異能力で異世界充実
第■章
溜まったアニメを消化していた夏休みの最終日。
ピンポーン。
何の前触れも無く訪問客が現れた。
「神崎一樹さん。いらっしゃるんでしょう」
年季の入った男の声の持ち主がチャイムを鳴らした上でコンコンと扉を叩く。
再生していたアニメを一時停止してヘッドホンを外し、椅子から立ち上がる。
「ちょっと待ってくださいね」
扉の覗き窓から訪問客を伺うとワイシャツを着た壮年の男性と若い男性の二人組みが額に汗の玉を作って待っていた。
見覚えのない男達に警戒心を覚えながらも扉を開く。
「神崎さん、お忙しい中すみません。ワシらはこういうものなんですが、ちょっとお時間よろしいですか?」
壮年の男はそう言って見せてきたのは手帳。そこには壮年の男性の証明写真が貼られている。俗に言う警察手帳らしい。見たことは無いがどうやらこの二人は警察らしい。
「ここだと話しにくいこともあるでしょうから、ちょっと署まで同行してくれませんかね?」
若い刑事は明るく尋ねる口調にもかかわらず俺の腕を掴み、ほぼ強制するように俺を部屋から連れ出してパトカーに乗せる。
警察が俺に尋ねたい事に思い当たる節は指折り数えれる程度にはある。いざとなれば逃げればいいと高をくくって二人に従う。
二人の刑事は俺を挟むように両サイドに座る。まるで絶対に逃がさないと威圧するかのように。
そして、パトカーは発進する。
俺は署に到着するまでの間、この夏の出来事を振り返ることになった。
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