異世界マゼマゼ奮闘記
馬車での領地への移動―前編
「そんなもの、後で取りに来ればいいだろ?」
「これがないと不安なんです。それに、長旅になるんですから暇つぶしも必要でしょ?」
「だったら早めに準備しておくべきだったな」
「もう、あなたったら意地悪ばかり…」
カンデラ子爵一家との語らいの数日後、アカツキ伯爵とステファニアは領地へと旅立つところだったのだが、ステファニアが、いきなりお守りと数冊の本を持って行きたいというものだから、少し出発が遅れ気味である。
しかし、予定は緩く決めているので、多少遅れても問題ないのだが、アカツキ伯爵は急かなくても大丈夫なのに、ステファニアに厳しいことを言うのであった。
「ステファニア、準備は終わったか?」
「はい」
「それでは出発」
王都のアカツキ邸には移動手段として、領主夫妻が使える、掃き出し窓の魔法、掃き出し窓の能力、それにオフロードもある程度走破できるファミリーカーがあるのだが、慣例に従って移動は馬車である。
宿場町で出会う貴族と語らったり、街の様子を見てみるのも、また、貴族には必要なことらしい。
「掃き出し窓の能力で行けば、一瞬だし、時間の節約にもなるのにどうしてまた馬車なんだ?今度大型バスでも買おうか?」
「貴族の慣例ですもの。仕方ありませんわ。それに、大型バスで行ったとして、運転はあなたしかできないし、第一、宿場町に大型バスを停める駐車場はありませんわよ」
馬車は4台連なっている。
先頭は護衛と従者が相乗り、前から二番目が悠生とステファニア、三番目には荷物、最後尾は護衛と従者となっている。
それぞれの馬車の後方にも荷物が積んである。
護衛が別れているのは、敵が前から来ても、後ろから来ても対応できるようにするためである。
「そういえば、神代魔法の中級編はどこまで読めた?」
「もう最後まで読めましたわ。あとは、実験的に魔法を試してみて、自分のものにするだけですわ」
「私も似たようなものだ。さて、この暇な時間を生かして、その実験をしてみようかと思っているのだがどうだろう?」
「この狭い空間でできる実験ならいいんじゃありませんか?しかし爆発などの伴う危険な実験は、例え小さなものでもお止めくださいませ。馬車が壊れて移動できなくなれば困りますし、怪我もしたくありませんし、衣装やお守りや本が駄目になるのはご勘弁ですわ」
「じゃぁ、危険がない魔術の実験をして時間を潰そう。さて、何から試そうか…。そうだ。馬車馬と少し話しでもするか」
この世界には、人語とは別に、魂言語というものがあり、魂を持つ物とは大抵魂言語で言葉が通じるのである。
アカツキ伯爵は、テレパスで、魂言語を使って馬車馬と世間話をしたり、疲れていないか質問したりして時間を潰すのであった。
「それでは私は、あの空を飛ぶ鳥と話でもしましょうか」
ステファニアも悠生と同じ要領で、馬車のはるか空高くを飛んでいる鳥と話を始めた。
すると、1羽の鳥が、馬車のはるか前方に隠れるようにした人影が居ると教えてくれた。
その人陰は武装しており、ひょっとすれば、盗賊団か何かで、襲いかかってくるかも知れない。
「あなた、進路上に盗賊らしき者たちがいるんですって」
「それでは護衛に知らせるか」
アカツキ伯爵は念話で前後の護衛たちに盗賊らしき人影を見つけたことを教える。
御者には気づかないフリをしてそのまま進むように指示するように伝える。
「ステファニア、私は前を担当するから、お前は後ろの盗賊団を混乱させろ。初めて試す魔術だから相手が少ない方がいいだろう」
「あなたの言う通りにしますわ」
案の定、近づくと、盗賊団は姿を現し、止まった馬車の前後に展開した。
前に4人、後ろにも4人である。
「やっぱり。ではステファニア、手はず通りに」
「はい。あなた」
悠生とスレファニアが魔術を使うと、盗賊団たちは防具を脱ぎ捨て自傷行為を始めた。
「邪魔だ。道を空けろ」
馬車の前方に居た盗賊団たちは、素直に道を空ける。
悠生とステファニアとその護衛は再び馬車に乗り込むと、御者たちに進みように命令した。
「追いつけないくらい引き離したら解除しよう」
「初めてでしたがうまくいきましたね」
盗賊団は馬車が遠く離れるまで自傷行為を続け、その後、正気に戻って何故自分たちは防具を脱ぎ捨て傷だらけになっているのか分からず混乱した。
もうすぐ夕暮れ時、宿場町、グレゾームはもうすぐである。
「これがないと不安なんです。それに、長旅になるんですから暇つぶしも必要でしょ?」
「だったら早めに準備しておくべきだったな」
「もう、あなたったら意地悪ばかり…」
カンデラ子爵一家との語らいの数日後、アカツキ伯爵とステファニアは領地へと旅立つところだったのだが、ステファニアが、いきなりお守りと数冊の本を持って行きたいというものだから、少し出発が遅れ気味である。
しかし、予定は緩く決めているので、多少遅れても問題ないのだが、アカツキ伯爵は急かなくても大丈夫なのに、ステファニアに厳しいことを言うのであった。
「ステファニア、準備は終わったか?」
「はい」
「それでは出発」
王都のアカツキ邸には移動手段として、領主夫妻が使える、掃き出し窓の魔法、掃き出し窓の能力、それにオフロードもある程度走破できるファミリーカーがあるのだが、慣例に従って移動は馬車である。
宿場町で出会う貴族と語らったり、街の様子を見てみるのも、また、貴族には必要なことらしい。
「掃き出し窓の能力で行けば、一瞬だし、時間の節約にもなるのにどうしてまた馬車なんだ?今度大型バスでも買おうか?」
「貴族の慣例ですもの。仕方ありませんわ。それに、大型バスで行ったとして、運転はあなたしかできないし、第一、宿場町に大型バスを停める駐車場はありませんわよ」
馬車は4台連なっている。
先頭は護衛と従者が相乗り、前から二番目が悠生とステファニア、三番目には荷物、最後尾は護衛と従者となっている。
それぞれの馬車の後方にも荷物が積んである。
護衛が別れているのは、敵が前から来ても、後ろから来ても対応できるようにするためである。
「そういえば、神代魔法の中級編はどこまで読めた?」
「もう最後まで読めましたわ。あとは、実験的に魔法を試してみて、自分のものにするだけですわ」
「私も似たようなものだ。さて、この暇な時間を生かして、その実験をしてみようかと思っているのだがどうだろう?」
「この狭い空間でできる実験ならいいんじゃありませんか?しかし爆発などの伴う危険な実験は、例え小さなものでもお止めくださいませ。馬車が壊れて移動できなくなれば困りますし、怪我もしたくありませんし、衣装やお守りや本が駄目になるのはご勘弁ですわ」
「じゃぁ、危険がない魔術の実験をして時間を潰そう。さて、何から試そうか…。そうだ。馬車馬と少し話しでもするか」
この世界には、人語とは別に、魂言語というものがあり、魂を持つ物とは大抵魂言語で言葉が通じるのである。
アカツキ伯爵は、テレパスで、魂言語を使って馬車馬と世間話をしたり、疲れていないか質問したりして時間を潰すのであった。
「それでは私は、あの空を飛ぶ鳥と話でもしましょうか」
ステファニアも悠生と同じ要領で、馬車のはるか空高くを飛んでいる鳥と話を始めた。
すると、1羽の鳥が、馬車のはるか前方に隠れるようにした人影が居ると教えてくれた。
その人陰は武装しており、ひょっとすれば、盗賊団か何かで、襲いかかってくるかも知れない。
「あなた、進路上に盗賊らしき者たちがいるんですって」
「それでは護衛に知らせるか」
アカツキ伯爵は念話で前後の護衛たちに盗賊らしき人影を見つけたことを教える。
御者には気づかないフリをしてそのまま進むように指示するように伝える。
「ステファニア、私は前を担当するから、お前は後ろの盗賊団を混乱させろ。初めて試す魔術だから相手が少ない方がいいだろう」
「あなたの言う通りにしますわ」
案の定、近づくと、盗賊団は姿を現し、止まった馬車の前後に展開した。
前に4人、後ろにも4人である。
「やっぱり。ではステファニア、手はず通りに」
「はい。あなた」
悠生とスレファニアが魔術を使うと、盗賊団たちは防具を脱ぎ捨て自傷行為を始めた。
「邪魔だ。道を空けろ」
馬車の前方に居た盗賊団たちは、素直に道を空ける。
悠生とステファニアとその護衛は再び馬車に乗り込むと、御者たちに進みように命令した。
「追いつけないくらい引き離したら解除しよう」
「初めてでしたがうまくいきましたね」
盗賊団は馬車が遠く離れるまで自傷行為を続け、その後、正気に戻って何故自分たちは防具を脱ぎ捨て傷だらけになっているのか分からず混乱した。
もうすぐ夕暮れ時、宿場町、グレゾームはもうすぐである。
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