婚活アプリで出会う恋~幼馴染との再会で赤い糸を見失いました~
真実と赤い糸(1)
「結婚!? お前が結婚するのか?」
実家の父親が電話口で叫んだ。
すぐさま相手が母親に代わり、私の名を呼ぶ声が聞こえてくる。
「里穂~!! 本当なのっ!? もう諦めかけていたのに、良かったわぁ~……」
涙声になって、あとは向こうが何を話しているのか、よくわからない状態。それでも喜んでくれていることは伝わってきた。
姉は既に結婚していたから、よほど心配だったらしい。
「それで、来月に遥斗がそっちへ挨拶に行く予定なんだけど。……ねぇ、聞いてる?」
興奮状態で、しばらく話にならなかった。
* * *
そして約3週間が過ぎ、私は遥斗のレジデンスへ引っ越しを済ませた。
結婚も決まり、すべてが順調……のはずが、まだ解決していない大問題が残っていた。
遥斗の仕事が休みになった土曜の朝、本人に直接確認することを決意する。
「ねぇ遥斗、ずっと疑問があったんだけど……。あなたがいない時、部屋に鍵がしてあるのはどうして?」
食事を終えて、のんびりコーヒーを飲もうとしていた遥斗の動きが、ギクリとしたように一瞬止まった。
「あ、あれかぁ……。部屋に大切な資料が置いてあるんだ。下手に片付けらると……なぁ」
「私以外の人との思い出とか? それとも、人に言えない趣味とか? 何を見ても、何を聞いても、遥斗のこと嫌いにならないから教えて欲しいの……。
だって、このままだと……まるで信頼されてないみたいで、凄く……寂しい」
鍵のついた部屋の存在は、まるで彼の心の奥が私を拒絶しているようで、切なく、そして悲しかった。
遥斗はしばらく黙ってこちらを見つめると、まるで決心したように私の腕を掴み、部屋の前へと立たせた。
「絶対に俺を嫌いにならないって、約束できるか?」
「うん。もちろん」
遥斗への気持ちは揺るぎないものになっているから、今さら何を聞かされても驚くことなどない。
ドアを開けると、いざ、部屋へと足を踏み入れる。
――――ところが部屋の中へ入って、いくら注意深く見回しても、特におかしな点は見つからない。
大きなビジネス用のデスクに、黒いメッシュ地で背もたれがしっかりとしたイス。本棚には会社絡みの不動産系の本が、ぎっしりと詰まっている。
「別に至って普通の部屋だよ。いったい何を隠したかったの?」
無言のままの遥斗を背に、置いてあるものを丁寧に確認していく。
すると、デスク上に置かれた見開きタイプのフォトフレームに目が留まった。
手に取ると、仕事へ向かう服装をした私の写真が二枚入っている。一枚は最近のもので、もう一枚は数年前のもののよう。
でも……。あれ……、この写真って?
私が自分で撮るわけもないし、撮ってもらった記憶もない。
すると、遥斗は本棚から数冊のクリアーファイルを取り出し、机の上に開いて置いた。
「見てみろ」
中をパラパラめくっていくと、そこに納められているのは、私の写真ばかり。一枚一枚よく観察すると、一瞬めまいがしそうになった。
「こっ、これ何?」
数年前から最近の写真が、まるでアルバムのようにきちんと分類されていた。
会社から帰宅しようとしている私の姿や、同僚と飲みに行く様子の写真。アパートでゴミ出しをしているところや、買い物に出かけているところ、その他どこで撮ったのか、ただ歩いているような写真まで……。
身辺調査書もあり、大学を出たあとラングルへ就職し、担当した仕事の内容や異動した部署、それに趣味や休日の過ごし方まで詳しく書かれていた。
実家の父親が電話口で叫んだ。
すぐさま相手が母親に代わり、私の名を呼ぶ声が聞こえてくる。
「里穂~!! 本当なのっ!? もう諦めかけていたのに、良かったわぁ~……」
涙声になって、あとは向こうが何を話しているのか、よくわからない状態。それでも喜んでくれていることは伝わってきた。
姉は既に結婚していたから、よほど心配だったらしい。
「それで、来月に遥斗がそっちへ挨拶に行く予定なんだけど。……ねぇ、聞いてる?」
興奮状態で、しばらく話にならなかった。
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そして約3週間が過ぎ、私は遥斗のレジデンスへ引っ越しを済ませた。
結婚も決まり、すべてが順調……のはずが、まだ解決していない大問題が残っていた。
遥斗の仕事が休みになった土曜の朝、本人に直接確認することを決意する。
「ねぇ遥斗、ずっと疑問があったんだけど……。あなたがいない時、部屋に鍵がしてあるのはどうして?」
食事を終えて、のんびりコーヒーを飲もうとしていた遥斗の動きが、ギクリとしたように一瞬止まった。
「あ、あれかぁ……。部屋に大切な資料が置いてあるんだ。下手に片付けらると……なぁ」
「私以外の人との思い出とか? それとも、人に言えない趣味とか? 何を見ても、何を聞いても、遥斗のこと嫌いにならないから教えて欲しいの……。
だって、このままだと……まるで信頼されてないみたいで、凄く……寂しい」
鍵のついた部屋の存在は、まるで彼の心の奥が私を拒絶しているようで、切なく、そして悲しかった。
遥斗はしばらく黙ってこちらを見つめると、まるで決心したように私の腕を掴み、部屋の前へと立たせた。
「絶対に俺を嫌いにならないって、約束できるか?」
「うん。もちろん」
遥斗への気持ちは揺るぎないものになっているから、今さら何を聞かされても驚くことなどない。
ドアを開けると、いざ、部屋へと足を踏み入れる。
――――ところが部屋の中へ入って、いくら注意深く見回しても、特におかしな点は見つからない。
大きなビジネス用のデスクに、黒いメッシュ地で背もたれがしっかりとしたイス。本棚には会社絡みの不動産系の本が、ぎっしりと詰まっている。
「別に至って普通の部屋だよ。いったい何を隠したかったの?」
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すると、デスク上に置かれた見開きタイプのフォトフレームに目が留まった。
手に取ると、仕事へ向かう服装をした私の写真が二枚入っている。一枚は最近のもので、もう一枚は数年前のもののよう。
でも……。あれ……、この写真って?
私が自分で撮るわけもないし、撮ってもらった記憶もない。
すると、遥斗は本棚から数冊のクリアーファイルを取り出し、机の上に開いて置いた。
「見てみろ」
中をパラパラめくっていくと、そこに納められているのは、私の写真ばかり。一枚一枚よく観察すると、一瞬めまいがしそうになった。
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会社から帰宅しようとしている私の姿や、同僚と飲みに行く様子の写真。アパートでゴミ出しをしているところや、買い物に出かけているところ、その他どこで撮ったのか、ただ歩いているような写真まで……。
身辺調査書もあり、大学を出たあとラングルへ就職し、担当した仕事の内容や異動した部署、それに趣味や休日の過ごし方まで詳しく書かれていた。
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