異世界マゼマゼ奮闘記

ぷい16

閑話―カンデラ子爵家の日本観光―前編

「あぁ、毎日疲れるなぁ」


 アカツキ伯爵の愚痴ぐちである。パソコン教室の授業内容の作成、各貴族に配分する電力の監視、英語学校の授業内容の見直し、やることはキリがい。せめて思い出だけでもと思いついたのが…


(汲広くみひろ、ちょっといいか?)

(何でしょう?)

(カンデラ家は日本観光していないだろう?ちょっと連れて行ってくれないか?)

(いいですけどなんで急に?)

(ちょっと息抜きがしたくてな。せめて思い出だけでも)

(了解です。こちらで全部動きます)

(ありがとう。任せたぞ)


 そして、念話が終わった後、アントネラに伝えると、


「良い案ですね。家の両親も喜びます」


 と喜んでくれた。


「それじゃぁ、準備に動きますか」


 汲広くみひろは、最初にアントネラの兄弟のシフォン、マイク、リサに声をかけた。

 ちなみに、この3人、英語学校を卒業したら、パソコン学校に通い始めた。


「家族そろって日本観光か。それはいい」

「3人の了承を得たら、今度はカンデラ子爵家夫妻だな」


 汲広くみひろは掃き出し窓の魔法でカンデラ子爵領メルタープにあるカンデラ子爵邸を訪れた。


「家族そろって日本観光か。行ってみたいとは思っていたんだよ」


 カンデラ子爵家夫妻の感触も良好であった。

 そして、日時を詰め、観光のため、日本を訪れるのであった。

 まず向かったのは、汲広くみひろの実家である岡塚家である。

 事前に連絡してあったので、父の修司《しゅうじ》、母の朋子ともこ、妹の朝里あさりそろっている。

 久しぶりに会う両家。

 しばし歓談し、頃合いを見て、母の朋子ともこが、


「料理を用意していますので、隣の汲広くみひろの家へ行きましょうテーブルも運んであるのよ」

汲広くみひろ君、何故この家で夕食じゃないんだい?』

『家の広さ、部屋の広さの問題です』


 汲広くみひろがもらった汲広くみひろの家は、岡塚家の実家の2倍の広さがある。

 リビングも大きく、これだけの人数が行ってもあまり狭さを感じないのであった。


「さぁ、ごはんにしましょう」


 出したのは和食であった。

 ごはんに豚汁、みりん干しの焼き魚にステーキ。

 奮発したのはいいが、バランスというか、センスがちょっとおかしな食卓であった。


『このスープ、美味しいな。ちょっと変わった味だがこんなの食べたことがない。』

『我々は貴族だから結構な頻度で肉は食べられるが、この量、さすがに我々でも出たことがないな』

『魚をこのように加工して焼くとは。我々の調理法にはないな』


 口々に感想を述べるカンデラ家一行。

 料理の評価への通訳は半分くらいにした。

 歓談しながらの明るい食事。

 食後も歓談が続き、その後は岡塚家一行は汲広くみひろとアントネラを残して自宅へ帰り、汲広くみひろの家に残った7人は、ゆったりとお風呂に入った。

 ここからは全てサーメイヤ語である。


「インジスカン王国時間の朝には来ましたが、こちらはもう夜。明日の観光のために、少しでも睡眠を摂って下さい」

「しかし、起きて余りたないんだ。まだ眠くない」


 そういえばと思い、アカツキ伯爵が持っている映画の中で、良い物がないか探す汲広くみひろ

 お目当ての物が見つかり、


「これはインジスカン王国で近日公開予定の映画なんですが、見ますか?」

「おぉ、見る見る。そういえば、王都では映画館というのが流行っているらしいじゃないか」

「映画館も我々が仕掛けた娯楽です」


 7人してリビングで映画を見る。

 もちろん、サーメイヤ語の字幕付きである。

 この家、オーディオも良い物を入れてあり、画面のサイズを除けば、映画館に匹敵する迫力であった。


 映画を見るのは初めてな5人。大げさに感情が顔に出ていて顔を見ているのも面白い。

 お茶とお菓子も用意してある。途中、パリポリお菓子を食べながら映画にのめり込む。


 そういえば、今年の日本語学校生、2人ほど、声優を目指していたっけ。

 日本で声優という仕事を学び、将来地球の映画をサーメイヤ語で吹き替えるのが夢だと語っていたなぁ。


 そうこう楽しんでいると、映画も終わり、日本では深夜になっていた。

 次に、英語学校のパソコン教室で流したプレゼン資料を見てもらった。

 やはり、最後に映った悪魔の地が気になったらしく、


「何故、悪魔の地が映ったんだい?」


 と、聞かれたので、


「あの、物が燃えるのには力があり、動力として使えて、物を運ぶ道具に使えたり、電気を起こしたりできるんです」


 と、答えた。

 他にも質問が飛んだが、それに、真摯しんし汲広くみひろは答えた。

 そうこうしていると思う夜中。

 もうこれ以上起きていると明日のスケジュールに差し障る。

 ここは無理にでも寝てもらおう。


 そうして皆を客室へ案内する。

 いくら大きいとはいえ日本の家屋。

 1人1部屋とは行かず、2人1部屋となった。

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