウドラゴンが現れても、手に入れるのは容易ではないでしょう。なので、ここは絶対に手に入れておくべきです」
マリーの言う通り、これは絶対に手に入れるべき代物なのだろう。それに、ドラゴンの魔石なんて興味しかない。是が非でも手に入れたいけど。
「でも、お高いんでしょう?」
そう、値段だ。ドラゴンの魔石なんてそうそう入手する機会はないだろうから、値段も張るに決まってる。
そう思っておばちゃんに尋ねてみたのだが。
「そうさね。ざっと計算して、金貨三枚分は」
「買います!」
即決だった。迷いもしなかった。こんなに珍しい代物が金貨三枚で手に入るなら安いものだ。
「相変わらず迷いがないねえ、お兄さん。普通はそこで考えるもんだよ」
俺が即決で決めると、おばちゃんはまるで分かっていたかの様に、スノウドラゴンの魔石をカウンターに置いた。
「まあ、あたしゃ助かるけどね。さて、他にはあるかい? 残りは今そこに出てる分だけだよ」
おばちゃんが自分の店の商品を見ながら俺に尋ねてきたが、他には特に欲しいと感じるものは無い。
……あ、そうでもないな。
「おばちゃん、それは?」
俺が指差すその先。そこには小指の先ほどの大きさの、小さな宝石をあつらえたイヤリングが置いてあった。
その宝石は、ずっと見ていると飲み込まれてしまうのではないかと思う程、深い青色をしている。
「これかい? これはただのイヤリングだよ。魔石を使っている訳でも、いわく付きって訳でもない、ね」
おばちゃんは意味ありげな視線を俺に向けながら答えてくれた。何でそんな顔で俺の事見るの?
しかし、おばちゃんは隣のマリーに視線を向けると、その表情は意味ありげな物から、徐々に好奇心に満ちた物へと変わっていった。
あ、嫌な空気。
「ん? ははーん、なるほど。お兄さんも隅に置けないねぇ。彼女さんにプレゼントかい?」
「か、かのっ!? ち、違いますよ!」
彼女という言葉に、マリーは自分の事でもないのに言葉を詰まらせ、慌てふためいている。
だが、俺は違う。こういうやり取りも既に何度も経験済みだし、大して驚きはしない。いつもの事だ。
「だからおばちゃん、何度も言ってるだろ? 俺に彼女なんていないって」
「おや? そうなのかい? てっきりそこのお嬢さんと付き合ってるんだとばかり思ってたけど」
そこのお嬢さん? それってマリーの事か?
自分の事でもないのに慌てるマリー。おばちゃんの物言い。
……え? もしかして?
「マリーが俺の……はぁ!?」
思わず声に出して驚いてしまった。
いやいや、何で!? 俺とマリーが恋人!? そんな馬鹿な!
「気付いてなかったのかい!? わたしゃ最初から二人の事を言ってたんだよ!」
「……カイトさんは、こういう人ですから。肝心な所が抜けてるというか。鈍いんですよ」
「はぇー、驚いた。苦労してるねぇ、えっと……」
「マリエールです。マリーって呼んで下さい」
「マリーちゃんだね。覚えとくよ。エンペラーのお兄さんが初めて連れてきた彼女さんだしね」
「あの、本当に彼女では……」
「でも、気になってるんじゃないかい?」
「え? ど、どうしてそう思うんですか?」
「そりゃあ――」
マリーとおばちゃんが何やら話し込んでいる様だが、今の俺にはその会話に混ざる程の余裕はない。
それより誤解を解かないと! マリーもいきなりそんな勘違いをされて困ってるだろうし。えっと……。
「カイトさん、いつまでそうしてるんですか?」
「へ? マリー?」
俺がどう誤解を解こうか考えていると、既に落ち着きを取り戻しているマリーに声をかけられた。
見ると、マリーとおばちゃんの会話はいつの間にか終わっていた。一体何の話をしてたんだろうか?
もしかしてマリーが誤解を解いてくれたとか?
「ありがとう、マリー。おかげで助かったよ」
マリーに一言お礼を告げ、おばちゃんの方に視線を移してみると、おばちゃんはニヤニヤしながらも、俺の言葉を待っている様だった。
なので俺は。
「おばちゃん、これも一つ追加して、会計お願いします」
努めて冷静に言葉を発した。
大丈夫、声も上擦っていない筈だ。
「はいよ! そうだね、両方合わせて金貨……」
「あ、すみません、やっぱりこれも追加で」
俺は会計が終わるギリギリ前に、あるものを追加した。
「これかい? 別にいいけど、マリーちゃんにこれはあんまり似合わないんじゃないかい?」
俺が追加した物。それは真っ赤に輝く宝石をあつらえたイヤリングだった。
ガラスを赤く着色してあるのか、それともそういう宝石か魔石が存在するのか。それは他のイヤリングとは違う、異彩を放っていた。
その輝きは、火の魔石とはまた違った輝きの様にも見える。いや、別にそういうのに詳しい訳じゃないけど。
「いえ、これは彼女の姉にあげようかと思いまして」
青といえばマリー。赤といえばフーリ。俺の中ではそういうイメージだ。使う魔法が水と火っていうのもあって、このイメージは強い。
「へえ、お姉さんに。まあ私としては売れるなら構わないけどね。それじゃあ全部で金貨三枚と銀貨二枚って所かね」
「金貨三枚と銀貨二枚ですね」
スノウドラゴンの魔石が金貨三枚だから、これは二つで銀貨二枚か。思っていたよりも安く済んだな。
「はい、マリー。あげる」
「……はい、ありがとうございます」
俺がマリーにイヤリングを手渡すと、いつもならマリーは遠慮して渡すのも一苦労な筈のマリーが、今日は珍しく素直に受け取ってくれた。
不思議に思っていると、ニヤニヤとこちらを見るおばちゃんの姿が。
さては、さっきおばちゃんに何か吹き込まれたか? まあ俺としては素直に受け取ってくれるのならば文句はないけど。
「どうですか? 似合いますか?」
「うん、よく似合ってる」
マリーは早速自分の耳にイヤリングを付けて俺に見せてくれた。
うん、やっぱり青と言えばマリーなんだよな。
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