見た目は青年、心はアラサー、異世界に降り立つ! ~チートスキル「ストレージ」で異世界を満喫中~
三十話
衝撃の事実。アルクは冒険者兼商人だった……冒険者兼商人ってどういう事よ?
明るめのオレンジに近い茶髪を短く切り揃えた、幼さが残る顔立ちの好青年、という印象を受けるアルクは、俺よりも一回り程小さな体躯をしている。
所謂、母性本能をくすぐりそうな見た目だ。
「冒険者兼商人? つまりアルクは、冒険者をしながら商人としても活動しているという事か?」
「ええ、そうです。正確には、商人として活動するために、冒険者業も兼任している、という感じですがね」
「ふむ、なるほど。しかし、何故冒険者と兼任している? わざわざ危険を冒してまで冒険者として活動するよりも、商人一本に絞った方がいいのではないか?」
俺がアルクの発言に驚いている間にフーリが俺の疑問を代弁してくれていた。
えーっと、つまりこういう事か?
普段は商人として活動しているけど、必要に応じて冒険者としても活動していると?
でも何でわざわざ冒険者と兼任なんて?
フーリも言っているけど、下手に兼任なんてしても、どっちも中途半端になる気がするだが。
フーリから当然の疑問を投げかけられ、困った様な笑顔を浮かべるアルク。
「それが、お恥ずかしい話なのですが、私はまだまだ駆け出しの身。商品を仕入れるにも資金が足りず。仕方がないので、こうして自分で商品になりそうな素材を集めている次第です。ははっ」
アルクは曖昧に笑い、片手で頭をかいている。
商人って日本でいうところの個人で店を経営している人だよな? 確かに個人なら、軌道に乗るまでは資金繰りに苦労しそうなイメージはある。
「それで、素材を集めようと果ての洞窟に潜ったはいいものの、自分の実力に見合わない階層に来てしまって今に至る、と?」
「ええ、本当にお恥ずかしい限りで」
そういうアルクの表情は本当に申し訳なさそうで、そして少しだけ悔しさが滲んでいる様に見えた。
よく見てみると、右手をギュッと握りしめている。
「ふむ、なるほどな。事情は理解した。だが、今後は自分の実力に見合った階層で素材集めをするか、パーティでも組んで潜る事だな。実力に見合わない事をするとどうなるか、今回の件でよく分かっただろう?」
「ちょ、ちょっと姉さん! 何もそこまで言わなくても」
きつい言い方をするフーリに対し、マリーが慌てているが、個人的にはフーリの意見に同意だ。こういうのは下手にオブラートに包むよりも、はっきりと言った方が本人の為でもある。
「はは、これは手厳しい。ですが、あなたの言う通りですね。ええっと……」
「フレイアだ。フレイア・アルマーク」
「私はマリエール・アルマークといいます。よろしくお願いしますね、アルクさん」
「近衛海斗、十九歳だ。よろしく」
俺達を見ながら困った様な顔をしていたアルクを見て、まずフーリが名乗り、それに続いて俺達も名乗った。
「フレイアさんにマリエールさん、それにコノエさんですね。こちらこそよろしくお願いします」
アルクから名前を呼ばれたが、名字の方で呼ばれるのは、この世界に来て初めての出来事だ。
「早速ですが、今回助けて貰ったお礼です。どうかお受け取り下さい」
そう言うと、アルクは突然何もない空間に手を突っ込む仕草をした。その手は腕の半ば程までがフッと消え、数瞬の後その手を引き抜くと、さっきまで何も持っていなかったその手には、白く輝く一握りの鉱石の様な物が握られていた。
アイテムボックスか。まあ商人なら持っていても不思議じゃないか。
「さっき入手したミスリル鉱石です」
「「「っ!?」」」
ミスリル これが噂のミスリルなのか 見た目はダイヤなんかの宝石の原石の様に見えるけど。
現物を見た事がない俺は、二人に視線を向けてみた。すると。
「アルク、少し貸して貰えるか?」
「はい、いいですよ」
アルクからミスリル鉱石(仮)を受け取ったフーリは、それを様々な角度から確認し、時折中指の背で軽くコンコンと叩いたりしていた。
そして最後に、ミスリル鉱石に手をかざすと、ミスリル鉱石は眩い黄金色の光を放ちながら輝いた。
その力強い輝きに、俺は現物を見た事がある訳でもないのに、本能的に本物だと確信してしまった。
「この魔力透過率、間違いなくミスリル鉱石だ。しかし本当に良いのか? 助けて貰ったお礼と言うには、いささか過剰な気がするが」
ミスリルの相場がどの程度かは知らないが、昨日のガンツさんの言葉から、それなりに値は張るのだろうと推測出来る。
相場次第ではあるが、確かに過剰な気はする。
「そんな事ありませんよ。皆さんがいなかったら、今頃私はロックリザードの餌になっていたでしょう。それを考えたら全然過剰なんかじゃありません」
「しかし」
まあ、確かにそれはそうなんだが。
「……そうですね。確かにアルクさんの言う通りです。姉さん、カイトさん。ここはありがたく貰っておきましょうよ」
俺とフーリが悩んでいると、マリーが受け取ろうと提案してきた。
「それに、あまり遠慮すると、逆に別のお礼を要求しているみたいにも聞こえちゃいますよ」
「……ふむ、確かにそれは一理あるか」
フーリは顎に手を添えて少し考える様な仕草をした後、納得したように頷いていた。
まあ確かにマリーのいう事にも一理ある。聞く人によっては、お礼の品に不満があると思われるかもしれない。
マリーはすごいな。俺はそんな事考えもしなかった。
「分かった。これはありがたく受け取っておこう。カイト君」
「ああ、分かった」
フーリからミスリル鉱石を手渡され、それをストレージに収納する。
でも、ミスリルか。これだけじゃあ流石に全員分の武器を作る事なんて不可能だろうけど、少しは足しになったかな?
「それじゃあ私はこれで。今日は本当にありがとうございました」
「ああ、気を付けるんだぞ」
転移魔法陣で地上まで転移しようとするアルクに、フーリが短く返事を返すと、そのままアルクは地上まで転移していった。
「しかしさっきのミスリル鉱石、結構な量があったな。あれだけでも私の剣を打って貰うには充分な量だ。本当に良かったのだろうか?」
「え? これだけでフーリの剣って打てるのか?」
てっきりこれだけじゃあ全然足りないと思っていたんだけど?
「ああ、純度百パーセントのミスリルの剣を打つには全く足りないが、これだけあれば充分な純度の剣が打てる」
「純度百パーセントじゃなくていいのか?」
ミスリルの剣っていうから、てっきり刀身は全てミスリルを使うのかと思っていたけど、そういう訳じゃないのか。
「そんな贅沢品、今の私には必要ないさ。普通は全体の三割ぐらいの純度でも、相当ま値段がするものだしな」
「……マジで?」
どうやらミスリルというのは、俺の想像より遙かに値が張る鉱石のようだ。何となく高いんだろうなぁとは思っていたけど、まさかそこまでとは。
あれ? これ本当にお礼として貰って良かったのか?
「まあ、今更か」
正直貰い過ぎかなぁとも思ったが、今更考えても仕方がない。
「でも、私達に必要な量を考えると、まだ足りませんけどね」
まあ全員分のミスリルって考えると、流石にこれじゃあ足りないよな。
「さて、色々あったが、予定通りミスリルの採掘を始めようか」
「そうだな」
「だね」
フーリの言う通り、トラブルはあったものの、俺達の目的は変わらない。
隠し部屋から各自ツルハシを持ってきて、俺達はミスリル採掘を開始した。
明るめのオレンジに近い茶髪を短く切り揃えた、幼さが残る顔立ちの好青年、という印象を受けるアルクは、俺よりも一回り程小さな体躯をしている。
所謂、母性本能をくすぐりそうな見た目だ。
「冒険者兼商人? つまりアルクは、冒険者をしながら商人としても活動しているという事か?」
「ええ、そうです。正確には、商人として活動するために、冒険者業も兼任している、という感じですがね」
「ふむ、なるほど。しかし、何故冒険者と兼任している? わざわざ危険を冒してまで冒険者として活動するよりも、商人一本に絞った方がいいのではないか?」
俺がアルクの発言に驚いている間にフーリが俺の疑問を代弁してくれていた。
えーっと、つまりこういう事か?
普段は商人として活動しているけど、必要に応じて冒険者としても活動していると?
でも何でわざわざ冒険者と兼任なんて?
フーリも言っているけど、下手に兼任なんてしても、どっちも中途半端になる気がするだが。
フーリから当然の疑問を投げかけられ、困った様な笑顔を浮かべるアルク。
「それが、お恥ずかしい話なのですが、私はまだまだ駆け出しの身。商品を仕入れるにも資金が足りず。仕方がないので、こうして自分で商品になりそうな素材を集めている次第です。ははっ」
アルクは曖昧に笑い、片手で頭をかいている。
商人って日本でいうところの個人で店を経営している人だよな? 確かに個人なら、軌道に乗るまでは資金繰りに苦労しそうなイメージはある。
「それで、素材を集めようと果ての洞窟に潜ったはいいものの、自分の実力に見合わない階層に来てしまって今に至る、と?」
「ええ、本当にお恥ずかしい限りで」
そういうアルクの表情は本当に申し訳なさそうで、そして少しだけ悔しさが滲んでいる様に見えた。
よく見てみると、右手をギュッと握りしめている。
「ふむ、なるほどな。事情は理解した。だが、今後は自分の実力に見合った階層で素材集めをするか、パーティでも組んで潜る事だな。実力に見合わない事をするとどうなるか、今回の件でよく分かっただろう?」
「ちょ、ちょっと姉さん! 何もそこまで言わなくても」
きつい言い方をするフーリに対し、マリーが慌てているが、個人的にはフーリの意見に同意だ。こういうのは下手にオブラートに包むよりも、はっきりと言った方が本人の為でもある。
「はは、これは手厳しい。ですが、あなたの言う通りですね。ええっと……」
「フレイアだ。フレイア・アルマーク」
「私はマリエール・アルマークといいます。よろしくお願いしますね、アルクさん」
「近衛海斗、十九歳だ。よろしく」
俺達を見ながら困った様な顔をしていたアルクを見て、まずフーリが名乗り、それに続いて俺達も名乗った。
「フレイアさんにマリエールさん、それにコノエさんですね。こちらこそよろしくお願いします」
アルクから名前を呼ばれたが、名字の方で呼ばれるのは、この世界に来て初めての出来事だ。
「早速ですが、今回助けて貰ったお礼です。どうかお受け取り下さい」
そう言うと、アルクは突然何もない空間に手を突っ込む仕草をした。その手は腕の半ば程までがフッと消え、数瞬の後その手を引き抜くと、さっきまで何も持っていなかったその手には、白く輝く一握りの鉱石の様な物が握られていた。
アイテムボックスか。まあ商人なら持っていても不思議じゃないか。
「さっき入手したミスリル鉱石です」
「「「っ!?」」」
ミスリル これが噂のミスリルなのか 見た目はダイヤなんかの宝石の原石の様に見えるけど。
現物を見た事がない俺は、二人に視線を向けてみた。すると。
「アルク、少し貸して貰えるか?」
「はい、いいですよ」
アルクからミスリル鉱石(仮)を受け取ったフーリは、それを様々な角度から確認し、時折中指の背で軽くコンコンと叩いたりしていた。
そして最後に、ミスリル鉱石に手をかざすと、ミスリル鉱石は眩い黄金色の光を放ちながら輝いた。
その力強い輝きに、俺は現物を見た事がある訳でもないのに、本能的に本物だと確信してしまった。
「この魔力透過率、間違いなくミスリル鉱石だ。しかし本当に良いのか? 助けて貰ったお礼と言うには、いささか過剰な気がするが」
ミスリルの相場がどの程度かは知らないが、昨日のガンツさんの言葉から、それなりに値は張るのだろうと推測出来る。
相場次第ではあるが、確かに過剰な気はする。
「そんな事ありませんよ。皆さんがいなかったら、今頃私はロックリザードの餌になっていたでしょう。それを考えたら全然過剰なんかじゃありません」
「しかし」
まあ、確かにそれはそうなんだが。
「……そうですね。確かにアルクさんの言う通りです。姉さん、カイトさん。ここはありがたく貰っておきましょうよ」
俺とフーリが悩んでいると、マリーが受け取ろうと提案してきた。
「それに、あまり遠慮すると、逆に別のお礼を要求しているみたいにも聞こえちゃいますよ」
「……ふむ、確かにそれは一理あるか」
フーリは顎に手を添えて少し考える様な仕草をした後、納得したように頷いていた。
まあ確かにマリーのいう事にも一理ある。聞く人によっては、お礼の品に不満があると思われるかもしれない。
マリーはすごいな。俺はそんな事考えもしなかった。
「分かった。これはありがたく受け取っておこう。カイト君」
「ああ、分かった」
フーリからミスリル鉱石を手渡され、それをストレージに収納する。
でも、ミスリルか。これだけじゃあ流石に全員分の武器を作る事なんて不可能だろうけど、少しは足しになったかな?
「それじゃあ私はこれで。今日は本当にありがとうございました」
「ああ、気を付けるんだぞ」
転移魔法陣で地上まで転移しようとするアルクに、フーリが短く返事を返すと、そのままアルクは地上まで転移していった。
「しかしさっきのミスリル鉱石、結構な量があったな。あれだけでも私の剣を打って貰うには充分な量だ。本当に良かったのだろうか?」
「え? これだけでフーリの剣って打てるのか?」
てっきりこれだけじゃあ全然足りないと思っていたんだけど?
「ああ、純度百パーセントのミスリルの剣を打つには全く足りないが、これだけあれば充分な純度の剣が打てる」
「純度百パーセントじゃなくていいのか?」
ミスリルの剣っていうから、てっきり刀身は全てミスリルを使うのかと思っていたけど、そういう訳じゃないのか。
「そんな贅沢品、今の私には必要ないさ。普通は全体の三割ぐらいの純度でも、相当ま値段がするものだしな」
「……マジで?」
どうやらミスリルというのは、俺の想像より遙かに値が張る鉱石のようだ。何となく高いんだろうなぁとは思っていたけど、まさかそこまでとは。
あれ? これ本当にお礼として貰って良かったのか?
「まあ、今更か」
正直貰い過ぎかなぁとも思ったが、今更考えても仕方がない。
「でも、私達に必要な量を考えると、まだ足りませんけどね」
まあ全員分のミスリルって考えると、流石にこれじゃあ足りないよな。
「さて、色々あったが、予定通りミスリルの採掘を始めようか」
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「だね」
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