異世界マゼマゼ奮闘記
掃き出し窓の能力持ちの苦難―4
「それでは」
という前置きを置いて、隙間運輸の隙間社長は、
「依頼されれば他の運送会社にも掃き出し窓の魔法を教えてもいいと、そうお考えですか?」
汲広はまた立ち、
「はい。教えたいと思います。ただし、また抜け駆けと言われないために今度は複数の会社を同時に研修したいと考えております」
「おぉ」という感心したような言葉と、その後、また会場がざわめきたった。
「それで、どんな練習をしたのですか?」
「決められた場所に行ってみる練習です。あまり詳しく言うと、木瀬運輸の秘密保持契約に引っかかる恐れがあるのでご勘弁下さい」
「木瀬さん」
隙間社長が責めるようにそう呼ぶと、木瀬社長は、
「練習方法は詳しく言って構いません」
それ以上は言うなと見て取れたが、練習方法の話しをする。
「まずは、配達には配達員の他に、ナビゲーターという人を付けます。ナビゲーターは、次の配達先の手配と、次に行くべき場所へ導く補佐をすることもあります。配達員が間違った場所へ行った際に導く、たどり着けない状態を回避するための手段です。二重にしておけば、たいてい目的地にたどり着けるでしょう」
汲広は続けて、
「ナビゲーターも、配達員がすることが分かっていた方が良いという観点から、同じ教育を施しました。パソコンで、ランダムに場所を指定させ、移動役にはGPSを持たせて掃き出し窓の能力で移動させ、目的地にたどり着いたか毎回チェックするのです。この練習を重点的に行えば、たいてい目的地にたどり着け、配達が行えるようになります」
汲広は発言が終わったとばかりに座る。
隙間社長は、
「その練習用のソフト、融通してもらえますか?」
「分かった」
そう答えた。隙間社長は、
「練習場所は、我が社が新しく新設しようとしているコールセンターを使いましょうパソコンも完備されていますので。そこで各社合同で練習させようかと思いますが、他に意見のある人はいますか?」
反対意見も出ない。これは良しとしよう。
「では、各社の人員の割り当ての話をしたいと思います」
人員の割り当ての話になると、汲広の出る幕ではない。
「それでは、これで決を採りたいと思いますが、反対意見はありますか?」
無いようである。
「それではこれで決めたいと思います。あと、『瞬達便』という名称は、商標登録にしないで、どの運送業者でも使えるようにしてもらいたい。木瀬社長、いいですか?」
「分かった」
それでは、木瀬社長の責についてですが…
その後の話し合いでは汲広もアントネラも出る幕はなく、会議は終了した。
*
水曜日、交通業界全体の会議である。
こちらも、『掃き出し窓の能力を教えろ』という内容であった。
そこで、汲広は合同でと返事をする。
練習場所の話し合いが行われ、日は運送業の練習の1ヶ月後となった。
「やっと話し合いが終わった」
「私は発言しませんでしたが、あなた、お疲れ様でした」
場所は木瀬通運本社の休憩室。帰る前にお茶を飲んで一服である。
「しかし、何も責を問われないで良かったですわね」
「あぁ。しかし、網弾野さんには悪いことしちゃったかな?」
「いえ、元はといえば、網弾野さんが断れなかったから、他の会社に内緒で始めたからですから網弾野さんにはいい薬になったでしょう」
「これで無茶な仕事の割り振りが無くなればいいんだがなぁ」
「そうですね」
一服を終え、実家に帰る。
「ただいま」
「ただ今戻りました」
「お帰りなさい。で、どうだった?」
帰ると母の朋子が出迎えてくれた。
父の修司はまだ仕事、妹の朝里はまだ学校である。
「何とか穏便に事が終わったよ。これから生徒がドンと増えて、仕事が詰まるけどさ」
「まぁまぁ、それで済んで良かったじゃない」
朋子は、汲広もアントネラも無事でほっとしているようだった。
遅めの昼食を摂り、のんびりとする汲広とアントネラ。
「これだけ仕事がポッカリと空くと、無職になった気分だよね」
「そうですね」
「何を言ってるのよ。また忙しくなるんでしょ?忙しくなったときに後悔しないように今のうちにちゃんと休んでおきなさい」
「は~い」
事を一つ終えて、のんびり気分の汲広とアントネラであった。
という前置きを置いて、隙間運輸の隙間社長は、
「依頼されれば他の運送会社にも掃き出し窓の魔法を教えてもいいと、そうお考えですか?」
汲広はまた立ち、
「はい。教えたいと思います。ただし、また抜け駆けと言われないために今度は複数の会社を同時に研修したいと考えております」
「おぉ」という感心したような言葉と、その後、また会場がざわめきたった。
「それで、どんな練習をしたのですか?」
「決められた場所に行ってみる練習です。あまり詳しく言うと、木瀬運輸の秘密保持契約に引っかかる恐れがあるのでご勘弁下さい」
「木瀬さん」
隙間社長が責めるようにそう呼ぶと、木瀬社長は、
「練習方法は詳しく言って構いません」
それ以上は言うなと見て取れたが、練習方法の話しをする。
「まずは、配達には配達員の他に、ナビゲーターという人を付けます。ナビゲーターは、次の配達先の手配と、次に行くべき場所へ導く補佐をすることもあります。配達員が間違った場所へ行った際に導く、たどり着けない状態を回避するための手段です。二重にしておけば、たいてい目的地にたどり着けるでしょう」
汲広は続けて、
「ナビゲーターも、配達員がすることが分かっていた方が良いという観点から、同じ教育を施しました。パソコンで、ランダムに場所を指定させ、移動役にはGPSを持たせて掃き出し窓の能力で移動させ、目的地にたどり着いたか毎回チェックするのです。この練習を重点的に行えば、たいてい目的地にたどり着け、配達が行えるようになります」
汲広は発言が終わったとばかりに座る。
隙間社長は、
「その練習用のソフト、融通してもらえますか?」
「分かった」
そう答えた。隙間社長は、
「練習場所は、我が社が新しく新設しようとしているコールセンターを使いましょうパソコンも完備されていますので。そこで各社合同で練習させようかと思いますが、他に意見のある人はいますか?」
反対意見も出ない。これは良しとしよう。
「では、各社の人員の割り当ての話をしたいと思います」
人員の割り当ての話になると、汲広の出る幕ではない。
「それでは、これで決を採りたいと思いますが、反対意見はありますか?」
無いようである。
「それではこれで決めたいと思います。あと、『瞬達便』という名称は、商標登録にしないで、どの運送業者でも使えるようにしてもらいたい。木瀬社長、いいですか?」
「分かった」
それでは、木瀬社長の責についてですが…
その後の話し合いでは汲広もアントネラも出る幕はなく、会議は終了した。
*
水曜日、交通業界全体の会議である。
こちらも、『掃き出し窓の能力を教えろ』という内容であった。
そこで、汲広は合同でと返事をする。
練習場所の話し合いが行われ、日は運送業の練習の1ヶ月後となった。
「やっと話し合いが終わった」
「私は発言しませんでしたが、あなた、お疲れ様でした」
場所は木瀬通運本社の休憩室。帰る前にお茶を飲んで一服である。
「しかし、何も責を問われないで良かったですわね」
「あぁ。しかし、網弾野さんには悪いことしちゃったかな?」
「いえ、元はといえば、網弾野さんが断れなかったから、他の会社に内緒で始めたからですから網弾野さんにはいい薬になったでしょう」
「これで無茶な仕事の割り振りが無くなればいいんだがなぁ」
「そうですね」
一服を終え、実家に帰る。
「ただいま」
「ただ今戻りました」
「お帰りなさい。で、どうだった?」
帰ると母の朋子が出迎えてくれた。
父の修司はまだ仕事、妹の朝里はまだ学校である。
「何とか穏便に事が終わったよ。これから生徒がドンと増えて、仕事が詰まるけどさ」
「まぁまぁ、それで済んで良かったじゃない」
朋子は、汲広もアントネラも無事でほっとしているようだった。
遅めの昼食を摂り、のんびりとする汲広とアントネラ。
「これだけ仕事がポッカリと空くと、無職になった気分だよね」
「そうですね」
「何を言ってるのよ。また忙しくなるんでしょ?忙しくなったときに後悔しないように今のうちにちゃんと休んでおきなさい」
「は~い」
事を一つ終えて、のんびり気分の汲広とアントネラであった。
「異世界マゼマゼ奮闘記」を読んでいる人はこの作品も読んでいます
-
-
2.1万
-
7万
-
-
6,681
-
2.9万
-
-
176
-
61
-
-
66
-
22
-
-
1.2万
-
4.8万
-
-
5,039
-
1万
-
-
5,217
-
2.6万
-
-
9,711
-
1.6万
-
-
8,191
-
5.5万
-
-
2,534
-
6,825
-
-
3,152
-
3,387
-
-
1.3万
-
2.2万
-
-
9,448
-
2.4万
-
-
3,548
-
5,228
-
-
6,199
-
2.6万
-
-
1,295
-
1,425
-
-
2,860
-
4,949
-
-
6,675
-
6,971
-
-
3万
-
4.9万
-
-
6,044
-
2.9万
-
-
344
-
843
-
-
6,237
-
3.1万
-
-
76
-
153
-
-
3,653
-
9,436
-
-
1,863
-
1,560
-
-
14
-
8
-
-
108
-
364
-
-
2,951
-
4,405
-
-
2,629
-
7,284
-
-
9,173
-
2.3万
-
-
2,799
-
1万
-
-
4,922
-
1.7万
-
-
2,431
-
9,370
-
-
614
-
1,144
-
-
88
-
150
「ファンタジー」の人気作品
-
-
3万
-
4.9万
-
-
2.1万
-
7万
-
-
1.3万
-
2.2万
-
-
1.2万
-
4.8万
-
-
1万
-
2.3万
-
-
9,711
-
1.6万
-
-
9,545
-
1.1万
-
-
9,448
-
2.4万
-
-
9,173
-
2.3万
コメント