異世界マゼマゼ奮闘記

ぷい16

二郎高校卒業と、工場団地の動き

 油田の採掘、油の井戸ということで、油井ゆいと呼ぶそうだが、それはもう、第一採掘場、第二採掘場、第三採掘場共にできている。

 でも、それらの採掘場周辺ではまだ工事が進められている。何故か?

 それは、原油には様々な成分、例えば、原油以外の不純物が混ざっていたり、有用成分にいたっても、ガス、燃料になる炭化物質、アスファルトなどがあるが、まずは不要物質を分離したい。そして、不要物質を分離してから大まかでも各主要物質に分離してから出荷したい。その、分離設備が一部ではあるが、ようやっと完成した。

 今までは、不純物が混ざった原油を日本にパイプラインで送って処理してもらっていたのだが、製品にするにはもっと分離が必要だが、形にはなってきた。

 随分ずいぶんと短時間で施設ができたものだが、工場でいくらか組み立てられたものが入ってきたことと、掃き出し窓の能力で、実際にはものすごく距離が離れているところを距離を感じない、現場と工場の人が実際に会えるので意思疎通が簡単ということがかなり大きいであろう。


 一旦原油の抜き取りを止め、新しい分離施設にパイプをつなえ、新たな分離施設へパイプラインを通し、またくみ出し再開。もっと細かな分離は日本の施設に任せる。一応採掘場の建設は終わりである。



 原油を売るに当たり、収入の割合が、日本の業者4、国に3、領主に3という割合になっている。

 まぁ、日本の業者の割合がかなり多いが、実際に管理しているのは日本の業者だ。

 低いと業者が割に合わない。

 原油を売ることによって国にも、領主にも日本円が入ってきた。アカツキ領も一時期は財政が逼迫ひっぱくしていた時期があったが、今は徐々に財政が潤ってきている。


     *


 月日は巡って汲広くみひろは高校卒業となった。

 汲広くみひろの進路というかは、物流支援、掃き出し窓の能力を使って工場の建設現場の物流を支える。

 今までと変わらない。

 日本に帰れず寂しい思いもするが、汲広くみひろが帰っては現場が滞る。

 汲広くみひろやアントネラは自らも掃き出し窓の能力を使う現場の人であるが、佐藤さとう夫妻、パトルス夫妻、アマハド夫妻、マーダ夫妻、ブレッド夫妻の上司である。

 取りまとめ役である。

 状況が変われば責任者と折衝せっしょうし、その結果、部下に指示を出す。二人はなくてはならない司令塔なのである。

 そんな折衝の中、次のような話が出てきた。


「詳しい話しは施主せしゅさんにお願いしたいところではあるんですが、工場はまばらではありますが完成しています。聞くところによりますと、岡塚さんは日本から電気を引っ張ってこれるとうかがいました。そこで、日本から電気を引っ張ってきて工場のラインを動かそうという話になりまして」

「まぁ、確かに、掃き出し窓の能力で日本から電気を引っ張ってくることはできます。上下水道もガスも引っ張ってくることもできます。どこの企業や団体からそれらを引っ張ってくる交渉を施主さんが行ってくれる限りはそこに最適な道を作ることはやぶさかではありません」


 工場団地の工場は、まばらではあるが完成している建物もある。

 それは、一遍いっぺんに全ての建物を完成させることが材料的にも、加工的にも、人員的にも無理であるからだ。

 そこで、いくつかを完成させ、次の工場へ、という流れになっている。

 でも、折角せっかく完成した工場を遊ばせておくのはもったいないと思うのも施主にとっては普通である。

 そんなときに、日本からインフラを持ってこれるという話を聞きつけ、工事業者が間に入って確認を取っているのである。

 何故工場が、インジスカン王国で動かせないか、それは、まだ火力発電所が建設中で、電気が来ないからである。


「ほぉ、やはり可能ですか。それでは施主さんにはこちらから可能という返事をしておきますので、そこからは施主さんと話し合ってもらっていいですか?」

「私たちも忙しい身ではありますが、分かりました。条件とうはその施主さんとの話し合いで」


 火力発電所から工場までの配線はもうできている。

 ガスについてももう建物はできており、ガスを送り込んである程度ていど備蓄基地にめれば供給はできる。

 パイプラインも通っている。

 水道についても上下水道使う者がいないから今は止まっているが、建物自体はできている。こちらもパイプラインもちゃんと通っている。


     *


 場所はアカツキ領地内のアカツキ邸、汲広くみひろの部屋に、汲広くみひろとアントネラだけがる。


「アントネラ、今、火力発電所が建設中で、電気が来ないことによって工場、稼働してないだろ?」

「えぇ」

「そこで、日本から電気を持って来て、工場を稼働させようという話になっているんだけど」

「まぁ、それなら工場を稼働させることはできるわね。私たちの仕事は増えるけど」

「それと、今はこちらの生活はアカツキ伯爵におんぶに抱っこだろ?」

「そうね」

「そこで、材料の送りちんやらできた製品の送りちんを、工場からもらって、我々の収入にしたいと思うんだがどうだろう?」

「これだけ働いてもお金がもらえないのは悲しかったの。賛成よ。これで私たち、自分の収入が入るのね」


 交渉次第で収入を得ることができる。そのことに喜ぶ汲広くみひろとアントネラであった。

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