見た目は青年、心はアラサー、異世界に降り立つ! ~チートスキル「ストレージ」で異世界を満喫中~
二十一話
「いやいや、いきなり何言ってるんだアミィ?」
確かに部屋に戻るとは言ったけど、看病だなんて。大げさ過ぎるだろ。
「そうね。確かに看病する人は必要よね」
だが、俺の考えとは裏腹に、イレーヌさんは乗り気だ。
みんな意地でも俺の事を重病人にしたいの?
「でも、そういう事ならアミィ、あなたがカイトさんの看病をしてあげた方がいいんじゃない?」
イレーヌさんは俺からアミィに視線を移すと、そんな事を言い始めた。いや、イレーヌさんは知らないかもしれないけど、実はさっきアミィの看病は断ったばっかりなんだよな。
ちょっと気まずいなぁ、と思っていたのだが。
「え、いいの?」
アミィはまるで、さっきのやり取りなんて無かったかのように乗り気だ。
え? さっき俺が断った事忘れたの? いや、まあ別にアミィの看病が嫌で断った訳じゃないんだけど。
「ええ、酒場の事ならお母さんに任せなさい。最近は随分体力も戻ってきたし、一日ぐらいお母さん一人でも大丈夫よ」
イレーヌさんはアミィを安心させる様に、これ見よがしに力こぶを作る仕草をして見せた。
残念ながら、そこに力こぶは出来ていないが。
「お母さん……でも、やっぱりまだ一人でなんて」
イレーヌさんのそんな姿を見て、アミィは一瞬納得しかけた様だったが、すぐにイレーヌさんの事を心配し始めた。
ていうか、そうだよ。よく考えたらアミィも俺の看病なんかしてる時間無いじゃないか。
確かにイレーヌさんの体力は以前に比べてかなり戻ってきたと言えるだろう。それは一緒に酒場の仕事をしている俺にもよく分かる。
でも、流石にまだ一人で酒場を回すなんて厳しいのではないだろうか?
「もう、アミィは心配性ね。それならいっそ、今日は酒場お休みにしちゃう?」
「「「っ!?」」」
「えっ!? いやいや、何言ってるのお母さん!?」
イレーヌさんのとんでもない提案に、アミィはおろか、俺達でさえ驚きを隠せなかった。
酒場の利用者はそれなりにいるのだから、それが突然休みになったら、困る人が続出するだろう。
ていうか、俺の看病の為だけに酒場を休みにされるなんて、俺が困る!
「イレーヌさん、流石に酒場を休みにするのは……」
何とかそして酒場が休みになるのだけは避けなければ。
どこまで本気かは分からないが、イレーヌさんの事だ。もしかしたら本当に酒場を休みにしてしまうかもしれない。
「あら、カイトさん。まだ部屋に戻ってなかったんですか? ダメですよ、安静にしていないと」
だが、当のイレーヌさんときたら、俺の話よりも体調の事を気にしている始末だ。ていうか、俺の発言は見事にスルーですか。
「お母さん、やっぱり酒場を休みにするのはダメだよ!」
「あらそう? 表通りもあるんだし、別に一日ぐらい休みにしても問題ないと思うけど。それよりも、私にとっては愛娘の幸せの方が大事だもの」
イレーヌさんはアミィの言葉にも全く考えを改める様子はない。ていうか、愛娘の幸せって何だ? 俺を看病する事と、アミィの幸せに何か関係があるのか?
「で、でも……」
尚もアミィが何かを言いかけた時だった。
「あー、ちょっといいでしょうか?」
それまで事の成り行きを黙って見守っていたフーリが、その口を開いた。ちなみにマリーは未だに何かを考えている様で、その口は閉ざされている。
「もし良かったら、私に酒場の手伝いをさせて貰えないでしょうか?」
「フーリが?」
フーリからの提案が余程予想外だったのか、イレーヌさんは意外な物を見る様な視線をフーリに向けた。
あ、そうか。イレーヌさんはさっきのやり取りを知らないんだよな。きちんと説明しておかないと。
「実は、今日は二人に酒場の手伝いを代わって貰おうと思ってたんですよ」
「あら、そうだったんですか? でも、あなた料理とか出来るの?」
「接客は出来ますよ。それに皿洗いも」
料理が出来るとは言わないんだなフーリ。でもそれなら、料理はマリーが出来るし、フーリが接客、マリーが厨房といった具合に役割分担すればいいんじゃないか?
俺の考えを読んだのか、はたまた別の理由があるのか。
「マリーはちょっと急用で出かけて行ったんで、手伝いは私一人になりますけど」
と、一人で酒場の手伝いをすると言い出した。
え? マリーならそこに……って、いねぇ!?
え? 確かにさっきまでそこにいたのに、いつの間に?
ていうか用事? 用事だなんて、マリーそんな事言ってたっけ?
「そう。でもいいの? 酒場の仕事、結構大変よ?」
「ええ、大丈夫です。イレーヌさん一人だと大変でしょうし。それに」
フーリはちらっと俺に視線を向けると。
「カイト君が心配で、仕事が手に付かない者が「若干名」いるみたいですし」
「それは……確かにそうね。「若干名」いるわね」
やたら若干名を強調する二人。
でも、俺の看病をするって言って聞かないのは、アミィ一人だけだ。若干名じゃなく、一人の間違いじゃない?
「じゃあ、そういう事なら、お願いしちゃおうかしら」
「ええ、任せて下さい」
と、そんな事を考えている内に、二人の間で話がまとまった様だ。
とりあえず最近はイレーヌさんも大分具合が良さそうだし、客の数も最初の頃に比べてかなり落ち着きを取り戻してきているし、多分大丈夫だろう。
「という事で、アミィは心置きなくカイトさんの看病に専念しなさい」
「お母さん……うん、私頑張るよ!」
「ふふっ、その意気よ」
アミィを焚きつけるイレーヌさんと、それに応えようとするアミィ。俺の看病をする事は既に決定事項なんですね。
まあここまで来たら受け入れるしかないか。張り切り過ぎないと良いけど。
「そういう事だ、カイト君。今日は部屋に戻って素直に寝ていたまえ」
「まあ、この状況じゃそうするしかないよな。ところで」
「うん? 何だ?」
「いや、マリーはいつの間に酒場から出て行ったのかなって。それに用事って?」
そう、マリーだ。フーリに言われるまで、俺はマリーがいなくなってる事に全く気が付かなかった。ていうか、マリーが出かけたって言われるほんの少し前に、俺はマリーの姿を見てたんだ。
という事は、俺達に気付かれない様にこっそり抜け出したという事になる。
でも、そんな事をする理由が思いつかない。
「ああ、その事か。ついさっきだよ。用事は……まあ後のお楽しみだな」
「お楽しみ?」
ゆうべはおたのしみでしたね? いや、違うな。アホな事を考えてしまった。
お楽しみって事は、俺に関係する事なのか?
「まあその内分かる。今は部屋でゆっくり休む事だ。ほら、アミィが待ってるぞ」
フーリに促されて後ろを振り返ると、酒場の入り口で俺に熱い視線を送るアミィの姿があった。
「お兄ちゃん、早く部屋に行くよ! お母さんの許可も出た事だし、私看病頑張るから!」
「あ、ははっ。お手柔らかに」
やたら張り切るアミィ。いや、そんなに張り切らなくても、程々で良いんだよ?
俺はやたらテンションが高いアミィに手を引かれ、フーリとイレーヌさんに見送られながら酒場を後にした。
「それじゃあお兄ちゃんは寝ててね! 私は夕飯の支度をしてくるから!」
俺が部屋のベッドで横になったのを確認すると、アミィはそのまま部屋を出て行ってしまった。
一人部屋に残される俺。別にもう本当に体調は悪くないんだけどなぁ。
「とりあえずストレージの確認を……いや、流石に今日はやめておくか」
俺は毎日恒例のストレージの整理をしようとして、その手を止めた。
流石に今の状況でそんな事をするのは間違っているだろう。それに、明日からしばらく冒険は休みだし、整理する時間ならこれから沢山出来る。
だからこそ、今日は素直に寝ておくか。そう考え、俺は晩飯が出来るまでの間、少しだけ寝る事にした。
確かに部屋に戻るとは言ったけど、看病だなんて。大げさ過ぎるだろ。
「そうね。確かに看病する人は必要よね」
だが、俺の考えとは裏腹に、イレーヌさんは乗り気だ。
みんな意地でも俺の事を重病人にしたいの?
「でも、そういう事ならアミィ、あなたがカイトさんの看病をしてあげた方がいいんじゃない?」
イレーヌさんは俺からアミィに視線を移すと、そんな事を言い始めた。いや、イレーヌさんは知らないかもしれないけど、実はさっきアミィの看病は断ったばっかりなんだよな。
ちょっと気まずいなぁ、と思っていたのだが。
「え、いいの?」
アミィはまるで、さっきのやり取りなんて無かったかのように乗り気だ。
え? さっき俺が断った事忘れたの? いや、まあ別にアミィの看病が嫌で断った訳じゃないんだけど。
「ええ、酒場の事ならお母さんに任せなさい。最近は随分体力も戻ってきたし、一日ぐらいお母さん一人でも大丈夫よ」
イレーヌさんはアミィを安心させる様に、これ見よがしに力こぶを作る仕草をして見せた。
残念ながら、そこに力こぶは出来ていないが。
「お母さん……でも、やっぱりまだ一人でなんて」
イレーヌさんのそんな姿を見て、アミィは一瞬納得しかけた様だったが、すぐにイレーヌさんの事を心配し始めた。
ていうか、そうだよ。よく考えたらアミィも俺の看病なんかしてる時間無いじゃないか。
確かにイレーヌさんの体力は以前に比べてかなり戻ってきたと言えるだろう。それは一緒に酒場の仕事をしている俺にもよく分かる。
でも、流石にまだ一人で酒場を回すなんて厳しいのではないだろうか?
「もう、アミィは心配性ね。それならいっそ、今日は酒場お休みにしちゃう?」
「「「っ!?」」」
「えっ!? いやいや、何言ってるのお母さん!?」
イレーヌさんのとんでもない提案に、アミィはおろか、俺達でさえ驚きを隠せなかった。
酒場の利用者はそれなりにいるのだから、それが突然休みになったら、困る人が続出するだろう。
ていうか、俺の看病の為だけに酒場を休みにされるなんて、俺が困る!
「イレーヌさん、流石に酒場を休みにするのは……」
何とかそして酒場が休みになるのだけは避けなければ。
どこまで本気かは分からないが、イレーヌさんの事だ。もしかしたら本当に酒場を休みにしてしまうかもしれない。
「あら、カイトさん。まだ部屋に戻ってなかったんですか? ダメですよ、安静にしていないと」
だが、当のイレーヌさんときたら、俺の話よりも体調の事を気にしている始末だ。ていうか、俺の発言は見事にスルーですか。
「お母さん、やっぱり酒場を休みにするのはダメだよ!」
「あらそう? 表通りもあるんだし、別に一日ぐらい休みにしても問題ないと思うけど。それよりも、私にとっては愛娘の幸せの方が大事だもの」
イレーヌさんはアミィの言葉にも全く考えを改める様子はない。ていうか、愛娘の幸せって何だ? 俺を看病する事と、アミィの幸せに何か関係があるのか?
「で、でも……」
尚もアミィが何かを言いかけた時だった。
「あー、ちょっといいでしょうか?」
それまで事の成り行きを黙って見守っていたフーリが、その口を開いた。ちなみにマリーは未だに何かを考えている様で、その口は閉ざされている。
「もし良かったら、私に酒場の手伝いをさせて貰えないでしょうか?」
「フーリが?」
フーリからの提案が余程予想外だったのか、イレーヌさんは意外な物を見る様な視線をフーリに向けた。
あ、そうか。イレーヌさんはさっきのやり取りを知らないんだよな。きちんと説明しておかないと。
「実は、今日は二人に酒場の手伝いを代わって貰おうと思ってたんですよ」
「あら、そうだったんですか? でも、あなた料理とか出来るの?」
「接客は出来ますよ。それに皿洗いも」
料理が出来るとは言わないんだなフーリ。でもそれなら、料理はマリーが出来るし、フーリが接客、マリーが厨房といった具合に役割分担すればいいんじゃないか?
俺の考えを読んだのか、はたまた別の理由があるのか。
「マリーはちょっと急用で出かけて行ったんで、手伝いは私一人になりますけど」
と、一人で酒場の手伝いをすると言い出した。
え? マリーならそこに……って、いねぇ!?
え? 確かにさっきまでそこにいたのに、いつの間に?
ていうか用事? 用事だなんて、マリーそんな事言ってたっけ?
「そう。でもいいの? 酒場の仕事、結構大変よ?」
「ええ、大丈夫です。イレーヌさん一人だと大変でしょうし。それに」
フーリはちらっと俺に視線を向けると。
「カイト君が心配で、仕事が手に付かない者が「若干名」いるみたいですし」
「それは……確かにそうね。「若干名」いるわね」
やたら若干名を強調する二人。
でも、俺の看病をするって言って聞かないのは、アミィ一人だけだ。若干名じゃなく、一人の間違いじゃない?
「じゃあ、そういう事なら、お願いしちゃおうかしら」
「ええ、任せて下さい」
と、そんな事を考えている内に、二人の間で話がまとまった様だ。
とりあえず最近はイレーヌさんも大分具合が良さそうだし、客の数も最初の頃に比べてかなり落ち着きを取り戻してきているし、多分大丈夫だろう。
「という事で、アミィは心置きなくカイトさんの看病に専念しなさい」
「お母さん……うん、私頑張るよ!」
「ふふっ、その意気よ」
アミィを焚きつけるイレーヌさんと、それに応えようとするアミィ。俺の看病をする事は既に決定事項なんですね。
まあここまで来たら受け入れるしかないか。張り切り過ぎないと良いけど。
「そういう事だ、カイト君。今日は部屋に戻って素直に寝ていたまえ」
「まあ、この状況じゃそうするしかないよな。ところで」
「うん? 何だ?」
「いや、マリーはいつの間に酒場から出て行ったのかなって。それに用事って?」
そう、マリーだ。フーリに言われるまで、俺はマリーがいなくなってる事に全く気が付かなかった。ていうか、マリーが出かけたって言われるほんの少し前に、俺はマリーの姿を見てたんだ。
という事は、俺達に気付かれない様にこっそり抜け出したという事になる。
でも、そんな事をする理由が思いつかない。
「ああ、その事か。ついさっきだよ。用事は……まあ後のお楽しみだな」
「お楽しみ?」
ゆうべはおたのしみでしたね? いや、違うな。アホな事を考えてしまった。
お楽しみって事は、俺に関係する事なのか?
「まあその内分かる。今は部屋でゆっくり休む事だ。ほら、アミィが待ってるぞ」
フーリに促されて後ろを振り返ると、酒場の入り口で俺に熱い視線を送るアミィの姿があった。
「お兄ちゃん、早く部屋に行くよ! お母さんの許可も出た事だし、私看病頑張るから!」
「あ、ははっ。お手柔らかに」
やたら張り切るアミィ。いや、そんなに張り切らなくても、程々で良いんだよ?
俺はやたらテンションが高いアミィに手を引かれ、フーリとイレーヌさんに見送られながら酒場を後にした。
「それじゃあお兄ちゃんは寝ててね! 私は夕飯の支度をしてくるから!」
俺が部屋のベッドで横になったのを確認すると、アミィはそのまま部屋を出て行ってしまった。
一人部屋に残される俺。別にもう本当に体調は悪くないんだけどなぁ。
「とりあえずストレージの確認を……いや、流石に今日はやめておくか」
俺は毎日恒例のストレージの整理をしようとして、その手を止めた。
流石に今の状況でそんな事をするのは間違っているだろう。それに、明日からしばらく冒険は休みだし、整理する時間ならこれから沢山出来る。
だからこそ、今日は素直に寝ておくか。そう考え、俺は晩飯が出来るまでの間、少しだけ寝る事にした。
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