異世界マゼマゼ奮闘記

ぷい16

新しい6人とその扱い

「ったく、どこの雑誌に記事を載せたんだよぉ」


 汲広くみひろ悪態あくたいをついた。

 あれから2日後、インジスカン王国の一工業団地に医院を構える多々身たたみ省語しょうごからメールが届いたのだ。


 汲広くみひろは、省語しょうごの記事が、日本の雑誌にって、日本から反響はんきょうがあって、日本人から”教えろ!”と省語しょうごに連絡があったものだと思っていたのだ。

 しかし、省語しょうごから来たメールを見ると、半数が海外からであった。


「教えてほしいと希望する医者の半数は海外からだったよ」


 相談をするためにステファニアを部屋に呼び、ステファニアにリストを見せながら、汲広くみひろはそう伝えた。


「まぁ!それでは、日本とアメリカとヨーロッパ、3カ所に分身をかなくてはなりませんね」

何故なぜそんなに分身させたがる」


 ステファニアの返答が予想外だったので、汲広くみひろは呆れてしまった。

 3カ所に分身をくと、計5人、魂をミラーリングさせたら1つの魂に5人分の記憶が次々と入ってくる。

 魂はそれを許容できるのだろうか?


「新しく3人分身をいたとして、計5人だ。それで魂をミラーリングさせてみろ、魂の許容量がどうなのか分からんが、下手したら、魂が破綻はたんするかも知れない」

「それなら、新しい魂は、そちらだけでミラーリングさせて、今までのこちらは今まで通りで、医療班と今までの私たちは分離したらいいんじゃないですか?」

「分離して関与しないか… それなら現実的かもな」


 汲広くみひろはアカツキ伯爵にメールした。

 新たに3人ずつ汲広くみひろとステファニアを作ること。

 新しい6人は、こちらとは魂のミラーリングをせず、新しい新しい6人どうしでだけミラーリングさせること。

 それに、省語しょうごからのリストを付けた。


 翌日、アカツキ伯爵からメールが届いた。

 了承りょうしょうするむねの返事であった。

 自分でメールを送っておいて、汲広くみひろは、”お前ら、それでいいのか?”と思わずにはいられないのであった。


     *


 日本の汲広くみひろとステファニアが寝てから2時間くらい経ったであろうか。

 体は眠っているのに意識はしっかりしている。

 若緑色を基調とした壁、焦げ茶色の床し、枯れ色の天井、そして、テーブルと椅子とティーセット。

 あの、ミーティングルームである。

 スキカと対面して、汲広くみひろとステファニアが座っている。


「お主ら、随分ずいぶんと楽しい計画を立てておるな」

「見られてましたか。自分でも、何故こうなったのか分からないんですけどね」


 スキカはちょうど見ていたらしい。


「新しい汲広くみひろとステファニアを3組、その計6人でミラーリングさせて、今までの汲広くみひろとステファニアは従来通り。それで間違いないか?」

「間違いありません」


 スキカは汲広くみひろ、ステファニアと見つめ、はぁ、と一つ息を吐くと、


「お主ら、詰めが詰めが甘いな。この新しい6人のうち、汲広くみひろは現地の学校で学んで医師免許を持っているものとする」

「へ、そりゃぁ、医師免許を持っていたら活動するのに便利でしょうけど」

「それならそれで良かろう。活動しやすい方が良かろう?お主たちの監督管理下にもけないのだから」

「まぁ、そうですね」


 スキカは新しい6つの魂と、3体ずつの汲広くみひろとステファニアを作り、魂をコピーし、日本、アメリカとヨーロッパに1組ずつ配置するのであった。


「これで医療関係のお主らの懸念事項けねんじこうはなくなったぞ。もう思い悩むことはない。彼らは彼らでやっていくさ」


 汲広くみひろは自分たちから提案したものの、本当にこれで良かったのかと思い悩むが、


汲広くみひろは思い悩んでいるようだが、お主たちはお主たちのできる範囲で最善のことをしろ。時間もったし、もう眠るがよい」


 そう言って、また、スキカは汲広くみひろとステファニアを深い眠りにつかせるのであった。


 翌日、汲広くみひろとステファニアは掃き出し窓の能力集中講習センターの仕事をこなし、家へ帰ってきた。

 パソコンでメールをチェックしていると、ちゃんと省語しょうごからのメールがある。

 汲広くみひろはアカツキ伯爵に念話を送り、新しい汲広くみひろとステファニアを作ってもらったこと、そして、省語しょうごに報告を入れて欲しいと連絡したのだった。

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