異世界マゼマゼ奮闘記

ぷい16

他業種からの横やり

「まぁ、色んな方面から横やりを入れられているらしいが、総じて、『お前の会社だけで、その便利な魔法をガメんな』らしい」


 瞬達便しゅんたつびん、2日目の稼働で、いろいろな会社に配達に行き、配達員が衆目にさらされた。

 同業の宅配業者からも他の運搬業者からも、鉄道会社やらタクシー会社やらバス会社からも。


瞬達便しゅんたつびんっちゅうものは、最短、ものの1分足らずで配達が終了してしまうもんだ。そんなもの他の配達業者からしたら、真似できん。その力を独占するなときたもんだ」

「そりゃぁ、他所よその宅配業者からは目を付けられるとは思っていました」

「んでよぉ、掃き出し窓の能力っちゅうもんは、物だけでなく、人も運べるだろう?ということは、交通に携わるものにとっても欲しい能力だ」

「確かに。日本からインジスカン王国に、この能力を使ってたくさん人を運んでますしね」

「日本とインジスカン王国の行き来だけだったら別に文句も出なかっただろうさ。優遇ゆうぐうされた、日本では使うのをためらわれる能力なんだろうって。でも、我々は日本で商売として始めてしまった」

「日本で、商売で始めたから何故オレたちが使っちゃダメなんだって?」

「まぁ、そう言うこっちゃな。便利な能力がある。忌避きひされる条件もくなった。じゃぁ、公平にオレたちにも使わせろ。独占するんじゃねぇってな!」


 予想はしていたが、掃き出し窓の能力の有用性は、交通、運搬の業種での予測できる用途は多岐たきに渡る。

 確かに一業種が独占していいものではない。

 汲広くみひろは、


「じゃぁ、どうしろっていうんでしょうね?」

「現場にまで話しが来てるってことは、上層部にも話しは行っているだろう?あとはお偉いさんに決めてもらうしかないんじゃねぇか?一応オレは上司に報告は入れておくがよ」

「僕でも横やりは入ると想像していましたがね。上の人がどう出るかな?国から紹介されたから、話しの規模きぼはかなりデカいんじゃないかと…」

「え!国からの紹介って…」

「総務省所属の網弾野あびきのさんっていう官僚に泣きつかれてここの仕事を紹介されました。マル」

「総務省って…本当に政府からじゃねぇか」

「えぇ。そうなんですよ」


 バレたら下手したら網弾野あびきのさんもつるし上げにあいますね。

 と軽く言った汲広くみひろであったが


「そりゃぁ、政府が一企業を優遇したら問題だろう」


 疋田野ひきだの課長も、言葉を詰まらせながら、問題だと言った。


「これからどうなるんですかねぇ。瞬達便しゅんたつびんお取り潰しかな?」

「そんなことオレがさせねぇ」


 疋田野ひきだの課長は、反対勢力が出るんだったら戦ってやると言った。


「ここで話していてもらちがあかねぇ。おめぇさんらは報告も終わった。もうけぇんな」

「分かりました。とりあえず帰って、網弾野あびきのさんに一報入れておきます」

「そうしな。お疲れさん」


 掃き出し窓の魔法や能力は、インジスカン王国の工業地帯群で散々さんざん有用性は示している。

 そこへ来て、日本で商売で使ってしまった。

 汲広くみひろたちがうかつだったのだろうか?いや、網弾野あびきのが企業からの圧力をおさえられず、汲広くみひろたちに頼み事をしたのが悪い。


「とりあえず、帰ろうか」

「そうですね」


 汲広くみひろたちは1本赤ワインを買って帰った。


「ただいま」

「ただ今帰りました」

「お帰りなさい」

「とりあえず、電話してくるわ」

「うん、行ってらっしゃい」


 それから汲広くみひろ網弾野あびきのに電話した。

 木瀬通運の瞬達便しゅんたつびんに関しては、順調な船出をしたこと、ここでは網弾野あびきのは喜んで返事していたが、交通、運搬の業種から横やりを入れられそうになったくだりから、『はい』、『はい』という返事になり、その後無言になった。


網弾野あびきのさん、聞いてますか?」

「…」

網弾野あびきのさん!」

「わ、私、マズいことしちゃったんじゃ…」

「公平性に欠けるという面においてはかなりマズいでしょうね」

「そんなぁー」


 汲広くみひろは実家のリビングに戻り、


「どうしたんだ?汲広くみひろ?」


 汲広くみひろは家族がそろったリビングで、事の始終を話した。


「そりゃ、それだけ便利なもんなら一企業で独占はいくら何でもマズいだろう」

「独占禁止の法律、あははん」

朝里あさりだまってなさい。で、今、網弾野あびきのさんに連絡入れたのよね?」

「うん」

「じゃぁ、もう、あなたたちが抱え込める話しじゃなくなっているだろうし、あとはおえらいさんの方々が決めるんじゃないか?」

「うん」

「じゃぁ、心配だろうけどこの話は終わり。食事にしましょ」


 岡塚一家は夕食にした。酒を飲むようになって2日目でやけ酒になるとは思わなかった。

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