異世界マゼマゼ奮闘記

ぷい16

水力発電所、完成

 英語学校は、他国の生徒も来ているとあって、全日制ぜんにちせいとなった。

 なので、基本、家業などのけ持ちはなしである。

 英語は、母国語に関係なく使える教材が豊富なので、プリントの配布も少なく、授業内容をちゃんとあらかじめ考えておけば授業が成り立つため、日本語に比べて随分ずいぶん楽であった。


 悠生ゆうせいは、本来今の時期は領地へ帰って領地の仕事をしないといけない時期であったが、英語学校が忙しく、領地に住むわけにはいかなかった。

 なので、領地は代官のミラトに任せ、日曜日に当たる休養日に掃き出し窓の魔法で領地に向かい、ミラトと話をすることが多くなっていた。


 水力発電所の計画も進んでいる。

 発電機と送電ケーブルの購入は日本で、工事自体は日本の工事業者の指示のもと、地元民であるハーパヤの市民にお願いした。

 日本の業者だけでやってしまうと、いつまでっても日本の業者任せになってしまって、地元民に技術が身につかなくなるからとの悠生ゆうせいの配慮である。

 送電ケーブルは、南門からまっすぐ入って、ハーパヤのアカツキ邸まで伸ばされた。

 アカツキ邸内で変電され、アカツキ邸の電気をまかなう。

 あと、ガソリンタイプの大型発電機と充電用蓄電池とソーラーパネルも取り付けた。

 川の水量が無くなったときにも電気に困らないようにである。


 アカツキ邸内の配線も日本の工事業者の指示のもと、地元民であるハーパヤの市民にお願いした。

 日本では配線は資格が必要だが、ここはインジスカン王国。そういった決まり事は未整備みせいびなのである。

 あと、ハーパヤ全域に声が届けられるよう、防災スピーカーの設置も行われた。

 領主からの通知は市街にもうけている掲示板で事足りるのだが、緊急の要件を伝えることもあるだろうからと悠生ゆうせいの提案で設置された。

 何も無くても、定刻になるとチャイムを鳴らすようにしたので、時計の高価なこの国で、時報代わりになるだろう。


 配線が先行していて設置が遅れていた水力発電所の本格稼働が成される日となった。

 悠生ゆうせいは、ハーパヤの西に流れる河である、エボーン河水力発電所の外で、工事に関わった市民を集めて、


「私のワガママで工事に参加してくれてありがとう。
 本日、工事も完了し、今日から本格運転が始まる。
 電気は、我が邸宅だけで使うには多いので、希望者を募って夜の明かり取りくらいは市民に分け与えようと思っている。
 それでは、水力発電機、始動!」

 悠生ゆうせいのかけ声で、水力発電所が本格始動した。

 そして、みなでゾロゾロと歩いて行き、みなは、アカツキ邸の大広間まで連れて行く悠生ゆうせい。そして、


「それでは、工事の目的の一つをお披露目しよう。明かりを付けてくれ」


 暗かった大広間に電気の明かりがともった。

 ここは電気を使うことがない世界。

 普段、夜などはロウソクの明かりに頼る生活をしている。

 市民は電気の明るさにビックリし、これが、自分たちの仕事でなし得たことということで、ほこらしかった。


「先ほども言ったが希望者には自宅での明かり取りくらいは電気を使って良い。
 希望者は忘れずに申請するように。
 それと、皆の労を労い、食事を用意しているので皆で食べていってくれ」


 悠生ゆうせいはそう言って、アカツキ邸の庭までみなを誘導した。

 庭では、アカツキ邸のメイド達が料理を運んできており、立食パーティーの準備が整っていた。

 すると、市民から、


「家族にも食べさせたいのですが、呼んでもいいですか?」

「構わんぞ。連れて来て食べさせるが良かろう」

「ありがとうございます!」

「疫病を防ぐために、食べる前には手を洗ってな」


 多くの市民は家族を呼びに、一度家に帰ってまたやって来た。

 みな、家で手を洗ってきたらしく、そのまま料理を食べ始めた。

 悠生ゆうせいもこれを夕食とするので、みなの輪に入り、食事をつまんでいった。

 すると、市民から、


「うっめぇ。こんなの食べたことがない」


 食事のおいしさをめる者やら、


「領主様のおごりだ。みな、たらふく食っていけよ」


 滅多に食べられないご馳走を、満腹になるまで堪能しようとする者も出てきた。

 そうしていると、掃き出し窓の魔法でステファニアがやって来た。

 ステファニアは日本語学校で忙しく、やっとひま出来できたようだ。


「あなた、竣工しゅんこうパーティー、盛り上がっているようですね」

みなの働きなくして出来上できあがらなかった。
 ろうねぎらうべきだよ。
 ステファニアも混ざって食べたらどうだい?」

「そうですね。いただきますわ」


 みなが料理で幸せそうにしている。

 幸せそうな市民を見ていて顔のやわらぐ悠生ゆうせいとステファニアであった。

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