見た目は青年、心はアラサー、異世界に降り立つ! ~チートスキル「ストレージ」で異世界を満喫中~
二十五話
オーク肉を食べ終えた俺達は、一層から下へ降りる階段の前にやってきていた。
「さて、オークの討伐依頼はひとまずこれで達成したし、このまま二層に潜ろうと思うのだが」
フーリは俺達の方を見ながら、問いかける様に言葉を口にした。
まあ本来の目的はミスリルの発掘だし、俺に異論はないな。
「ああ、俺はそれで問題ない」
「私はもちろん言うまでもなく」
マリーの目的もミスリルなのだから、特に異論がある筈もないか。
「よし、決まりだな」
フーリが視線を俺達から目の前の階段に移し。
「一層の主な魔物はオークとゴブリンだったが、二層の魔物はほとんどが「トレント」と呼ばれる木の魔物だ」
「トレントか」
聞き覚えがある魔物の名前が出てきて、その姿が脳裏に浮かんできた。
木の幹に大きな顔があり、木の枝を触手の様に自在に操り攻撃してくる魔物の姿が。
「何だ、カイト君はトレントを知っているのか?」
フーリの問いかけに、俺は肯定とも否定とも言えない微妙な表情を返した。
「知っているっていうか、前に住んでた世界では結構有名な魔物だったってだけで、実際は見た事すらないよ。俺が知っているのは、あくまで俺達の世界の、物語上のトレントだけ」
俺の答えに、フーリは不思議そうに首を傾げる。
もしかして、上手く伝わらなかったか?
「カイト君、前から気になっていたんだが」
「うん?」
何が気になっていたというのだろうか?
「カイト君は、随分と私達の世界……というより、異世界について詳しくないか?」
ああ、なんだ、そういう事か。
そういえば、十年ぐらい前から徐々に異世界物の小説とか漫画が増えたんだよな。
俺はそういうのが好きだったから、結果的にそういう知識も自然と増えていったけど。
でも、その手のコンテンツに全く触れてなかったら、こんな状況をすんなりと受け入れる事は出来なかっただろう。
「俺達の世界には、異世界を題材にした漫画……所謂おとぎ話みたいな物が沢山あるんだけど、多分それの影響だろうな」
「おとぎ話、ですか?」
二層への階段を下りながら二人に説明していると、マリーから疑問の声が上がった。
「そう、おとぎ話。俺達の世界では漫画や小説っていわれていて、娯楽の一つとして確立していたんだ。毎日の様に何百、何千もの新しい物語が生まれていたな」
「「何千!?」」
二人は同時に同じ言葉を叫んだ。
いや、流石に何千は盛り過ぎかな?
でも何百は確実に更新されていた。これは間違いない。
「あ、いや、悪い。流石に何千は盛り過ぎた。でも何百は確実に更新されていたな」
「そ、そうですよね。流石にそんなには……あれ? 何百でも充分異常な気が」
「そんなに沢山のおとぎ話が作り出されているなんて」
二人は俺の言葉に驚いてこそいたが、別に話が信じられない、という感じではなかった。
むしろ、何百という物語が作り出されている事の方に驚いている様子だ。
いやあ、ぶっちゃけその中から完結する物語なんてほんの一握りなんだけどね。
ウェブ小説の闇だよな。
どれだけ一生懸命書いても、読んで貰えなかったら、誰の目にも触れる事はなく、膨大な量の作品の海に沈んでいくしかないのだから。
「そういうのもあって、異世界については多少の知識があるんだ。正しいかどうかは分からないけど」
あくまで娯楽内の知識でしかないからな。
「召喚勇者は私達の世界に詳しい人が多いって聞いた事がありますけど、そういう理由があったんですね」
「あー、何となく想像できるな。俺召喚勇者じゃないけど」
異世界召喚された主人公、みたいな気分なんだろうな、召喚勇者って。
そういえば異世界召喚される基準って一体何なんだろう?
まだ召喚勇者を見た事ないから何とも言えないけど、何か規則性というか、法則とかあるのか?
「と、話が脱線したな。えーっと、確か二層で多く出て来る魔物がトレントなんだよな?」
「ああ、そうだ。トレント自体はそこまで強い魔物じゃないんだが、油断して捕食されると大変な事になるから気を付けてくれ」
「捕食?」
何か物騒な話になったな。
何? トレントって人間を食べるの?
「捕食されると、文字通り苗床にされてしまいますからね」
「苗床!?」
それって噂によく聞く、異種か……。
「全身に根を張り巡らされて、じわじわと生命力を吸い取られてしまいます」
「怖っ!」
苗床ってそういう意味かよ!
そんな目にあって死ぬなんて絶対に御免だぞ。
「まあ捕食の瞬間は分かりやすいから、余程油断しなければ捕食される事はないだろうがな」
そうなのか。それを聞いて安心した。したんだけど……フーリ、それってフラグじゃないよね?
フーリの言葉に若干の不安を抱きながら、俺達は二層へと続く階段を下りた。
「え? ここって果ての洞窟の中だったよな?」
「ええ、そうですよ」
マリーが肯定してくれたが、目の前に広がる光景は、決して洞窟内に広がる光景ではない。
だって、今俺の目の前には。
「でもさ、これってどう見ても森だよな?」
そう、森だ。今俺の目の前には、賢者の森みたいな景色が広がっている。
決して洞窟の中に広がる光景ではない。
「カイト君。果ての洞窟は、階層毎に環境が変化するんだ」
「階層毎に?」
それって、三層や四層とかも今と全く違う環境に変化するって事か?
「そうだ。例えばこの二層なんかは賢者の森と環境が似ているが、三層は鉱石が良くとれる採石場の様な感じになっているし、四層なんかは沼地が多い、といった具合だ」
つまり、より下の層に行きたい場合、毎回違う環境で探索しないといけないって事か。
それってかなり面倒じゃね?
だって、今の環境にようやく慣れた頃には、次の層で環境がガラッと変わるって事だろ? 嫌すぎる……。
「言いたい事は分かるが、こればかりは慣れるしかないな」
余程表情に出ていたのか、フーリがフォローを入れてきた。
「確かにそうだな。頑張って慣れるしかないか」
折角ダンジョンみたいな場所に潜っているんだ。不安はあるけど、どうせなら楽しみながら探索したい。
「大丈夫です、きっとすぐに慣れますよ!」
「ああ、そうだな」
マリーの言う通り、きっとすぐに慣れるとは思う。励ましてくれたマリーと、自分自身の為にも、早く慣れないと。
「所で一つ気になっていたんだけど」
「何ですか?」
洞窟の中に森。これ自体は別にいい。問題は……。
「二層って確かトレントが多く出るって言っていたけど、これ全部トレントとか言わないよな?」
もしそうなら、俺は今すぐ燃やし尽くすという選択をするだろう。多すぎる。
「それは大丈夫です。流石にこれが全部トレントだったら、今頃一層は氾濫したトレントの群れでいっぱいの筈ですから」
「あ、それもそうか」
言われてみればそうだ。
この量の魔物が大人しく二層に引き籠っているとは流石に考えにくい。
つまり、この中にトレントが紛れているって事か。
……木を隠すには森の中とはよく言ったもので、この中からトレントを区別しないといけないのか。
「これは骨が折れそうだ」
「トレントなら魔力を「視れば」分かりますよ?」
「え? 何だって?」
魔力って目視出来るの? 初耳なんだけど。
「さて、オークの討伐依頼はひとまずこれで達成したし、このまま二層に潜ろうと思うのだが」
フーリは俺達の方を見ながら、問いかける様に言葉を口にした。
まあ本来の目的はミスリルの発掘だし、俺に異論はないな。
「ああ、俺はそれで問題ない」
「私はもちろん言うまでもなく」
マリーの目的もミスリルなのだから、特に異論がある筈もないか。
「よし、決まりだな」
フーリが視線を俺達から目の前の階段に移し。
「一層の主な魔物はオークとゴブリンだったが、二層の魔物はほとんどが「トレント」と呼ばれる木の魔物だ」
「トレントか」
聞き覚えがある魔物の名前が出てきて、その姿が脳裏に浮かんできた。
木の幹に大きな顔があり、木の枝を触手の様に自在に操り攻撃してくる魔物の姿が。
「何だ、カイト君はトレントを知っているのか?」
フーリの問いかけに、俺は肯定とも否定とも言えない微妙な表情を返した。
「知っているっていうか、前に住んでた世界では結構有名な魔物だったってだけで、実際は見た事すらないよ。俺が知っているのは、あくまで俺達の世界の、物語上のトレントだけ」
俺の答えに、フーリは不思議そうに首を傾げる。
もしかして、上手く伝わらなかったか?
「カイト君、前から気になっていたんだが」
「うん?」
何が気になっていたというのだろうか?
「カイト君は、随分と私達の世界……というより、異世界について詳しくないか?」
ああ、なんだ、そういう事か。
そういえば、十年ぐらい前から徐々に異世界物の小説とか漫画が増えたんだよな。
俺はそういうのが好きだったから、結果的にそういう知識も自然と増えていったけど。
でも、その手のコンテンツに全く触れてなかったら、こんな状況をすんなりと受け入れる事は出来なかっただろう。
「俺達の世界には、異世界を題材にした漫画……所謂おとぎ話みたいな物が沢山あるんだけど、多分それの影響だろうな」
「おとぎ話、ですか?」
二層への階段を下りながら二人に説明していると、マリーから疑問の声が上がった。
「そう、おとぎ話。俺達の世界では漫画や小説っていわれていて、娯楽の一つとして確立していたんだ。毎日の様に何百、何千もの新しい物語が生まれていたな」
「「何千!?」」
二人は同時に同じ言葉を叫んだ。
いや、流石に何千は盛り過ぎかな?
でも何百は確実に更新されていた。これは間違いない。
「あ、いや、悪い。流石に何千は盛り過ぎた。でも何百は確実に更新されていたな」
「そ、そうですよね。流石にそんなには……あれ? 何百でも充分異常な気が」
「そんなに沢山のおとぎ話が作り出されているなんて」
二人は俺の言葉に驚いてこそいたが、別に話が信じられない、という感じではなかった。
むしろ、何百という物語が作り出されている事の方に驚いている様子だ。
いやあ、ぶっちゃけその中から完結する物語なんてほんの一握りなんだけどね。
ウェブ小説の闇だよな。
どれだけ一生懸命書いても、読んで貰えなかったら、誰の目にも触れる事はなく、膨大な量の作品の海に沈んでいくしかないのだから。
「そういうのもあって、異世界については多少の知識があるんだ。正しいかどうかは分からないけど」
あくまで娯楽内の知識でしかないからな。
「召喚勇者は私達の世界に詳しい人が多いって聞いた事がありますけど、そういう理由があったんですね」
「あー、何となく想像できるな。俺召喚勇者じゃないけど」
異世界召喚された主人公、みたいな気分なんだろうな、召喚勇者って。
そういえば異世界召喚される基準って一体何なんだろう?
まだ召喚勇者を見た事ないから何とも言えないけど、何か規則性というか、法則とかあるのか?
「と、話が脱線したな。えーっと、確か二層で多く出て来る魔物がトレントなんだよな?」
「ああ、そうだ。トレント自体はそこまで強い魔物じゃないんだが、油断して捕食されると大変な事になるから気を付けてくれ」
「捕食?」
何か物騒な話になったな。
何? トレントって人間を食べるの?
「捕食されると、文字通り苗床にされてしまいますからね」
「苗床!?」
それって噂によく聞く、異種か……。
「全身に根を張り巡らされて、じわじわと生命力を吸い取られてしまいます」
「怖っ!」
苗床ってそういう意味かよ!
そんな目にあって死ぬなんて絶対に御免だぞ。
「まあ捕食の瞬間は分かりやすいから、余程油断しなければ捕食される事はないだろうがな」
そうなのか。それを聞いて安心した。したんだけど……フーリ、それってフラグじゃないよね?
フーリの言葉に若干の不安を抱きながら、俺達は二層へと続く階段を下りた。
「え? ここって果ての洞窟の中だったよな?」
「ええ、そうですよ」
マリーが肯定してくれたが、目の前に広がる光景は、決して洞窟内に広がる光景ではない。
だって、今俺の目の前には。
「でもさ、これってどう見ても森だよな?」
そう、森だ。今俺の目の前には、賢者の森みたいな景色が広がっている。
決して洞窟の中に広がる光景ではない。
「カイト君。果ての洞窟は、階層毎に環境が変化するんだ」
「階層毎に?」
それって、三層や四層とかも今と全く違う環境に変化するって事か?
「そうだ。例えばこの二層なんかは賢者の森と環境が似ているが、三層は鉱石が良くとれる採石場の様な感じになっているし、四層なんかは沼地が多い、といった具合だ」
つまり、より下の層に行きたい場合、毎回違う環境で探索しないといけないって事か。
それってかなり面倒じゃね?
だって、今の環境にようやく慣れた頃には、次の層で環境がガラッと変わるって事だろ? 嫌すぎる……。
「言いたい事は分かるが、こればかりは慣れるしかないな」
余程表情に出ていたのか、フーリがフォローを入れてきた。
「確かにそうだな。頑張って慣れるしかないか」
折角ダンジョンみたいな場所に潜っているんだ。不安はあるけど、どうせなら楽しみながら探索したい。
「大丈夫です、きっとすぐに慣れますよ!」
「ああ、そうだな」
マリーの言う通り、きっとすぐに慣れるとは思う。励ましてくれたマリーと、自分自身の為にも、早く慣れないと。
「所で一つ気になっていたんだけど」
「何ですか?」
洞窟の中に森。これ自体は別にいい。問題は……。
「二層って確かトレントが多く出るって言っていたけど、これ全部トレントとか言わないよな?」
もしそうなら、俺は今すぐ燃やし尽くすという選択をするだろう。多すぎる。
「それは大丈夫です。流石にこれが全部トレントだったら、今頃一層は氾濫したトレントの群れでいっぱいの筈ですから」
「あ、それもそうか」
言われてみればそうだ。
この量の魔物が大人しく二層に引き籠っているとは流石に考えにくい。
つまり、この中にトレントが紛れているって事か。
……木を隠すには森の中とはよく言ったもので、この中からトレントを区別しないといけないのか。
「これは骨が折れそうだ」
「トレントなら魔力を「視れば」分かりますよ?」
「え? 何だって?」
魔力って目視出来るの? 初耳なんだけど。
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