あの日

僕ちゃん

一話 私の誕生 

 私は6月中旬のあの日のことを一生忘れないと思う。まだ私の身長が150cmから165cmの時に起こったあの日のあの事件について。

  あの事件が起こらなかったら、26歳の今の私がこんなにも幸福なはずがないと思う。ましてや数日前に余命があと1年とあの女に宣告されたばかりなのに幸福などなんて思わなかったはずだ。
 
 私は父である三郎と母である花子が愛しあった結果、森に囲まれた小さな村の一員として生まれた。

 母は私が生まれたとき普通の赤ちゃんよりも小さく生まれたわたしをとても心配に思ったが、元気な声で泣く私とそのとなりで私よりも大きな声で泣いている父の姿を見てすぐに不安が消え自然と笑顔があふれてきたんだよ。と私によく話してくれた。

 しかし、子供のときの私は母の話が真っ赤の嘘だということはよく知っていた。なぜなら私には人と違う個性が1つだけあったからだ。

 この個性のせいで大人には稀有な目で見られ子供にはよくからかわれたものだ。私は生まれる前の記憶と子供の時の記憶その全てを脳に無理やり詰め込んだまま物心を獲得した数少ない人の1人だったのである。

 私はこの世界に誕生する前、どこかわからないが真っ白の世界にいた。そこには私みたいに自分の父、母になるものを探している者たちと、すでに父、母を決定し自分の兄弟になってほしい者を探している者たちがいた。

 そして無力な私達の世話をしてくれるとにかくふわふわな生物もいた。この生物に関しては見たらなぜか笑顔があふれてきたという記憶以外残っていない。とにかく私はそこで幸運にも壮絶な争いを勝ち抜き理想の母と父を獲得した。今思えば壮絶な争いといっても赤ちゃん同士の争いなのでとても可愛い者だった。

 捕捉だが争いに破れた赤ちゃん達は普通第2第3志望の親を選ぶが、第1志望じゃないならと売れ残った親達を選ぶ赤ちゃん達もいた。

 そして幸運にも理想の父と母を獲得した私は、整った顔立ちをしているがどこか弱々しい父と、お世辞にも可愛いとは言えないが愛嬌のある母の元へと向かうことにした。 
 
 ふわふわの生物と仲良くなった赤ちゃんにそのことを伝えた瞬間、真っ白の世界が真っ暗になり安心できる暖かさに変わった。だがすぐに明るくなり私はびっくりして泣いてしまった。しかしすぐ近くで父と母の笑い声が聞こえたので安心してしばらくすると寝てしまった。

 この時は目を開けることができなかったので父と母の顔を見ることができなかった。しかし3週間ほどして目を開けた時にはびっくりした。父は私が選んだままの父であったが母はというと全く知らない女に変わっていたからだ。

 そうあの女だ。あの女は母親なんかじゃない。だからあの女の話しは真っ赤な嘘だ。小さな私はそう思っていた....

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コメント

  • 僕ちゃん

    ありがとうございます。皆さんからのコメントやいいねの数に更新の速さが左右されると思うので宣伝お願いします。先の展開はある程度決まっているのでコメントが多ければ毎日2話更新も夢じゃありません。

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  • ノベルバユーザー541130

    何歳の時の6月にあの日が来るのかとても気になった。この先に期待!

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