異世界マゼマゼ奮闘記

ぷい16

久々の領地

 明くる朝、領地に出発のため、従者が準備に追われている。

 アカツキ伯爵とステファニアは軽い朝食を摂り、お茶で一服する。すると、


「アカツキ夫妻、準備できました」


 との従者が言ったので、飲みかけのお茶を飲みきり、馬車へ向かう。

 馬車の中には昨日、ステファニアが急いで持って来たお守りと数冊の本も準備されている。

 アカツキ伯爵もステファニアも馬車へ乗り込もうとしたとき、馬車列が通り過ぎた。


「スズケホーズ伯爵夫妻かな?」

「そうかも知れませんね」


 スズケホーズ伯爵夫妻の馬車の後ろをアカツキ夫妻の馬車列が走って行く。

 しばらくすると、Y字路に差しかかった。スズケホーズ伯爵夫妻は右に、アカツキ伯爵たちは左である。

 早くに出発したので、11時頃に、うっすらと遠くに領主邸のある街が見えた。


「ハーパヤの街が見えてきました。久しぶりですね」

「そうだな。もう何年も来ていなかったからな」


 街に入る手前、左手にゴエブロ牧場、右手にワタヌキ牧場という看板が見えた。

 そして、小麦畑の間を抜けて、ハーパヤの街に入った。

 馬車はそのまま街の中を真っ直ぐ進み、大きな豪邸まで出た。

 そう、アカツキ伯爵の家、アカツキ領主邸である。


 従者のやり取りで、門が開き、馬車は庭へと入っていく。

 そして、領主邸の正面玄関に馬車を着け、アカツキ伯爵とステファニアは降り立った。従者が門を開くと、


「お帰りなさいませアカツキ伯爵様、ステファニア奥様」


 従者が勢揃せいぞろいして頭を下げ、出迎えてくれた。


「お帰りなさいませ、旦那様、奥様」


 最後に出てきたのは代官のミラト・バハーミッツである。


「仕事の話は後にしまして、そろそろお昼です。まずは昼食をお取り下さいませ」

「それでは、食堂で報告を聞こう。一緒に昼食はどうだ?」

「ご一緒いっしょしてもよろしいのですか?」

かまわん」


 アカツキ伯爵とステファニアは自室で着替えて食堂へと向かった。


 ミラトの報告を聞きながら昼食を摂った。

 正直、話に手中していて食べ物の味は分からなかった。

 食事中に報告を聞くのは良くないなとアカツキ伯爵は思った。


 そのうち、食事を食べ終えたが、ミラトの報告はまだ途中である。


「続きは執務室で聞こう」


 そう言って3人は執務室に移り、残りの報告を聞いた。


「領地の方は、わりと順調にいっているのだな」

「左様です」


 アカツキ伯爵は黙って頭の中を整理する。整理し終えたところで、


「それでは書類を片付けていこうか」

「そうですね。領主様でしか決裁できない書類も御座ございますし」


 アカツキ伯爵は積み上がった書類を3カ所に振り分けていった。振り分け終わると、


「ミラト、そなたは執務机を使え。我らはこちらのローテーブルを使う」

「かしこまりました」


 書類を片付けていく3人。すると、ミラトが、


「思えば、クミヒロ様と、アントネラ様ともこのように手分けをして書類を片付けたことが度々ありました」

「そのようだな」


 ミラトは、しみじみとそう言いながら、手は止めていない。


 夕方にもなると、書類は半分ほどになっていた。


「あとは明日にして今日はこの辺で終わりにしませんか?アカツキ伯爵様もステファニア様も長旅でお疲れでしょう」

「そうだな。疲れたな。終わりにするか」

「そうしましょう」


 3人は仕事にきりを付けて、風呂に入り、夕食を摂った。

 うん。

 雑談くらいならともかく、報告を聞きながらの食事ではないから味がよく分かる、とアカツキ伯爵は思った。


「ステファニア、そなたの部屋へ言って良いか?久しぶりにラジオが聞きたい」

「はい。分かりました」


 二人はステファニアの私室に入り、ステファニアはCDコンポでFMラジオの音楽番組をかけた。

 従者はお茶の用意を始めている。アカツキ伯爵は何かつまめる菓子も出すように注文する。


「今、日本ではこのような歌が流行はやっているのだな」

「そのようですわね」

「もう少し、落ち着いた曲を流す局はないものか」


 ステファニアが局を変える。ちょうどクラシックがかかった。


「この曲なら落ち着いてお茶も飲めそうだな」

「そうですわね」


 こちらでは夜の8時頃。日本で言うと、朝の8時頃。

 落ち着いた局を流す局があったことに安堵する。

 アカツキ伯爵とステファニアはお茶を飲み、菓子として出されたクッキーをつまみ、穏やかな曲に包まれながら、落ち着く、優雅な時間を過ごした。


「こういった、ゆったりとした落ち着く時間もいいな」

「そうですわね。あなたったら何かしら、いつも仕事を抱え込んでいっぱいいっぱいになっていることが多いですもの」


 落ち着く、優雅な時間もあっという間に過ぎ、就寝することにした。

 二人で同じベッドに入ると、馬車での疲れのせいであろうか、二人は、すぐに意識は闇の中へ落ちていくのであった。

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