見た目は青年、心はアラサー、異世界に降り立つ! ~チートスキル「ストレージ」で異世界を満喫中~
十八話
突如目の前に現れたアイアンゴーレム。迎え撃つは剣士フーリ、魔法使いマリー、そして日本人カイト。
三人とアイアンゴーレム。その死闘の行く末は!? 乞うご期待!
「いや、アホな事考えてる場合じゃねえわ」
俺は少年漫画の次回予告風の回想を頭から振り払い、魔鉄バットを構えた。
「カイト君。何を考えていたかは知らないが、気を付けろ。相手は特殊個体だ」
「え、こいつ特殊個体なの? でも、一昨日倒した特殊個体は、もっとデカかった様な気がするんだけど」
一昨日倒した特殊個体は、こいつよりも更にデカかった筈だ。いや、こいつも普通のアイアンゴーレムと同じぐらいの大きさをしているのだから、充分デカいんだけれども。
「カイトさん、相手の魔力を視て下さい。アイアンゴーレムの体から、僅かに魔力が漏れているのが分かる筈です」
魔力を視る様に言われ、その意味を理解した俺は、急いで両目に魔力を集中してみた。すると、目の前のアイアンゴーレムの体からは、僅かながらも確かに魔力が立ち昇っている。
「視えましたか? あれが特殊個体の特徴です。通常のアイアンゴーレムは魔力を持ってませんから」
「マジか、初めて知った」
確かに特殊個体の体は魔鉄で出来ているのだから、魔力を持っていない方がおかしいのか。で、通常個体はただの鉄で出来てるから魔力を持っていない、と。
なるほど、良い勉強になった。
「よし、私が囮になるから、その隙にカイト君は奴の足を止めてくれないか?」
「分かった。脳天に強烈なのをくらわせてやるわ」
フーリに気を取られてがら空きの後ろから、会心の一撃をくらわせて足を止める。これだな。
「……まあそれでもいいが。マリーは奴の動きが止まったら、そのまま魔法で奴の身動きを封じてくれ。私がとどめをさす」
「うん、任せて姉さん」
マリーはフーリの言葉に力強く頷いて返していた。
いつもの事だが、フーリの作戦は本当に分かりやすくて良い。きっと、各々のやる事がはっきりしているからだな。
「では、行くぞ!」
気合の入った声を上げ、フーリはゴーレムに向かって飛び出していった。
「炎熱剣!」
挨拶代わりのフーリの炎熱剣。それはあっさりと特殊個体の腕を切り落とす。流石はフーリ。相変わらず凄い腕だ。
「凍れ!」
そこにすかさずマリーが魔法を発動。特殊個体の腕が再生できない様に、その断面を凍り付かせる。
いきなり片腕を失い、再生も出来ない特殊個体は、そのままバランスを崩しそうになりながら、よろよろとよろめいている。
おかげで攻撃が当てやすくなった。
「さ、次は俺の番か。じゃあ、行ってきます!」
「はい、行ってらっしゃい、カイトさん!」
マリーに見送られ、俺は人間ロケットで一気にゴーレムとの距離を詰める。もしかしたらゴーレムに気付かれるかもしれないとも考えたが、特にそんな様子はなかったので、そのまま魔鉄バットに魔力を流し込む。
途端に淡い紫色の光を放ちながら輝く魔鉄バット。
それをゴーレムの頭目掛けて思いっきり振り下ろす。
ガギィィィィンッ
金属同士がぶつかり合い、弾き合う鈍く甲高い音が鳴り響く。が、流石は特殊個体。俺の攻撃が直撃するよりも先に、体の硬化を済ませたようで、アイアンゴーレムの時の様に魔鉄バットがめり込んでいくという事はなかった。
あの時程魔力を流していなかったからというのもあるだろうけど。
元々片腕を失ってバランスを崩していた特殊個体は、今の一撃で完全に態勢を崩したようで「ガッシャァァァァンッ」と轟音を響かせながら地面に倒れ伏した。
「今だマリー!」
それに合わせて、俺は声を上げる。このまま特殊個体の動きを封じられれば。
「任せてください!」
その様子を見守っていたマリーが、特殊個体に向かって杖を構え。
「凍てつけ!」
その四肢を拘束するべく魔法を放つ。マリーお得意の水魔法の応用だ。
マリーの魔法によって、両手足を凍らされて拘束された特殊個体は、身動き一つ取れずにいたが、その氷には次第に亀裂が走り……。
「させるか! 炎熱剣!」
その拘束が完全に解かれる前に、フーリの炎熱剣が特殊個体の心臓部を一突きに貫いた。
一撃で核を貫かれ、そのまま砕かれた特殊個体は、完全に機能を停止。そのまま二度と起き上がる事はなかった。
「ふぅ、終わったな」
フーリの言葉に、俺は今の戦闘を振り返る。
俺とフーリで特殊個体の足を止め、マリーが魔法で拘束。そして最後にフーリの急所への的確な一撃。
即興だったが、いい連携だったのではないだろうか?
「やりましたね、カイトさん」
マリーが俺に向かって手の平を見せるような形で右手を上げてきた。これは所謂ハイタッチという物ではないか?
俺はそれに向かって、叩く様に「パンッ」と、軽く右手を当てた。
「いい連携でしたね」
「ああ。即興だったけど、何とか合わせられて良かったよ」
「いい連携だった。流石だな、カイト君」
フーリが腰の鞘に剣を仕舞いながら俺達に合流し、改めて特殊個体の残骸に視線を向けた。
「頼めるか?」
「ああ、任せろ。収納」
短いやり取りを交わし、俺は特殊個体の残骸をストレージに収納した。
「それにしても、こんな短期間に二体の特殊個体か。珍しい事もあるものだ」
「そうだよね。でも、おかげで魔鉄は大量だよ」
マリーの言う通り、特殊個体の素材を収納したところ、前回と合わせて合計一トン以上になった。文字通り大量だ。
大きさ的にもっと大量に手に入ると思っていたのだが、特殊個体の体は中身がぎっしり詰まっている訳ではなかったので、見た目の大きさに反して素材の量はそんなに多くはなかった。
だが、それでもこの量の魔鉄は充分な量だと言えよう。
「これだけあれば、いい防具を作れるんじゃないか?」
ガンツさんにこれを渡して防具に加工して貰えば、きっといい防具になるだろう。
「ああ、そうだな。街に帰ったら早速持って行ってみよう」
「丁度いい機会ですし、カイトさんの新しい防具もこの魔鉄で作って貰いましょうよ」
「ああ、そうだな」
二人も同意見らしく、街に帰ったらガンツ武具店に寄ろうという話になった。
その後、俺達はそのまま九層へと続く階段を下り、そこで転移魔法陣に登録を済ませてから地上へと戻り、そのままペコライの街へと帰還した。
「ガンツさん、いますか?」
ペコライに戻り、ギルドで活動報告を済ませ、俺達はそのままガンツ武具店に足を運んだ。
「あいよ、いらっしゃい。って、なんだ、お前達か。今日はどうした?」
店の奥からハンマー片手にのっそのっそと歩いてきたのは、この店の店主であるガンツさんだ。
「実は良い素材が手に入ったんで、そろそろ防具を作って貰おうかと思いまして」
「おお、そうか! ようやくカイトも防具を揃える事にしたか!」
俺の言葉に、ガンツさんはまるで自分の事の様に喜び、俺の肩をバシバシ叩いてくる。
相変わらずの力加減だが、最初の頃に比べて大分慣れてきたな。
まあそれでも地味に痛いんだが。本人に悪気が全くないからなぁ。
「ガンツ殿、そのぐらいにしておかないと」
「ん? おお、すまねえな、カイト」
フーリに止められ、ガンツさんはようやく気付いた様子だった。
「カイトさん、大丈夫ですか?」
「ああ、最初に比べて大分慣れてきたし、この分なら痛くなくなる日もそう遠くないな!」
毎回痛がるのもガンツさんに悪いし、体鍛えないとな!
「おお、その意気だカイト!」
「はい!」
いつの日かガンツさんの肩叩きが痛くなくなるまで、頑張らないと!
「ねえ、姉さん。男の人ってみんなこうなのかな? 普通に肩叩くのやめればいいし、カイトさんも我慢せずに避ければいいのに」
「分からん。私達には理解出来ない男の世界、という事にしておこう」
フーリとマリーが何か言ってる気がするが、まあいいか。
「それで、良い素材ってのは一体何なんだ? もしかして、ミスリルか?」
ガンツさんと互いにひとしきり笑い合ったら、早速本題。防具製作の持ち込み依頼だ。
「いや、ミスリルももってますけど、本当に少量なんで。まあとりあえず見て下さい」
俺はストレージから魔鉄を取り出し、ガンツさんに手渡した。
「ほう、こりゃまた見事な魔鉄だな」
ガンツさんは俺が手渡した魔鉄を眺め、ほうっと息を吐き出しながら感嘆の声を上げた。
「ガンツ殿、それでカイト君の防具を作るとしたら、どんな物がオススメでしょうか?」
俺が聞こうと思っていた事を、代わりにフーリが尋ねてくれた。
「俺はどちらかと言うと、戦闘中は動き回るタイプなんで、出来れば動きやすさ重視でお願いしたいんですけど」
「ふーむ、動きやすさ重視ねぇ。なら、鎖帷子を魔鉄で作り直して、後は小手と急所を守る為の、最低限のプレートなんかどうだ?」
ガンツさんは少しの間考えた後、そう提案してくれた。
三人とアイアンゴーレム。その死闘の行く末は!? 乞うご期待!
「いや、アホな事考えてる場合じゃねえわ」
俺は少年漫画の次回予告風の回想を頭から振り払い、魔鉄バットを構えた。
「カイト君。何を考えていたかは知らないが、気を付けろ。相手は特殊個体だ」
「え、こいつ特殊個体なの? でも、一昨日倒した特殊個体は、もっとデカかった様な気がするんだけど」
一昨日倒した特殊個体は、こいつよりも更にデカかった筈だ。いや、こいつも普通のアイアンゴーレムと同じぐらいの大きさをしているのだから、充分デカいんだけれども。
「カイトさん、相手の魔力を視て下さい。アイアンゴーレムの体から、僅かに魔力が漏れているのが分かる筈です」
魔力を視る様に言われ、その意味を理解した俺は、急いで両目に魔力を集中してみた。すると、目の前のアイアンゴーレムの体からは、僅かながらも確かに魔力が立ち昇っている。
「視えましたか? あれが特殊個体の特徴です。通常のアイアンゴーレムは魔力を持ってませんから」
「マジか、初めて知った」
確かに特殊個体の体は魔鉄で出来ているのだから、魔力を持っていない方がおかしいのか。で、通常個体はただの鉄で出来てるから魔力を持っていない、と。
なるほど、良い勉強になった。
「よし、私が囮になるから、その隙にカイト君は奴の足を止めてくれないか?」
「分かった。脳天に強烈なのをくらわせてやるわ」
フーリに気を取られてがら空きの後ろから、会心の一撃をくらわせて足を止める。これだな。
「……まあそれでもいいが。マリーは奴の動きが止まったら、そのまま魔法で奴の身動きを封じてくれ。私がとどめをさす」
「うん、任せて姉さん」
マリーはフーリの言葉に力強く頷いて返していた。
いつもの事だが、フーリの作戦は本当に分かりやすくて良い。きっと、各々のやる事がはっきりしているからだな。
「では、行くぞ!」
気合の入った声を上げ、フーリはゴーレムに向かって飛び出していった。
「炎熱剣!」
挨拶代わりのフーリの炎熱剣。それはあっさりと特殊個体の腕を切り落とす。流石はフーリ。相変わらず凄い腕だ。
「凍れ!」
そこにすかさずマリーが魔法を発動。特殊個体の腕が再生できない様に、その断面を凍り付かせる。
いきなり片腕を失い、再生も出来ない特殊個体は、そのままバランスを崩しそうになりながら、よろよろとよろめいている。
おかげで攻撃が当てやすくなった。
「さ、次は俺の番か。じゃあ、行ってきます!」
「はい、行ってらっしゃい、カイトさん!」
マリーに見送られ、俺は人間ロケットで一気にゴーレムとの距離を詰める。もしかしたらゴーレムに気付かれるかもしれないとも考えたが、特にそんな様子はなかったので、そのまま魔鉄バットに魔力を流し込む。
途端に淡い紫色の光を放ちながら輝く魔鉄バット。
それをゴーレムの頭目掛けて思いっきり振り下ろす。
ガギィィィィンッ
金属同士がぶつかり合い、弾き合う鈍く甲高い音が鳴り響く。が、流石は特殊個体。俺の攻撃が直撃するよりも先に、体の硬化を済ませたようで、アイアンゴーレムの時の様に魔鉄バットがめり込んでいくという事はなかった。
あの時程魔力を流していなかったからというのもあるだろうけど。
元々片腕を失ってバランスを崩していた特殊個体は、今の一撃で完全に態勢を崩したようで「ガッシャァァァァンッ」と轟音を響かせながら地面に倒れ伏した。
「今だマリー!」
それに合わせて、俺は声を上げる。このまま特殊個体の動きを封じられれば。
「任せてください!」
その様子を見守っていたマリーが、特殊個体に向かって杖を構え。
「凍てつけ!」
その四肢を拘束するべく魔法を放つ。マリーお得意の水魔法の応用だ。
マリーの魔法によって、両手足を凍らされて拘束された特殊個体は、身動き一つ取れずにいたが、その氷には次第に亀裂が走り……。
「させるか! 炎熱剣!」
その拘束が完全に解かれる前に、フーリの炎熱剣が特殊個体の心臓部を一突きに貫いた。
一撃で核を貫かれ、そのまま砕かれた特殊個体は、完全に機能を停止。そのまま二度と起き上がる事はなかった。
「ふぅ、終わったな」
フーリの言葉に、俺は今の戦闘を振り返る。
俺とフーリで特殊個体の足を止め、マリーが魔法で拘束。そして最後にフーリの急所への的確な一撃。
即興だったが、いい連携だったのではないだろうか?
「やりましたね、カイトさん」
マリーが俺に向かって手の平を見せるような形で右手を上げてきた。これは所謂ハイタッチという物ではないか?
俺はそれに向かって、叩く様に「パンッ」と、軽く右手を当てた。
「いい連携でしたね」
「ああ。即興だったけど、何とか合わせられて良かったよ」
「いい連携だった。流石だな、カイト君」
フーリが腰の鞘に剣を仕舞いながら俺達に合流し、改めて特殊個体の残骸に視線を向けた。
「頼めるか?」
「ああ、任せろ。収納」
短いやり取りを交わし、俺は特殊個体の残骸をストレージに収納した。
「それにしても、こんな短期間に二体の特殊個体か。珍しい事もあるものだ」
「そうだよね。でも、おかげで魔鉄は大量だよ」
マリーの言う通り、特殊個体の素材を収納したところ、前回と合わせて合計一トン以上になった。文字通り大量だ。
大きさ的にもっと大量に手に入ると思っていたのだが、特殊個体の体は中身がぎっしり詰まっている訳ではなかったので、見た目の大きさに反して素材の量はそんなに多くはなかった。
だが、それでもこの量の魔鉄は充分な量だと言えよう。
「これだけあれば、いい防具を作れるんじゃないか?」
ガンツさんにこれを渡して防具に加工して貰えば、きっといい防具になるだろう。
「ああ、そうだな。街に帰ったら早速持って行ってみよう」
「丁度いい機会ですし、カイトさんの新しい防具もこの魔鉄で作って貰いましょうよ」
「ああ、そうだな」
二人も同意見らしく、街に帰ったらガンツ武具店に寄ろうという話になった。
その後、俺達はそのまま九層へと続く階段を下り、そこで転移魔法陣に登録を済ませてから地上へと戻り、そのままペコライの街へと帰還した。
「ガンツさん、いますか?」
ペコライに戻り、ギルドで活動報告を済ませ、俺達はそのままガンツ武具店に足を運んだ。
「あいよ、いらっしゃい。って、なんだ、お前達か。今日はどうした?」
店の奥からハンマー片手にのっそのっそと歩いてきたのは、この店の店主であるガンツさんだ。
「実は良い素材が手に入ったんで、そろそろ防具を作って貰おうかと思いまして」
「おお、そうか! ようやくカイトも防具を揃える事にしたか!」
俺の言葉に、ガンツさんはまるで自分の事の様に喜び、俺の肩をバシバシ叩いてくる。
相変わらずの力加減だが、最初の頃に比べて大分慣れてきたな。
まあそれでも地味に痛いんだが。本人に悪気が全くないからなぁ。
「ガンツ殿、そのぐらいにしておかないと」
「ん? おお、すまねえな、カイト」
フーリに止められ、ガンツさんはようやく気付いた様子だった。
「カイトさん、大丈夫ですか?」
「ああ、最初に比べて大分慣れてきたし、この分なら痛くなくなる日もそう遠くないな!」
毎回痛がるのもガンツさんに悪いし、体鍛えないとな!
「おお、その意気だカイト!」
「はい!」
いつの日かガンツさんの肩叩きが痛くなくなるまで、頑張らないと!
「ねえ、姉さん。男の人ってみんなこうなのかな? 普通に肩叩くのやめればいいし、カイトさんも我慢せずに避ければいいのに」
「分からん。私達には理解出来ない男の世界、という事にしておこう」
フーリとマリーが何か言ってる気がするが、まあいいか。
「それで、良い素材ってのは一体何なんだ? もしかして、ミスリルか?」
ガンツさんと互いにひとしきり笑い合ったら、早速本題。防具製作の持ち込み依頼だ。
「いや、ミスリルももってますけど、本当に少量なんで。まあとりあえず見て下さい」
俺はストレージから魔鉄を取り出し、ガンツさんに手渡した。
「ほう、こりゃまた見事な魔鉄だな」
ガンツさんは俺が手渡した魔鉄を眺め、ほうっと息を吐き出しながら感嘆の声を上げた。
「ガンツ殿、それでカイト君の防具を作るとしたら、どんな物がオススメでしょうか?」
俺が聞こうと思っていた事を、代わりにフーリが尋ねてくれた。
「俺はどちらかと言うと、戦闘中は動き回るタイプなんで、出来れば動きやすさ重視でお願いしたいんですけど」
「ふーむ、動きやすさ重視ねぇ。なら、鎖帷子を魔鉄で作り直して、後は小手と急所を守る為の、最低限のプレートなんかどうだ?」
ガンツさんは少しの間考えた後、そう提案してくれた。
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