婚活アプリで出会う恋~幼馴染との再会で赤い糸を見失いました~
それからの日々と甘い記憶
遥斗のレジデンスへ引っ越してから2カ月が過ぎた。
あれから会社に提案した企画は、『安心して利用できる婚活アプリの活用法』で、社内では女性中心の企画は初めてだった。部長たちからの風当たりは強いけれど、社内にいる女性社員から若い男性社員まで巻き込み、日増しに協力者は増えている。
万智と共に社内の婚活アプリ経験者を集め、今後の参考になりそうな意見を出し合う。そして、アプリを使った婚活のメリット、デメリットを話し合い、宣伝に活用していきたいと考えている。
「里穂~。今度は人事部とか経理部とかも協力してくれることになったよ」
「良かった。さっそく意見をまとめていかないと」
婚活アプリは気軽に使用しやすい点もあれば、特に女性にとっては安全性に不安な点も多々ある。それを利用者の立場になって開発側へ率直に意見すれば、今後の顧客拡大にもつながるはず。会社にとっても、私たち利用者にとっても、良い企画になれば嬉しい。
なんと言っても、こちらには強~い味方、システムエンジニアの桂木雅さんがいるのだから。
ここへ入社して初めてと言っていいほど、仕事で充実している瞬間を感じていた。
そして毎日がとても楽しく、忙しい。
* * *
一方、結婚の準備は順調に進み、私の実家へ遥斗が挨拶を済ませ、両家の顔合わせも行った。母親同士が知り合いということもあり、スムーズに事が運んでいく。
それなのに……私の中には不安の種が少しづつ芽生えていた。
思わずソファーの隣に座る遥斗の顔を見て呟く。
「やっぱり派手な式とか、やめない? 上司とかの前で、どんな顔していいのか、わかんないし……それにドレス姿にも自信が……」
お互いの仕事も忙しく、派手なことが苦手な私は、やんわりと回避することを提案してみた。それを聞いた瞬間、遥斗の表情が曇ってくる。
「まさか……今になって結婚に迷いが出たのか?」
「違うよっ。この先、遥斗の奥さんになること以外考えられないから」
首を大袈裟に振って、否定する。遥斗の熱く真剣な眼差しが痛い。
「立場上、披露しないとまずいこともある。今後は変な男に目を付けられないよう、社内外へ派手に知らせるべきだ。
それに……俺は里穂のウエディングドレス姿を楽しみにしてるんだぞ」
「じゃあ、せめて規模を小さめにして……」
「わかった。なるべくそうしよう」
そう言ったとたん、ポケットからスマートフォンを取り出し、ドレスのデザインをいくつも選び始めた。
「ちょっと待って……私着せ替え人形じゃないんだから……」
遥斗はすっかり気を良くして、こちらの言葉をまるで聞いていない。
* * *
金曜日の夜、私は残業を終えて帰宅した。
結婚式の準備と仕事で、最近は休みもままならない日々が続いている。
お風呂でさっぱりして、パジャマ姿でリビングへ行くと、いい香りが漂う。最近は先に帰ることが多い遥斗が、夕飯を作って待っていてくれた。
「今夜はアクアパッツアを作ったぞ」
「うわぁ~おいしそう。もうお腹ペコペコ」
スプーンに手を伸ばし、食べようとしたところで、後ろから腕をガシッと掴まれた。
「へっ!? 何?」
「ちょっと待て。最近、納得いかないことがあるんだが」
振り向くと、遥斗が以前のような意地悪そうな表情を浮かべ、こちらを見下ろしている。
「なっ、なんのこと?」
「仕事が順調になったのはいいが、最近あまりにも俺のことを軽視してないか?」
「しっ、してないよ。ご飯作ってもらったり、話を聞いてもらったり、いつも感謝してる」
確かに……最近仕事が忙しくて、二人で出かけることも、ゆっくり過ごす時間も取れてはいない。
「仕方がない。里穂が俺のことを忘れないよう、しばらく以前の関係に戻すしかないな」
「関係って……?」
すると急に後ろから肩を抱かれ、顔を近づけると、声を潜めて耳元にそっと呟く。
「――復讐」
言葉の意味と、心地良く響く低音に、思わずゾクッとした。
こんな風に迫られて、体の奥が疼くなんて、私やっぱり変態なのかな……?
最近の遥斗はすっかり私を優しくサポートし、甘やかしてくれるから、ちょっと前に迫られていたようなドキドキする感覚は鈍っていた。
だからって……。
耳の中を生暖かい遥斗の舌がそっとなぞると、体が勝手に反応し、少しのけぞる。
嫌がらずに受け止める私を、遥斗は容赦なく責め立て、不意に動きを止めた。
「いつもより興奮してないか? もしかして、里穂はこういう方が好きなのかもな」
「なっ!? なんてこと言うのっ!!」
遥斗の手をほどき、慌てて椅子から立ちあがると、興奮して上半身が熱くのぼせてくる。
「図星だな。耳まで真っ赤だぞ」
何も言い返せなくて、ただ遥斗を睨みつけるしかない。
「それに……俺も抵抗された方がそそられる」
遥斗は嬉しそうにこちらを見つめると、私の腰に手を伸ばし、引き寄せられた。
何もかも知り尽くされているのだから、このまま素直に彼の腕の中で支配されるしかない……。
甘い復讐の虜になってしまった私は、永遠に遥斗のことしか考えられないのだから。
(END)
あれから会社に提案した企画は、『安心して利用できる婚活アプリの活用法』で、社内では女性中心の企画は初めてだった。部長たちからの風当たりは強いけれど、社内にいる女性社員から若い男性社員まで巻き込み、日増しに協力者は増えている。
万智と共に社内の婚活アプリ経験者を集め、今後の参考になりそうな意見を出し合う。そして、アプリを使った婚活のメリット、デメリットを話し合い、宣伝に活用していきたいと考えている。
「里穂~。今度は人事部とか経理部とかも協力してくれることになったよ」
「良かった。さっそく意見をまとめていかないと」
婚活アプリは気軽に使用しやすい点もあれば、特に女性にとっては安全性に不安な点も多々ある。それを利用者の立場になって開発側へ率直に意見すれば、今後の顧客拡大にもつながるはず。会社にとっても、私たち利用者にとっても、良い企画になれば嬉しい。
なんと言っても、こちらには強~い味方、システムエンジニアの桂木雅さんがいるのだから。
ここへ入社して初めてと言っていいほど、仕事で充実している瞬間を感じていた。
そして毎日がとても楽しく、忙しい。
* * *
一方、結婚の準備は順調に進み、私の実家へ遥斗が挨拶を済ませ、両家の顔合わせも行った。母親同士が知り合いということもあり、スムーズに事が運んでいく。
それなのに……私の中には不安の種が少しづつ芽生えていた。
思わずソファーの隣に座る遥斗の顔を見て呟く。
「やっぱり派手な式とか、やめない? 上司とかの前で、どんな顔していいのか、わかんないし……それにドレス姿にも自信が……」
お互いの仕事も忙しく、派手なことが苦手な私は、やんわりと回避することを提案してみた。それを聞いた瞬間、遥斗の表情が曇ってくる。
「まさか……今になって結婚に迷いが出たのか?」
「違うよっ。この先、遥斗の奥さんになること以外考えられないから」
首を大袈裟に振って、否定する。遥斗の熱く真剣な眼差しが痛い。
「立場上、披露しないとまずいこともある。今後は変な男に目を付けられないよう、社内外へ派手に知らせるべきだ。
それに……俺は里穂のウエディングドレス姿を楽しみにしてるんだぞ」
「じゃあ、せめて規模を小さめにして……」
「わかった。なるべくそうしよう」
そう言ったとたん、ポケットからスマートフォンを取り出し、ドレスのデザインをいくつも選び始めた。
「ちょっと待って……私着せ替え人形じゃないんだから……」
遥斗はすっかり気を良くして、こちらの言葉をまるで聞いていない。
* * *
金曜日の夜、私は残業を終えて帰宅した。
結婚式の準備と仕事で、最近は休みもままならない日々が続いている。
お風呂でさっぱりして、パジャマ姿でリビングへ行くと、いい香りが漂う。最近は先に帰ることが多い遥斗が、夕飯を作って待っていてくれた。
「今夜はアクアパッツアを作ったぞ」
「うわぁ~おいしそう。もうお腹ペコペコ」
スプーンに手を伸ばし、食べようとしたところで、後ろから腕をガシッと掴まれた。
「へっ!? 何?」
「ちょっと待て。最近、納得いかないことがあるんだが」
振り向くと、遥斗が以前のような意地悪そうな表情を浮かべ、こちらを見下ろしている。
「なっ、なんのこと?」
「仕事が順調になったのはいいが、最近あまりにも俺のことを軽視してないか?」
「しっ、してないよ。ご飯作ってもらったり、話を聞いてもらったり、いつも感謝してる」
確かに……最近仕事が忙しくて、二人で出かけることも、ゆっくり過ごす時間も取れてはいない。
「仕方がない。里穂が俺のことを忘れないよう、しばらく以前の関係に戻すしかないな」
「関係って……?」
すると急に後ろから肩を抱かれ、顔を近づけると、声を潜めて耳元にそっと呟く。
「――復讐」
言葉の意味と、心地良く響く低音に、思わずゾクッとした。
こんな風に迫られて、体の奥が疼くなんて、私やっぱり変態なのかな……?
最近の遥斗はすっかり私を優しくサポートし、甘やかしてくれるから、ちょっと前に迫られていたようなドキドキする感覚は鈍っていた。
だからって……。
耳の中を生暖かい遥斗の舌がそっとなぞると、体が勝手に反応し、少しのけぞる。
嫌がらずに受け止める私を、遥斗は容赦なく責め立て、不意に動きを止めた。
「いつもより興奮してないか? もしかして、里穂はこういう方が好きなのかもな」
「なっ!? なんてこと言うのっ!!」
遥斗の手をほどき、慌てて椅子から立ちあがると、興奮して上半身が熱くのぼせてくる。
「図星だな。耳まで真っ赤だぞ」
何も言い返せなくて、ただ遥斗を睨みつけるしかない。
「それに……俺も抵抗された方がそそられる」
遥斗は嬉しそうにこちらを見つめると、私の腰に手を伸ばし、引き寄せられた。
何もかも知り尽くされているのだから、このまま素直に彼の腕の中で支配されるしかない……。
甘い復讐の虜になってしまった私は、永遠に遥斗のことしか考えられないのだから。
(END)
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