見た目は青年、心はアラサー、異世界に降り立つ! ~チートスキル「ストレージ」で異世界を満喫中~
四十話
「部屋に呼びに行ってもいないと思ったら。カイトさん、一体何をしているんですか?」
「何って、見ての通り接客だけど?」
マリーは何を言っているのだろうか? これが接客以外の何に見えるというのだろうか?
「いや、それは見れば分かります。私が言っているのは、何でそんな事をしているのかって話です」
「ああ、そういう事か。実はイレーヌさんが朝早くから朝食を作るって言っていたから、一人は厳しいだろうと思って手伝いをしていたんだ」
実際イレーヌさんの体調は、まだまだ万全とは言えないものだった。いや、万全の状態を見た事がないから分からないけど。
「ほう、それはまた、カイト君らしいな」
「俺らしい?」
はて? 俺らしいとは一体?
「まあそれは置いておいて。早速朝食を持ってきてもらえるかい?」
フーリは近くの席に腰かけ、俺をからかう様な、そして茶化す様な笑みを浮かべている。
「そうですね。カイトさん、私にも朝食、お願いします」
それに続く様にマリーも席に着き、同じく笑顔。
ふっ、二人共俺の実力を見くびっているな? いいだろう! 見せてやろうじゃないか、俺の接客の腕前を!
えーっと、今日の朝食はオイ椎茸と旬野菜のスープに、ブルーベアーの串焼き、それにパンとサラダだったな。
ストレージからその四つを選び、二人の前に取り出した。
はい、一丁あがり!
「お待たせはしていませんが、本日の朝食でございます」
「「……」」
二人は目を丸くして目の前の朝食を見つめている。
まあ仕方ないか。朝からブルーベアーの串焼きは流石に重いだろうとは思ってたし。
「あれ? アミィちゃんはどうしたんだ?」
と、その時。また一人酒場に宿泊客が顔を見せた。
「アミィならまだ寝てますよ。今日の朝食は俺とイレーヌさんが準備しました」
「何、イレーヌさん!? もうそんなに動ける様になったのか 」
「まだ本調子じゃないみたいですけどね。なので、今日は俺がアミィの代わりを務めますので、何かありましたらお呼び下さい」
そのお客さんを適当な席に案内してから一礼し、再びマリー達の元に戻ってきた。
「どうよ? 完璧だろ?」
二人に対してドヤ顔を決める俺。伊達に学生時代ファミレスでバイトしてないって事だ。
そんな俺に対し、二人は何ともいえない表情をしている。
「すみませーん! こっちに朝食三人分お願いします!」
「はーい、ただいま」
あの席なら距離は……このぐらいだな。
三人が座っている席にストレージから朝食を取り出すと、その三人は声を上げて驚いていた。
「さて、どうだ? 俺のウェイターっぷりは?」
「そうですね、一言だけ言わせて下さい」
「私も一言だけ言わせてくれ」
「え? お、おう」
二人共、一体どうしたんだ?
何だかやけに神妙な顔をしてるけど。
「カイトさんのそれは何か違います!」
「それは接客ではない! 接客によく似た何かだ!」
「お、おう、二人共どした?」
そんなに叫ばなくても聞こえてるって。
もしかして、あれか? 俺の完璧な接客姿に驚いてしまったとか? まあそれも仕方ない事だけど。
「片付けお願いします!」
「はいはい、ただいま」
声がした席にストレージを開き、食器を全てストレージに収納する。
「うわっ、なんだ!?」
そのままストレージ内で浄化してからイレーヌさんの所に送って。
「やっぱりストレージって何でもアリですね」
「だな。あまりに便利すぎる」
「うん、実は俺もそう思ってた。これは何か違うわ」
今までとぼけていたけど、いい加減認めよう。ストレージ使うと動く必要すらないわ。
これ飯屋とかすれば楽に儲けられるんじゃね?
まあ冒険者辞めるつもりはないけど。
「まあ二人はゆっくり食べててくれ。俺は手伝いが終わってから食べるから」
「ああ、分かった」
「分かりました」
二人に先に食べているように告げ、俺は再びイレーヌさんの手伝いに戻った。
一時間程すると、店内のお客さんは全員捌く事が出来た。
マリーとフーリも少し前に部屋に戻ったので、今酒場には俺とイレーヌさんの二人だけだ。
「ありがとうございましたカイトさん。おかげで助かりました」
「いえいえ、このぐらいお安い御用ですよ」
とはいえ、今回ばかりは流石に手伝ったって堂々と言っていいか微妙なところだ。
だって俺はストレージで仕込みをし、ストレージで配膳して、ストレージで食器を回収して浄化で綺麗にするという、完全にストレージ頼みとなっていたのだから。
「カイトさんは本当に謙虚なんですね」
「いやぁ、そんな事はないと思いますけど」
「ふふっ、まあそういう事にしておきます」
イレーヌさんは薄く微笑み、一度キッチンに戻ると、両手に料理が乗った皿を持って戻ってきた。
「それじゃあ私達も朝食にしましょうか」
「そうですね。腹減ったぁ」
皿の上には朝食の残りの串焼きとパン、それとサラダと、さっきのメニューには無かった厚切りチーズまで載っていた。これは、串焼きを外してパンに挟みたくなるメニューだな。
そんな事を考えていると。
「ね、寝坊したぁ!」
店の奥の方から、慌てた様子のアミィが、ドタドタと走り込んできた。
「あらあらアミィ、もう起きてきたの? もっとゆっくり寝ていても良かったのに」
「……はぇ?」
そんなアミィにイレーヌさんが優しく声をかけているが、当のアミィは何が何だか分からないといった様子だ。
「安心しろアミィ。朝食なら、俺とイレーヌさんで片付けておいたから」
「え……お、お兄ちゃん? 何で?」
俺が声をかけると、アミィは今気が付いたのか、最初は驚き、そして徐々に顔を赤らめていき。
「え? おい、どうしたアミィ?」
「あらあら」
突然の事で、俺はどうすればいいか反応に困ってしまった。
アミィは真っ赤な顔で俺のすぐ近くまで寄ってきたかと思うと、突然俺に抱き着いてきたのだ。
いや、どうしてこうなった?
「どうしたんだアミィ? 怖い夢でも見たか?」
こういう時のテンプレとでもいう様な質問をアミィにしてみたのだが、帰ってきたのは無言の首振り――否定だ。
怖い夢を見たわけじゃない、と。なら。
「お腹でも痛いのか? トイレ行ったか?」
ポカッと、突然腹を殴られた。
どうやらトイレでもなかったらしい。じゃあ一体どうしたんだ?
アミィがしばらくの間俺に抱き着いていると。
「アミィ、そろそろ朝食にしましょう?」
と、イレーヌさんに声をかけられ、名残惜しそうに俺から離れると、そのまま無言でイレーヌさんの隣に腰かけた。
んん?
「お兄ちゃんがお母さんを手伝ってくれたんだよね? 本当にありがとう、お兄ちゃん」
アミィは俺に視線を向け、一言だけお礼を言うと、また恥ずかし気に視線を落としてしまった。
「あら? あらあら?」
そんな様子をイレーヌさんは楽し気に眺めていた。
イレーヌさんのあの表情、もしかしてアミィの様子がおかしい理由に心あたりがあるのだろうか?
「イレーヌさん、アミィはどうしたんでしょうか?」
「カイトさん、実はこの子ったら」
「わ、わー! わー!」
イレーヌさんが俺の質問に答えようとすると、途端にアミィが声を張り上げてそれを妨害してきた。
「お母さん、それは言わないって約束したじゃん!」
「あら? そうだったかしら?」
アミィは顔を真っ赤にし、イレーヌさんはまたも楽し気に笑っている。
どこにでもある普通の光景。だけど、アミィにとっては今まで普通じゃなかった……求めていたであろう光景だ。
本当に良かったな、アミィ。俺は心の中で呟いた。
まあそれはさておくとして。
「そろそろ朝飯にしましょうか。アミィも食べるだろ?」
「あっ、うん、食べる」
アミィの返事にはまだ覇気というか、普段の元気な様子が感じられない。うーん、まあ調子が悪い訳でもなさそうだし、しばらく様子を見てみるか。
俺達三人はそのまま目の前の朝飯に手を伸ばした。
「……あ、美味い」
案の定、今日のメニューはサンドイッチにしたらすこぶる美味かった。
「何って、見ての通り接客だけど?」
マリーは何を言っているのだろうか? これが接客以外の何に見えるというのだろうか?
「いや、それは見れば分かります。私が言っているのは、何でそんな事をしているのかって話です」
「ああ、そういう事か。実はイレーヌさんが朝早くから朝食を作るって言っていたから、一人は厳しいだろうと思って手伝いをしていたんだ」
実際イレーヌさんの体調は、まだまだ万全とは言えないものだった。いや、万全の状態を見た事がないから分からないけど。
「ほう、それはまた、カイト君らしいな」
「俺らしい?」
はて? 俺らしいとは一体?
「まあそれは置いておいて。早速朝食を持ってきてもらえるかい?」
フーリは近くの席に腰かけ、俺をからかう様な、そして茶化す様な笑みを浮かべている。
「そうですね。カイトさん、私にも朝食、お願いします」
それに続く様にマリーも席に着き、同じく笑顔。
ふっ、二人共俺の実力を見くびっているな? いいだろう! 見せてやろうじゃないか、俺の接客の腕前を!
えーっと、今日の朝食はオイ椎茸と旬野菜のスープに、ブルーベアーの串焼き、それにパンとサラダだったな。
ストレージからその四つを選び、二人の前に取り出した。
はい、一丁あがり!
「お待たせはしていませんが、本日の朝食でございます」
「「……」」
二人は目を丸くして目の前の朝食を見つめている。
まあ仕方ないか。朝からブルーベアーの串焼きは流石に重いだろうとは思ってたし。
「あれ? アミィちゃんはどうしたんだ?」
と、その時。また一人酒場に宿泊客が顔を見せた。
「アミィならまだ寝てますよ。今日の朝食は俺とイレーヌさんが準備しました」
「何、イレーヌさん!? もうそんなに動ける様になったのか 」
「まだ本調子じゃないみたいですけどね。なので、今日は俺がアミィの代わりを務めますので、何かありましたらお呼び下さい」
そのお客さんを適当な席に案内してから一礼し、再びマリー達の元に戻ってきた。
「どうよ? 完璧だろ?」
二人に対してドヤ顔を決める俺。伊達に学生時代ファミレスでバイトしてないって事だ。
そんな俺に対し、二人は何ともいえない表情をしている。
「すみませーん! こっちに朝食三人分お願いします!」
「はーい、ただいま」
あの席なら距離は……このぐらいだな。
三人が座っている席にストレージから朝食を取り出すと、その三人は声を上げて驚いていた。
「さて、どうだ? 俺のウェイターっぷりは?」
「そうですね、一言だけ言わせて下さい」
「私も一言だけ言わせてくれ」
「え? お、おう」
二人共、一体どうしたんだ?
何だかやけに神妙な顔をしてるけど。
「カイトさんのそれは何か違います!」
「それは接客ではない! 接客によく似た何かだ!」
「お、おう、二人共どした?」
そんなに叫ばなくても聞こえてるって。
もしかして、あれか? 俺の完璧な接客姿に驚いてしまったとか? まあそれも仕方ない事だけど。
「片付けお願いします!」
「はいはい、ただいま」
声がした席にストレージを開き、食器を全てストレージに収納する。
「うわっ、なんだ!?」
そのままストレージ内で浄化してからイレーヌさんの所に送って。
「やっぱりストレージって何でもアリですね」
「だな。あまりに便利すぎる」
「うん、実は俺もそう思ってた。これは何か違うわ」
今までとぼけていたけど、いい加減認めよう。ストレージ使うと動く必要すらないわ。
これ飯屋とかすれば楽に儲けられるんじゃね?
まあ冒険者辞めるつもりはないけど。
「まあ二人はゆっくり食べててくれ。俺は手伝いが終わってから食べるから」
「ああ、分かった」
「分かりました」
二人に先に食べているように告げ、俺は再びイレーヌさんの手伝いに戻った。
一時間程すると、店内のお客さんは全員捌く事が出来た。
マリーとフーリも少し前に部屋に戻ったので、今酒場には俺とイレーヌさんの二人だけだ。
「ありがとうございましたカイトさん。おかげで助かりました」
「いえいえ、このぐらいお安い御用ですよ」
とはいえ、今回ばかりは流石に手伝ったって堂々と言っていいか微妙なところだ。
だって俺はストレージで仕込みをし、ストレージで配膳して、ストレージで食器を回収して浄化で綺麗にするという、完全にストレージ頼みとなっていたのだから。
「カイトさんは本当に謙虚なんですね」
「いやぁ、そんな事はないと思いますけど」
「ふふっ、まあそういう事にしておきます」
イレーヌさんは薄く微笑み、一度キッチンに戻ると、両手に料理が乗った皿を持って戻ってきた。
「それじゃあ私達も朝食にしましょうか」
「そうですね。腹減ったぁ」
皿の上には朝食の残りの串焼きとパン、それとサラダと、さっきのメニューには無かった厚切りチーズまで載っていた。これは、串焼きを外してパンに挟みたくなるメニューだな。
そんな事を考えていると。
「ね、寝坊したぁ!」
店の奥の方から、慌てた様子のアミィが、ドタドタと走り込んできた。
「あらあらアミィ、もう起きてきたの? もっとゆっくり寝ていても良かったのに」
「……はぇ?」
そんなアミィにイレーヌさんが優しく声をかけているが、当のアミィは何が何だか分からないといった様子だ。
「安心しろアミィ。朝食なら、俺とイレーヌさんで片付けておいたから」
「え……お、お兄ちゃん? 何で?」
俺が声をかけると、アミィは今気が付いたのか、最初は驚き、そして徐々に顔を赤らめていき。
「え? おい、どうしたアミィ?」
「あらあら」
突然の事で、俺はどうすればいいか反応に困ってしまった。
アミィは真っ赤な顔で俺のすぐ近くまで寄ってきたかと思うと、突然俺に抱き着いてきたのだ。
いや、どうしてこうなった?
「どうしたんだアミィ? 怖い夢でも見たか?」
こういう時のテンプレとでもいう様な質問をアミィにしてみたのだが、帰ってきたのは無言の首振り――否定だ。
怖い夢を見たわけじゃない、と。なら。
「お腹でも痛いのか? トイレ行ったか?」
ポカッと、突然腹を殴られた。
どうやらトイレでもなかったらしい。じゃあ一体どうしたんだ?
アミィがしばらくの間俺に抱き着いていると。
「アミィ、そろそろ朝食にしましょう?」
と、イレーヌさんに声をかけられ、名残惜しそうに俺から離れると、そのまま無言でイレーヌさんの隣に腰かけた。
んん?
「お兄ちゃんがお母さんを手伝ってくれたんだよね? 本当にありがとう、お兄ちゃん」
アミィは俺に視線を向け、一言だけお礼を言うと、また恥ずかし気に視線を落としてしまった。
「あら? あらあら?」
そんな様子をイレーヌさんは楽し気に眺めていた。
イレーヌさんのあの表情、もしかしてアミィの様子がおかしい理由に心あたりがあるのだろうか?
「イレーヌさん、アミィはどうしたんでしょうか?」
「カイトさん、実はこの子ったら」
「わ、わー! わー!」
イレーヌさんが俺の質問に答えようとすると、途端にアミィが声を張り上げてそれを妨害してきた。
「お母さん、それは言わないって約束したじゃん!」
「あら? そうだったかしら?」
アミィは顔を真っ赤にし、イレーヌさんはまたも楽し気に笑っている。
どこにでもある普通の光景。だけど、アミィにとっては今まで普通じゃなかった……求めていたであろう光景だ。
本当に良かったな、アミィ。俺は心の中で呟いた。
まあそれはさておくとして。
「そろそろ朝飯にしましょうか。アミィも食べるだろ?」
「あっ、うん、食べる」
アミィの返事にはまだ覇気というか、普段の元気な様子が感じられない。うーん、まあ調子が悪い訳でもなさそうだし、しばらく様子を見てみるか。
俺達三人はそのまま目の前の朝飯に手を伸ばした。
「……あ、美味い」
案の定、今日のメニューはサンドイッチにしたらすこぶる美味かった。
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