異世界マゼマゼ奮闘記
互いの世界に交流を
汲広は自分の部屋の勉強机で椅子に座りながら一人、考え事をする。
(この後、ステファニアの世界かぁ、あっちは勉強ばっかりなんだよなぁ)
ステファニアが読んだり書いたりしているのだから、意識を読んで、意味は分かる。しかし、汲広にはあちらの世界の基礎学力が無い。
小学生が、ある日突然、高校で授業を受けているようなものである。
もし、逆の立場なら、ステファニアが汲広の記憶を取り出して、理解するのだが、汲広は記憶を引っ張り出すのは下手である。将来役に立つ知識かも知れないが、今のところ、やはり分からないからつまらないのである。
そうこう考え事をしていると、徐々に意識が遠のき始めた。汲広はとっさに、まるで昼寝でもするように、机に突っ伏した。
*
「久方ぶりである。二人とも息災で何よりである」
目の前に居たのは自称神様、スキカであった。
あの、テーブルと椅子とティーセット以外何も無い空間、あの、ミーティング空間である。
汲広はすでに椅子に腰掛けている。隣には、同じように椅子に腰掛けているステファニア。
スキカは目の前の紅茶もどきに口を付けた。
それを見て、汲広、ステファニアの順にカップに口を付ける。汲広は少し、落ち着きたかったのだ。やはり、この飲み物は美味しかった。
「我は雑用に忙殺されて、あれからの君らの行動を把握してはおらぬ。今、チェックする故しばし待て」
スキカの前には立体画像が、超早送りで再生されていた。スキカは速読法ならぬ、高速に動画を理解できるようである。
「なっ!」
スキカは驚愕していた。汲広の机の上にステファニアの右手、手首から先だけ出て例の100均電卓を掴んでいるシーンで画像が止まっていた。
「は、掃き出し窓の魔法は習得したばかりであったな」
「えぇ。そうですわ」
コクリと頷くステファニア。
「経験が浅いのにここまでできるとは…」
スキカは冷静さを取り戻し、また瞬速で続きの動画をチェックする。一通り過去画像をチェックし終えたスキカは…
「実感はないようだが、二つの魂の運用自体は上手くいっているようでなによりである」
また、スキカはカップに口を付ける。この人、特にカップに口を付けるタイミングとかにはこだわらないらしい。
「しかし、普段より、ここに居るとかなり緊張しているように見え口数も少ない…
というか必要最小限の事しか語らぬ…
ふむ。そういうことであったか」
そうスキカが言うと、スキカから常時放たれていた威圧的な雰囲気が下がり、普通の大人くらいになった。
「これで、少しは話せるようになったかな?」
これは嬉しい配慮である。少し時間をおいて、慣れれば普通に会話出来そうだ。スキカは結果に満足し、続きを話す。
「まず、二人にはもう一つずつ体をやろう。
前回作成した魂は、その体に入れるために作ったのだ。
そして、互いの世界に送り込んでやろう。そこでだ」
二人はつばを飲み込んだ。
「二人には互いの世界には無い文化やら技術、その他諸々をそれぞれの世界に広めて欲しいのだ」
ポカンとする二人。少し考え、汲広が質問をする。
「そんな、人間が突然現われて、周りが納得するはずがない。
特に国籍が無いんじゃ自由に活動なんかできっこないし信用もされない。
この計画は破綻している。もし、異文化を広める事ができたとして、世界は大混乱になるんじゃ…」
「見くびるでない。その辺りの事は諸々、我が自ら調整するから安心致せ」
魂を用意したり、体を用意したり、スキカはやはり、人知の及ばぬ生物のようだ。彼ができるというなら信用しても良いかと思う汲広であった。
「それと、我が忘れな… ゴホン、我と二人の間に細いリンクをはってやる。我といつでもコミュニケーションがとれる故、便利だぞ」
(この人、僕ら等の事、忘れてたって言った… 言いかけた!)
「分かりましたわ」
「分かった。僕らの事、忘れないでね」
忘れられて放ったらかしにされ、調整もされずに世界が大混乱に陥ったら大変である。了承する二人であった。
「それでは前回名字と名前を考えておいて欲しいと頼みましたが決まりましたか?」
「暁悠生という名前を考えました」
「アントネラ・オーフィールという名前を考えました」
汲広の方が暁悠生という名前を、ステファニアの方が、アントネラ・オーフィールという名前を考えてきた。
「良い名前です。それではそれでいきましょう」
何の名前かは知らないが、了承されたようだ。二人ともほっとした。
「それでは我が要件は、今回はこんなものかな。何か質問は?」
すると、汲広が質問する。
「魂を同期しました。そのせいだと思うのですが、寝ている間に起きているステファニアに僕の意識も入り込みました。時間が短かったから何とかなりましたが、これってプライバシー無くないですか?」
「汲広に、裸を見られたり、触られたりするのはガマンできません」
すると、スキカは、
「今回寝ている間に起きている方に意識が入り込んだのは、新しく作った魂が、体に馴染むかテストしたかったせいと、あと、二人に互いの生活を見せたかったからだ。新しい体ができて、そちらに魂を使うから、寝ている間に相手の私生活が見えるようなことは起こらんよ。いや、起こらんように調整する」
この答えに二人は安心し、汲広は、もう一つの質問をする。
「魂を同期し、相手の記憶が分かるということですが、これって、見ようと思えば相手の絶対隠しておきたい秘密なんかも見ることができるということですか?」
「見れる、見れないで言えば見ることが可能だ。しかし見るためには相手の記憶を相当探さなければならず時間がかかる。なのでそれ相応の労力が要る。そこまでして相手の秘密を知りたいか?相手の信用を失ってまで相手の秘密を暴くか?それなら互いにこれ以上見ないと約束すればそれで済む話だと思うがどうだろう?」
「簡単に見られないということで安心しました」
「見ないでよね」
「見ないよ」
汲広とステファニアが安心したところで、
「他に質問はあるかな?」
「いえ、大丈夫です」
「特にありません」
根本的な事、何故そんな事をするのかまでは知らないが、何かまだ聞かない方かいいような気がして二人は先延ばしにした。
「それでは今回はこれにてお開きにする。またこれからもミーティングを開く故、遅刻、欠席はするなよ!」
どうせ強制参加じゃないかと一人思う汲広。そして、現実世界に戻された。
ゆっくりと体を起こす汲広。眠気はミーティング前より少し深まっていて、すぐに眠れそうだ。明日は土曜日。学校は休みである。汲広はベッドに行き毛布を被ってゆっくりと睡魔に包まれ、そのまま眠る。そう、自分の周囲に大変革が起こっている事に気付かぬままに…
(この後、ステファニアの世界かぁ、あっちは勉強ばっかりなんだよなぁ)
ステファニアが読んだり書いたりしているのだから、意識を読んで、意味は分かる。しかし、汲広にはあちらの世界の基礎学力が無い。
小学生が、ある日突然、高校で授業を受けているようなものである。
もし、逆の立場なら、ステファニアが汲広の記憶を取り出して、理解するのだが、汲広は記憶を引っ張り出すのは下手である。将来役に立つ知識かも知れないが、今のところ、やはり分からないからつまらないのである。
そうこう考え事をしていると、徐々に意識が遠のき始めた。汲広はとっさに、まるで昼寝でもするように、机に突っ伏した。
*
「久方ぶりである。二人とも息災で何よりである」
目の前に居たのは自称神様、スキカであった。
あの、テーブルと椅子とティーセット以外何も無い空間、あの、ミーティング空間である。
汲広はすでに椅子に腰掛けている。隣には、同じように椅子に腰掛けているステファニア。
スキカは目の前の紅茶もどきに口を付けた。
それを見て、汲広、ステファニアの順にカップに口を付ける。汲広は少し、落ち着きたかったのだ。やはり、この飲み物は美味しかった。
「我は雑用に忙殺されて、あれからの君らの行動を把握してはおらぬ。今、チェックする故しばし待て」
スキカの前には立体画像が、超早送りで再生されていた。スキカは速読法ならぬ、高速に動画を理解できるようである。
「なっ!」
スキカは驚愕していた。汲広の机の上にステファニアの右手、手首から先だけ出て例の100均電卓を掴んでいるシーンで画像が止まっていた。
「は、掃き出し窓の魔法は習得したばかりであったな」
「えぇ。そうですわ」
コクリと頷くステファニア。
「経験が浅いのにここまでできるとは…」
スキカは冷静さを取り戻し、また瞬速で続きの動画をチェックする。一通り過去画像をチェックし終えたスキカは…
「実感はないようだが、二つの魂の運用自体は上手くいっているようでなによりである」
また、スキカはカップに口を付ける。この人、特にカップに口を付けるタイミングとかにはこだわらないらしい。
「しかし、普段より、ここに居るとかなり緊張しているように見え口数も少ない…
というか必要最小限の事しか語らぬ…
ふむ。そういうことであったか」
そうスキカが言うと、スキカから常時放たれていた威圧的な雰囲気が下がり、普通の大人くらいになった。
「これで、少しは話せるようになったかな?」
これは嬉しい配慮である。少し時間をおいて、慣れれば普通に会話出来そうだ。スキカは結果に満足し、続きを話す。
「まず、二人にはもう一つずつ体をやろう。
前回作成した魂は、その体に入れるために作ったのだ。
そして、互いの世界に送り込んでやろう。そこでだ」
二人はつばを飲み込んだ。
「二人には互いの世界には無い文化やら技術、その他諸々をそれぞれの世界に広めて欲しいのだ」
ポカンとする二人。少し考え、汲広が質問をする。
「そんな、人間が突然現われて、周りが納得するはずがない。
特に国籍が無いんじゃ自由に活動なんかできっこないし信用もされない。
この計画は破綻している。もし、異文化を広める事ができたとして、世界は大混乱になるんじゃ…」
「見くびるでない。その辺りの事は諸々、我が自ら調整するから安心致せ」
魂を用意したり、体を用意したり、スキカはやはり、人知の及ばぬ生物のようだ。彼ができるというなら信用しても良いかと思う汲広であった。
「それと、我が忘れな… ゴホン、我と二人の間に細いリンクをはってやる。我といつでもコミュニケーションがとれる故、便利だぞ」
(この人、僕ら等の事、忘れてたって言った… 言いかけた!)
「分かりましたわ」
「分かった。僕らの事、忘れないでね」
忘れられて放ったらかしにされ、調整もされずに世界が大混乱に陥ったら大変である。了承する二人であった。
「それでは前回名字と名前を考えておいて欲しいと頼みましたが決まりましたか?」
「暁悠生という名前を考えました」
「アントネラ・オーフィールという名前を考えました」
汲広の方が暁悠生という名前を、ステファニアの方が、アントネラ・オーフィールという名前を考えてきた。
「良い名前です。それではそれでいきましょう」
何の名前かは知らないが、了承されたようだ。二人ともほっとした。
「それでは我が要件は、今回はこんなものかな。何か質問は?」
すると、汲広が質問する。
「魂を同期しました。そのせいだと思うのですが、寝ている間に起きているステファニアに僕の意識も入り込みました。時間が短かったから何とかなりましたが、これってプライバシー無くないですか?」
「汲広に、裸を見られたり、触られたりするのはガマンできません」
すると、スキカは、
「今回寝ている間に起きている方に意識が入り込んだのは、新しく作った魂が、体に馴染むかテストしたかったせいと、あと、二人に互いの生活を見せたかったからだ。新しい体ができて、そちらに魂を使うから、寝ている間に相手の私生活が見えるようなことは起こらんよ。いや、起こらんように調整する」
この答えに二人は安心し、汲広は、もう一つの質問をする。
「魂を同期し、相手の記憶が分かるということですが、これって、見ようと思えば相手の絶対隠しておきたい秘密なんかも見ることができるということですか?」
「見れる、見れないで言えば見ることが可能だ。しかし見るためには相手の記憶を相当探さなければならず時間がかかる。なのでそれ相応の労力が要る。そこまでして相手の秘密を知りたいか?相手の信用を失ってまで相手の秘密を暴くか?それなら互いにこれ以上見ないと約束すればそれで済む話だと思うがどうだろう?」
「簡単に見られないということで安心しました」
「見ないでよね」
「見ないよ」
汲広とステファニアが安心したところで、
「他に質問はあるかな?」
「いえ、大丈夫です」
「特にありません」
根本的な事、何故そんな事をするのかまでは知らないが、何かまだ聞かない方かいいような気がして二人は先延ばしにした。
「それでは今回はこれにてお開きにする。またこれからもミーティングを開く故、遅刻、欠席はするなよ!」
どうせ強制参加じゃないかと一人思う汲広。そして、現実世界に戻された。
ゆっくりと体を起こす汲広。眠気はミーティング前より少し深まっていて、すぐに眠れそうだ。明日は土曜日。学校は休みである。汲広はベッドに行き毛布を被ってゆっくりと睡魔に包まれ、そのまま眠る。そう、自分の周囲に大変革が起こっている事に気付かぬままに…
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