誘惑の延長線上、君を囲う。
愛も恋も存在しない【4】
洋服を着る前に脱衣場の鏡に自分自身の身体を映し、赤い蕾の痕をなぞる。好きでもないくせに、何故あんなに丁寧に抱いて、こんなにも沢山の印をつけたのだろう?これじゃ、愛されていると勘違いしてしまう。
ガチャッ。
「俺もシャワー浴びる……」
「な、何で入って来るの?」
私は慌てて、バスタオルで身体を覆った。
「隠さなくたっていいのに?……もう佐藤の全てを知ってるんだから」
日下部君は後ろから抱きしめてきて、首筋にキスを落とす。首筋はくすぐったいような感覚があり、ゾクッと身震いした。
「佐藤は首筋弱いんだ?」
「止めて……!」
私の反応を楽しむかのように、もう一度、首筋にキスを落とされて、甘やかな声が漏れてしまう。
「……ココにも跡をつけようか?」
「ば、馬鹿っ!そんな事したら、誰かに見られる」
「見られたら苦しむ?」
「困るに決まってるでしょ……!バイトの子だって、私が彼氏居ないって知ってるし、仕事もあるんだから!……それに私はもう若くないんだから、こんな所に跡つけてたら……恥ずかしいだけじゃん」
「……バレたら、日下部君に付けられたって言えよ」
「やだっ、……ヤダってば!」
日下部君は私の首筋に舌を這わせた後、唇を近付けて肌を吸うようにつぼめた。離された時には、くっきりと赤い蕾が付いていた。何事もなかったかのように、すました顔をしてシャワーを浴びている日下部君が腹立だしい。
他人に見えてしまうような首筋にまで跡を付けて、日下部君は何がしたいの?何を望んでいるの?……私には全く理解が出来ない。
着替えた後、乱れたベッドのシーツを繕いながら、ふと思い出す。さっきまで、このベッドで抱き合っていたんだよね?手の平でシワを伸ばしながら、しみじみと余韻に浸る。
私は彼女でもないし、友達でもなくなった。今の状況に近い関係は多分……、セフレだろうか。都合の良い時に寂しさを共用し、お互いの欲を吐き出す関係。
次はいつ?なんて聞かないし、当然、次の約束もしない。
『大好きだよ』───そんな気持ちを隠したままに欲に溺れ、お互いの隙間を埋める。
日下部君がバスルームから戻って来る前に寝転がり、タオルケットにくるまりながら目を閉じる。もう、余計な事を考える前にさっさと寝てしまおう。寝る前に……運動みたいな事をして疲労感が溜まったから、すぐに眠りにつけそう……。
うとうとしていたら日下部君がベッドに潜り込んで来た。眠さ全開の瞼をうっすらとこじ開ける。
「……おやすみ」
日下部君は私の頭を撫でた後、背中合わせに眠りについた。私は右側、日下部君は左側を向いている。
翌日の朝、枕元に置いておいたスマホのアラーム音により、無理矢理に叩き起される。今となっては分からないが、私達は何時に眠りについたのか?重だるさを全身に感じる。ダルいなぁ、仕事辛そうだなぁ……。
日下部君は背後から私を抱きしめる形で寝ていた。アラームを止める為に手を伸ばし、スマホを取る。もう起きなくちゃ、と連続で鳴り響く準備をしていたアラームを解除した。ベッドから降りようとして体制を変えようとすると、抱きしめられている両腕がぎゅうっと力強くしまった。
「おはよう……、起きてる?」
「……起きてる。けど、非常に眠い」
「ふふ、同じだね」
私も日下部君も気合いを入れないと起きられなさそうだった。アラームを全て解除したので、二度寝したら完全にアウト。しかも私は自宅に着替えを取りに帰らなければならない。
「朝ご飯、どうする?」
「とりあえず、コーヒーブラックで」
ベッドの上に寝転がったまま、尋ねる。私の背中に顔を埋めて、欠伸をしている日下部君からすり抜けてベッドから降りた。すぐに湧く電気ポットでお湯を沸かし、日下部君の許可を得たので冷蔵庫の中身をチェックする。
卵やウィンナー、とかおかずになる物が何もない!あるのは昨日、コンビニで買って来た菓子パンだけ。買う時に確認すれば良かったなぁ……。
「いつも朝ご飯は食べないの?」
「……うん、あんまり食べない。一人だと作るのも億劫だからコーヒーだけの日がたくさん」
「身体に悪いし、少しだけでも口に入れた方が良いよ」
ソファーに二人並んでの朝のコーヒータイム。昨日、購入した菓子パンも頬張る。初めて身体を重ねた、こないだとは異なる、二人一緒の朝。何だかくすぐったくて、照れくさい。
これがカレカノな関係だとしたら、幸せ過ぎて最高なのに。私達は恋とも呼べない、偽りの愛しか交わす事が出来ない、寂しさの隙間しか埋められない擬似恋愛をしている。
いつの日か、この関係さえも壊れてしまった時、私は立ち直れるだろうか───?
ガチャッ。
「俺もシャワー浴びる……」
「な、何で入って来るの?」
私は慌てて、バスタオルで身体を覆った。
「隠さなくたっていいのに?……もう佐藤の全てを知ってるんだから」
日下部君は後ろから抱きしめてきて、首筋にキスを落とす。首筋はくすぐったいような感覚があり、ゾクッと身震いした。
「佐藤は首筋弱いんだ?」
「止めて……!」
私の反応を楽しむかのように、もう一度、首筋にキスを落とされて、甘やかな声が漏れてしまう。
「……ココにも跡をつけようか?」
「ば、馬鹿っ!そんな事したら、誰かに見られる」
「見られたら苦しむ?」
「困るに決まってるでしょ……!バイトの子だって、私が彼氏居ないって知ってるし、仕事もあるんだから!……それに私はもう若くないんだから、こんな所に跡つけてたら……恥ずかしいだけじゃん」
「……バレたら、日下部君に付けられたって言えよ」
「やだっ、……ヤダってば!」
日下部君は私の首筋に舌を這わせた後、唇を近付けて肌を吸うようにつぼめた。離された時には、くっきりと赤い蕾が付いていた。何事もなかったかのように、すました顔をしてシャワーを浴びている日下部君が腹立だしい。
他人に見えてしまうような首筋にまで跡を付けて、日下部君は何がしたいの?何を望んでいるの?……私には全く理解が出来ない。
着替えた後、乱れたベッドのシーツを繕いながら、ふと思い出す。さっきまで、このベッドで抱き合っていたんだよね?手の平でシワを伸ばしながら、しみじみと余韻に浸る。
私は彼女でもないし、友達でもなくなった。今の状況に近い関係は多分……、セフレだろうか。都合の良い時に寂しさを共用し、お互いの欲を吐き出す関係。
次はいつ?なんて聞かないし、当然、次の約束もしない。
『大好きだよ』───そんな気持ちを隠したままに欲に溺れ、お互いの隙間を埋める。
日下部君がバスルームから戻って来る前に寝転がり、タオルケットにくるまりながら目を閉じる。もう、余計な事を考える前にさっさと寝てしまおう。寝る前に……運動みたいな事をして疲労感が溜まったから、すぐに眠りにつけそう……。
うとうとしていたら日下部君がベッドに潜り込んで来た。眠さ全開の瞼をうっすらとこじ開ける。
「……おやすみ」
日下部君は私の頭を撫でた後、背中合わせに眠りについた。私は右側、日下部君は左側を向いている。
翌日の朝、枕元に置いておいたスマホのアラーム音により、無理矢理に叩き起される。今となっては分からないが、私達は何時に眠りについたのか?重だるさを全身に感じる。ダルいなぁ、仕事辛そうだなぁ……。
日下部君は背後から私を抱きしめる形で寝ていた。アラームを止める為に手を伸ばし、スマホを取る。もう起きなくちゃ、と連続で鳴り響く準備をしていたアラームを解除した。ベッドから降りようとして体制を変えようとすると、抱きしめられている両腕がぎゅうっと力強くしまった。
「おはよう……、起きてる?」
「……起きてる。けど、非常に眠い」
「ふふ、同じだね」
私も日下部君も気合いを入れないと起きられなさそうだった。アラームを全て解除したので、二度寝したら完全にアウト。しかも私は自宅に着替えを取りに帰らなければならない。
「朝ご飯、どうする?」
「とりあえず、コーヒーブラックで」
ベッドの上に寝転がったまま、尋ねる。私の背中に顔を埋めて、欠伸をしている日下部君からすり抜けてベッドから降りた。すぐに湧く電気ポットでお湯を沸かし、日下部君の許可を得たので冷蔵庫の中身をチェックする。
卵やウィンナー、とかおかずになる物が何もない!あるのは昨日、コンビニで買って来た菓子パンだけ。買う時に確認すれば良かったなぁ……。
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