見た目は青年、心はアラサー、異世界に降り立つ! ~チートスキル「ストレージ」で異世界を満喫中~

蒼山 勇

十六話

「あれは活性化の魔導具だよ」
「活性化? お兄ちゃん、活性化って?」

 活性化の意味がイマイチ分からなかったのか、アミィが俺に尋ねてきた。

「活性化っていうのは……そうだな、何て言えばいいかな? 全身に力が漲る? みたいな?」
「全身に力が漲る?」

 んー、微妙に分かりづらいな。実際俺もそこまで詳しく理解してる訳じゃないからなぁ。

「まあ、とにかく元気が出る魔導具だって事だ!」
「お兄ちゃん……うん、分かったよ!」

 アミィが慈愛に満ちた笑顔で理解を示してくれたが、これ絶対 気を遣われたよな。

「カイトさん、流石に自分が渡した魔導具のスキルぐらい、きちんと理解しておいた方がいいですよ?」

 マリーの言葉が耳に痛い。
 いや、違うんだ。日本じゃ何となくで理解していても問題なかったんだよ。だから深く知らないだけで、活性化自体は問題なく使えるんだって。

「いいんです、マリーさん。私はお兄ちゃんのおかげで、お母さんが少しでも元気になった。それだけで嬉しいですから。例えお兄ちゃんが魔導具の効果をきちんと理解してなかったとしても、私は全然構いません!」
「うぐっ!」

 アミィの言葉が胸に突き刺さる。それはフォローしている様に見せてこっちを攻撃してるよアミィ? なんなら致命傷すらあり得る。

「カイト君、次からはきちんと理解しておかないとな」
「……ああ、身に染みて理解したわ」

 悪意のない言葉程、胸を抉るものは無い。
 無責任な行動はよくない。アミィの言葉でよく理解出来た。

「どうしたの、お兄ちゃん?」
「いや、ちょっと自分の行動に責任を持とうと思ってな」
「ん? よく分からないけど、私はお兄ちゃんの味方だからね!」
「ぐっ……あ、ああ。ありがとな、アミィ」
「うん!」

 本当に次からは気を付けよう。そう心に誓った。



「それで、カイト君。スライムの魔石だが」
「ああ、その話な」

 あの後、アミィと別れた俺達は一度俺の部屋に集まり、スライムの魔石の話を始めた。

「結論から言うと、このスライムの魔石には三つのスキルが付与されていた」
「三つもですか!?」

 マリーが声を上げて驚くが、その気持ちはよく分かる。
 ゴブリン(特殊個体)の魔石にも、スキルは二つしか付与されてなかったんだ。

 今回討伐したスライムは特殊個体ではなかった……筈だ。なのに付与されているスキルは三つ。

 魔物の強さで付与されているスキルの数が決まるのか。それともその魔物が持っているスキルが全て付与されているのか。
 今の所どっちかは分かっていない。

「ああ、三つだ。「自己再生」「酸魔法」「物理耐性:大」の三つが付与されていた」
「物理耐性はたまに聞くな。確かかなりのレアスキルだった筈だ。だが「自己再生」と「酸魔法」は聞いた事ない」
「私もです。自己再生はなんとなく分かりますけど、その「酸魔法」ってどんな魔法なんでしょうか?」

 二人は顎に手をやり、考える仕草をする。
 恐らくどんなスキルなのか想像しているのだろう。

「まあそれはいいんだけど、問題は、このスキルをどうするかなんだ」
「ん? どうとは?」
「いや、スキル抽出して別々に保存しとくか、それともまとめて魔導具にしてみるかで悩んでいるんだ」
「「……」」
「いやほら、自己再生とか酸魔法ってどんな効果があるか分からないじゃん? だったら先にこの二つを抽出しておいて、物理耐性だけでも……」
「いやいや、待って下さいカイトさん!」
「ん、何?」

 俺がこのスキルをどうするか二人に相談していると、突然マリーが話を遮って止めてきた。
 一体どうしたんだ?

「カイトさん。今「スキルを抽出する」って言いましたか?」
「言ったけど?」

 だって言わないと相談出来ないじゃん?

「カイト君、その「スキルを抽出する」とは一体どういう意味だろうか?」
「どういう意味も何……も……あっ、説明してなかったっけ?」
「されてません!」
「されてないな」

 あー、そういえばそうだった気がする。
 二人には魔導具の話はしたけど、スキルの話はしてなかったっけ?
 ていうか、よく考えたら魔導具関連以外何も話してないじゃん。

「いや、実はさあ……」

 俺は二人に「スキル抽出」について教える事にした。



「「……」」

 俺がスキル抽出の話をすると、二人は言葉を失っていた。
 そんなに驚く様な……事だな。俺が逆の立場でも同じ反応をしていただろう。

「魔石からスキルを取り出せる、だと?」
「しかもそのスキルを習得する事が出来るって……そんな話聞いた事ありませんよ」

 でしょうね。俺も初めて見た時は我が目を疑ったもん。分かる分かる。

「で、話を戻すけど、この魔石からスキルを抽出するか、それともまとめて一つの魔導具にするかで悩んでるんだ」
「あ、ああ。さらっと流すな君は」

 だって、二人の事信じてるし。それに、言い方は悪いけど、俺が実際にスキル抽出をして見せない限り、こんな話、誰も信じないだろう。
 だから、別にそこまで深く考える必要はないと思う。

「そうですね。無難にその、スキル抽出? というので二つは抽出して、物理耐性だけ魔導具にするのが良さそうです」
「あ、やっぱりそう思う?」

 俺もその方がいいかなと思ってたんだよな。
 だって自己再生とか、どの程度再生出来るかも分からないのにおいそれと使える訳ないし。

 酸魔法に関しては全く想像出来ないから論外だ。
 碌に扱う事も出来ず、自分のスキルで自滅とかしたら流石に笑えない。

「じゃあとりあえず物理耐性の魔導具だけ作るか」

 そう考え、ストレージ内の材料に手を出そうとして。

「いや、少し待ってくれ」

 フーリが待ったをかけてきた。

「ん? どうしたフーリ?」
「そんな事が出来るなら、とりあえず今は何もせずに魔石を取って置く方がいいと思うんだが」
「……なるほど、それもアリ、か」
「完全に盲点でしたね」

 新しい魔石が手に入ると、ついスキル抽出しようとしてしまうけど、別に急ぐ必要はないのか。
 それは失念していた。

「よし、とりあえずこれは保留って事にしようかな。二人もそれでいいか?」
「ああ、それで構わない」
「私も構いません」

 二人も了承してくれたので、この魔石は一旦保留という事で決まった。

「よし、魔石の件も話は決まったし、私はちょっと出かけてくる」
「姉さん、どこかいくの?」
「ああ、ちょっとガンツ殿の所にな」

 フーリはガンツさんの所に行くのか。
 大分資金も溜まってきたし、俺もそろそろ防具を揃えたいな。
 どうしようか。

「ん? カイト君も来るか?」

 俺が考える素振りを見せていたからか、フーリが尋ねてきた。

「……そうだな。今日はいつもより時間も早いし、ちょっと顔出してみようかなぁ」
「そうか。ガンツ殿もカイト君の事を気にしていたし、丁度いいんじゃないか?」
「え、そうなのか?」

 ガンツさんが俺の事を?

「そろそろカイトさんが鎖帷子を壊した頃じゃないかって、すごく気にしていましたよ」

 壊す事前提なの!? と思ったが、防具はいずれ壊れる物だから当たり前か。それが駆け出しなら尚の事。

「よし、挨拶がてら俺も行くか」

 新しい防具も欲しいしな!

「あ、二人が行くなら私も!」

 そして当然の如くマリーもついて行く事になり、結局俺達は三人でガンツさんの所に顔を出す事になった。

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